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中国リポート

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 「卓球王国」本誌では、国内・国外を問わず選手の年齢やプロフィールを掲載する機会がたびたびある。これを調べるのが意外に手間のかかる作業だ。そこで、選手の誕生日と出身地のファイルを作り、何度も調べないで済むようにしている。
 今回はその中から、中国選手の誕生日を一気に掲載。昔の選手の誕生日や出身地については、少々怪しいものもあるが、ひとつこの機会にアップしておきます。お気に入りの選手が漏れていたらゴメンナサイ。

〈男子〉
容国団  1937.08.10  広東省中山県(現:珠海市)出身
徐寅生  1938.05.12  上海市出身
張燮林  1940.06.25  上海市出身
荘則棟  1940.08.04  江蘇省揚州市出身 ※北京市育ち
梁戈亮  1950.05.05  広西省(現:広西壮族自治区)玉林市出身

蔡振華  1961.09.03  江蘇省無錫市出身
江加良  1964.03.03  広東省中山市出身
陳龍燦  1965.03.30  四川省新都県出身
王涛   1967.12.13  北京市出身
馬文革  1968.03.27  天津市出身

閻森   1975.08.16  江蘇省徐州市出身
孔令輝  1975.10.18  黒龍江省ハルピン市出身
劉国梁  1976.01.10  河南省新郷市出身
王励勤  1978.06.18  上海市出身

馬琳   1980.02.19  遼寧省瀋陽市出身
劉国正  1980.03.07  湖北省武漢市出身
侯英超  1982.06.15  河南省出身
ハオ帥  1983.10.01  天津市出身
王皓   1983.12.15  吉林省長春市出身
陳杞   1984.04.15  江蘇省南通市出身
邱貽可  1985.01.27  四川省成都市出身
張継科  1988.02.16  山東省青島市出身
馬龍   1988.10.20  遼寧省鞍山市出身

 現時点で年月日が把握できていないが、アジア卓球連合の李富栄会長は1946年生まれで山西省平定市出身、往年の名選手・郭躍華は1946年生まれで福建省厦門市出身だ。
 好きな選手の誕生日の日には「○○、生日快楽(ションリークァイラ/誕生日おめでとう)!」と心の中で言ってあげてください。

Photo:ハオ帥は、中華人民共和国の建国記念日「国慶節」である10月1日生まれ
Photo:明日27日が誕生日。男子チームの暴れん坊、邱貽可
 1月21日、国際卓球連盟(ITTF)のマーケティング・カンパニーであるTMSインターナショナルは、2008年のプロツアーのスポンサーとして、中国のアパレル系スポーツメーカーである「鴻星erke(China Hongxing Sports Ltd.)」と契約を結んだことを発表した。

 TMSのマネージングディレクター(常務)で、元スウェーデン男子チーム監督のアンダース・ツンストレム氏によると、鴻星がメインスポンサーとなるのはカタール、ドイツ、フランスの三つのプロツアー。今シーズン、これらの大会には「Hongxing Erke」あるいは「Erke」という冠(かんむり)名が入る。カタールオープンは、クウェートオープンと並んでプロツアーの中で最も格付けが高く、ドイツ・フランスの両大会もそれに次ぐ格付けとなっている。
 契約は現在のところ、2008年のシーズンのみ。また昨年、この三つの大会のメインスポンサーだったLIEBHERR(リープヘル)とも、メジャースポンサーのひとつとしてスポンサー契約は続けるようだ。

 鴻星は2000年6月に「靴の街」として有名な福建省泉州市に設立されたアパレル系スポーツメーカー。「erke(アルク)」ブランドでスポーツシューズやウェア、アクセサリーなどのスポーツ用品を製造、販売している。創業からわずか7年あまりだが、中国全土にものすごい勢いで専売店を展開しているスポーツメーカー業界のニューフェース。創業者の呉栄光氏はまだ32歳という若さだ。これまでにテニスやバスケットボールのシューズやウェア、ランニングシューズなどが主力商品だった鴻星だが、これから卓球界にも参入してくるのか。

 ちなみに、この鴻星のロゴがまた一見の価値がある。興味のある方は、この鴻星との契約を伝える国際卓球連盟HPのニュースを見ていただきたい。李寧や安踏といい、この鴻星といい、優秀な創業者たちはなぜロゴの作成がこんなに安易なのだろうか…??

★上記のITTFニュースページはコチラ
 1月7日から、広東省の深セン市(男子)と中山市(女子)で恒例の冬季集合訓練を行っている国家卓球チーム。現地に到着したチームのメンバーを、地元企業のトップなどが熱烈な歓迎で出迎えた。

 この集合訓練に先立って行われた「年越し軍事訓練」の様子は、[中国リポート2008/01/03 新年好! 王皓はパトロールで年明け]でもお伝えした。そして、今回の集合訓練も、選手たちの携帯・パソコン・携帯ゲーム機などはすべて没収、部屋の電話やテレビもすべて撤収と、軍事訓練さながらの厳しい規律の中で行われている。

 「軍事訓練は終了したが、我々は今回の集合訓練に、軍事訓練と同様の厳しい規律を求めている。この集合訓練はいわば軍事訓練の延長だ」と、男子チームの劉国梁監督も厳しいお言葉。選手たちはひたすら卓球に集中する環境の中で、35日間を過ごすことになる。若い選手は内心ゲッソリしているかもしれないが、不満を態度に現して、代表へのチャンスを棒に振るような選手は国家チームにはいない…はずだ。

 また、今回の集合訓練で、世界選手権の団体メンバーへ抜擢される可能性もある劉詩ブンが右肩を痛めたとのこと。チームドクターの治療を受けながら、様子を見ている段階だそうだ。小さな身体で両ハンドをブンブン振り回すプレースタイルだけに、故障のリスクも大きい。今後の競技生活に影響が出ないと良いのだが。
 
Photo:地元・広東省チーム所属の劉詩ブン、郭炎に替わって広州大会の代表メンバー入りもあるかと予想していたが、大会直前での故障は不安材料だ
 元中国女子チームのメンバーで、韓国国籍を取得して北京五輪を目指している唐娜(タン・ナ)については、中国リポートでもたびたびお伝えしている。その唐娜が、1月14日に行われた韓国卓球選手権の女子シングルス決勝で、同じく帰化選手の郭芳芳を4-0のストレートで下して優勝した。

 また、1月20日に閉幕した世界選手権代表選抜リーグでは、10戦10勝で1位通過。出場選手の仮エントリーではメンバー入りしていないが、来月24日から広州で行われる世界卓球団体選手権に出場する可能性も出てきた。思うように世代交替が進まない韓国女子にあって、帰化するやいなや無類の強さを発揮しているのだ。

 唐娜はジュニア時代、王楠や李菊らとともに中国代表として国際大会に出場していた。しかし、シニアでは国家チームの選手の「陪練(トレーニングパートナー)」で、中国代表となるチャンスは与えられなかったし、韓国にも選手ではなくトレーニングパートナーとしてやって来た。彼女にとって非常に苦しい時期だっただろうが、そんな日々を乗り越えて、北京五輪への切符が手に届くところまで来ている。「私の目標は韓国で1位になることではない。世界選手権、五輪で1位になること」と言い切る。

 唐娜には中国香港からも移籍のオファーがあったそうだが、「中国卓球協会の指示に従わなければならない中国香港では、中国選手と真剣勝負はできない」からと移籍を固辞した。そんな彼女のことを「第二の何智麗(現:小山ちれ)」と呼ぶ論調も、中国国内ではすでに出始めている。

 両親を中国に残し、江蘇省にいる夫とはほとんど会うことができないという唐娜。それでも彼女は名前を韓国名に改名する申請を行い、新たな祖国のために北京五輪での金メダルを狙っている。彼女を迎えるものが、故郷に錦を飾った英雄への歓声ではなく、「裏切り者」という罵声であったとしても。

Photo:05年全中国運動会女子複2位の唐娜。現役の中国代表にはかなわないだろうが、上位に進出してくる可能性は高い
 皆さん、大変お待たせしました。全日本選手権が終わり、中国レポートも再開! 山積みになったニュースを続々とお伝えします。まずは1月18日に行われた、中英両国首脳のピンポン外交というビッグニュースから。

 1月18日、北京市の中国人民大学内にある「世紀館」で、中国とイギリスのジュニア選手による友誼賽(フレンドシップマッチ)が行われた。この試合を観戦に訪れたのが、中国を訪問していたイギリスのブラウン首相と、中国の温家宝首相。試合後、両首相はコートに下りて選手たちと歓談した。

 かつての「ピンポン外交」について触れた温家宝首相、「決して誇張ではなく、“ピンポン外交”は世界外交史上の奇跡だ。スポーツは民族を超え、制度や文化を超え、人々の心を繋ぎ、友好関係を促進する」。一方のブラウン首相は「卓球はイギリスで生まれたスポーツだが、今は中国こそ真の卓球王国だ。今日の試合を見て、もう北京五輪で金メダルを獲る国がわかったような気がするね」。

 会場には92・96年五輪金メダリストのトウ亜萍も姿を見せ、得意の英語でブラウン首相に質問「北京五輪には来ていただけるのですか?」。ブラウン首相は「…もしご招待いただけるならね(笑)。必ず来るでしょう」「中国政府を代表して、ブラウン首相と奥様を北京オリンピックにご招待しますよ(温首相)」と、終始なごやかなムードの“ピンポン外交”となった。今年北京五輪を開催する中国と、2012年ロンドン五輪の開催地であるイギリス。両国は今後、卓球を含めたスポーツ交流を深めていくということだ。

 昨年12月の福田首相の訪中の際、一緒にキャッチボールを楽しんだスポーツ好きの温家宝首相。卓球も好きで、孫と一緒に卓球をするのが楽しみのひとつだという。かつての名選手・トウ亜萍を見て、たまらずひと言「トウ亜萍さん、実はぜひあなたと一度打ってみたいのですが…」。会場からは歓声と笑い声が巻き起こったとか。

 Photo:友誼賽に登場したドリンコール選手。卓球の母国に現れた期待の若手だ
 先週の1月5日、中国女子サッカーチームが、広州市の広州オリンピックスポーツセンター・卓球館で、選手やコーチらによる卓球大会を開催した。

 中国女子サッカーチームを率いるのは元フランス女子サッカーチーム監督の女傑、エリザベス・ロイゼル氏。彼女の監督就任に際して、フランス女子卓球チームのエースとして活躍したワン・シャオミン(89年世界卓球選手権ベスト8)の尽力があったことは、[中国リポート2007/11/01 サッカー界の「ピンポン外交」成る]でもお伝えしている。

 「たまには気分転換も必要。それに卓球のゲームは、選手たちにとってトレーニングにもなります」というエリザベス監督の発案で行われたこの試合。ルームメイトとペアを組んでのダブルス形式で行われ、大いに盛り上がった。そして若い選手たちのペアをなぎ倒し、見事優勝を飾ったのは、なんと他ならぬエリザベス監督のペア。ワン・シャオミンに特訓を受けたかどうかは定かでないが、「私はオリンピックイヤーのチャンピオン第1号、この優勝が幸運をもたらしてくれるといいわね」となかなかユーモアのあるコメントを残した。

 2002年のサッカーワールドカップで、日本男子サッカーチームの宿舎に卓球台が置かれ、選手たちが夜な夜な卓球に興じていたのは有名な話。プロ野球・日本ハムファイターズのロッカールームにも卓球台が置かれ、ダルビッシュ有選手をはじめ、ほとんどの選手たちがマイラケットを用意して腕を磨いているという。部内ランキングが作られ、新人選手がラケット持参で入寮してくるほどなのだ。

 気分転換やレクリエーションに卓球が役立つのはもちろんだが、卓球によって敏捷性や動体視力を鍛える「サッカー選手に役立つ卓球の練習メニュー」「野球選手に役立つ卓球の練習メニュー」なども作成できるはずだ。
 実際にプロ野球の広島東洋カープでは、動体視力を鍛える伝統の「卓球トレ」があるそうだ。トップクラスのスポーツ選手たちが、トレーニングの一環として卓球を取り入れるようになれば、卓球というスポーツのステータスを上げる一助になるのではないか。

Photo:こちらは卓球の合間にミニサッカー。6年前の全日本男子ジュニア合宿です(古い写真でゴメンナサイ)

 年越しの軍事訓練からの休息もつかの間、国家男女1軍チームは北京を離れ、1月6日から広東省で集合訓練に入っている。男子1軍チームは深セン市、女子1軍チームは中山市と、やはり別々に合宿を行うようだ。男子チームに世界ジュニア2位の許鋭鋒(シュ・ルイフォン)、06年アジアジュニア代表の方博(ファン・ボォ)が新たに加わるなど、男女チーム合わせて100名を超える大所帯となった。

 今回の集合訓練は、2月の世界選手権広州大会、および8月の北京五輪に向けた強化合宿となる。現在でも中国では旧正月である「春節」を盛大に祝うが、今年の春節である2月7日も集合訓練の真っ最中。国家チームのマネージャー・黄ピャオも「今回の冬季訓練は北京五輪へのラストスパートの段階、春節といえども休むわけにはいかない」と冷たく(?)言い放っている。さすがに息抜きも必要と、深センで男女チーム合同の交歓会を行う予定があるそうだ。

 実に35日間に及ぶ今回の集合訓練。終了するのは2月10日。それまでに何回か部内リーグ戦などが行われ、そのうち数試合はマスコミに公開され、テレビ放映が行われる。これもスポンサーへのサービスだろう。
 訓練終了後の12~13日には男女チームが合流してエキシビションマッチが行われ、その後で一旦北京に戻り、3日後にはまた広東へとんぼ返り。23日から世界選手権団体戦・広州大会がスタートする。なんと忙しい国家卓球チーム。北京五輪が終わるまで、彼らに安息の時間はない。

Photo上:世界ジュニア選手権での活躍が評価され、1軍チームの集合訓練に帯同することになった許鋭鋒
Photo下:「チッタア、ヤスマセロヨナ…」※筆者想像
 08年1月発表の世界ランキングで自動出場枠を獲得した男女20人の選手のうち、中国出身の帰化選手(中国香港を除く)は以下のとおり。

〈男子〉 WR=ワールドランキング
ガオ・ニン(シンガポール・WR10)
韓陽(日本・WR17)
ヤン・ツー(シンガポール・WR21)
何志文(スペイン・WR26)
〈女子〉
王越古(シンガポール・WR6)
リ・ジャウェイ(シンガポール・WR7)
呉佳多(ドイツ・WR15)
リュウ・ジャ(オーストリア・WR17)
リー・ジャオ(オランダ・WR19)
高軍(アメリカ・WR20)
リー・チェン(ポーランド・WR27)
王晨(アメリカ・WR29)

 男子の何志文はアテネ五輪に続き、2度目の五輪出場。なんと卓球が五輪の正式種目に加わった88年ソウル五輪より前に、中国代表を引退しているのだが、46歳にして再び故郷に錦を飾ることになった。
 女子ではアメリカの高軍と王晨が揃って出場枠獲得。ともに中国代表として世界選手権の団体優勝メンバー、高軍は92年バルセロナ五輪複銀メダリスト。チームランキングだとアメリカの3番手は、かつての美少女選手・リード(旧姓ファズリッチ/88年ソウル五輪複銅メダリスト)。組み合わせ次第では、メダルに手が届きそうなチームだ。

 さて、ここではヨーロッパから、ともに五輪初出場を決めた呉佳多(ウ・ジァトゥオ)とリー・チェン(李倩)に注目してみよう。

 呉佳多は1977年9月19日生まれ、浙江省出身の30歳。ドイツ・ブンデスリーガ女子1部のクロッパッハで、98年からもう10年もプレーしている。今シーズンは積極的にプロツアーに参戦し、自己最高位の世界ランキング15位で五輪出場の切符を獲得した。
 プレースタイルはシェークフォア表ソフトの異質攻守型。中国女子の主流になりつつあるパワードライブ型ではなく、帖雅娜(中国香港)をもう少し攻撃的にしたような、フォアのミート打ちを多用するスタイル。国際大会で優勝するような爆発力はないが、取りこぼしがなく、コンスタントに上位に勝ち上がってくるタイプの選手だ。

 一方のリー・チェンは、まだ日本での知名度はかなり低い。06年11月のポーランドオープンで、プロツアーデビュー2戦目にして優勝。ポーランド国内リーグのKTSタルノブジェクでプレーする無名の中国選手が鮮烈なデビューを果たし、初登場で世界ランキング25位にランクされた。
 1987年1月12日生まれで河北省出身、もうすぐ21歳になる李倩。同世代に郭躍や李暁霞などがいて競争が激しく、15歳でポーランドに移住。この時にコーチが右シェーク攻撃型だった李倩の身体能力の高さを見抜き、カット主戦型に転向させた。中国の前陣攻撃に欧州のカットのエッセンスが注入された、いわば中欧合作の選手だが、このような帰化選手のプレースタイルの転向は非常に珍しい。シャープな攻撃と安定感あるカットを駆使したプレーで、北京五輪本番でも思わぬ波乱を演出するかもしれない。

Photo上:ルックスにも定評のある呉佳多。契約する卓球メーカー、アンドロのカタログでは表紙を飾った
Photo中・下:攻守兼備のリー・チェン。中国代表の経験がなく、デビュー当初は漢字表記がわからなかったため、慣用的にカタカナ表記なのです
 1月3日発表の女子世界ランキングで、2003年1月から世界ランキング1位の座を守り続けてきた張怡寧が2位に後退。ランキング1位の連続記録は60カ月、ちょうど5年でストップした。ランキングトップ10以内の中国選手は以下のとおり。 ※カッコ内は07年12月発表のレイティングポイント

WR1.  郭躍   12807.75(←12730.50)
WR2.  張怡寧  12793.50(←12863.50)
WR3.  李暁霞  12786.00(←12693.00)
WR4.  王楠   12778.50(←12755.00)
WR5.  郭炎   12678.00(←12681.00)

 郭躍が133ものポイント差を一気にひっくり返すとは予想外だった。張怡寧のレイティングポイントが大きくダウンしたのは、06年12月のプロツアーグランドファイナル、ITTFトーナメント・オブ・チャンピオンズで優勝したボーナスポイントが消滅したためだ。
 男子の世界ランキング1位は入れ替わりが激しいのと対照的に、女子の世界ランキングは長期政権。91年7月から7年半、ランキング1位の座に君臨し続けたトウ亜萍。99年1月~02年12月の4年間ランキング1位の座にあった王楠。03年1月~07年12月の5年間ランキング1位だった張怡寧。この16年あまりで女子世界ランキング1位になったのはたった3人しかいない。そしてその3人が五輪や世界選手権のタイトルを総ナメにして、「卓球界の女王」と呼ばれてきた。
 世界ランキング1~4位はポイント差29.25の中にひしめきあっている。郭躍は世界ランキング1位の座を守れるのか、それとも三日天下で終わるのか。

 中国女子では、郭躍と張怡寧のふたりが五輪への自動出場枠を獲得した。張怡寧に故障が多いのは気がかりだが、もともと五輪代表への選出は確実と言われてきた2人だけに順当な結果か。しかし、この2つの出場枠は郭躍と張怡寧が獲得したものではなく、あくまでも「中国」が獲得したもの、というのが中国卓球協会の考え方だろう。
 自動出場枠での出場は、出場をキャンセルする選手が現れた場合、その選手の次に世界ランキングの高い選手へと繰り下げられる。また中国の場合、3番目の選手がアジア大陸予選で予選落ちする可能性もほとんどゼロ。つまり、中国卓球協会は女子世界ランキングのトップ5を独占する5人の中から、エントリーする3人を自由に選べるのだ。郭躍と張怡寧をエントリーせずに自動出場枠の繰り下げで李暁霞と王楠をエントリーし、アジア大陸予選に郭炎を出場させれば、すでに代表内定のように思える郭躍と張怡寧を外したチーム編成も可能なのだ。

 中国卓球協会としても、現時点で郭躍と張怡寧を外す理由はないだろう。しかし、世界ランキングの上位を占める中国は、エントリーのデッドラインである6月23日まで、かなり自由にエントリーする選手を変更することができる。「自動出場枠はあくまでもひとつの参考にすぎない」とは男子チームの劉国梁監督の言葉。郭躍も張怡寧も、自動出場枠を獲得したからといって油断はならないのだ。

Photo上:ついに世界ランキング1位から陥落した張怡寧
Photo下:88年ソウル五輪金メダリストの陳静。当時世界ランキング1位だった何智麗(現:小山ちれ)の代替出場でビッグタイトルを掴んだ
 1月3日、北京五輪への自動出場枠20名を決定する、2008年1月の世界ランキングが発表された。男子はほぼ予想どおり、そして女子では思いがけぬ逆転劇が待っていた。この運命の世界ランキングを、中国男子、中国女子、そして中国からの帰化選手の3つのテーマで見ていこう。
 男子世界ランキング10位以内の中国選手のランキング、およびレイティングポイントは以下のとおり。 ※カッコ内は07年12月発表のレイティングポイント
 
WR1.  王皓   12965(←12930)
WR2.  馬琳   12866(←12810)
WR3.  王励勤  12736(←12732)
WR4.  馬龍   12649(←12616)
WR7.  陳杞   12427(←12426)

 12月に世界ランキングが発表された時点で、王皓の1位の座はほぼ安泰。そして2位の馬琳も、王励勤に逆転される可能性はほとんどなかった。今回のランキングに反映されるプロツアーグランドファイナル、ITTFトーナメント・オブ・チャンピオンズともにランキングの低い選手は出場しないため、仮に早いラウンドで敗れても、ランキングが大きく下がることはないからだ。
 そしてランキングに大きな変動がないまま、王皓と馬琳がワンツーフィニッシュで五輪への自動出場枠を獲得。王励勤は3位に甘んじた。まだ予選出場は決定していないが、現世界チャンピオンが五輪の大陸予選に回るとなると、男女ともこれが初めてのケースだ。

 もっとも、予選で敗れる可能性はまずないだろう。以前にも触れたが、馬琳には2000年シドニー五輪予選でまさかの予選敗退を喫した苦い記憶がある。この時は馬琳、劉国正、王励勤の3人が大陸予選に出場し、劉国正と王励勤が馬琳にわざと敗れてアシストに回ったにも関わらず、馬琳は田崎俊雄と李哲承に敗れ、劉国正がシドニー五輪に出場した。中国卓球協会としても、取りこぼしのない王励勤のほうが安心かもしれない。
 96年アトランタ五輪金メダリストの劉国梁、04年アテネ五輪銀メダリストの王皓はともにアジア大陸予選を通過して五輪に出場し、自動出場した2選手を上回る好成績を収めた。王励勤もその例にならい、悲願の金メダル獲得なるか。

 余談ながら、中国の男子選手で、これまでの五輪5大会に出場した16名は、ペンホルダー9名に対しシェークが7名とペンホルダーがややリード。戦型の内訳ではシェークドライブ型6名(許増才・馬文革・孔令輝・劉国正・王励勤・陳杞)、ペンホルダードライブ型5名(韋晴光・呂林・閻森・馬琳・王皓)、ペン表速攻型4名(江加良・陳龍燦・于沈潼・劉国梁)、シェーク異質速攻型1名(王涛)。多彩な戦型は「百花斉放」を標榜(ひょうぼう)する中国卓球ならではだ。

Photo上:00シドニー五輪予選。田崎俊雄の両ハンドスマッシュに吹き飛ばされた馬琳
Photo下:04年アテネ五輪予選での王皓。現在に比べるとまだ体の線が細い