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ユース五輪・卓球競技

 今大会の各種目のメダリストは下記のとおり。中国が3種目制覇を果たした一方で、男女シングルスでは南北アメリカ大陸にもメダルが渡った。そして日本は銀メダル2枚を獲得。金には届かなかったとはいえ、大きな収穫を得た大会だった。

〈混合団体〉
優勝:中国(樊振東・劉高陽)
2位:日本(村松雄斗・加藤美優)
3位:香港(孔嘉德・杜凱琹)

〈男子シングルス〉
優勝:樊振東(中国)
2位:村松雄斗(日本)
3位:カルデラノ(ブラジル)

〈女子シングルス〉
優勝:劉高陽(中国)
2位:杜凱琹(香港)
3位:リリー・チャン(アメリカ)

 ただいま、現地時間は午前0時を回ったところ。これでユース五輪速報を終了いたします。明日帰国の途につく速報担当ですが、その前に最後の関門が。南京駅から上海の虹橋駅まで、高鉄(中国版新幹線)のチケットを買わねばなりません。8時40分の列車に乗りたいので、メディアルームのスタッフのお姉さんに「7時くらいに行けばいいかな?」と行ったら、「最低でも2時間前には着いたほうがいいわよ。ものすごい混むから。荷物は今日中にまとめておいてね」とのこと。ううう。

 大会の模様は9月20日発売の卓球王国11月号に掲載します。速報でも全力投球ですが、本誌ではまた切り口を変え、じっくり読ませるページをお約束します。お楽しみに。速報ページをご覧いただき、ありがとうございました!再見!
 「この長い期間、本当に頑張ってくれました。ふたりともメダルを獲れたことは、本当に良かったなと思います」。開口一番、まずは選手たちの労をねぎらった田㔟邦史監督。「決勝はチャンスはあると思って準備もしたし、負けると思って戦っていたわけじゃない。でも、ほんのちょっとしたところの差が大きい」と語った。
 「たとえば、タイムアウト後の作戦変更、あるいは相手の作戦変更への対応は、パッと切り替えができるようにしないといけない。例を挙げるなら、村松はあれだけ威力があるバックドライブが打てる。それならバックサービスをマスターして、タイムアウトの後にサッとバックサービスを出して、3球目で狙い打つという戦術も採用できるはず」(田㔟監督)。

 ユース五輪では初采配となった田㔟監督。「技術面だけではメダルは獲れないということを痛感した。人間性やメンタル、フィジカルまで、全体の部分を指導していける指導者になりたいと思いました」と大会を振り返る。加藤のベンチでは、メダルを獲れなかった悔しさを味わい、団体戦ではメダルを獲る喜びも味わった。それでも、いくら銀メダルを獲っても、金メダルを獲れなかった悔しさのほうが大きいというのが本音。「日本は中国に勝って金メダルというところを目標にしている。これで満足せずにさらに勉強を重ねて指導していきたい。ぼくも監督として、本当に良い経験をさせてもらいました」。
 
 大会で見つけた課題や反省は尽きないが、チーム・ジャパンをベンチで支え続けた32歳の青年監督は、こんな言葉と「田㔟スマイル」で大会を締めくくった。「……まずは、日本で長い間応援していただいた卓球ファンの皆さんに、ありがとうを言いたいですね」。
  • 香港戦で村松/加藤ペアにアドバイスする田㔟監督

  • JAPANを背負った背中です

 大きな重圧の中、7日間という長期戦を戦い終えた村松雄斗、加藤美優。混合団体の表彰後のふたりのコメント。

「すごく体調は悪かったし、私はシングルスであまり良い試合ができなかったけど、団体戦だったので、ふたりで戦って一緒に勝つことができて感動しました。中国選手は動きが速いし、リーチが長くてパワーもある。そういう部分では劣っていると感じたけど、たくさん練習すれば絶対に勝てない相手ではない。このユース五輪での緊張感というのは、この大会でしか味わえないものなので、すごく良い経験になった。悔しい気持ちや、勝った時のすごくうれしい気持ちを忘れずに、頑張って練習していきたい」(加藤)

「決勝まで行けて、最低限の仕事はしたと思うけど、やっぱり中国に勝たないといけない。勝ちたかったです。樊振東はドライブの安定性がすごいので、それをカットの安定性で上回れば勝てると思う。もっと強くならないといけない。
 韓国の金民爀、ブラジルのカルデラノとか、大会前からマークしていた選手に勝てたことは良かった。あとは中国に勝ちたい。自分の卓球は世界に通用するという自信を持つことができたので、あとは中国です。今回銀メダルを2つ取って、ホッとした部分もあったけど、やっぱり決勝までいって安心していたらいけない。『相手が中国だから』とあきらめるんじゃなくて、『自分が勝つんだ』という気持ちを持って、これからの試合を戦っていきたい」(村松)

 「加油!中国隊!(頑張れ中国!)」の大合唱の中、中国との決勝を経験したふたりは、中国との「距離感」を測ることができた。若いふたりが無闇に「中国コンプレックス」を抱くことなく、今後の大会を戦っていけるのは頼もしい。取材を受けた後も、またボランティアスタッフから写真攻め、サイン攻めにあっていたふたり。中国の若者たちも、ふたりのプレーをきっと忘れないだろう。
  • 加藤の治療に尽力して頂いた、ドクターの能瀬さやかさんと記念撮影

  • 決勝後も記念撮影を求める人たちが殺到

 混合団体決勝の終了後、すぐに行われた表彰式。五台山体育館に三たび中国の国歌「義勇軍行進曲」が流れ、大観衆による大合唱になった。
 前回大会に続く連覇はならなかった日本。しかし、ベストメンバーといえる樊振東と劉高陽を揃えた中国に、ここまで迫ったことは大きい。ビッグゲームでの経験は選手たちを大きく成長させる。村松と加藤の将来に、大いに期待したい。
  • 表彰式でのふたり。加藤は初のメダル!

  • 再び日の丸が掲揚された

  • 1〜3位の表彰での集合写真

  • 最後まで戦い抜いた日本チームの3人に拍手!

●混合団体決勝
〈中国 2ー0 日本〉
○劉高陽 3、9、9 加藤
○樊振東 ー10、12、5、5 村松

 日本、中国に敗れて混合団体は2位。中国越えはならず……!

 加藤、村松ともにシングルスで敗れた相手との再戦となった中国戦。トップ加藤は第2ゲームに7ー4、9ー6とリードし、第3ゲームも中盤でリード。フォアサイドからのしゃがみ込みサービスが劉高陽に効き、押し気味に試合を進める場面もあった。しかし、守備に回った時に、劉高陽の連続攻撃の前になかなか攻勢に転じることができず。第2ゲーム9ー6の場面で、フォアサイドではなくバックサイドからしゃがみ込みサービスを出して、バックハンドで打ち抜かれたのが、ひとつ流れが替わるポイントになったように思えた。

 2番村松の勝負のポイントも、やはり第2ゲーム、第1ゲーム、村松は8ー10のビハインドから4点連取し、12ー10で奪取。バックサイドへのカットは、バッククロスへ正確で威力あるパワードライブを浴びる。フォアサイドに低くカットして、樊振東を一度動かしてからの展開が功を奏していた。
 第2ゲームも0ー3から5ー5と追いつき、8ー5から10ー7でゲームポイント。10ー9まで挽回されたところで、田㔟監督がタイムアウト。樊振東のロングサービスへの警戒を促したが、試合後に田㔟監督は「10ー7でタイムアウトをとっても良かった。第2ゲームが試合の最大のポイントだった」と振り返った。樊振東の強打をバッククロスに浴びて10ー10とされた村松は、すごい連続カットの守備での得点もあったが、12ー14で落とす。

 第3ゲームは4ー1と出足でリードしたが、4ー6と逆転されて、さらに樊振東のフォアストップがネットイン。4ー7となり、ここから一気に離されて5ー11。こうなると、第4ゲームは完全に樊振東のペース。立て続けに強打を浴びて、日本の金メダルの夢は断たれた。
  • 加藤、劉高陽に及ばず

  • 強烈なバックドライブも決めた村松だが、樊振東の安定感は予想以上

  • 試合後、落胆の村松。しかし、本当に本当によく頑張った!

●混合団体3位決定戦
〈香港 2ー0 タイ〉
○杜凱琹 4、9、5 タモルワン
○孔嘉德 ー8、9、9、10 パダサック

 混合団体3位は香港。タイは惜しくもメダルには届かず。
 トップ杜凱琹は、ミドルでのバック対バックという絶対的な自信を持つコースでの打ち合いから、左右に細かく揺さぶり、チャンスボールは回り込んでパワードライブ。強く弾いて伸ばすボールや、回転をかけた沈む球質のボールなど、うまく緩急をつけてくる。時折出す、ブッツリ切れた下回転サービスも有効だった。

 2番の孔嘉德は、パダサックと見応えあるラリー戦。互角の展開だったが、パダサックは台上で先手を取れず、先に攻められて後ろに下がるパターンが多くなった。孔嘉德のフォアストレートへの攻撃も効いた。第4ゲームは孔嘉德の10ー8のマッチポイントから、孔嘉德にレシーブミスが出て10ー10。「あと一本」の焦りが見えたが、次の一本を今度はパダサックがレシーブミス。これで勝負あり。香港は女子シングルスの杜凱琹の銀メダルに続き、今大会2個目のメダルを獲得した。
 今日で大会も終わり。お世話になったメディアルーム周辺のスタッフ&ボランティアスタッフの皆さんを記念に撮影。ひとりの子に声をかけたら、「写真を撮ってくれるって〜〜!」「イス出して、イス」「まだ○○さんが来てないぞ!」と大騒ぎに。総勢26名、打ち揃っての撮影となった。皆さん、写真に撮られ慣れているのは、中国の伝統と言うべきでしょう。

 ライトブルーのウェアは専任のスタッフさん、ライトグリーンのウェアはボランティアスタッフの大学生の皆さん。皆さんの笑顔に助けられました、謝謝大家!
  • ほら、ちゃんとイス並べて

  • ちょっと待って、トウモロコシ食べてるから(半分やらせです)

  • 全員揃って、はいポーズ!

 混合団体準決勝で香港を破り、決勝進出を決めた日本。「団体では中国を破って金メダルを獲りましょう」という、この種目が始まる前の言葉どおり、決勝で中国と戦うところまで来た。普段はポーカーフェイスの村松くんも、香港戦の後はさすがに笑顔。勝利の瞬間、もう少し大きなガッツポーズがほしかったけど……、それは決勝に取っておきましょう。

 孔嘉德戦の第1ゲーム、0ー0からの最初の1本で村松がカットをすると、会場からどよめきが上がった。カットマンを見たことがない観客も結構いるのだろう。その後も、声援はほとんどが香港に送られるものの、観客も村松のプレーに見入っているような雰囲気があった。
 会場のボランティアスタッフの間でも、村松くん人気は抜群。ミックスゾーンの先に「出待ち」の子たち(主に女の子)が結構いて、スマートフォン片手に写真をねだっている。あれ、村松くん、さっきよりイイ笑顔じゃない??

 マジメな話に戻ると、決勝の樊振東戦については「男子シングルスの決勝では途中からサービスを変えられて、厳しいレシーブができなかったので、今回はきっちり対応したい」とのこと。「(日本選手団の主将として)日本の皆さんに良い報告がしたいです」(村松)。混合団体決勝で、樊振東に借りを返そう。
  • 香港戦後のベンチ。虚脱感と充実感、そして笑顔

  • 日本卓球協会の星野一朗・強化本部長と握手

  • スタッフの子と笑顔でツーショット。行列のできる男です

〈中国 2ー0 タイ〉
○劉高陽 7、11、3 タモルワン
○樊振東 11、8、8 パダサック

 先に決勝進出を決めた日本の対戦相手は、やはり中国だった。タイを2ー0で下し、地元での3種目制覇に王手をかけた。

 タイは敗れたとはいえ、ドイツとチャイニーズタイペイという強豪国を連破し、一躍混合団体の主役に躍り出る活躍を見せた。冷静かつクレバーなプレーに加え、台上から鋭い両ハンドの強打を放つタモルワンと、若い頃の陳杞を彷彿とさせる抜群のスイングスピードを見せたパダサック。試合態度も非常に清々しく、好感が持てる。パダサックは樊振東のサービスが長くなると、すかさずフォアドライブで攻撃を仕掛け、台上に浮いたボールに対するパワードライブは、樊振東がブロックをあきらめるほどの速さだった。

 近年、国際大会にも若手選手を積極的に派遣しているタイ。その成果が出てきた感じだ。3位決定戦の対戦相手は香港。厳しい戦いになるが、チャンスはある。男子シングルスでのカルデラノ(ブラジル)の銅メダルに続き、東南アジアのタイにもメダルが渡れば、このユース五輪から卓球界の明るい未来が見える。
  • 快速左腕のパダサック

  • 台上のバック強打に威力あり、タモルワン

  • 樊振東にも果敢に挑んだパダサック

●混合団体・準決勝
〈日本 2ー1 香港〉
 加藤 ー3、ー5、ー3 杜凱琹○
○村松 2、5、4 孔嘉德
○加藤/村松 7、ー6、7、ー10、4 杜凱琹/孔嘉德

 日本、混合ダブルスの最終ゲームまでもつれた熱戦に勝利!
 香港を下して決勝進出!決勝で中国と再戦だ!

 トップ加藤が、杜凱琹に対してバック対バックで優位に立てず、ストレートで敗れた日本。試合後、ベンチ裏に座り込んだ加藤は、2番村松の試合中もベンチには座らず。実は、大会中盤から加藤の体調は良くない。それでも必死の戦いで、混合団体をここまで勝ち上がってきた。 
 トップを落とした日本だが、2番村松の相手、孔嘉德はやはりカットが打てず。第1ゲームから、1本目のドライブは入るのだが、2本目のバック表ソフトのカットに対してオーバーミスを連発。村松もレシーブやストップ処理で反転を駆使し、巧みに変化をつける。孔嘉德は中盤からよく粘ったが、フォアドライブで決定打が打てないスタイルでは村松の堅陣は打ち抜けなかった。村松の完勝で1ー1。勝負の行方は3番混合ダブルスへ。

 混合ダブルスは、まず村松のカットを杜凱琹が受ける順番からスタート。これが日本にとっては吉と出て、杜は村松のカットをドライブで打てず、ツッツキですらネットミスを連発。対照的に第2ゲームは、孔嘉德のループドライブを加藤がブロックできず、前半はゲームカウント1ー1。
 日本は第3ゲーム、2ー5のビハインドから、4点連取で6ー5と逆転。村松のカットに対する杜のツッツキを、加藤がしっかり狙い打つ。6ー7から日本はまた5点連取でゲームカウント2ー1。第4ゲームは、再び孔嘉德のボールを加藤が受ける順番。日本、8ー10から10ー10に追いつくが、ここから孔嘉德がフォアのカウンタードライブを2本連発して、ゲームは最終ゲームへと持ち込まれる。

 最終ゲーム、4ー2から村松が長く切れたフォアサービスを、思い切って杜のフォアに出し、5ー2でチェンジエンド。次に加藤のバックブロックがエッジになり、完全に流れは日本へ。11ー4で日本の勝利が決まった時、もう加藤の眼には涙。シングルスで逃がしたメダルを確定させ、感極まった。
  • 加藤/村松、渾身のプレー!

  • ベンチに戻る前から加藤は涙、涙……

  • 前原正浩専務理事に迎えられ、号泣

  • 村松のカットの変化に苦しんだ香港ペア