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全中国運動会・速報2009

 男子シングルス決勝は、紛れもなく世界最高峰の技と技、力と力のぶつかり合い。全中国運動会という大会のステータス、レベルの高さをまざまざと見せつけられた。世界選手権横浜大会にも、これほど高レベルな試合はなかったのではないか。

 1ゲーム目、王皓にレシーブのネットミスが4本出て、馬龍が先制したこの試合。第2ゲームは王皓が序盤で大きくリードして奪ったものの、第3ゲームは馬龍がフリックでレシーブエースを連発して奪取。第4ゲームに馬龍が3-0とリードした時は、「王皓危うし」の空気が流れた。馬龍にも優勝のチャンスは十分にあった。
 しかし、王皓はここから4-4に追いつき、信じられないようなフォアクロスのドライブの引き合いが20球近く続く。このパワーボールの応酬を王皓が制し、このゲーム3度のゲームポイントを握られながら、しのぎきった。フォアクロスへの打球点を落とした飛ばないドライブや、台上フリックのモーションからの軽打・ストップなど、そのテクニックを遺憾なく発揮して馬龍の待ちを外した王皓だが、要所ではフォアの力強いドライブ攻撃で、今大会パワーNo.1の馬龍に堂々と打ち勝った。
 
 王皓がゲームカウント3-2のリードで迎えた第6ゲームは、王皓 5-3 馬龍でまたも強烈なフォアクロスの引き合い。このラリーは弧線を低くして王皓のネットミスを誘った馬龍が制したが、王皓 7-6 馬龍でまたもフォアクロスの引き合いを、今度は王皓がフォアストレートへ打ち抜いて得点。王皓 10-9 馬龍で迎えた最初のマッチポイントは、馬龍がバッククロスへのパワードライブ連打でしのいだが、10-10のデュースから王皓が裏面ドライブ連打で2回目のマッチポイントを迎える。
 王皓のフォア前サービスに対し、バックフリックした馬龍。そのラケットにボールがミートせず、空を切ったラケットの下をボールが転がってレシーブミス。王皓優勝! 仰向けに倒れ込んだ王皓の体が、3,000人を超える大観衆の爆発的な歓声のスイッチとなり、青島体育センターは興奮のるつぼと化した。

 解放軍の応援団の大声援を背中に受けながら、優勝へのプレッシャーに打ち克ち、持てる技術を最大限に発揮した王皓。世界選手権横浜大会での勝利が、大きな自信となっていることは間違いない。前回大会決勝で王励勤に屈辱的なスコアで敗れた雪辱を果たした。それにしてもハイレベルな男子シングルス決勝だった。
★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8、4、-7、13、10、10 馬龍(北京)
★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8、4、-7、13、10 馬龍(北京)

 馬龍6-3王皓から、王皓が5点連取で王皓8-6馬龍。ここで馬龍がこの試合3回目のサービスミス(ネットミス)。王皓9-7で王皓がネットインを拾うも、馬龍がパワードライブで得点。ここで王皓がタイムアウト。

 王皓10-8から10-10。王皓11-10で、台上のストップ対ストップから、王皓がフォアクロスへ打球点を落としたドライブで馬龍のカウンターミスを誘い、王皓がゲームカウント3-2とリード!

 
★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8、4、-7、13 馬龍(北京)

息をもつかせぬ好ラリーの連続、両選手ともまったく凡ミスはない。デュースにもつれ込み、馬龍に3度のゲームポイントを握られながら、王皓が13-13で中陣から裏面ドライブ3連発、そして14-13でフォアクロスの引き合いが15球以上も続き、呼吸を忘れる大観衆。馬龍のボールがわずかにオーバーして、王皓が2-2に追いついた!



★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8、4、-7 馬龍(北京)

 出足で馬龍が王皓のフォアへフリックレシーブを2本連続で決めれば、王皓も目にも止まらぬ裏面カウンターで追いつき、3-3。中盤で馬龍がバックドライブで王皓のミドルを攻めて得点を重ね、馬龍9-5、10-6でゲームポイント。10-7から馬龍が王皓の連続ドライブを中陣でしのぎ、得意の中陣バックドライブでの逆襲で得点。

 解放軍の応援もあり、場内はますます盛り上がる!
★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8、4 馬龍(北京)

 王皓が1-1から5点連取で突き放し、終盤にはすばらしい3球目フォアフリック強打などで得点。
★男子シングルス決勝
王皓(解放軍) -8 馬龍(北京)

王皓に第1ゲーム4本のレシーブミス(すべてネットミス)が出て、馬龍が先制!
☆女子ダブルス決勝
郭躍/侯暁旭(遼寧) 6、8、10、-9、6 劉娟/饒静文(湖北)

 郭躍/侯暁旭が、01年仙頭大会の王楠/張瑞以来、2大会ぶりにタイトルを遼寧へと奪還した。
 郭躍がペアを組んだ侯暁旭は一発ドライブの威力はあるが、ややラリーでの安定感に欠け、特に守備面に不安がある。そこで郭躍は無理に強打からラリーに入らず、ループドライブと切れたツッツキを多用し、ラリー戦を優位に展開しようとする。レシーブではサウスポーでありながら、バックで回り込んでのチキータでのレシーブも多く使っていた。
 劉娟/饒静文は、決勝の舞台にやや硬さが出たか、遼寧ペアの切れたツッツキを打ちあぐんだ。劉娟のドライブ・レシーブにややミスが多く、ベテランの味を存分に発揮できなかったのは残念。第4ゲーム10-9のゲームポイントで、この試合随一という好ラリーを懸命なフォアドライブ連打で制して会場を大いに沸かせたが、反撃もここまで。第5ゲームは5-2、7-3と遼寧ペアがリードを広げ、7-5から劉娟が裏面ドライブを2回連続でミス。
 最後は10-6のマッチポイントで、郭躍の回転量の多い3球目ドライブに対し、劉娟のドライブがオーバー。ウイニングショットも強打ではなかった。豪快なイメージのある郭躍がクレバーな戦いぶりを見せ、全中国運動会の女子ダブルスで初のタイトルを獲得した。

★王皓vs馬龍、過去1年間の主要な国際大会での対戦成績

[08ITTFプロツアーグランドファイナル決勝]
馬龍 11、9、9、5 王皓
[09クウェートオープン決勝]
馬龍 5、8、4、-8、8 王皓
[09世界選手権・男子シングルス準決勝]
王皓 10、8、-10、9、9 馬龍
[09超級リーグ第1節]
馬龍 10、6、8 王皓
[09超級リーグ第10節]
王皓 -13、7、10、8 馬龍

 上のこの1年間での対戦成績を見ても、両者はほぼ互角。馬龍が圧倒した試合もあるが、世界選手権横浜大会というビッグゲームで王皓が勝っていることを考慮したい。王皓は体重がかなり増えた印象があり、中陣での大きなラリー戦になると苦しそうだが、台上とカウンターで勝負がつけば王皓が有利。

 観客は今大会最高の入り、3千人以上は優に入っているだろう。記者席にも観客がどんどん入ってこようとして、ボランティアに止められている。異様なボルテージが会場の中でふくらみつつある。
 ただ今、現地時間の午後7時。会場ではこれから女子ダブルス決勝を迎える郭躍と侯暁旭、劉娟と饒静文が練習を行っている。王皓も先ほど、練習相手の張継科を伴ってフロアに登場。3階のスタンドには、解放軍の海兵隊らしきセーラー服の一団が、王皓の写真とともに入場してきた。男子シングルス決勝では熱い声援を王皓に送るだろう。

 先ほど、気になる光景がひとつ。遼寧チームの若手の女子選手がひとり、コートに出てくると、ネットに向かってひたすらボールを打ち込み、跳ね返ってきたボールをまた打つ。ラケットの弾みを確かめる時に、トップ選手などがこういうことをよくやるが、二百回近くその行為を続けていただろうか。その女子選手はコートを出て、隣のセンターコートに入ってきた郭躍にラケットを手渡した。何度もボールを打ち込んでいたのは、郭躍のラケットだったのだ。
 郭躍はそのラケットでまた何度かネットにボールを打ち込むと、侯暁旭とともに練習を始めた。ノングルー時代となった今、貼りっぱなしのラバーをむざむざ消耗させる必要はない。新品の郭躍のラバーを慣らしたのだろうか。また今大会、コートに入ってくると卓球台にラケットを押さえつけ、練習を始める選手の姿もちらほら見かける。中国選手が使用すると言われる、検知されないスピード補助剤の存在をうかがわせるのだが…?