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中国リポート

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 6月17日、アウェーの浙江省嘉興市で、浙商銀行との第6節を戦った八一工商銀行。試合は1-3で敗れたが、その前々日、浙江省の省都・杭州市にひと足早く乗り込んで来た王涛(八一工商銀行総監督)と王皓の姿があった。

 彼らがわざわざ杭州まで出向いた理由は、サッカーのイングランド・プレミアリーグ屈指の強豪チーム、マンチェスター・ユナイテッドが今年7月に行うアジアツアーのスケジュールについて、地元・杭州市の組織委員会に直接問い合わせるため。7月26日に中国サッカークラブ超級リーグの杭州緑城と、マンチェスター・ユナイテッドの対戦が予定されている。王涛と王皓は、「赤い悪魔」と言われるマンチェスター・ユナイテッドの大ファン、「曼聯狂」なのだ。曼聯はマンチェスター・ユナイテッドの中国語表記で、「曼」は「曼徹斯特(マンチェスター)」、「聯」は「聯合(連合=ユナイテッド)」だ。

 組織委員会からアジアツアーの記念Tシャツと帽子を贈られ、ご機嫌のふたり。王皓曰く、一番好きな選手は背番号10のウェイン・ルーニー。プロとしての意識の高さ、フィジカルの強さがお気に入りの理由だとか。「C.ロナウドがレアル・マドリーへ移籍して、マンチェスターに対する思いに何か変化はある?」と取材陣に聞かれると、「ないね。サッカーは卓球とは違う。卓球は個人のスポーツだけど、サッカーはより組織的に戦うものだしね。ほとんど影響はないよ」(王皓)。八一工商銀行チームでは、サッカーをトレーニングの一環として練習メニューに加えており、王涛と王皓は自らプレーすることも多い。「ポジションは絶対にフォワードだね」(王涛)。

 これは余談になるが、王涛や王皓がチームを組んで試合をすると、解放軍の食堂の職員たちにコテンパンにやられるのだとか。元・八一解放軍のサッカーチームの選手たちが、職員として多く採用されているからだ。70~80年代にかけて何度も国内リーグを制した八一解放軍サッカーチームは、2003年に解散の憂き目にあっている。2004年に発足したサッカーの超級リーグも、海外のサッカーリーグに人気を奪われ、どのクラブも経営は決して楽ではないようだ。

Photo:「マンU」命の王皓。7月26日は杭州へ観戦に駆けつけるのか?
☆☆☆ 2009中国卓球クラブ超級リーグ 女子第5節 6.13 ☆☆☆

[冀中能源-北大方正 3-0 山東魯能・路安集団]
○牛剣鋒 -6、4、9、-1、6 李暁霞
○馮天薇 8、3、6 彭陸洋
○白楊/牛剣鋒 -8、17、-9、15、5 彭陸洋/李楠

[北京時博国際 3-1 江蘇中超電纜]
○張怡寧 -9、9、6、7 姚彦
○丁寧 5、7、-9、6 范瑛
 丁寧/曹麗思 -7、-9、12、-6 張瀟玉/王シュアン○
○張怡寧 -8、-7、11、10、8 范瑛

[広東珠江怡景湾 3-1 八一長安医院]
○劉詩ウェン 12、3、9 文佳
 周芳芳 -2、-8、-5 曹臻○
○周芳芳/蔡賽 -11、9、7、-8、8 文佳/木子
○劉詩ウェン 10、7、-4、-9、10 曹臻

[山西大土河華東理工 3-1 重慶康徳]
 劉娟 6、-5、-8、8、-6 金キョン娥○
○郭炎 6、7、6 賈君
○帖雅娜/劉娟 8、9、6 李茜/麦楽楽
○郭炎 8、-7、9、5 金キョン娥

[遼寧鞍鋼 3-0 大同雲崗・雁北賓館]
○常晨晨 4、9、-7、-5、7 馮亜蘭
○郭躍 6、3、2 李暁丹
○郭躍/楊楊 9、-8、10、16 馮亜蘭/李佳

 超級リーグ女子第5節は、国家チームの現役メンバーがひとりもいない冀中能源-北大方正が、無傷の5連勝。優勝候補筆頭の山東魯能・路安集団をもストレートで破り、ダークホースの快進撃はまだまだ止まらない。
 この第5節のヒロインとなったのは牛剣鋒。すでに07年に国家チームを引退しているが、トップで現役バリバリの李暁霞をゲームオールで下し、李暁霞の9連勝を阻止した。クラブの代表である劉偉(95年世界選手権3位)は「牛剣鋒に対しては、大事な場面でも良いプレーができるよう、技術・戦術よりも精神面を重点的に指導している」とコメントしている。世界チャンピオンを狙えるだけの実力がありながら、04年アテネ五輪でキム・ヒャンミ(北朝鮮)にストレート負けを喫するなど、ここ一番でのメンタルの弱さがネックだった牛剣鋒。李暁霞戦の勝利で勢いに乗ってくると、他のチームにとっても脅威の存在となる。

 その他の試合では、北京時博国際、広東珠江怡景湾が苦しみながらも勝利。両チームともエースの張怡寧、劉詩ウェンが大激戦を制して勝利を決めたが、この先もエースの踏ん張りに期待するようだと、優勝への道のりは険しくなりそう。そして重慶康徳と大同雲崗・雁北賓館は、初勝利が遠く5連敗。男子と同じく「2弱」を形成している。重慶康徳は2番手の賈君の不調が響き、大同雲崗・雁北賓館は若手中心のメンバーが、競り合いながらも勝ち星にあと一歩届かない。次節の第6節で対戦するこの2チーム、連敗街道を脱出するのは果たしてどちらか。

Photo上:今年10月の全中国運動会が現役生活のゴール。牛剣鋒、ラストスパートに入ったか
Photo下:3勝6敗と勝ち星は伸びないが、孤軍奮闘の金キョン娥(重慶康徳)
★★★ 2009中国卓球クラブ超級リーグ 男子第5節 6.13 ★★★

[上海明園-金海洋集団 3-0 江蘇英太青・南体]
○王励勤 10、10、7 單明杰
○許シン 7、-10、6、-4、4 陳杞
○許シン/張洋 7、6、5 單明杰/林晨

[四川全興 3-0 錦州銀行]
○ハオ帥 -7、8、-5、12、9 雷振華
○邱貽可 9、8、9 徐輝
○ハオ帥/王建軍 -5、8、7、7 徐輝/ジャイ一鳴

[山東魯能中超電纜 3-1 八一工商銀行]
 江天一 -8、10、-6、-12 王皓○
○張継科 10、5、-6、5 李陟
○江天一/方博 -9、9、-10、10、7 徐克/楊暁夫
○張継科 7、-11、-9、3、9 王皓

[寧波北侖海天 3-0 覇州海潤]
○馬龍 12、-4、7、5 周斌
○荘智淵 9、4、9 ガオ・ニン
○呉ハオ/崔慶磊 -9、12、10、6 尚坤/閻安

[浙商銀行 3-1 海寧皮革城鵬翔]
○馬琳 3、10、10 宋時超
 張超 -7、-5、-9 李平○
○張超/張ユク 7、11、-7、-7、6 宋時超/沙陳斌
○馬琳 -6、2、-9、4、9 李平

 週2回のハイペースで試合日程を消化していく超級リーグ。男子第5節は、今後の順位予想が立てやすい結果となっている。
 全勝を守ったのは昨シーズン決勝を戦った2チーム、上海明園-金海洋集団と寧波北侖海天。上海明園-金海洋集団は、ここまで王励勤/高礼澤と許シン/張洋という2つのペアをダブルスで使い分け、ダブルスは5連勝。許シンのシングルスの得点能力がアップしたことで、自在にオーダーを組める強みがある。江蘇戦では、王励勤が相手エースの陳杞に分が良いため、許シンをダブルスに起用。その許シンが2番で陳杞を破る嬉しい誤算もあり、江蘇英太青・南体に完勝した。
 一方、寧波北侖海天はエース馬龍が大車輪の活躍を続けている。シングルス7勝0敗、ダブルス1勝0敗と抜群の成績だ。加えてこの第5節で、新しく加入した荘智淵(チャイニーズタイペイ)がデビュー。2番でガオ・ニン(シンガポール)に完勝してチームを勢いに乗せた。ダブルスでここまで4勝を挙げている呉ハオ(06年世界ジュニア複優勝)も健闘しており、馬龍の勢いがチーム全体に波及している。上海明園-金海洋集団と寧波北侖海天、この2チームのプレーオフ(準決勝)進出はかなり濃厚になってきた。

 続くプレーオフ進出の候補となるチームは、浙商銀行と山東魯能中超電纜か。ともに3勝2敗と序盤はややもたついている感があるが、浙商銀行は馬琳、山東魯能中超電纜は張継科と絶対的なエースがおり、チームの層も厚い。これらの4チームに割って入れるとしたら四川全興だが、出足のつまずきをどこまでカバーできるか。そして、降格候補の2チームはすでに海寧皮革城鵬翔と覇州海潤に固まりつつある。ファンとしては思わぬ番狂わせでリーグを盛り上げてほしいところだが…。

 この超級第5節で、こぼれ話をひとつ。チームの5連勝に貢献した上海明園-金海洋集団の王励勤に、大きな誕生日ケーキが贈られた。今年で31歳になる王励勤、本当の誕生日は6月18日なのだが、上海チームはこれから7月4日の第11節まで、本来のホームである上海には戻ってこない。そこで地元のファンと一緒に、ひと足早いお祝いを、というわけだ。
 ケーキを前に「誕生日の願いごとは?」という質問を受けた王励勤、「ええと、まずはもっと良いプレーをすること。それから家族の健康と、それから…」と言葉を濁していたが、「恋人探しは?」とズバリ質問が飛んだ。これまで多くの恋の噂が囁かれてきた王励勤、「あまり考えていません。考えなくてはいけないけど…」と言葉少なだったが、気の早いマスコミは「王励勤、フリー宣言か」と報道。“アラサー”王励勤のゴールインは、果たしていつになるのか。

Photo上:寧波北侖海天の新助っ人・荘智淵
Photo下:すでに中国国家チームの最年長メンバーとなった王励勤
☆☆☆ 2009中国卓球クラブ超級リーグ 女子第5節 6.10 ☆☆☆

[江蘇中超電纜 3-2 山東魯能・路安集団]
○范瑛 8、4、-10、-6、11 彭陸洋
 姚彦 6、-4、11、-8、-6 李暁霞○
○張瀟玉/王シュアン -11、-5、8、5、7 彭陸洋/肖萌
 范瑛 -5、11、-7、-6 李暁霞○
○張瀟玉 7、-8、-8、4、5 肖萌

[冀中能源-北大方正 3-2 広東珠江怡景湾]
○陳晴 8、8、11 曹幸ニィ
 牛剣鋒 9、-9、5、-5、-7 劉詩ウェン○
○白楊/牛剣鋒 4、8、9 周芳芳/蔡賽
 陳晴 -2、-2、-2 劉詩ウェン○
○白楊 7、8、4 周芳芳

[北京時博国際 3-1 重慶康徳]
 丁寧 -10、3、4、5 金キョン娥○
○張怡寧 3、6、5 賈君
○丁寧/曹麗思 5、8、-8、-7、4 麦楽楽/李茜
○張怡寧 9、7、6 金キョン娥

[八一長安医院 3-2 大同雲崗・雁北賓館]
 文佳 8、-9、6、-6、-9 馮亜蘭○
 曹臻 -10、9、-9、-16 李暁丹○
○木子/文佳 2、8、-9、4 李暁丹/李佳
○曹臻 8、4、9 馮亜蘭
○木子 9、9、-13、10 李佳

[山西大土河華東理工 3-2 遼寧鞍鋼]
○郭炎 -7、17、-11、7、10 郭躍
 饒静文 8、-8、-11、-9 常晨晨○
○饒静文/劉娟 8、8、9 郭躍/侯曉旭
 郭炎 -6、-9、-10 常晨晨○
○帖雅娜 -8、8、11、9 楊楊

 超級女子第4節の結果は上記のとおり。ここまで3連勝だった広東珠江怡景湾と遼寧鞍鋼が敗れ、ダークホースの冀中能源-北大方正が4連勝で単独首位に立った。
 冀中能源の最大の強みは、何と言ってもこの4試合で1ゲームしか落としていない牛剣鋒/白楊のダブルス。他の9チームを見渡しても、このペアに勝てそうなペアは見当たらない。白楊はラストでも3連勝と見事な火消し役。広東珠江怡景湾戦ではエースの馮天薇が欠場し、劉詩ウェンに2点取られながらも、きっちり勝利を収めた。やはり4単1複の団体戦ではダブルスの強さが重要、この第4節でもダブルスを取ったチームがすべて勝利を収めている。

 今シーズン初黒星を喫した遼寧鞍鋼は、常晨晨が2点起用の期待に応えて2勝しながら、エース郭躍がまさかの単複2失点。実力派ペアの饒静文/劉娟を崩しにいったオーダーが逆に裏目に出た。この饒静文/劉娟が、安定感では牛剣鋒/白楊の次に来るペアだろう。郭躍は中国オープンで単複とも決勝に進み、この日もトップで郭炎と大激戦。遼寧鞍鋼の谷振江監督は「試合の連続で、郭躍は体力的に問題があった。今日の試合は高い集中力をキープできなかった」とコメント。男子同様、中国オープン終了後、すぐに移動して超級リーグというのはかなりキツかったようだ。

 張怡寧率いる北京時博国際は、ここまで全敗の重慶康徳に3-1で勝利。しかし、ダブルスが落としていたらかなり危ない試合だった。苦戦の原因は、トップに出場した丁寧が金キョン娥に敗れたこと。金キョン娥に対しては6月8日の「中国vs.世界選抜」でも、ゲームカウント2-0の第3ゲームに3回のマッチポイントを奪いながら逆転負けしている。「カット打ちは確実に上達していると思う。でも、飛躍的に上達するというわけにはいかないし、少しずつ順序を追って進歩していくしかない」(丁寧)。この中国女子チームのホープにとっては、国家チームの首脳陣を勝ち取るためにも「金キョン娥越え」が必須条件になってきた。

Photo:28歳の牛剣鋒と、もうすぐ25歳になる白楊。ベテランペアが気を吐いている

Photo:饒静文/劉娟は、左ペンドライブと右シェーク異質の名コンビ
★★★ 2009中国卓球クラブ超級リーグ・男子第4節 6.10 ★★★

[上海明園-金海洋集団 3-1 錦州銀行]
 許シン -5、10、-7、-4 徐輝○
○王励勤 -9、-7、4、10、11 雷振華
○王励勤/高礼澤 -9、7、-5、9、9 徐輝/ジャイ一鳴
○許シン 6、-5、7、8 雷振華

[八一工商銀行 3-1 江蘇英太青・南体]
○王皓 -8、6、9、-7、6 單明杰
 徐克 4、8、-4、-9、-9 陳杞○
○徐克/楊暁夫 10、-10、5、10 單明杰/林晨
○王皓 -8、6、-10、6、10 陳杞

[四川全興 3-0 覇州海潤]
○邱貽可 -10、8、-9、7、8 尚坤
○ハオ帥 8、7、5 李静
○邱貽可/王建軍 7、6、-8、6 李静/セン健

[山東魯能中超電纜 3-0 海寧皮革城鵬翔]
○張継科 4、7、8 陳剣
○江天一 -10、4、5、11 李平
○張継科/柳洋 2、8、6 李平/宋時超

[寧波北侖海天 3-1 浙商銀行]
○馬龍 -6、6、13、-5、8 馬琳
○呉ハオ 9、18、3 朱世赫
 呉ハオ/崔慶磊 -6、-8、-8 馬琳/張超○
○馬龍 7、3、6 朱世赫

 6月6日に終了したHarmony中国オープン、さらに6月8~9日に行われたVolkswagen中国vs.世界選抜と、選手によってはかなりハードなスケジュールで臨んだ超級第4節。男子の結果は上記のとおり。
 上海明園-金海洋集団vs.錦州銀行、ともに3勝0敗の全勝対決は接戦となったが、王励勤が単複で踏ん張った上海明園-金海洋集団に軍配。王励勤は前日(9日)の中国vs.世界選抜で松平健太とゲームオールの激戦を戦い、翌日に1,200km離れた瀋陽市へひとっ飛び。2番で雷振華に対し、2ゲームを先行されながらも逆転勝ち。ダブルスもゲームオール9本で競り勝った。明日13日には再び上海に舞い戻って、江蘇英太青・南体との第5節が待っている。フィジカルの能力ではいまだ国家チームでトップクラスの王励勤だが、この試合と移動の連続はさすがにこたえそうだ。

 もう1チーム全勝を守ったのは、馬龍率いる寧波北侖海天。馬龍はまずトップで馬琳との大激戦を制し、4番では朱世赫に完勝した。朱世赫とはこれで中国オープンのシングルス準々決勝、中国vs.世界選抜の団体戦トップ、そしてこの超級第4節の4番と、5日ほどの間に3試合を戦って2勝1敗。タフネスチョッパー・朱世赫も2番で若手の呉ハオに敗れるなど、さすがに体力面が苦しいのか。「朱世赫とやらせて下さい。自信はあります」と劉国棟監督に出場を志願した呉ハオ(出典:華奥星空)は、2番の20-18という競り合いを制し、ストレート勝ちを収めたのだから大したものだ。

 一方、ここまで3連敗の3チーム、四川全興、海寧皮革城鵬翔、覇州海潤の中で、初勝利を収めたのが四川全興。ホームの成都市成飛体育館で覇州海潤を一蹴。地元・四川のマスコミに「ハオ帥是水貨」と批判されたハオ帥が2番で李静にストレート勝ち。「水貨」とは正規のルートからの仕入れではない、無保証の商品ということ。昨シーズン、423万元(約6000万円)で四川全興が落札したハオ帥に対する、強烈な皮肉なのだ。卓球王国・中国のマスコミは、世界ランキング9位の選手に対してもなかなか手厳しい。四川全興の陳宏宇監督は「ハオ帥は3連敗したから水貨だと言われるが、では3連勝したらなんと評価されるのか。それに敗れた相手は陳杞や張継科、ハオ帥の調子が悪かったとはいえ番狂わせとは言えない。より公平で客観的な視点を望みたい」とコメントしている。

Photo上:老兵と呼ぶにはまだ早い? エースの貫禄を見せた王励勤
Photo下:馬琳と朱世赫を連破した馬龍。今シーズンも6勝0敗と連勝街道をばく進中
 「超級リーグはなぜ“農村リーグ”と呼ばれるのか」。先月28日、広州市の羊城晩報にこんな記事が掲載された。
 2010年にアジア競技大会の開催を控えている広州市は、現在多くの体育館が改修の真っ最中。劉詩ウェンを擁する超級リーグ女子の広東珠江怡景湾は、ホームとなる体育館が見つからず、止むなく広州市の中心からは遠く離れた華南師範大の体育館をホームとした。新しく広東省卓球センター主任に就任した喬紅(89年世界選手権優勝)が、同大学の卒業生なのだ。しかし、交通アクセスの悪さも手伝ってか、観客席には学生がまばらに入るだけだという。

 超級リーグの試合会場は、大都市よりもむしろ地方の小さな都市のほうが多い。小さな都市といってもそこは中国、人口が100万、200万を超えることも珍しくないのだが、筆者も知らない都市ばかりだ。地図で場所を確認してみると、試合会場までの道のりは容易ではないことが推察される。
 なぜ小さな都市での開催が増えているのか。前述の羊城晩報によれば、「小さな都市ならお金を出して試合を招致してくれるから」。娯楽の豊富な大都市よりも、地方のほうが観客を集めやすいという事情もある。選手の年棒は年々高くなる一方で、その資金を捻出するために、自然と地方での開催が多くなってしまう。

 試合の日程表を眺めていると、「ドサ回り(地方営業)」といった感もある超級リーグ。その試合会場は中国全土の4直轄市(北京・上海・天津・重慶)、10省(遼寧・河北・山東・山西・陜西・安徽・江蘇・浙江・四川・広東)、2自治区(内モンゴル・新彊ウイグル)にまたがっている。
 その中でも最もハードな移動を強いられているのが、内陸の四川省成都市にホームを置く男子の四川全興。第1ステージの全18節だけで、直線距離にして約23,800km(!)を移動しながら転戦する。一例を挙げると、第4節を地元・成都市の成飛体育館で戦ったあと、第5節は1,500km離れた天津市人民体育館、第6節は天津市から430km離れた山西財経大学体育館、そして第7節で1,100kmの距離を移動して成飛体育館に戻ってくる。1日あたりの平均移動距離はなんと400kmにもなる。

 かつて毛沢東は2年あまりで約12,000kmを行軍する「長征」を行ったが、現代の超級リーグは2カ月で倍の24,000kmを移動してしまうのだ。毎週水曜日と土曜日に試合がある平均的な試合日程が、どれだけハードなものであるかは想像に難くない。これだけの移動を続けながら、世界トップクラスの対戦相手に挑んでいく超級リーグ。…選手たちが鍛えられるのも納得だ。

Photo:本来の所属である天津市チームが超級リーグから降格し、四川全興に籍を置いているハオ帥。昨シーズン、リーグ中盤から四川全興が失速したのは、ハードな移動の影響もあるのか
☆☆☆ 2009中国卓球クラブ超級リーグ 女子第3節 5.30 ☆☆☆

[遼寧鞍鋼 3-2 北京時博国際]
 常晨晨 -6、-8、5、-10 張怡寧○
○郭躍 9、7、-6、-3、9 丁寧
 常晨晨/侯曉旭 8、-7、-9、8、-5 丁寧/曹麗思○
○郭躍 9、11、5 張怡寧
○楊楊 11、-9、8、6 彭雪

[広東珠江怡景湾 3-2 山東魯能・路安集団]
○劉詩ウェン 9、5、9 彭陸洋
 周芳芳 -12、-11、-9 李暁霞○
○周芳芳/蔡賽 6、7、5 彭陸洋/李楠
 劉詩ウェン -5、-3、-5 李暁霞○
○蔡賽 7、8、-6、-9、8 李楠

[山西大土河華東理工 3-2 八一長安医院]
○郭炎 6、-6、8、8 文佳
 饒静文 -4、6、-4、-1 曹臻○
 饒静文/劉娟 -4、-6、8、-10 文佳/木子○
○郭炎 -6、6、9、10 曹臻
○帖雅娜 7、10、-6、8 木子

[冀中能源-北大方正 3-2 大同雲崗・雁北賓館]
○馮天薇 7、-8、-4、5、7 李暁丹
 陳晴 -9、8、7、-6、-3 馮亜蘭○
○白楊/牛剣鋒 7、9、3 李佳/李暁丹
 馮天薇 8、9、-9、-4、-18 馮亜蘭○
○白楊 9、9、8 武楊

[江蘇中超電纜 3-1 重慶康徳]
○范瑛 7、9、9 金キョン娥
○姚彦 8、-6、-5、5、3 賈君
 張瀟玉/王シュアン -8、8、-9、-8 麦楽楽/李茜○
○姚彦 7、4、6 金キョン娥

 超級女子第3節では、男子の王皓vs.王励勤と同様、横浜大会女子シングルス決勝の再現となるカード、張怡寧vs.郭躍が実現。男子では王励勤がリベンジを果たしたが、女子でも郭躍が張怡寧に勝利。しかも3-0のストレートで完勝した。
 遼寧鞍鋼の谷振江監督によると、郭躍は連戦での疲労やプレッシャーなどから、試合前に吐くほど体調が悪かったとのこと。「郭躍の精神力の強さは本当に大したものだ。(張怡寧戦では)戦術的には大きな変更はなかった。勝因は最後まで攻め抜いた精神力にある」(谷振江監督)。5番でも07年世界ジュニア優勝の楊楊が貴重な勝利を挙げた。逆に北京時博国際は課題であったダブルスで勝利しながら、3番手の彭雪が踏ん張り切れず、第1節に続いて2-3での敗戦。なかなか勢いに乗っていけない。

 その他の試合では、広東珠江怡景湾が優勝候補の山東魯能・路安集団を3-2で破る金星を挙げ、開幕から3連勝。エース劉詩ウェンは4番で李暁霞に完敗したが、ラストで左シェークドライブ型の蔡賽が左ペンドライブ型の李楠と大激戦。最終ゲームの出足で6-0と突き放して決着をつけた。もうひとつの3連勝チーム、冀中能源・北大方正は予想外(?)の好スタート。白楊と牛剣鋒のダブルスが存在感を見せており、ラストに控える白楊も、相手チームの3番手に対してはまだまだ強い。次節で広東珠江怡景湾と冀中能源・北大方正が直接対決。チーム力はほぼ互角、好勝負が期待できそうだ。

 まだ勝ち星を挙げられないのは、八一長安医院、重慶康徳、大同雲崗・雁北賓館の3チーム。重慶康徳はエース金キョン娥が2試合ともストレートで敗れ、試合後の記者会見に出席せず。試合の前々日に内蒙古自治区の烏海市から重慶市へ約1,100kmの大移動というハードスケジュールだが、やはり白星が最大の栄養か。

Photo上:張怡寧をストレートで破った郭躍
Photo下:エース劉詩ウェンを支える周芳芳(左)と蔡賽。写真は06年シーズン、福原愛がエースとして参戦した広東佐川急便時のもの
★★★ 2009中国卓球クラブ超級リーグ 男子第3節 5.30 ★★★

[上海明園-金海洋集団 3-0 八一工商銀行]
○許シン 4、-7、7、-4、5 李陟
○王励勤 7、7、-3、8 王皓
○王励勤/高礼澤 6、6、-5、8 楊暁夫/徐克

[浙商銀行 3-1 四川全興]
○馬琳 8、9、10 邱貽可
○朱世赫 -9、5、8、-7、9 ハオ帥
 馬琳/張超 10、-8、-7、-11 ハオ帥/王建軍○
○朱世赫 -1、9、-5、10、7 邱貽可

[寧波北侖海天 3-1 山東魯能中超電纜]
○馬龍 6、14、6 方博
 唐鵬 -8、-7、-7 張継科○
○呉ハオ/崔慶磊 5、9、9 柳洋/朱舟
○馬龍 7、-10、9、-7、4 張継科

[江蘇英太青・南体 3-0 海寧皮革城鵬翔]
○林晨 7、7、-10、8 侯英超
○陳杞 5、9、7 李平
○林晨/朱江 -5、-11、2、8、11 李平/宋時超

[錦州銀行 3-1 覇州海潤]
○雷振華 -9、5、6、11 閻安
○徐輝 5、-10、5、7 ガオ・ニン
 徐輝/ジャイ一鳴 -11、-6、2、-7 閻安/尚坤○
○雷振華 9、8、3 ガオ・ニン

 09超級男子第3節の結果は上記のとおりとなった。
 上海明園-金海洋集団と八一工商銀行の対戦は、エース王励勤が王皓を下した上海明園-金海洋集団に軍配。王皓が4-0で勝利した横浜大会決勝を含め、ここ数年は対戦成績でも王皓が圧倒していただけに意外な結果。敗れた王皓は「最近はちょっと試合が多すぎる。僕もマシンじゃないからね…。古傷の右肘にも少し影響があって、あまり良いプレーができていない」とコメント。確かに王皓は横浜大会から帰国後、休む間もなく全中国運動会予選、アジアカップ、超級リーグと連戦を続けてきた。超級リーグは移動距離が長いため、疲労の蓄積に拍車がかかるのだろう。
 6月3~7日に行われるフォルクスワーゲン中国オープンには、王皓と張怡寧は欠場することが決定。また、6月8~9日に上海で行われる「中国vs.世界選抜」でも、王皓は馬琳とともに欠場。王励勤と許シンの代替出場が決まっている。

 寧波北侖海天は、馬龍が同世代のライバル・張継科との競り合いを制して3連勝。馬龍は今シーズンも4勝0敗と順調に勝ち星を伸ばしている。劉国棟監督も「馬龍は昨シーズンよりもプレーヤーとして成熟しているし、ダブルスを組んだ若手ふたりのプレーも良かった。チームの状態は非常に良い」とご満悦。第5節からはドイツ・ブンデスリーガのオクセンハオゼンで活躍した荘智淵(チャイニーズタイペイ)がチームに加入。呉尚垠(韓国)が負傷で欠場した昨シーズン準決勝の反省から、「外援(助っ人外国人)」もツートップで優勝を狙う構えだ。

 その他の試合では、浙商銀行の朱世赫(韓国)が四川全興のハオ帥と邱貽可を下し、2連勝で上々のデビュー。四川全興はエース・ハオ帥の不調が響いて3連敗となり、プレーオフ進出にも暗雲が立ちこめている。海寧皮革城鵬翔、覇州海潤も3連敗。早く初勝利を挙げたいところだ。超級リーグは中国オープン開催のため、第4節は6月10日(水)に行われる。

Photo上:ちょっとお疲れの王皓。絶対的エースとしてのプレッシャーも大きいだろう
Photo下:シングルスでの2得点で、ダブルスが敗れたチームを救った朱世赫。今、対中国選手では最も強い男か
 中国では、受信できるテレビのチャンネル数が日本よりもずっと多い。国営のテレビ局である中国中央電視台(CCTV)には経済・芸術・スポーツなど、アナログ・デジタルあわせて40あまりのチャンネルがあるほか、地方のテレビ局のチャンネルも衛星放送の導入によって中国全土で受信できるようになり、激しい視聴率争いが繰り広げられている。

 4月28日~5月5日に行われた世界選手権横浜大会の模様は、中国ではCCTV-5(中国中央電視台のスポーツチャンネル)で生中継された。会場の横浜アリーナには多くの中国応援団が詰めかけ、さながら全中国選手権の様相を呈していたのだが、中国国内での注目度は非常に低かったようだ。CCTV-5での男女シングルス決勝の視聴率は、なんと0.5%にも満たなかったという。
 少し古いニュースになってしまうが、これは先日行われた2009中国卓球クラブ超級リーグの開幕式典で、CCTVのスポーツ番組制作部門の主任である江和平氏が明らかにしたもの。世界選手権の中継での最高視聴率も1%前後に留まっている。これまで世界選手権の中継なら最高視聴率は5%、07年ザグレブ大会の国内予選会「直通薩格勒布(直通ザグレブ)」でも3%を記録しており、最高1%というのはショッキングな数字に違いない。「強すぎる中国」であるがゆえに、ファンの卓球離れに歯止めがきかないのか。

 …もっとも、先週にはCCTVの関係者による「CCTVのスポーツ放送の中で、最も視聴率が見込めるのは卓球」というコメントが成都商報などで報道された。超級リーグの試合も、男女とも5試合のうち3~4試合は各地方のテレビ局で放送され、CCTVによる生中継も各節に必ず1試合ある。日本に比べれば卓球選手や卓球の試合を目にする機会もずっと多い。根強い卓球人気ではあるが、「今のうちに次の一手を」というのが中国卓球協会の思惑だろう。
 6月8~9日、中国では「中国vs世界選抜」が上海で行われる。中国は男女とも世界ランキング1~3位(男子:王皓・馬龍・馬琳/女子:張怡寧・郭躍・李暁霞)を揃えた。一方の世界選抜は男子がサムソノフ(ベラルーシ)、朱世赫(韓国)、松平健太(日本)、女子が馮天薇(シンガポール)、金キョン娥(韓国)、ドデアン(ルーマニア)。男子でボル(ドイツ)の不出場は残念だが、馬琳vs.松平健太の再戦や、毎回好勝負を展開する馮天薇vs.張怡寧などが実現すれば興味深い。CCTVで生中継されるこの一戦が、どれだけ視聴率を稼げるかも注目したい。

Photo上・下:選手入場には格闘技顔負けの演出が成され、大いに盛り上がった男女シングルス決勝だったが…
☆☆☆ 2009中国卓球クラブ超級リーグ・女子第2節 5.27 ☆☆☆

[山東魯能・路安集団 3-1 重慶康徳]
 彭陸洋 -4、-8、-1 金キョン娥○
○李暁霞 -10、3、-10、9、10 賈君
○彭陸洋/李楠 -12、10、6、-6、8 麦楽楽/李茜
○李暁霞 9、-6、7、3 金キョン娥

[北京時博国際 3-1 八一長安医院]
○丁寧 -9、8、8、6 曹臻
○張怡寧 -9、8、9、-5、3 文佳
 丁寧/彭雪 -8、-9、-3 文佳/木子○
○張怡寧 1、8、9 曹臻

[広東珠江怡景湾 3-1 大同雲崗・雁北賓館]
 曹幸ニィ -8、-7、-8 武楊○
○劉詩ウェン 7、6、-3、4 馮亜蘭
○周芳芳/蔡賽 5、5、7 李佳/馮亜蘭
○劉詩ウェン -8、7、3、4 武楊

[遼寧鞍鋼 3-1 江蘇中超電纜]
 常晨晨 -12、-9、-6 范瑛○
○郭躍 8、-7、14、-8、5 姚彦
○常晨晨/侯曉旭 4、5、-9、9 張瀟玉/王シュアン
○郭躍 4、10、10 范瑛

[冀中能源-北大方正 3-1 山西大土河華東理工]
○馮天薇 6、8、8 饒静文
 牛剣鋒 6、9、-7、-7、-5 郭炎○
○白楊/牛剣鋒 6、2、8 饒静文/劉娟
○馮天薇 9、-10、8、3 郭炎

 超級リーグ女子第2節が終了。4チームが2連勝、4チームが2連敗と明暗が分かれる形になった。
 開幕戦で敗れ、チームも黒星を喫した張怡寧は、八一長安医院から2点を奪取。左シェークドライブ型の文佳(08年全中国チャンピオン)にゲームオールと苦戦したが、4番では八一のエース曹臻を完璧に封じた。「私たちのチームは3番手の実力が落ちるので、5番まで回るとかなり不利になる。(4番の)曹臻との試合はこれがラストだと思って戦いました。曹臻との試合ではいつもどおりのプレーができたし、チームの気迫も相手よりまさっていました」(張怡寧/出典「新浪体育」)。今シーズンの初勝利を挙げた北京時博国際だが、ダブルスという弱点がある限り、張怡寧は常に2点取りのプレッシャーを受け続けるだろう。

 開幕から2連勝したのは、山東魯能・路安集団、広東珠江怡景湾、遼寧鞍鋼、冀中能源-北大方正の4チーム。共通しているのは、どのチームにも絶対的なエースがいること。李暁霞(山東)と劉詩ウェン(広東)はシングルスで4連勝し、郭躍(遼寧/3勝0敗)と馮天薇(冀中/3勝1敗)もエースの重責を果たしている。劉詩ウェンは大同雲崗・雁北賓館戦の2番、馮亜蘭戦の第2ゲームで0-6から11-6と11点連取の離れ業を演じ、横浜大会後もその勢いに衰えは見られない。馮天薇は昨シーズン4勝6敗と低迷したが、今シーズンは出足から好調。チームも白楊/牛剣鋒のダブルスが健在で、今シーズンのダークホースになるか。
 開幕2連敗の4チームも、強豪チームを相手にあと一歩という戦いが続いている。重慶康徳は山東魯能・路安集団を追いつめ、エース金キョン娥がシングルスで今季初勝利。試合が行われた内蒙古自治区・烏海市では、体育館内の温度が32℃近くまで上がる中、前日にもハードな練習を行ったと伝えられている。他のチームにとっても、なかなか油断のならない存在だ。

 続く超級リーグ女子第3節では、北京時博国際と遼寧鞍鋼が対戦。両チームのエースである張怡寧と郭躍が激突する!

Photo上:昨年のプロツアーファイナルで敗れている金キョン娥を下した李暁霞
Photo下:好調の馮天薇、この勢いはどこまで続くか