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速報・現地リポート

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世界選手権広州大会(条太の広州ぶるるん日記)

 10時から一緒に始まった他のコートの試合はすべて終わり、会場中が日本対韓国の試合を見ている。2ゲームめは10-6で唐が取る。しかし平野の内容は決して悪くない。古武術仕込みの「蹴らない捻らない」動きだかなんだかの、妙に直立したラリー中の姿勢が頼もしい。唐はそれで調子が狂っているのだろうか。これで1-1。
 平野、唐から1ゲームをかなり離されたところから逆転して取る。全日本の時のような平野だ。唐は福原のときのようなバックのスマッシュが入らない。ちょっとした球質の違いなのだろう。平野が逆転する過程で9-9からレシーブで回り込んで攻撃したのには驚いた。
 
 一方、唐は入らないとはいえフォアもバックもバキバキの打球音だ。「ラージボールの会場はあちらですよ」と言ってやりたい。あれで入るようだと勝つ方法がない。
 サーブは利いていたものの、最後には負けてしまった。相手が強すぎるんじゃないか。福岡は世界ランク23位だが相手の李恩姫は31位。それにしても福岡のミドルへのスマッシュを弾き返したり(どこで打ったのか不明)、なんであんなプレーができるんだろう。

 これで、日本1-2韓国 と苦しくなった。4番はさっきの唐という化け物が平野様と激突。かなり苦しいだろう。これで勝つようだと平野こそ化け物ということになる。
 平野が2番で逆転勝ちした。1,2ゲームは堅くなっていてなにもかも入らず。相手の文玄晶のペンの高く浅いドライブにタイミングが合わずバックブロックをミスしていたのがその元だったと見る。カウンタードライブ気味の薄く当てるブロックなので高く浅いボールに対しては難しいだろう。ときおり平野が思い切ったスマッシュを打ったのになぜだかそのフォアクロスのスマッシュをペンのくせにストレートにカウンター。何者やコイツ。これが全日本チャンピオンに対する態度かと言いたい。渡辺くんに聞くと、文玄晶は上海大会で王楠に勝ったことがあるほどの由緒ある選手らしい。そんなやつ日本国内にはいないわけだから、当然全日本とは違うのだ。平野がふがいないわけではない(試合だけ見ると、相手が上手いのではなくて平野がただ入らないように見える)。

 3ゲーム目、私の後で高島さんが私にささやくように解説していたためかどうかはわからないが、だんだんと相手が固くなってジュースでこれを取り、私が便意をもよおしてトイレから帰ってきたらすでに2-2。最終ゲームの平野は人が変わったように落ち着いて両ハンドでブロックして機を見てフォアで回り込みドライブをして最後は突き放した。

 最終ゲームはたまらずフェンス後に移動。取材陣のふりのはずが、ついついガッツポーズしてしまう。神様仏様平野様といった心境だ。

福原 敗れる

2008/02/26

 トップの福原は0-3で唐に敗れた。福原の得点は、ナックル気味のバックのミート打ちを唐が落とすケースがほとんどで、打ち抜くケースがなかった。一方、唐はフォアドライブとバックスマッシュで打ち抜き。こんな状態で勝機を見出さなくてはならない選手とベンチのことを思うと胸が締めつけられる。一体どうしたらよかったのか見当もつかない。悔しい。
 10時から女子の韓国戦が始まった。まさにメダルに直結する大変な試合だ。中国から帰化した唐が相手だ。帰化したばかりなので世界ランクはないが強い。

 1ゲームは取られた。バックハンドのミート打ちの威力が桁違いで、1ゲームを見る限りでは、福原が勝つ方法がないように見える。05年の全中国ダブルス2位の猛者らしい。中国2位ってことはもちろん世界2位と同じことだ。とんでもない。
 ホテルを出るときにパスポートを忘れて戻ったが、そのときに頭上からバサバサッと凄い音がして何かが降ってきた。見ると巨大なシダ類の枝だか葉だかがどっさりと私のすぐ横に落ちていた。なんということだ。直撃されたら死なないにしても怪我ぐらいはしただろう。広州で巨大シダ類に打たれている場合ではない。

 まったく悪い冗談だ。

ホテルで談合

2008/02/26

 いや、談合じゃないんですが、卓球王国のメンバーと晩餐をしました。高島さんがステテコと乳首の透けた下着でいらしたので、さすがにカリスマをそのまま撮影するのはまずいと思い、シャツを着てもらった。
 
 ここでも樋口先生の話になった。なんだか聞けば聞くほど面白い。樋口門下生になるためには三つの条件をクリアしなくてはならなかったそうだ。その三つとは
1.誰の指導も受けずに全日本のランクに入るほどの才能と努力の持ち主であること
2.茶碗いっぱいのご飯をかまずに一飲みできること。ただしお茶を一杯使用可。
3.2分間息を止められること

 高島さんは1はクリアしていた。2については、食事が終わったあとで呼ばれ、仰向けに寝せられて口に突っ込まれ、涙を流しながらクリア。3は当時高島さんは肺活量が6000ccあり(普通の装置で測定できなかったという)、100mを潜水できたが、ひぐちシーサイドホテルの真冬のプールに顔をつっこまれたので血管が収縮してどうしてもクリアできなかったという。樋口先生が「高島、もうだめだと思ったら舌を口の中でぐるぐる回せ」とアドバイスを受け3回目でクリアしたそうな。しかしこの三つの条件が、高島さん以外に適用されたのかどうかはわからないらしい。多分いないと思う。

 高島さんが樋口先生に「カットマンは四方八方20m動けなくてはならない」と言われたのは有名な話だが、実際にメジャーで20mを測定して足の位置をチョークで床に描き、スマッシュを20m飛ばせる選手を連れて来て、何度もその通りに動かされたと言う。

 ちなみに、相手の選手は1時間交替。初めて樋口先生の所にいったときに3日3晩、一睡もせずに練習をさせられたのは本当だという。食事も卓球所に持ってきたので一歩も卓球場を出なかったらしい。ちなみに樋口先生は高島さんが練習を始めるとすぐに「カーッ」と寝るらしい。「冗談じゃない、これじゃいつ練習が終わるか分かったもんじゃない」と思ったそうだ。当然だろう。それで力を入れてカキーンと良いカットをすると「それだよ高島」という。「このおやじ寝てたくせによく言うよ」と思っていると「俺は音でわかるんだ」と言う。

 樋口先生は技術があるわけもないだろうから、当然精神論だけだろうと思っていたら、なんとそうではなくてどこまでも技術論なのだという。全日本ランクに入るような高島さんが、理論だけの老人をどうして信頼できたのだろう。その答えは驚くべきものだった。樋口先生はすべてその技術を実行できたというのだ。つまり、高島さんより上手かったということになる。

 これ以上は実際に見なければなんとも言えないが、凄い人がいたものだ。

 高橋さんから「それにしても伊藤さん、プロフィールのイラストそっくりですね」と言われた。息子の絵を誉められるのは嬉しいがあれにそっくりというのもちょっと・・。頭三角じゃないし。

逆モーション

2008/02/25

 「逆モーション」という言葉、卓球界では何十年も前から当たり前のように使っているが、卓球以外では使わないことをご存知だろうか。ネットで検索してみると、卓球以外では、舞台の演劇の役者の動き方としてあるだけで、他のスポーツでは使われていない。もちろん、演劇での「逆モーション」は、卓球のように誰かを騙すための動きではない。あくまである動きのパターンをそう表現しているだけだ(共演者や客だましてどうすんのよ)。

 他のスポーツでも対人競技ならいわゆるフェイントというものはあるわけだが(まさかマラソンや砲丸投げでフェイントがあるとは思えないが)、それはフェイントなどとしか言わないようだ。しかし卓球の「逆モーション」という言葉は、その響きがいかにも凄そうなトリッキーな知的な感じがしてとてもよいと思う。テレビ東京にお願いをして「逆モーション」を連発してもらい、他のスポーツに広めたいものだ。NHKで卓球を放送するときは、アナウンサーがいつも卓球界では誰も使わないテニス用語「逆クロス」を連発していて不愉快だったものだ。今こそテレビ東京には「逆モーション」を連発してもらいたい。
 2番の平野、3番の福岡が勝ち、日本女子は3-0でオランダに勝利した。福岡は3-0で勝ったが、危ない内容だった。しかし、カットマンのティミナに対して、ストップでノータッチを取ったり、ツブ高ショートで落とさせたり、味のある試合だった。競ったときに出した王子サーブの威力は強烈で、ティミナがまるで初心者のようにサイドミスをしたが、最後の方にはブツ切りの下でネット下部にかけさせる異常なミス。見慣れていると分かるが、初めて出されたらああいうミスになるだろう。卓球とはアコギなスポーツだ。特徴のある卓球は見ていて痛快だ。

 福岡はサーブが強烈なわりにラリーが強くないことは誰もが認める傾向だが、これは、偶然なのだろうか、必然なのだろうか。というのも、レベルは違うが、私の卓球も同じ傾向なので、親近感があるのだ。サーブが利くときの快感と、利かないときのあせりがよく分かる。福原にならって「春ちゃん」とでも呼びたいくらいだ。

 必然とは、たとえば、サーブを練習する時間が多い分だけラリーに費やす時間が足りないとか、サーブに必要な才能とラリーに必要な才能が互いに矛盾するものだとか、サーブが利きすぎてラリーに意識がいかないとかだ。偶然とは、サーブの才能とラリーの才能は別のものであり、両方を持っていてもおかしくはないが、その確率はとても低いという説。

 まあ、現場で戦っている選手にとってはどうでもいい話だ。