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平成28年度全日本選手権速報

 今朝は雪がちらつく東京。しかし東京体育館の前には、平日にも関わらずかなり長い行列ができた。今日は朝イチからラン決、そして6回戦も行われる。思いがけない波乱が待ち受けているかもしれない。男女シングルス5回戦(ランク決定戦)の対戦カードは下記のとおり。

●女子シングルス5回戦(ランク決定戦)
石川佳純(全農) vs. 成本綾海(同志社大)
田口瑛美子(筑波大) vs. 森薗美咲(日立化成)
若宮三紗子(日本生命) vs. 小道野結(アスモ)
三宅菜津美(中国電力) vs. 浜本由惟(JOCエリートアカデミー/大原学園)
佐藤瞳(ミキハウス) vs. 牛嶋星羅(日立化成)
森薗美月(サンリツ) vs. 平野容子(豊田自動織機)
塩見真希(四天王寺高) vs. 鈴木李茄(専修大)
田代早紀(日本生命) vs. 加藤杏華(十六銀行)

伊藤美誠(スターツSC) vs. 安藤みなみ(専修大)
市川梓(日立化成) vs. 橋本帆乃香(四天王寺高)
石垣優香(日本生命) vs. 打浪優(神戸松蔭女子学院大)
芝田沙季(ミキハウス) vs. 早田ひな(希望が丘高)
松澤茉里奈(十六銀行) vs. 森さくら(日本生命)
永尾尭子(アスモ) vs. 宋恵佳(中国電力)
加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部) vs. 前田美優(日本生命)
平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園) vs. 阿部恵(サンリツ)

●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
水谷隼(beacon.LAB) vs. 及川瑞基(専修大)
高木和卓(東京アート) vs. 緒方遼太郎(JOCエリートアカデミー/帝京高)
坪井勇磨(筑波大) vs. 松平健太(ホリプロ)
木造勇人(愛工大名電高) vs. 大矢英俊(東京アート)
厚谷武志(信号器材) vs. 硴塚将人(早稲田大)
平野友樹(協和発酵キリン) vs. 町飛鳥(明治大)
松下海輝(日鉄住金物流) vs. 神巧也(シチズン時計)
吉村真晴(名古屋ダイハツ) vs. 宮川昌大(野田学園中)

笠原弘光(協和発酵キリン) vs. 高見真己(愛工大名電高)
宇田幸矢(JOCエリートアカデミー) vs. 吉村和弘(愛知工業大)
上田仁(協和発酵キリン) vs. 塩野真人(東京アート)
軽部隆介(シチズン時計) vs. 丹羽孝希(明治大)
徳永大輝(鹿児島相互信用金庫) vs. 吉田海偉(Global Athlete Project)
御内健太郎(シチズン時計) vs. 上村慶哉(早稲田大)
吉田雅己(愛知工業大) vs. 松平賢二(協和発酵キリン)
龍崎東寅(JOCエリートアカデミー/帝京) vs. 張一博(東京アート)
  • 9度目のVを狙う水谷隼

  • 上位進出を狙うベテラン吉田海偉

●混合ダブルス準決勝
田添健/前田(専修大/日本生命) ー8、ー6、8、9、4 時吉/藤井(ZEOS/愛媛銀行)
吉村/石川(名古屋ダイハツ/全農) 5、7、4 横山/土田美佳(原田鋼業/中国電力)

●混合ダブルス決勝
田添健汰/前田美優(専修大/日本生命) 3、12、ー8、ー7、6 吉村真晴/石川佳純(名古屋ダイハツ/全農)

混合ダブルス優勝は田添健汰/前田美優。中陣からでも打ち抜ける、低く伸びのある田添のフォアドライブと、前田の緩急のある前陣攻守がマッチ。ゲームカウント2ー0から2ー2に追いつかれながら、最終ゲームは5ー1とスタートダッシュをかけて突き放し、栄冠を手にした!

☆田添健汰コメント
「準決勝で(時吉/藤井ペアに)ゲームカウント0–2の4-7から逆転した試合が大きかった。決勝は相手の方が実力は上なので、向かっていくだけだった。決勝は2ゲーム目を逆転で取れたのが大きい」

☆前田美優コメント
「初戦から競った展開だったので、気を引き締めて、思い切りプレーするよう心がけた。苦しい試合が続いた中で2連覇できてうれしい。決勝は思い切ってやるだけでした」
 女子ジュニア決勝は、準決勝で加藤(吉祥寺卓球倶楽部)を下した笹尾(横浜隼人高)と、同じく準決勝で早田(希望が丘高)を破った長崎(JOCエリートアカデミー)の対決になり、3対1で笹尾が長崎に勝ち、初優勝を飾った。

 フォア裏ソフト、バック表ソフトの異質攻撃型の笹尾は、スピードのあるフォアドライブを武器に表ソフトのブロックでゆるいボールを出すなど緩急をつけたプレーで長崎を攻めた。特に左利きの長崎が打つクロス(笹尾のフォア側)へのバックハンドを打球点を落とすことなくフォアドライブで盛り返すプレーは圧巻。
 「フォア側を攻めて台から下がらせて、次にバック側を突く」というバック面表ソフト選手への王道の戦術に対しても、笹尾は最初のフォア側の厳しいボールに対してフォアドライブをストレート(長崎のフォア側)に打って抜き去るというプレーで対抗。第2ゲームこそ落としたが、終始笹尾がゲームを支配する展開で、うれしい初優勝を手にした。

「全国タイトルはこれが初めてです。長崎さんには世界ジュニア選考会で0対3で負けていました。そのときは同じテンポでしかプレーができなかったので、今回は緩急をつけるプレーを心がけて、それが良かったと思います。目標は世界で活躍できる選手。実績がないので、ワールドツアーなど国際大会に出場したことはありませんが、これからは出て、そこで勝てるようになりたいです」と優勝の笹尾。

●女子ジュニア決勝
笹尾(横浜隼人高) 8、-7、6、4 長崎(JOCエリートアカデミー)
 愛工大名電の同士討ちとなった男子ジュニア決勝。昨日、張本を倒した宮本がその勢いのまま優勝へ駆け上がるかと思われたが、そこに王者が立ちふさがる。昨年の優勝者、そしてインターハイチャンピオンの木造は終始冷静に試合を進め、宮本を封殺した。

 宮本は台からやや下がって両ハンドを振っていくが、木造は台から下がらずに前陣でさばいていく。チキータで先手を取り、それを宮本がバックで狙い打つも、木造がさらにカウンターで狙い打つ。木造の完璧とも呼べる試合展開に宮本も為す術がなかったか。ストレートで決めて、天に向かって2連覇のVサイン!

 「うれしいというよりは、まだ一般があるので、そっちを頑張りたいという気持ち。決勝の内容は良すぎました。最初からプレーも気持ちも崩れないでできました。同士討ちはめちゃくちゃやりづらかった。でも全日本の決勝での経験がないと思って、気持ちはぼくのほうが有利だったと思う。
 ジュニアは開き直ってプレーしようと思っていました。今回はジュニアでは張本を倒すためにやってきたし、一般ではランクを取りにきました。優勝した時のVサインはちょっと試合前に考えてましたね」(木造)

 ジュニアの部では1ゲームしか落とさずに優勝した木造。圧勝の2連覇と言っていいだろう。しかし全日本選手権はまだ3日を残す中間地点。「一般のランク入りを取りにきた」。だからまだ休むわけにはいかない。明日からが木造の本番だ。

●男子ジュニア決勝
木造(愛工大名電) 6、8、5 宮本(愛工大名電)
●ジュニア男子準決勝
木造(愛工大名電高) 10、6、6 沼村(野田学園高)
宮本(愛工大名電高) ー7、ー7、3、10、10 高見(愛工大名電高)
●ジュニア女子準決勝
笹尾(横浜隼人高) ー11、9、6、9 加藤(吉祥寺卓球倶楽部)
長崎(JOCエリートアカデミー) ー10、4、8、7 早田(希望が丘高)

ジュニア男子準決勝は、木造と宮本が決勝へ。宮本は高見をゲームカウント0ー2からの大逆転で破り、決勝へ躍進した。
そして波乱があったのはジュニア女子準決勝。優勝候補の双璧、加藤と早田がここで敗れた。加藤を破った笹尾は、昨夏のインターハイまでは一本ごとに大きな声を出すファイターだったが、今大会ではフォアの強打を引き出すバック表ソフトのコース取りもうまく、より冷静に戦えている。そして長崎は、一般で敗れた早田に見事なリベンジ。中盤で大きくリードされた第4ゲームを、連続ポイントで逆転で奪い、勝利をグッと引き寄せた。バック対バックから回り込みの手数が少ない早田は、大会前に傷めていた右ひざの影響がやはりあるのか。インターハイ女王として臨んだ全日本ジュニアは3位という結果に終わった。
  • 準々決勝で張本に勝利した宮本が決勝へ

  • 早田を下した中学生の長崎

  • 笹尾に2度目の優勝を阻まれた加藤

  • 一般で勝利していた長崎に敗れた早田

女子シングルス4回戦、ともに快勝で勝ち上がった前回優勝の石川佳純と、準優勝の平野美宇。
石川は同じ左腕の石塚との対戦。序盤からバック対バックでの細かいコース変更と緩急から、フォアハンドに結びつけて主導権を握ろうとする両選手。石塚の緩急も巧みだったが、石川は早めにコースを変えて仕掛け、フォアハンドの威力と決定率でも上回った。「対左利きがあまり得意ではないので、部内で左利きの選手と練習してきた。第4ゲームをジュースで落としたのが大きかった」(石塚)。

一方、平野は長身の河村との対戦。バック対バックの展開で巧みに緩急をつけ、河村の足をバックサイドに釘付けにした。「バックドライブでしっかり回転を掛けられて、上回転のラリーに持ち込まれた。バックハンドは速さにやられたというより、ゆっくりくるボールが対応しづらかったですね。もうちょっと良いラリーができると思ったんですけど……」と試合後の河村。平野のバックハンドはスイングの柔軟性があり、ボールに強弱をつけていくのが抜群にうまい。かつては前陣での合わせ打ちで、速さで押していくようなプレーだったが、回転量も球威もさらに増した印象だ。問題は精神面。前回2位で追われる立場になったが、受け身にならずに積極的なプレーを貫けるか。
  • 河村にストレートで勝利した平野

●女子シングルス4回戦(一部抜粋)
石川(全農) -8、9、6、11、4 石塚(アスモ)
森薗(日立化成) 1、6、11、6 木村(山陽女子高)
浜本(JOCエリートアカデミー/大原学園) 7、6、-9、10、8 鳥居(愛媛銀行)
若宮(日本生命) 9、3、11、3 高橋(十六銀行)
伊藤(スターツSC) 10、3、8、9 平田(アスモ)
森薗(サンリツ) -6、-10、8、7、8、5 奥下(日本大)
平野(豊田自動織機) 8、-10、9、7、10 阿部(早稲田大)
安藤(専修大) -8、-4、5、-10、7、8、4 藤井(愛媛銀行) 
田代(日本生命)  10、8、3、6 中畑(愛知工業大)
松澤(十六銀行) 5、9、7、8 平(日立化成)
打浪(神戸松蔭女子学院大) 5、ー7、5、ー7、9、5 天野(サンリツ)
早田(希望が丘高) 4、12、-12、9、-7、5 長崎(JOCエリートアカデミー)
加藤(吉祥寺卓球倶楽部) 7、6、3、8 高橋(日本体育大)
平野(JOCエリートアカデミー/大原学園) 4、6、9、5 河村(アスモ)

女子シングルス4回戦は、スーパーシードの32名中、27名が5回戦に進出。石川、平野、伊藤ら優勝候補は確実に勝ち上がった。
  • 初戦を突破した石川

 男子シングルス3回戦、徳島(専修大)に敗れ、続く男子ダブルス4回戦で英田/厚谷(信号器材)に惜敗。これで小野竜也の全日本が終わった。
 今大会でラケットを置くことを決めていた小野。観客席からの応援を背に、最後の一本まで諦めず、噛みしめるようにプレーをしているように見えた。敗戦後にダブルスペアの平野が先に涙を流した姿は印象的だった。それだけ小野主将は後輩に慕われていたのだろう。

 「連日たくさんの人が応援に来てくれて、感謝しかないです。負けて悔しくないと言ったらウソですが、みんなに応援していただいてプレーできたことは幸せでした。
 いろんな先輩たちが引退していって、どんな気持ちになるのかなと思っていたけど、意外と特別緊張することもなく、一日一日を大切にすごしました。本当にいろんな方に声をかけてもらったり、応援してもらったり、ぼくは本当に支えてもらっていたんだなと感謝しています。プレーでお返ししたかったですが、できたかどうかはわからないですが、自分なりに小野竜也を見せたつもりです。寂しいですね。もっと卓球をやっていたいなという気持ちもありますが、やりきったという気持ちもあります。でもすごく楽しかったです」(小野)

ミックスゾーンでは恩師の橋津文彦氏(仙台育英時代の監督)と同期で同じく今大会で引退を決めている水野裕哉(東京アート)が出迎えてねぎらった。
「ぼくの一期生ですから。涙が出ますね」(橋津監督)。

またひとり選手がコートを去る。心優しき主将、本当にお疲れ様でした。
  • 観客席に深々とおじぎをし、感謝を伝えた小野

  • 最後の試合となった平野とのダブルス

  • 大きな幕はサプライズで用意したという

  • 恩師の橋津監督、同期の水野が出迎えた

 男子シングルス4回戦で、スーパーシード選手で上位進出の力を持つ大島(ファースト)と森薗(明治大)が初戦で敗れるという波乱が起きた。
 大島、森薗ともこの試合が今大会で初めての試合になり、大島の対戦相手の宇田(JOCエリートアカデミー)、森薗の相手の緒方(JOCエリートアカデミー/帝京)の2人はこの試合までに数試合を戦っていた。スーパーシードに置かれた選手の多くが、「下から上がってくる相手は動きもいいし、気持ち的にも向かってくる。初戦の戦い方が大きなカギになる」と口を揃えて言うが、この試合での宇田と緒方の若手選手もまさにその状態だった。
 大島と森薗は受け身にまわることが多く、それでもなんとか挽回の糸口を見つけようと必死にプレーをしていたが、彼らが持つ躍動感のあるダイナミックなプレーは最後まで見ることができなかった。宇田、緒方のプレーが素晴らしかったのは間違いないのだが、大島、森薗の敗因の中には「全日本スーパーシード初戦の難しさ」があったはずだ。同じラウンドで出てきた水谷も1ゲーム目は堅さが見えて落としたが、そこで慌てることなく、2ゲーム目から相手の弱点を攻めて危なげなく初戦を突破した。経験の差、と言ってしまえば簡単だが、そこには目には見えない大きなものがあるのだ。
  • 中学3年の宇田が大島を破る金星

  • 高校3年の緒方は森薗に打ち勝つ

●男子シングルス4回戦・一部の結果
松平健(ホリプロ) ー8、8、9、ー8、11、ー10、10 岸川(ファースト)
木造(愛工大名電高) ー8、ー8、1、7、10、9 渡部(明治大)
神(シチズン時計) ー8、ー3、6、10、6、ー11、7 有延(明治大)
吉村(愛知工業大) 9、13、ー10、7、10 村松(東京アート)
塩野(東京アート) ー7、ー8、10、6、7、5 川端(松戸市役所)
吉田(Global Athlete Project) 9、ー9、8、4、ー8、11 加藤(フジ)
松平賢(協和発酵キリン) 5、9、7、9 大西(愛工大名電高)
張(東京アート) 5、ー2、5、ー7、6、8 松浦(原田鋼業)

期待にたがわず、男子シングルス4回戦で随一の激戦となったのは松平健太と岸川聖也の一戦。4回戦での対戦を知った時、岸川は「全然面白くない……」と感じたというが、それくらい普段も一緒に練習して、お互いの手の内を知り尽くしたふたり。岸川の攻撃を松平が前陣ブロックで跳ね返し、カウンターしたボールを岸川が中陣でしのいでから両ハンドで逆襲する。いつもゲームオールにもつれるこのカード、今回もやはりゲームオールに。岸川が10ー8でマッチポイントを握ったが、ここからラケットの角に当てたカウンターが入るなど、松平にラッキーポイントが2本続き、10ー10。結局、4点連取で松平が逆転勝利を収めた。

今大会限りでの現役引退を表明している塩野は、川端に2ゲームを先取されたが、逆転勝ちで5回戦に進出。明日、対カットに強い上田とのランク決定戦を迎える。
  • 岸川との激戦を制した松平

  • マッチポイントからの1点が遠かった岸川