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速報・現地リポート

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世界選手権広州大会(条太の広州ぶるるん日記)

いよいよ広州

2008/02/25

 やっと広州国際空港についた。うまれて初めての中国だ。トイレの戸がないんじゃないかとか心配していたが、空港内は日本と変わらなかった。英語も書いてあって分かりやすい。
 
 荷物の受け取り場で、係員に写真撮影をしていいかと聞くと「いい」というので撮影したが、撮影した後で「撮影禁止」の看板があってびっくりした。よくわからない。

 ロビーも近代化されていて、日本やアメリカと何も変わらなかった。コンビニエンス・ストアが「便利店」と書いて直訳でわかりやすい。まさに「便利」だ。

 ホテルまでタクシーに乗ろうとして、空港の窓口で聞くと、300元かかるという。300元といったら5000円だ。「そんなに!」と驚くと地図を出してきて、「この空港は新しいので郊外にあって1時間かかるんだ」とのこと。さすがに空港の窓口の人は英語が話せるので助かった。バスはないのかと聞くとなにやらぶつぶついって「タクシーで150元だ」という。わけがわからない。それで乗り場から150元と書いた紙を見せてタクシーに乗った。前の席と後の席の間に鉄格子が張ってある。途中で運転手が車をとめて私に「ペンを貸せ」と手招きをする。ペンを貸すと、紙に「180元」と書いてよこした。めんどうなので「OK」と言うと彼は喜んで笑った。英語はまったく通じないのだが、機嫌がよくなって「ホンホンホンホン」と中国語を話していた。私もときどき真似をしたが意味はわからない。どうみても30分ぐらいでホテルについた。

成田到着

2008/02/24

 アトランタから15時間かけて成田に到着した。日本時間では午後3時だが、私の体は夜の0時状態なのでヘロヘロである。とにかく空港でラーメンを食べたが、恐ろしく美味しい。さすがだ。アトランタのラーメンも成田空港には敵わない。

 これから広州に発つのだが、ロビーで待っている人たちを見ても世界選手権を見に行くのかどうかの判別はつかない。誰もジャージを着たり「馬琳が」などとは話していないからだ。何人かは卓球を見に行くのだろうか。私以外に誰もいなかったら寂しい。

村上春樹

2008/02/23

 飛行機の中で読む本として、以前から宮根さんに借りていた村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を持ってきている。私は小説はほとんど読んだことがないので、もちろん村上春樹も初めてだ。いまのところ、面白いも面白くないもない。とにかく最後まで読むだけだ。

 その中で、ハッと思い当たることがあった。89年の5月に友人達と8ミリビデオカメラで30分のドラマを作ったことがあった。題名は『私の犬神日記』といって、つき合い始めた彼氏が犬神教の信者(教祖と二人だけの宗教だ)であることがわかって苦悩する話だ。その中で、犬神教の崇拝対象として、犬の頭蓋骨を撮影した。これは教祖役をやらせた杉浦くんがたまたま持っていたので(もと飼い犬だったかどうか忘れた)これはいいとシナリオに組み込んだのだ。完成した作品を見せたある女性が犬の頭蓋骨のシーンを見て「○○の真似でしょ」と言った。私がいくら否定しても「うそだ、絶対○○の影響を受けたんだ」と力説されたことを覚えている。

 今読んでいる村上春樹の小説に、動物の頭蓋骨が出てくるのだ。発行も88年だ。布でくるんで保存するところまで犬神日記と同じだ。たぶん、あのとき彼女は、この小説のことを言っていたんだと納得した。19年前の記憶と繋がってうれしい。

 王国のブログを見ると、水谷選手は89年6月生まれだという。俺が『犬神日記』を撮ったころに生れたのか。どうこでどう間違えてあんなに強くなってしまったんだろう。

スパゲッティ

2008/02/23

 ホテルに着いたのが10時過ぎと遅くてレストランが閉まっていたので、ピザ屋に出前を頼んだのだが、11時40分の今ごろ届いた。写真でみたスパティミートソースを頼んだのだが、ものすごい量だ。全面チーズで覆われていて、なぜだかパンが2本もついている。味は意外にも美味しい(私の味覚は誰の信用もないのだが)。
 いよいよ金曜の今日は午後から会社を早退し、アトランタのホテルで前泊中だ。先週、インフルエンザで休んだばかりで気が引けるが、なにしろ世界選手権なのだからしかたがない。

 明日の朝9時発の便で成田に向かう。こちらの朝9時ということは、日本時間でいうと土曜の夜11時だ。つまり土曜の夜11時に発って成田に日曜の夕方5時頃に着くわけだ。その後広州に夜11時頃に着く。

 世界選手権を見に行くのになぜだか不安な嫌な気持ちになっていると思ったら、不安の正体が分かった。面白いレポートを書けるかどうかが不安なのだ。だいたい、編集部の『見どころ』を見ると、ドイツはボルがいないし、韓国もオサンウンがいなくて、どう考えても中国の圧勝ではないか。書くことがひとつもないような一方的な大会だったら困る。そうならないためにも日本にがんばってもらいたい。まあ、いざとなったらホテルで高島と死闘を繰り広げるとか、青森山田の吉田先生に夜通し話を聞くとか、テレビ東京のアナウンサーにちょっかいを出すとか、何かできるだろ。

 編集部の話を本気にしてラケットとシューズを持ってきてしまった。ホテルで卓球をするためとはいえ、「世界選手権にラケットを持っていくこと」自体に言い知れない羞恥を覚える。
 91年の幕張大会を見に行ったときに、会場でデモをしていたリフレックス・スポーツ社の『スーパー・プレイ集』ビデオは素晴らしかった。編集も素晴らしかったのだが、映像自体が素晴らしい。なぜこんなにも面白いのかを考えてみると、いろいろなことがわかった。そのあたりのことをまとめて2001年のスポーツ科学会議で発表した。HPにもまとめてある。http://www.geocities.jp/japan_para_table_tennis/c_position.html

 それまで見たことがあった卓球の映像は大きく分けて2種類あった。ひとつは、テレビ局の放送、もうひとつは卓球用具メーカーが売っている試合のビデオだ。テレビ放送の場合、必ず二階席の遠くから撮影するので、全然遠近感のない映像になる。卓球台の両側の線が平行に映っているので、ボールが遅く見えるのだ。また、往々にしてカメラ位置がかなり高いため(二階席なので)、卓球台に対してかなり上のほうから見下ろす形になる。これがまたよくない。卓球台が縦に長く映るので、テレビ画面上のボールの動きが速くて、目で追うことが難しいのだ。にもかかわらず、遠近感がないのでボールは「遅く」感じるというこの矛盾。さらに大きな問題がある。上からの撮影だと、選手を大きく映せないのだ。卓球台の左右よりも上下が先につかえるため、全体を画面に入れるためには、どうしてもズームアウトせざるをえない。その結果、もともと小さい体の動きがますます小さく迫力のない映像になるのだ。

 一方、メーカーの出しているビデオは、会場のフロアで近くから撮影しているので、卓球台の両サイドは放射状に映って、遠近感はばっちりだ。ところが経費の都合でひとりで複数のカメラを撮影しているので、三脚で固定され、ズームもボールを追うこともしない。これでは当然、鑑賞に堪えない。手間をかけなくては良い映像など撮れない。

 リフレックス・スポーツの映像は上の問題をはっきりと意識的にクリアしている。まず、卓球台の近くの低い位置から撮影して遠近感を出し、カメラは常に操作されて、選手の動きや表情を可能な限り大きく撮影することに注意を払っている。カメラの位置が十分に低く卓球台が薄く映るので、画面上のボールの速度は遅くて目で追いやすい。にもかかわらず、ものすごい迫力だ。なぜ卓球選手があんなに小さいボールを打つのに全身を使ってドタバタしているか、その動きに説得力がでるのだ。しかも、卓球の特徴であるドライブやカットの上下方向の軌道の曲がりなどがとてもよくわかる。さらに、手前の選手が右利きの場合と左利きの場合では、ちゃんとカメラ位置を変えて、選手と卓球台がうまく映ることまで気をつけているのだ。あまりに感激してリフレックス・スポーツのGary Rudermanにメールを出したところ、すぐに返事がきた。彼らは彼らのやり方が卓球の撮影にとってベストであることに確信をもっているのだという。それで、何度もテレビ局にカメラ位置を変えるようアドバイスしたのだが、聞き入れてもらえないのだという。そのための説明ビデオまで作って送ったのだが、ダメだと言う(そのビデオも後日私に送ってくれた)。しかし最近では、世界選手権での撮影はすべて契約したテレビ局だけに限定されているとかで、リフレックス・スポーツ独自の撮影はされなくなってしまった。リフレックス・スポーツから出ている作品も、テレビ局が撮影した映像を彼らが編集しているだけなのだ。

 一度彼らの映像を見れば、テレビ放送との違いは明らかだ。女子の試合などテレビでは全然迫力がないように見えるが、コートサイドから撮影すれば、まったく違った卓球競技の表情が姿を現すのに、もったいないことだ。広州でテレビ東京を説得してみる。
 そういえば、私は世界選手権で日本人選手が戦っているのをほとんど見たことがない。テレビ放送は決勝だけだから日本人が出るわけがないし、見に行ったときでも、通して見る日程は組めなかったので、いつも男子団体戦決勝あたりを狙っていくので、結局、日本人選手の試合は見れなかったのだ。後で日本人選手特集がビデオで出たりもしていたが、それも買ったことがない。

 そいうわけで、日本人選手の試合もその応援もほとんど経験がないのだ。今回は予選リーグから全試合を見るので、完全に感情移入をして見ることができる。「どっちが勝ってもいい」ような普通の試合ではなく、片方を応援して見るのは格別だろう。野球やサッカーのファンと同じように、プレーの質に関係なく、勝敗にこだわって応援したい。
 卓球王国編集部からメールがあって、予約してもらったホテルに卓球台があり、同宿予定の高島(こういう人には私などが敬称をつけるほうが失礼というものだ。徳川家康に敬称をつけないのと同じだ)と卓球ができるかもしれないのでラケットを持参するようにとのことだ。うわたたた、どうしよう。

 だって、ホテルの卓球台で高島と卓球っつったらあんた、『熱海の樋口先生』ではないか。世界選手権を見に行ってるのにホテルの卓球場で3日3晩、一睡もせずに練習させられたり、6時間ぶっ続けでスマッシュを受けさせられてその間に3回気絶したりしたらどうするのだ。

 といって、そんな機会は二度とないだろうし・・。迷う。

ポケットの蛙

2008/02/21

 世界選手権のブログであえてデビッドの話を書こう。風邪気味だったゲイリーが誰かに体調を聞かれて、私のことを含めて「我々はもう大丈夫だよ」と応えると、デビッドが大笑いを始めた。「ゲイリーお前、ポケットに蛙でも入れてるのか」と言う。ゲイリーも私も意味が分からずポカンとしていると、デビッドが説明してくれた。

 ある打ち合わせで、製造のマネージャーが他部署に対してwe can do(我々がやります)を連発していたのだが、担当者がぶつくさ不満を陰で言っていたそうだ。「我々がやるって、我々って誰よ?たぶん彼のポケットに蛙でも入ってて、彼とその蛙のことなんだろうな」と言っていたのだという。デビッドはそれをひとりで思い出して笑ったのだ。日本語に訳すといまひとつしっくりこないが、英語のままだと、いや、正しくはアメリカ人が言うと面白いのかもしれない。

テレビ放送

2008/02/20

 それにしてもテレビ東京は凄い。偉い。
世界選手権が民放で放送されるなんて、昔に比べれば夢のようだ。

 私が学生時代は、夜中の2時ころからNHKの衛星放送でひっそりとやられたものだった。もちろん、ビデオ録画して翌日見るなどということは考えられない。世界選手権のテレビ放送をやっているのに寝ていられるわけがない。卓球をテレビでやるのは、年に一度の全日本選手権の90分と、2年に一度の世界選手権の90分だけなのだ。居候している親戚の居間で、緊張で手足に汗をかいて冷たくなって見たものだ。しかも画質も音質も最悪で(ヘタすると画と音がずれていたりする)、撮影もまずいものだからろくにボールが見えない。そこに荻村伊智朗の解説が入る。アナウンサーの質問を無視して昔の自慢話だ。いきなりアンドレアディスとか言われてもなあ。

いや、テレビ東京は偉い。でも見れない。悔しい。

それにしてもこのブログのサブタイトルに『伊藤条太が世界戦を斬る!』なんて編集部が書いてるが、「その前にお前誰よ?」って感じが我ながら、するなあ。