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中国リポート

トップニュース中国リポート
2008中国超級リーグ
★男子第2ステージ準決勝・第2戦
[浙商銀行 3-0 魯能中超電纜]
○水谷 7、-9、-9、8、5 張継科
○馬琳 4、-7、10、5 唐鵬
○水谷/張超 9、-6、9、10 唐鵬/柳洋

[寧波北侖海天 3-1 上海冠生園]
○馬龍 7、8、6 高礼澤
 呉ハオ -12、-6、-3 王励勤○
○崔慶磊/呉ハオ -8、8、8、2 許シン/張洋
○馬龍 -6、7、10、6 王励勤

★男子第2ステージ準決勝・第3戦
[上海冠生園 3-2 寧波北侖海天]
○高礼澤 -8、7、8、4 呉ハオ
 王励勤 -3、12、-5、-6 馬龍○
○王励勤/許シン 12、-8、6、6 呉ハオ/崔慶磊
 高礼澤 -3、-8、-9 馬龍○
○許シン 5、5、-12、-9、7 崔慶磊


 浙商銀行の水谷隼(明治大・スヴェンソン)は、準決勝第2戦のトップに起用され、第1戦に続き相手チームのエースである張継科と対戦。
 第1戦では張継科のラケットが試合前のラケットコントロールで違反になり、張継科はチームメイトのラケットを借りて出場した。そしてこの第2戦でも、張継科のラケットは再びラケットコントロールで違反となった。2回連続で違反になるというのは、どうにも理解に苦しむ。第1戦では柳洋、第2戦ではベテラン郭刻歴のラケットを借りて出場したが、やはり要所でのミスが目立ち、ゲームオールでの敗戦となった。

 「チームの若い選手たちはラケットやラバーに大してあまり敏感ではなく、『なんとかなるだろう』と思っている。逆に、馬琳のような経験豊富な選手たちは、用具に対しても非常に神経を使っている。」とは魯能中超電纜の谷青成監督の言葉。「ラケットに問題がなければ、張継科の実力から言って水谷はさほど問題のない相手だった(コメント出典:いずれも華奥星空)」ともコメントしているが、それなら選手たちにもっと指導すべきだと思うのだが…。結果的にこのトップ水谷の勝利で魯能中超電纜は戦意喪失、浙商銀行がストレート勝ちで決勝進出を決めた。
 今シーズン超級初参戦の水谷隼、ラケット問題でややすっきりしない勝利になってしまったが、今最も勢いに乗っている相手だけに価値がある。準決勝2試合で単複3点を叩き出し、チームの決勝進出に大きく貢献。ここまでの通算成績はシングルス3勝5敗、ダブルス5勝2敗だ。

 準決勝のもうひと試合、上海冠生園vs.寧波北侖海天は、第2戦を終えた時点で1-1のタイとなり、第3戦へともつれ込んだ。ここで上海冠生園は、絶対的なエースである王励勤をダブルスに起用する必殺のオーダーを組む。許シンとの全中国選手権優勝ペアはダブルスで確実に1点を挙げ、結局上海冠生園が総力戦を制して決勝進出を決めた。
 敗れた寧波北侖海天のエース馬龍は、準決勝3試合で6勝0敗、しかも王励勤に3連勝。第3戦の上海冠生園のオーダーは、いわば「馬龍に2点取られるのは覚悟の上」というオーダーだ。20歳になったばかりの若武者は、すでにどのチームからも恐れられる存在になっている。
 2008中国超級リーグ、男子決勝の対戦カードは浙商銀行vs.上海冠生園。第1ステージ第6節では、上海冠生園がやはり王励勤をダブルスに起用し、3-0のストレートで浙商銀行に完勝している。水谷、シングルスでの活躍にも期待したいが、まずは張超とのダブルスに必勝を期す。

Photo上:張継科、不可解なラケット失格でエースの重責を果たせず
Photo下:チームは敗れたが、手のつけられない強さを見せた馬龍
☆女子第2ステージ準決勝
●第1戦
[魯能・路安集団 3-1 山西大土河華東理工]
 彭陸洋 9、-5、11、-8、-9 郭炎○
○李暁霞 10、7、6 劉娟
○彭陸洋/李楠 7、9、-9、9 饒静文/劉娟
○李暁霞 -8、2、3、8 郭炎
●第2戦
[魯能・路安集団 3-2 山西大土河華東理工]
 馮天薇 -9、9、4、-8、-9 郭炎○
○李暁霞 -8、7、-8、10、4 帖雅娜
○彭陸洋/李楠 9、6、-10、11 饒静文/劉娟
 李暁霞 -9、4、-9、-9 郭炎○
○彭陸洋 5、9、6 饒静文

☆女子第2ステージ準決勝
●第1戦
[遼寧鞍鋼 3-2 八一工商銀行]
○郭躍 -3、-12、14、6、9 木子
 唐イェ序 -1、-5、-4 曹臻○
 唐イェ序/常晨晨 -10、-6、8、11、-7 木子/文佳○
○郭躍 5、4、9 曹臻
○常晨晨 4、6、-10、11 文佳
●第2戦
[遼寧鞍鋼 3-1 八一工商銀行]
 唐イェ序 -7、7、-6、9、-2 曹臻○
○郭躍 9、4、9 木子
○唐イェ序/常晨晨 -7、10、-6、13、10 木子/文佳
○郭躍 9、4、2 曹臻

 2008中国超級リーグ第2ステージ、女子準決勝の結果は以下のとおり。第2戦が終了した時点で1-1となった場合は第3戦で勝敗を決定するが、女子準決勝はいずれも2試合で決着がついた。水谷隼(スヴェンソン・明治大)が出場した男子準決勝第2戦もすでに終了しているので、後ほどお伝えします。

 さて、まずは女子準決勝。魯能・路安集団vs山西大土河華東理工は、山西のエース郭炎が2試合で3得点を挙げ、第2戦では李暁霞を破るなど孤軍奮闘したが、2試合ともダブルスを制した魯能・路安集団に軍配。長身でパワーのある右シェークドライブ型・彭陸洋と、技巧派サウスポーのペンドライブ型・李楠のコンビネーションがものを言った。決勝進出を決め、3シーズンぶりの優勝に王手をかけた魯能・路安集団。05年シーズンのメンバーは李暁霞と彭陸洋、姜華君(現:大同雲崗・雁北賓館)、そして日本リーグでのプレーでおなじみの李佳(日本生命)だった。李佳は甲Aリーグの重慶康徳でもプレーしている。
 魯能・路安集団にとって不安材料なのは、シンガポールから参戦している馮天薇の不振。08年12月発表の世界ランキングでは自己最高位の6位となった馮天薇だが、これまでシングルス2勝4敗と首脳陣の期待に応えられていない。馮が絶大な信頼を寄せるシンガポールの劉国棟総監督が退任を示唆していることも、プレーに影響しているのか。内容的には惜しい試合が続いているだけに、決勝ではチームの勝利に貢献したい。

 準決勝のもうひと試合は、エース郭躍が4戦4勝と実力を発揮した遼寧鞍鋼が、若手の八一工商銀行に勝利。第1戦のラストでは、常晨晨が全中国選手権で優勝した文佳を下し、勝利を決めた。常晨晨はこれでシングルス5勝0敗と貴重な働きを見せている。今シーズン、ダークホース的な活躍の八一工商銀行はここで進撃ストップ。若手主体のチームだけに、来季以降も優勝戦線に絡んできそうだ。
 「中国の卓球王国」と言っても過言ではない遼寧省にあって、毎シーズン優勝候補に挙げられながら、なかなか優勝できない遼寧鞍鋼。前回の優勝は1997年までさかのぼる。当時はまだ「中国卓球クラブリーグ」という名称で、全チームがひとつの都市に集合し、集中的に試合を消化するスタイルだった。「甲級リーグ」から「超級リーグ」へとリーグが進化していく中で、女王・王楠をエースに何度も優勝に手をかけ、そして逃してきた遼寧鞍鋼。王楠が引退し、チーム力がダウンした今季に優勝のチャンスが巡ってくるというのも、ひとつの巡り合わせか。
 超級リーグ女子決勝は12月16日に第1戦が行われる。
 
Photo上:ちょっと古い写真ですが…。遼寧サウスポー軍団の一角、常晨晨
Photo下:王楠が引退し、遼寧サウスポー軍団のリーダーとなった郭躍
★男子第2ステージ準決勝・第1戦
[浙商銀行 3-1 魯能中超電纜]
○馬琳 8、5、10 唐鵬
○水谷隼 9、10、-4、-4、9 張継科
 水谷/張超 6、-10、6、-10、2 柳洋/唐鵬○
○馬琳 9、-5、8、6 張継科

[上海冠生園 3-2 寧波北侖海天]
○王励勤 9、9、9 呉ハオ
 高礼澤 -4、-2、-7 馬龍○
○許シン/張洋 8、-8、-10、11、6 呉ハオ/崔慶磊
 王励勤 8、-3、-9、-4 馬龍○
○許シン 8、-12、-4、8、7 崔慶磊

 浙商銀行の水谷隼が、11月の全中国選手権で優勝したばかりの張継科にゲームオールで勝利! 超級リーグのシングルス2勝目は、相手チームのエースから金星を奪う価値ある勝利となった。
 トップ馬琳がシェーク異質速攻型の唐鵬に完勝し、続いて2番に登場した水谷隼。やや動きの鈍い張継科に対し、出足から積極的な攻撃を見せ、2ゲームを先取する。張継科も次第に調子を上げ、第3・4ゲームは攻撃力で圧倒して2-2のタイとするが、最終ゲームは終盤で水谷がポイントを連取して勝負あり。この一戦が試合の流れを決定づけ、浙商銀行はダブルスを接戦の末に落としたものの、4番で馬琳が張継科を下して3-1で勝利。決勝進出に大きく前進した。

 水谷vs.張継科の試合にはひとつの伏線がある。試合後、魯能中超電纜の谷青成監督が、ラケットコントロールで張継科のラケットが不合格となり、チームメイトからラケットを借りて試合に臨んだことを明らかにしたのだ。どのような違反で不合格になったのかは明らかではないが、補助剤の使用によって厚さがオーバーしたか、平坦性が失われたのではないか。国際卓球連盟によるラケットに問題を抱えた状態では、中陣から変化をつけて粘る水谷のプレースタイルは相当戦いづらかっただろう。

 男子第2ステージのもうひと試合は、第1ステージをトップで通過した上海冠生園と寧波北侖海天の対戦。上海冠生園は、トップでエース王励勤が全中国選手権団体戦で敗れている呉ハオをストレートで撃破。そして18歳の許シンが勝負の要(かなめ)となるダブルスとラストで勝利し、チームを勝利へと導いた。
 王励勤はすでに馬龍に対しては、かなり分が悪くなっている。今シーズンの超級リーグで圧倒的な勝率を誇る馬龍。両ハンドドライブに抜群の威力と安定性を誇るこの俊英に対して、王励勤のみならず、王皓や馬琳も容易には勝てなくなっているのだ。それだけに、寧波北侖海天に対しては残る3点を確実に取りに行く戦い方がベター。準決勝第2戦では、上海冠生園は王励勤をダブルスに起用してくる可能性もありそうだ。

Photo上:チームの勝利を決定づけた水谷隼(写真は08年北京五輪)
Photo下:張継科、ラケットの不備で2失点。若きエースは重責を果たせず…(写真は08年荻村杯)
 昨日6日にスペイン・マドリードで開幕した第6回世界ジュニア選手権。中国は男女とも国家2軍チームのジュニア選手を派遣してきた。大会によっては北京市チームがそのまま世界ジュニア代表になる(第3回リンツ大会)など、かなりメンバーを落としてくることもある中国。今大会のメンバーはトップクラスとは言えないまでも、ある程度のメンバーは出てきている。
 今回のメンバーでは、女子の陳夢に注目。非常に体格が良く、パワーあふれる両ハンドドライブを連発するスタイルは、完全にジュニアレベルを超えている。将来の世界チャンピオン候補と見た。それでは、今回の中国のメンバーを簡単にご紹介します。

★★★ 中国男子 ★★★

閻安 YAN AN(イェン・アン) 
WR239/U-18WR9/U-15WR1
■北京市チーム
・07年世界ジュニアベスト8・複優勝
・08年アジアジュニア選手権3位・複優勝

方博 FANG Bo(ファン・ボォ) 
WR410/U-18WR28
■山東省チーム(山東魯能)
・08年アジアジュニア選手権複2位
※11月の全中国選手権団体決勝2番で王皓に敗れる(-4、-5、9、-11 王皓)

宋鴻遠 SONG Hongyuan(ソン・ホンユエン) 
■山東省チーム(山東魯能)
WR256/U-18WR10/U-15WR2
・07年アジアジュニア選手権カデット2位
・08年アジアジュニア選手権2位・複優勝

程靖淇 CHENG Jingqi(チェン・ジンチィ) 
U-18WR72・U-15WR10
■河北省チーム
・08年アジアジュニア選手権複2位

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☆☆☆ 中国女子 ☆☆☆

曹麗思 CAO Lisi(ツァオ・リィス) 
WR112/U-18WR7
■北京市チーム(出身は遼寧省)
・05年世界ジュニア選手権混合複ベスト8
・08年アジアジュニア選手権2位・複2位
※郭躍や李暁霞、王越古らと同じ遼寧省鞍山市の出身。右シェークフォア表ソフトの異質速攻型


陳夢 CHEN Meng(チェン・ムン) 
■山東省チーム(山東魯能)
WR239/U-18WR21・U-15WR4
・08年アジアジュニア選手権カデット優勝
※公称14歳、08全中国選手権団体決勝でも郭炎と接戦を演じ、将来を期待される大器。

王大琴 WANG Daqin
■上海市チーム
・08年アジアジュニア選手権複優勝

熊欣芸 XIONG Xinyun
■広西チュアン族自治区(旧:広西省)
・2002東アジアグランプリ代表(劉詩ウェンが優勝した大会)
※謝賽克、偉関晴光らを輩出した広西チュアン族自治区から、久々に国家チームに招集された選手

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 ちなみに男子メンバーのうち、程靖淇を除く3名は、08年4月にエキシビションマッチとして王楠・郭躍・李暁霞の国家女子1軍チームと団体戦で対戦している。当時はまだスピードグルーを使用できたため、あまり参考にならない結果だが、スコアは下記のとおりだった。

[国家男子二軍隊 3-1 国家女子一軍隊]
○閻安  3-2  王楠
○方博  3-1  郭躍
 宋鴻遠 1-3  李暁霞○
○方博  3-0  王楠

Photo:2大会連続出場の閻安。前回大会はベスト8止まりだったが、今大会には必勝を期して臨むだろう
〈女子シングルス〉
●3回戦
李暁丹(山西省) 4-3 常晨晨(遼寧省)
●4回戦
郭炎(北京市) 4-1 饒静文(湖北省)
劉詩ウェン(広東省) 4-1 木子(八一解放軍)
文佳(八一解放軍) 4-3 丁寧(北京市)
郭躍(遼寧省) 4-0 武楊(山西省)
●準々決勝
曹臻(八一解放軍) キケン 李暁霞(山東省)
郭炎 W/L 姚彦(上海市)
劉詩ウェン W/L 彭陸洋(山東省)
文佳 4-0 郭躍 
●準決勝
曹臻 4-2 郭炎
文佳 4-3 劉詩ウェン 
●決勝
文佳(八一解放軍) -7、8、7、9、-7、5 曹臻(八一解放軍)

 女子シングルス優勝は、なんと18歳の左シェークドライブ型、文佳(ウェン・ジァ)。準々決勝で現世界チャンピオンの郭躍を4-0で完封、続く準決勝でも昨年度チャンピオンの劉詩ウェンをゲームオール9本で下し、決勝では八一解放軍チームの先輩である曹臻を破って初の全国タイトルを獲得した。間違いなく今年度の全中国選手権で最大の番狂わせだ。

 文佳の勝因のひとつは、7種目を1週間で強行する全中国選手権のタイトなスケジュールにあるようだ。女子シングルスの優勝候補筆頭と見られた李暁霞は、3回戦から曹幸ニィ(広東省)に4-3と苦戦するなど、本調子とは言えない状態。準決勝で敗れた郭炎も、それまでの3種目すべてで決勝進出を果たし、疲労がピークに達していたようだ。そして準々決勝で敗れた郭躍は、北京五輪が終わってから女子ワールドカップにパナソニック中国オープン、1カ月間の超級リーグとほとんど休みのない状態。個人戦5種目で、五輪代表が獲得したタイトルが王励勤の男子ダブルス1つだけというのも、仕方ないことかもしれない。
 
 文佳は1990年2月28日生まれ。現在の所属は八一解放軍だが、出身は遼寧省。遼寧省チームでは、北京五輪で福原愛(ANA)と対戦したフー・メレクや、シンガポール女子チームのユー・モンユーらと同世代。06・07年の世界ジュニア選手権で2大会連続の準優勝、同じく06・07年のアジアジュニア選手権でも2位と3位で、同世代の中ではタイトルに恵まれていない。その代わり、上記の4大会でダブルスはすべて優勝している。
 早くから頭角を現しながら、ここ2、3年は伸び悩んでいる印象があり、昨年の世界ジュニア選手権団体戦では石垣優香(現淑徳大)にも完敗している。それがいきなり全中国選手権を制したのだから、本人にとっては相当な自信になりそうだ。ちなみにこの文佳、柔らかいフォームとブロックのうまさ、そして同じサウスポーであることから、中国では「小王楠」と呼ばれることもある。フォームもよく似ているのだ。初代を超えるのは相当大変なことだが、来年の世界選手権横浜大会への出場が当面の目標か。

Photo:王楠(上)と文佳(下)。フォーム、結構似てます
〈男子シングルス〉
●2回戦
王皓(八一解放軍) 4-3 陳浩(新彊ウイグル自治区)
●3回戦
王皓 4-2 張超(広東省)
陳杞(江蘇省) 4-3 許シン(上海市)
ハオ帥(天津市) 4-2 雷振華(八一解放軍)
馬龍(北京市) 4-1 朱江(江蘇省)
●準々決勝
王皓(八一解放軍) 4-3 陳杞(江蘇省)
馬龍(北京市) 4-0 ハオ帥(天津市)
王励勤(上海市) 4-2 朱舟(新彊ウイグル自治区)
張継科(八一解放軍) 4-1 馬琳(広東省)
●準決勝
張継科 11、9、-8、8、6 王励勤
王皓 12、-8、11、-7、6、8 馬龍
●決勝
張継科 5、11、-10、-10、-7、6、9 王皓

 2008全中国チャンピオンの称号は、なんと弱冠20歳の張継科が獲得! 準々決勝で馬琳、準決勝で王励勤、決勝で王皓と北京五輪代表の
3選手を総ナメにしての優勝は、五輪代表メンバーが調子が上がっていないとはいえ、相当にセンセーショナルな結果だ。
 準々決勝で北京五輪金メダリストの馬琳に完勝した張継科は、準決勝で王励勤と対戦。第1ゲームで終始リードを許しながら11-11に追いつき、このゲームを奪うと、第2ゲームも最後は幸運なネットインで11-9で奪取。第3ゲームは落としたが、第4ゲーム8-8から3点連取、第5ゲーム6-6から5点連取と終盤に強さを見せて決勝進出を果たした。
 決勝の対戦相手は、昨年の全中国チャンピオン・王皓。準決勝での馬龍との激戦で消耗し、出足は勢いに乗る張継科のペース。しかし、王皓も第3ゲームをデュースで制して自信を取り戻し、3ゲーム連取で一気に逆転する。第6ゲーム王皓3-0のリードで、張継科がタイムアウト。これで息を吹き返したか、このゲームを11-6で奪い返す。
 男子シングルス決勝、運命の最終ゲームは、まったくポイントが離れないシーソーゲーム。ついに9-9となったところで、10-9と張継科がチャンピオンシップポイントを握る。ここでも強気で攻める張継科、最後はドライブの打ち合いから王皓のボールがオーバーし、張継科が初の全国タイトルを獲得した。

 張継科(チャン・ジィカ)は1988年2月16日生まれ、「青島ビール」で有名な山東省青島市出身。父親も元卓球のプロ選手だったが、サッカーが大好きで、息子にもサッカーをさせようと考えていた。しかし、1993年のサッカー・W杯アメリカ大会予選で、中国は予選リーグで惨敗。「中国サッカーに未来なし」と考えた父親が、5歳の張継科に卓球を始めさせたのだという。父親の厳しい指導もあって、張継科は早くからその才能を買われ、12歳で山東魯能のプロチーム、14歳で国家2軍チーム、そして15歳で国家1軍チーム入り。これは異例のスピードだ。
 ところが2003年、国家チームの規則に違反したとして、張継科は山東省チームに戻される。当時のライバルだった馬龍が次第に頭角を現す中、2006年にようやく国家チームに復帰。2007年の世界選手権ザグレブ大会では、姚彦との混合ダブルスで初の世界代表入りを果たすが、ズース/シャール(ドイツ)に敗れ、この大会で中国勢唯一の黒星を献上している。今年5月のフォルクスワーゲンオープン荻村杯でも、プリモラッツ(クロアチア)に完勝しながら、蒋澎龍(チャイニーズタイペイ)戦で再三サービスのフォルトを取られ、ナーバスになって敗退。メンタルに課題を残したが、全中国選手権での優勝は大きな自信になりそう。今後は同世代の馬龍や許シンとともに、中国男子を引っ張っていく存在になれるのか。

 なお、この張継科の継科という名前には、なんとも面白いエピソードがある。父親が大のサッカーファンだったことは先に述べたが、実は彼の名前は、ひとりの伝説的なサッカー選手の名前にちなんでつけられたのだ。ブラジルが生んだ偉大な英雄、サッカーの神様、元サッカー日本代表チーム監督…。「継科(ジィカ)」はあの「ジーコ」の音訳なのです。

Photo:08年荻村杯での張継科。身体能力は相当高い
〈女子ダブルス〉
●2回戦
林紅/肖萌(内蒙古自治区) 3-1 李暁霞/彭陸洋(山東省)
●3回戦
張瀟玉/王シュアン(黒龍江省) 3-2 郭躍/楊揚(遼寧省)
木子/文佳(八一解放軍) 3-1 劉娟/饒静文(湖北省)
●準々決勝
牛剣鋒/白楊(河北省) 3-1 林紅/肖萌
劉詩ウェン/麦楽楽(広東省) 3-0 李暁丹/楊飛飛(山西省)
張瀟玉/王シュアン 3-0 胡潔/陳頴(福建省)
郭炎/丁寧(北京市) 3-1 木子/文佳
●準決勝
牛剣鋒/白楊 4-2 劉詩ウェン/麦楽楽
郭炎/丁寧 4-2 張瀟玉/王シュアン
●決勝
郭炎/丁寧 7、-8、-8、8、8、8 牛剣鋒/白楊

 優勝候補筆頭と見られた李暁霞/彭陸洋が、初戦となる2回戦で姿を消す波乱。昨シーズンの超級リーグで、12勝4敗で最多勝を獲得した郭炎/丁寧ペアが優勝、11勝5敗の牛剣鋒/白楊が準優勝と底力を見せた。
 優勝した郭炎/丁寧ペアは北京市チームのチームメイトではあるが、今シーズンの超級リーグでは郭炎が山西大土河華東理工に移籍。強力な得点源を失った北京時博国際は、超級リーグ・プレーオフの準決勝に進出することができなかった。しかし、ふたりがコンビネーションを取り戻すのに、それほど時間はかからなかったようだ。「郭躍がチームを移籍して、大会直前になってやっとダブルスの練習ができた。最初のうちは少し違和感もありましたが、プレーするに従ってコンビネーションが良くなり、以前の感覚が戻ってきました」(丁寧/出典『新浪体育』)。今大会での優勝はあくまでもひとつのステップ。来年10月の全中国運動会が真の目標になる。

 牛剣鋒/白楊ペアの準優勝は、低迷が続く河北省チームにとって久々に明るいニュース。長くダブルスを組む名コンビだが、全中国選手権での決勝進出は初めて。所属する冀中能源は超級リーグ第1ステージで最下位と低迷したが、第2ステージでの巻き返しに期待したい。「今回対戦したペアとは、全中国運動会でも当たる可能性がある。私たちにとっては良い自信になりました」(牛剣鋒)。「超級リーグではずっと調子が良くなかった。牛剣鋒とのペアで決勝まで来たのは初めてだし、決勝でもあれだけのプレーができたことには満足しています」(白楊/ともに出典『石家庄日報』)。すでに国家チームを引退している両選手、こちらは全中国運動会が最後の舞台になりそうだ。

Photo上:豪打の郭炎、団体と女子複は優勝、混合複は準優勝。3種目で決勝進出の大活躍
Photo下:06年フォルクスワーゲンオープン荻村杯。郭炎/丁寧は女子複1回戦で、福原愛/藤沼亜衣ペアに完敗した。丁寧はシングルスでも福岡春菜に敗れたが、来年の横浜大会では成長した姿を見せてくれそうだ
〈男子ダブルス〉
●準々決勝
ジャン健/朱文韜(湖北省) 3-1 王皓/張継科(八一解放軍)
王励勤/許シン(上海市) 3-1 陳杞/單明杰(江蘇省)
馬龍/張括(北京市) 3-1 陳剣/宋時超(浙江省)
馬琳/張超(広東省) 3-1 ハオ帥/李平(天津市)
●準決勝
馬琳/張超 4-3 馬龍/張括
王励勤/許シン 4-3 ジャン健/朱文韜
●決勝
王励勤/許シン 7、6、12、-5、8 馬琳/張超

 男子ダブルスで優勝したのは、上海市の王励勤/許シン(日+斤)。王励勤は05年全中国運動会で若手の劉杉とペアを組み、馬琳/張超を破って優勝しているが、今大会でも王励勤ペアに軍配が上がった。新パートナーである左ペンドライブ型の許シンは、最近プロツアーなどでも上位に入ってくるので、ご存知の方も多いのではないだろうか。出身地である江蘇省徐州市で6歳で卓球を始め、早くから天才少年の呼び声高く、上海市の曹燕華卓球学校で腕を磨いた選手だ。2006年2月に16歳で国家2軍チーム入り、その8カ月後には1軍チームに昇格し、現在は1軍チームの重点強化選手に選ばれているから、相当将来を期待されているのだろう。今年9月のパナソニック中国オープンでは3位に入り、今回ペアを組んだ大先輩・王励勤をも破っている。

 王励勤と左ペンドライブ型のペアということで、中国国内では「王励勤/閻森(00年シドニー五輪複優勝)ペアの再来」との声もあるようだが、抜群のボールセンスでシャープなフォアドライブと裏面ドライブを駆使した閻森に比べると、許シンのプレーは「センス溢れる」という感じではない。バックは裏面ドライブだけでなくショートも使うが、最大の武器は懐の深さを生かしたフォアドライブ連打。長身だけにどこからでも入ってくる。閻森が引退したあと、固定されたパートナーがいなかった王励勤だが、許シンとの新ペア結成は成るのか。

Photo上:馬琳、王皓の後継者になれるのか。1990年1月8日生まれ、「90後」世代の許シン
★2008全中国卓球選手権
〈混合ダブルス〉
●1回戦
余世欽/羅ユエ(湖北省) キケン 徐輝/郭躍(遼寧省)
●2回戦
李洋/王シュアン(黒龍江省) 3-2 王励勤/薛絲雨(上海市)
張洋/姚彦(上海市) 3-0 馬琳/劉詩ウェン(広東省)
●3回戦
呉ハオ/李暁霞(山東省) 3-1 王皓/木子(八一解放軍)
●準々決勝
陳杞/陳晴(江蘇省) 3、3、8 呉ハオ/李暁霞
李平/李楠(天津市) W/L 朱文韜/饒静文(湖北省)
馬龍/郭炎 4、11、5 許シン/王大琴(上海市)
周シン(金×3)/李聖潔(山東省) 9、-5、7、6 許鋭鋒/聶維(四川省)
●準決勝
陳杞/陳晴 4-1 李平/李楠
馬龍/郭炎 4-0 周シン/李聖潔
●決勝
陳杞/陳晴 9、8、-5、10、-8、3 馬龍/郭炎

 2008全中国卓球選手権、混合ダブルスの結果は上記のとおり。あちらこちらのホームページから記録を集めているため、見づらくてスミマセン。1年に1度の国内選手権とはいえ、中国卓球協会のホームページなどにも記録ページはアップされず、このあたりからも大会としてのステータスがあまり高くないことがうかがえる。

 一昨年、昨年とダブルス3種目では所属の垣根を越え、国家チームのトップ選手同士でペアを組ませていた全中国選手権。北京五輪団体戦でダブルスが重要になることが考慮されたのだろうが、今年は所属が同じ選手同士で組む形式に戻った。そのため、男子の王励勤や王皓、女子の李暁霞などは若手選手と組まざるを得ず、早々と姿を消した。男子チームが強い省は女子チームが弱く、女子チームが強い省は男子チームが弱い傾向があるのだ。
 混戦を抜け出して優勝したのは、左シェークドライブ型の「殺神」こと陳杞と、右ペン粒高反転攻守型の「怪球手」こと陳晴。「CHEN Qi(陳杞)」と「CHEN Qing(陳晴)」の「C.Q」ペアは、決勝で優勝候補筆頭だった馬龍/郭炎を撃破。陳晴がツブ高で相手をかく乱し、陳杞が威力あるフォアドライブで得点を重ねた。陳杞の豪球と陳晴のツブ高ショート、混合ダブルスとはいえ、これほど球質に差があるペアも少ない。陳晴が守備オンリーの選手ならば相手ペアとしても攻略しやすいのだが、陳晴には裏面強打と打点の早いフォアスマッシュがあり、安易にループドライブを送るわけにはいかないのだ。

 なお、女子団体で北京市チームを優勝に導いた張怡寧は、北京市で開催された「中国十佳ローレウス冠軍奨」の授賞式に出席するため、個人戦を欠場。後ほど詳報をお伝えするが、張怡寧は「今年最も優れた中国の女子スポーツ選手」として選出されたのだ。その授賞式で大会を欠席するのもどうかと思うが…、団体戦は来年の全中国運動会のシード権獲得のため、欠席できなかったということだろう。
 余談ではあるが、張怡寧は世界選手権でこれまでに金メダル9枚、銀メダル2枚、銅メダル3枚を獲得しているが、混合ダブルスでは銅メダルすら獲得していない。99年アイントホーヘン大会では現クロアチア代表の譚瑞午と組んでベスト8、03年パリ大会では閻森と組んでベスト8、05年上海大会では陳杞と組んでベスト16止まり。パートナーのルックスは次第に向上している(失礼)気がするが、あまりやる気が出ないのだろうか…。これまでプライベートでも浮いた噂が一切ない張怡寧、とにもかくにも世界選手権の混合ダブルスが、「冰美人(アイス・ビューティー)」が取り逃がした唯一のタイトルになりそうだ。

Photo:かつては強豪と言われた江蘇省チーム、陳杞(写真上)と陳晴のペアが意地を見せた
〈女子団体〉
●準々決勝
北京市 3-0 広東省
遼寧省 3-0 山西省
八一解放軍 3-0 河北省
山東省 3-1 湖北省

●準決勝
[北京市 3-0 八一解放軍]
○張怡寧 3-0 文佳
○丁寧 3-1 曹臻
○郭炎 3-0 木子
[山東省 3-2 遼寧省]
○彭陸洋 3-2 郭躍
○李暁霞 3-2 常晨晨
 陳夢  0-3 楊揚○
 李暁霞 0-3 郭躍○
○彭陸洋 3-1 常晨晨

●3位決定戦
八一解放軍 3-2 遼寧省

●決勝
[北京市 3-0 山東省]
○張怡寧 7、9、-6、-12、1 李暁霞
○丁寧 -7、5、5、-5、8 彭陸洋
○郭炎 7、10、-12、6 陳夢

 超級リーグでは郭炎の移籍による穴を埋められず、準決勝進出を逃した北京市が、郭炎を加えた万全のメンバーで優勝。強敵揃いの女子団体で1試合も落とさない圧倒的な強さを見せた。
 決勝の北京市vs山東省は、張怡寧と李暁霞というエース同士の対戦。世界ランキング1位と2位のまさに頂上対決だ。第4ゲーム、張怡寧10-7のマッチポイントから李暁霞がまくり上げ、最終ゲームは李暁霞が有利かと思われたが、女王・張怡寧は最終ゲームを1本で締めた。「第4ゲームで逆転されても、私の心理状態にはまったく変化はなかった。だから第5ゲームでは戦術を変え、相手に対応する余裕を与えなかった(出典:中国体育報」と張怡寧。さすがに五輪女王、一枚上手だったか。続いてしゃがみ込みサービスも駆使する左シェークドライブ型の丁寧が、彭陸洋を破った時点でほぼ勝敗は決した。3番で郭炎が陳夢を3-1で破り、北京市がオールストレートでの優勝を決めた。

 07年世界選手権ベスト8の彭陸洋が2番手として活躍し、準決勝で郭躍・常晨晨を擁する遼寧省を激戦の末に下した山東省は、実力どおりの決勝進出。伸び盛りとはいえ、3番手が14歳の陳夢というのはやや苦しかったが、優勝するだけの実力は十分にあったと言える。
 それにしても層の厚い中国女子。毎年全中国選手権の結果を見て思うことだが、今大会で言えば優勝した北京市、2位の山東省、ベスト4の遼寧省などは、そのまま世界団体選手権に出場しても、80%以上の確率で優勝できそうだ。世代交替による狭間もなく、他国が付け入るスキはほとんどないようにも見える。

Photo:決勝2番で対決した中国女子のホープ2人。サウスポーの丁寧(上)と彭陸洋(下)はいずれも長身で、シャープな攻撃が持ち味だ