速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

平成28年度全日本選手権速報

 世界ランキング21位の村松雄斗(東京アート)がスーパーシード4回戦で姿を消した。相手は吉村真晴の弟、和弘(愛知工大)で、1-4で敗れた。
「年末にインフルエンザにかかり、1週間ほど練習を休んだが、体が思うように動かなかった」と村松の敗戦のコメント。

 今回、わざわざ村松がプレーしているドイツのブンデスリーガのクラブ『オクセンハウゼン』の会長とマネージャーが観戦に来ていたが、「残念だね。彼の今日のプレーは良くなかった」とコメント。
 日本人としては世界ランカー4番目の村松。勝っていけば、分の悪いパワーヒッター大島祐哉と対戦する予定だったが、その大島が隣のコートで宇田に敗れ、村松にとって上位進出のチャンスがあっただけに残念な結果となった。

●男子シングルス4回戦
吉村和弘(愛知工業大) 9、13、-10、7、10 村松雄斗(東京アート)
  • 初戦敗退となった村松

 リオ五輪メダリストの伊藤美誠がスーパーシード4回戦に登場。過去に負けたことのあるアスモの平田をストレートで下した。試合後の会見での伊藤美誠のコメント。
「初戦としては絶好調ではないけど、普通くらいの調子でした。目標は優勝ですが、1戦1戦集中してやりたい。今日は競ったところでのサービス、レシーブの組み立てが良かった。練習でやってきたことが出せたと思います。最初の試合だったのでいろいろ戦術とかを試してみました。
 1月に韓国で合宿をしましたが、男子のいろんなタイプの選手と主に試合をしました。それにきつい多球練習をしたりとか、トレーニングを兼ねた練習でした。
 今回の統一ボールはよく止まり、伸びてこないので、大会は慣れるためにすごく練習をしました。
 オリンピックを経験して、9-4から逆転されて負けたこともあったので我慢強くなりました。10-4とか10-3とリードして、そこから挽回されても落ち着いてやれるし、強くなっていると思っています」

●女子シングルス4回戦
伊藤(スターツSC) 10、3、8、9 平田(アスモ)
●男子シングルス4回戦
平野(協和発酵キリン) 9、7、9、12 張本(JOCエリートアカデミー)
丹羽(明治大) 6、4、ー9、ー10、5、7 時吉(ZEOS)
水谷(beacon.LAB) ー10、4、5、3、4 加藤(シチズン時計)

一般シングルスでどこまで勝ち上がるか注目された張本、その前に平野友樹が立ちはだかった!
「技術的には相手のほうが上だけど、あまりブロックに強くないなというイメージがあったので、ブロックならブロック、打つなら打つというメリハリのあるプレーを心がけました。一番の勝因はブロックですね。打たれることに怖さはなかった」(平野)。張本は平野のブロックを打ち切れず、ブロックで振り回していったボールを平野は中陣からフットワークを駆使して打ち返し、ラリーでの力比べになるとやはり平野が上。「打つ時は徹底してコースはミドル。サービスはなるべく切ってゆっくり持ち上げさせる、あとは長いサービスからの展開で攻めました。ボールに慣れられて4ー3くらいになるかなと思っていたので、幸運だった部分はありますね」(平野)。

丹羽と水谷はゲームを落としながらも、確実に5回戦へ駒を進めた。丹羽はラリー戦になると、時吉の高い打球点から叩き込む両ハンド強打に苦しんだが、第5ゲーム以降はアップサービスの割合を増やしてレシーブミスを誘い、振り切った。第1ゲームから集中力高く、体のキレも良さそうだ。初戦が接戦となったことで、明日以降も引き締めて戦えるのではないか。

水谷も第1ゲームは落としたものの、第2ゲーム以降は危なげない内容。序盤からバックハンドの割合が多く、思い切り動くというよりは、台の弾みやボールの飛び方を確認しているように見えた。
  • 張本を退けた平野

  • 4回戦敗退となった張本

世界選手権団体メダリストの大島祐哉(ファースト)がスーパーシード初戦の4回戦で、中学生の宇田幸矢(JOCエリートアカデミー)に敗れた。
 敗戦後の大島。「今、言うことはありません。自分の良いところではなく、悪いところしか出なかったのでこの状態では(負けることは)しょうがないです。もっともっと卓球と真剣に向き合わなければいけない」と言葉少なにミックスゾーンを後にした。

●男子シングルス4回戦
宇田(JOCエリートアカデミー) 8、-5、6、5、-8、5 大島(ファースト)
  • 大島を破った中学生の宇田

  • 初戦で敗れた大島

 全日本選手権が行われている東京体育館内に、今年も日本卓球協会スポーツ医・科学委員会による『相談コーナー』が設けられている。相談内容は、スポーツ傷害やスポーツ栄養・食事など。
 日本体育協会公認スポーツドクターが、年齢に関係なく、卓球に関するさまざまな傷害について相談にのってくれる。卓球の練習や試合をしていて、体のどこかがちょっと気になっている、と思っている人はぜひ、このコーナーをのぞいてみよう。きっと適切なアドバイスをしてもらえるに違いない。
 また、このコーナーには管理栄養士がいて、「もっとスタミナをつけたい!」とか「試合の日の食事のとり方が知りたい」など、食事や栄養についての相談にものってくれる。採血しなくても計れるヘモグロビン測定器が設置してあり、その場で貧血かどうかのチェックもしてくれるので、気軽に立ち寄ってみよう。
 場所は2階南ロビー西側
学生時代から、そのサービスの変化で名を馳せた選手といえばこの人、松戸市役所の川端友選手。仙台ジュニアクラブ出身で、仙台育英学園高を経て日本大でも活躍。左腕から繰り出す投げ上げサービスで相手のレシーブを浮かせ、台上に浮いたボールは高い打球点で3球目パワードライブを叩き込む。
男子シングルスでは1回戦で成長株の戸上(野田学園中)を破り、3回戦では元全日学3位の岡田(岡谷市役所)との「市役所対決」を制した。ちなみに川端選手は練習拠点は松戸市役所卓球部だが、普段は消防士として勤務しているという。

プラボールになり、サービスの回転量が落ちる中、この川端選手のサービスは非常によく効く。ベンチに入った、本誌連載の『マシン練習のトリセツ』でお馴染み、渡辺貴史コーチ曰く「サービスを出す前に巻き込みのようなモーションを入れたり、サービスを出す位置を変えたり、彼はサービスの「見せ方」がうまい」。
セルボール時代は下回転の割合が多かったが、現在は横上回転系を主体にしながら下回転を混ぜ、相手のレシーブを崩していく。「今は下回転にみせかけた横上回転をうまく使って、3球目攻撃で攻められる。下回転以外の回転をうまく使えるようになったと思います」(川端)。打球前、打球後のモーションも複雑で、特に打球前に巻き込みサービスのようなモーションを入れることで、相手を視覚的に惑わせている。

川端選手の次の対戦相手は、今大会限りでの現役引退を表明している塩野真人選手(東京アート)。カット打ちには自信があるという川端選手、果たしてどのようなプレーを見せてくれるだろうか。

●男子シングルス3回戦
川端(松戸市役所) 6、8、ー9、8 岡田(岡谷市役所)
  • 川端選手の投げ上げサービス

  • 相手の浮いたレシーブには、すかさずパワードライブを打ち込む

  • 元全日学3位の岡田選手もサービスの名手。サービスエースの取り合いになったが、惜敗

 オークワの顔、山本真理が女子シングルス3回戦で奥下(日本大)にストレートで敗れ、社会人選手生活21年、オークワでの18年の現役生活に、ピリオドを打った。

 昨日の2回戦では目の覚めるような強さをみせた山本。3回戦もキレのある動きを見せたが、フォア表の奥下は山本のナックルを苦にせず、逆にフォアスマッシュを叩き込んだ。それでも山本は3ゲーム目、2-9と大きくリードされた場面からフォアドライブを決めて3本連取するなど、最後まで諦めずにボールにくらいつくプレーを見せた。

 「大桑会長、卓球部の初代のOGなど、皆さんが見守ってくれる中で感謝の気持ちで試合をすることができた。最後の試合は悔しい。でも感謝の気持ちを持ってプレーできたということに対し悔いはない。いつも自分らしくプレーしたいということだけを心がけてきた」。山本は一筋の涙を流しながらも、すがすがしい表情で語った。

 前日の話になるが、77年世界チャンピオンの河野満氏が、世界卓球選手権の金メダルを山本にプレゼントした。山本はこれまで何度か、同じペン表ソフトの世界王者である河野氏に指導を請いに青森まで出向いていた。その山本の卓球に対する真摯な態度に大きく感銘を受けた河野氏が、世界団体優勝の金メダルを贈ったのだ(河野氏は団体で2回、シングルスで1回優勝)。このあまりに大きなサプライズの授賞に、山本と、彼女を支えてきたオークワ卓球部・大塚監督も感涙。「一生そばに置いて宝物にします」(山本)。

 山本は今後もオークワに残り、卓球部を陰からバックアップする。20年以上にわたり、真摯すぎるほど真摯に卓球に取り組んできた山本。長年オークワ卓球部を引っ張り続け、ジャパンオープン和歌山大会ではシンガポール代表のスン・ベイベイを破る金星もあげた。39歳にして筋肉質の体のキレはまったく衰えを見せず、引退が惜しまれるが、今大会もすばらしいプレーを見せて完全燃焼した。本当にお疲れ様でした。

●女子シングルス3回戦
奥下茜里(日本大)8、9、5 山本真理(オークワ)
女子ダブルス3回戦に出場した中学生ペアの金本・日浦(玖珂中/山口)。強豪・明徳義塾高の熊中・小脇に惜しくも敗れたが、互角のラリーを見せ、1ゲームを奪う活躍を見せた。

2人とも、まだ中学2年生で、カデットのダブルスでもベスト8入りの実力者。シェーク裏表(カールP2)の日浦がバックでチャンスを作り、シェーク表裏(スペクトル)の金本が決定打を放つ異質型のコンビだ。全日本選手権は今回が初出場ながら、持ち味生かした変化プレーを発揮し、1・2回戦で年上ペアを下して勝ち上がった。

「ここまで勝ち上がったことはうれしいけど、今の試合が惜しかったから悔しい。今まで大きい大会で積極的にフォアが打ててなかったけど(今大会は)何本か打てたし、バックもうまくできたのが良かった」(日浦)
「最後の試合はいいプレーができたけど悔しいです。サービスが効いたし、カウンターもうまくできました」(金本)
と試合後は、悔しい表情を見せた2人だったが、
「さっきの試合が惜しかったので、来年はレベルアップして、あと“2回”勝ちたいです!」
と最後は笑顔を見せてコートを後にした。
来年のさらなる活躍に期待したい!
  • 金本(左)・日浦

「張本のことをコメントしよう」
 18年間、全日本選手権を観戦し続けているマリオ・アミズィッチは語り始めた。
 2002年に坂本竜介、岸川聖也がドイツに渡り、その後、水谷隼、高木和卓という日本の有望な若手が アミズィッチの元、練習を重ね、日本の卓球は変わっていった。ヨーロッパでのカリスマコーチだったアミズィッチは張本の敗戦に驚かなかった。

「彼は世界ジュニア選手権で優勝して、そのプレッシャーは想像を超えるものだったと思う。全日本で戦うことは、彼にとって『ジュニアは勝って当たり前』と思われているわけだから、失うものはあっても得るものはない。一般の部では負けても失うものがないから思い切ってやれると思う。13歳の彼にとっては、勝つことよりも負けることのほうが得るものは大きい。勝ち続けることはプラスにはならない。負けることで覚えることは多いから」

「張本の才能は特別なものだと思うけど、彼に降りかかるプレッシャーはこれから毎年大きくなっていくだろうから、それを克服していかなくてはならない。 マスコミも『東京五輪に出場、メダルか』と言ってるでしょ。それを13歳の少年に聞いたり、言わせるのは酷だ。そういう状況が彼を苦しめ、重圧を大きいものにしている。
 私は18年間全日本を見てきた。毎年のように『あの選手はすごいでしょ、才能あるでしょ』と日本の友人に言われるけど、その中で世界のトップで活躍したのは水谷しかいない。その理由を日本の関係者は考えてほしい。理由が知りたい? それは今度教えるよ。張本がそうならないことを祈っているよ」

 アミズィッチ独特の言い方で張本を評した。確かにテレビでも新聞でももてはやされた怪物選手。負けて得たものは大きい。
  • 敗戦直後、涙が止まらない張本

  • 泣きはらした顔で会見場に現れた張本

 東山高から早稲田大へ進学し、日鉄住金物流に就職した足立智哉が今大会で引退を発表。前陣でのバックドライブの快帯で相手を台から下げて、フォアのカウンターで仕留めるドライブ速攻プレーは爽快のひとこと。関東学生リーグでは何度もラストで劇的な試合を展開し、後輩の笠原弘光(協和発酵キリン)、御内健太郎(シチズン)とともに、早稲田時代を作った。

 「8歳から卓球を始めて、今28歳。20年の卓球人生でした。最後の試合と思って、すごくやりこんできましたから、悔いはないですね。親も見に来てくれたので、うれしかったです。
 この緊張感で卓球がもうできないのかと思うと寂しいですね。団体戦の後半で試合ができるあの緊張感、なかなか経験できるものじゃない。楽しかったです。
 今後は会社に残り、仕事をします。昨年結婚したので、家庭も大事にしたいです。でもまた卓球がやりたくなると思いますから、周りが誘ってくれればクラブ選手権とか出たいですね。今度は楽しく卓球と付き合いたいと思います」(足立)
  • フォアでねじこむ執念のボールも足立の代名詞

  • 20年間、走り続けた足立。お疲れ様でした