男女とも中国帰化選手の優勝となった全日本選手権。女子シングルスで小西杏に勝ち初優勝を飾った金沢咲希は29歳。2度目の決勝進出でまたもや敗れ、涙に暮れた。決勝では随所で前陣で早いラリー展開が見られ、その中で緻密なテクニックを持つ金沢が激戦を制した。「手首を昨年6月に痛め、出術しかないことを言われ、一度は卓球人生が終わったと思いました。でも他の病院で見てもらい、治療をしてなんとかまたラケットを握れました。先生、監督、チームメイトに感謝の気持ちでいっぱいです」苦しかったことをとつとつと語る金沢。記者会見場では涙する記者もいた。
やりたくてもできない卓球。一度はあきらめた卓球。それゆえに卓球できる喜びを感じつつ、金沢は優勝に向かっていった。もちろん彼女だけではない。負けた小西も、長年所属していたチームを移り、新天地に向かい、立ち直った。ベスト8に入った佐藤素子も実業団チームを退職し、「表彰台に一度立ちたい」という強い思いを胸に、練習に励み、高島規郎氏に師事。全日本の予選に落ちながらもはい上がり、準々決勝まで進んだ。全日本に賭ける一人ひとりの思い、物語が今年もあった。