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平成29年度全日本選手権速報

男子シングルス1回戦、坂根翔大(関西大)がゲームオールの死闘を制して2回戦進出を決めた。

早稲田大の平野との対戦は互いにゲームを奪い合う展開で、最終ゲーム2-7と大きくビハインドを許した坂根だったが、粘り強く正確なドライブ攻撃で9本連取の大逆転勝利を収めた!
昨年6月に行われた関西学生選手権で1年生ながら優勝し、関西学生チャンピオンに輝いた坂根。チャンピオンになってすぐの夏には東京に来て腕を磨いた。

「シードの吉田さん(雅己/協和発酵キリン)と対戦することが目標」と謙虚に語った若武者の活躍が楽しみだ。
 男子シングルス1回戦、4年ぶり6回目の出場となった荒木基亮(ヨシダTTS)だが、ゲームオール9本で敗れ、目標としていた勝利はならなかった。

 弟の亮祐とともに、地元広島で国公立大や医師薬科のカリスマ的存在として活躍してきた荒木。バック粒高のカットマンだが、攻撃の割合が非常に高いオールラウンドスタイルだ。1回戦の相手、カットマンの廣田に対しては、自らはほとんどカットやツッツキをせず、バックで乗せるようなプッシュを中心に相手を崩し、パンチ力のあるフォア強打で決めるプレーを徹して2ゲーム先取。

 しかし廣田も次第に荒木のボールに慣れ、また必死の動きで強打を拾って3ゲーム目を奪うと、形勢逆転。最終ゲームも競ったが、「台のバウンドに最後まで合わなかった」という荒木にミスが出て、11-9の接戦で廣田に軍配が上がった。

 広島大医学部を卒業後、2年間の研修、そして2年間の精神科での臨床医を経て、大学院での研究職に就いて2年目となる。2016年11月に肩を手術、半年はラケットを握れなかったが、昨春から練習を再開した。「臨床医時代は人間相手なので、自分の都合で練習時間を作れなかったですが、今はネズミが相手なので、何とか練習できてます(笑)」という荒木。「今回は残念。もう1回くらい全日本に出場したいですね」。

 医学者として卓球にも打ち込む、異色の存在である荒木。また全日本の舞台で、異色のオールラウンドプレーを見せてほしい。


●男子シングルス1回戦
廣田匠悟(専修大) -5,-9,9,6,9 荒木基亮(ヨシダTTS)
●男子シングルス1回戦
前出陸杜(松生TTC) 7、-9、6、6 明石元気(卓球専門店 山卓)

 男子シングルス最年少出場の前出陸杜が、1回戦を突破。フォアのドライブとミート打ちを織り交ぜながら裏面打法も巧みに操る、久々に現れたペンホルダーの新星だが、ここでは前出の1回戦の対戦相手・明石元気を取り上げたい。ペンホルダーの皆さん、ごめんなさい。

 左シェークドライブ型の明石は現在、同志社大の大学院1年生。滋賀県の草津東高から同志社大へ進み、関西学生リーグでも活躍を見せた。現在の所属は用具の販売と教室を行っている滋賀県の「卓球専門店 山卓」。小学生時代に明石が指導を受けていたチームで、「小さい頃からお世話になったので、僕が『山卓』の選手として全国大会に出ることで少しでも恩返しになれば」(明石)と男気に溢れる。大学院生ということで練習は研究の合間をぬって行っているが、「今は大きな大会の予選や本戦前に集中してやってます。大学で練習することが多いです。本当はもっと練習する時間も作れるんでしょうけど、余計な事をしちゃっててなかなか・・・・・・」とのこと。

 大学院での研究テーマは「卓球のレシーブ時における視線の動き」。小学生から卓球を続け、高校も体育科、大学でも体育の教員免許を取得しており、大学院を出た後もずっとスポーツに携わって人生を送りたいと語る。「大学院を卒業するまでは、選手として『山卓』で全国大会を目指したいと思ってます。その後も選手としてなのか、指導者としてなのかはわかりませんが、ずっと卓球に関わり続けていきたい。スポーツは好きですね。卓球も好きじゃなかったら大学を卒業したらスッパリ辞めてると思いますし。せっかくここまで卓球を続けてきたので、『辞めたらもったいない精神』でやってますね(笑)」(明石)。

 「お世話になった人への恩返し」、「卓球が好き」。そう言い切る明石の口ぶりは実に清々しく、カッコイイ。スポーツとともに生きていく、明石元気の人生に心からエールを送りたい。
●混合ダブルス準々決勝
森薗/伊藤(明治大/スターツSC) 9、8、7 及川/安藤(専修大) 
大島/早田(木下グループ/日本生命) 8、-13、10、-9、7 森田/平(シチズン時計/サンリツ) 
軽部/松本(シチズン時計/サンリツ) -9、-9、7、8、2 郡山/秋田(専修大/中央大)  
吉村/石川(名古屋ダイハツ/全農) 6、-9、6、5 張/森薗(東京アート/日立化成)

混合ダブルス準々決勝が行われ、ベスト4が決定!

4回戦で前回優勝の田添健/前田をストレートで破った森薗/伊藤は、及川/安藤にまたしてもストレート勝ち。試合後、森薗は「自分はまじめすぎるタイプだけど、ビビったりする場面でもミマが精神的にしっかりしているから、すごく助かりますね」とコメント。技術面では森薗のチキータでのレシーブや、ミスのない攻守が伊藤をアシストしているが、精神面では伊藤がリードしているということか。この役割分担があるから、ペア歴が短くても強さを発揮できるのだろう。森薗は「(伊藤とは)足して二で割るとちょうど良いと言われます」とコメントし、ミックスゾーンで笑いを誘っていた。

大島/早田は森田/平との熱戦を制した。大島は「早田さんが普通の女子には打てない威力あるボールを打てるので、自分が決めなきゃいけないというプレッシャーはない。すべて決めにいかなくてもいいので、すごく助かっている」とコメントした。明日の準決勝では森薗/伊藤ペアと相見える。「相手ペアは台上がうまいのでそこに注意したい。緩急をつけて戦っていきたい」(大島)。
  • ストレート勝ちで表彰台を決めた森薗/伊藤

  • 及川/安藤は森薗/伊藤に敗れベスト8

 全日本一般の部に初出場となった、駒大苫小牧高2年の杉渕が、苦しみながらも女子シングルス1回戦を突破した。

 試合序盤は國學院大の小島が主導権を握り、速攻で2ゲームを先取。「リードされて開き直れた」という杉渕、3ゲーム目は思い切りの良さを発揮して接戦で奪って踏みとどまったが、4ゲーム目は再び小島が8-2とリード。勝負は決したかに思われた。

 しかし「やばいと思ったけど、できるプレーだけをやった」という杉渕。ゆるくつなぐバックドライブや、無理打ちせずにツッツキして次を狙うプレーに徹し、小島のミスを誘った。そして随所で強打を決めて逆転。その勢いのまま最終ゲームも奪って勝利を決めた。

 北海道北斗市(函館市の隣)出身で、苫小牧高には下宿で通う杉渕。柔らかいタッチのバックドライブが光り、また緩急をつけつつ、勝負どころでは思い切りよく上から攻める度胸の良さもあり、ポテンシャルの高さを感じさせる。今大会、一般での目標は「有名選手とあたること」。2回戦で川北帆香(Shochi Jr.)に勝つと、3回戦では谷岡あゆか(日体大)のいるブロックの勝者との対戦となる。全日本の大舞台で、さらなるブレイクに期待したい選手だ。


●女子シングルス 1回戦
杉渕栞(駒澤大附属苫小牧高) -6,-3,8,10,8 小島悠夏(國學院大)
  • バックドライブのタッチが光る杉渕

  • 住金物流で活躍した仲川明監督がベンチでアドバイスを送った

●男子シングルス1回戦
宮澤僚太(JA十日町) -7、8、9、-7、3 仲田貴亮(豊田自動織機)

 会場内では男子シングルス1回戦がスタート。新潟から出場のカットマン・宮澤僚太がフルゲームの接戦を制して2回戦進出を決めた。

 現在、JA十日町に勤める宮澤は新潟で生まれ、新潟産業大附高から新潟産業大、就職先も新潟という生粋の新潟県民。昨年の春から社会人となり、「練習は休みの日に母校の新潟産業大で週に1回くらい」(宮澤)というが、学生時代よりも頭を使ってプレーすることを心がけ、練習ができない日にはランニングや筋トレを欠かさず、減った練習量を補ってきた。コートの外では穏やかな笑顔の宮澤だが、「今は楽しんでプレーしたいと思うけど、試合になったらやっぱり負けたくない」(宮澤)と心は勝負に燃える。昨年9月に行われた、全国から強豪が集うオープン大会・後藤杯卓球選手権(名古屋オープン)では松山祐季ら愛知工業大の選手を切り倒し、男子シングルスで優勝と、社会人になっても結果を残した。

 これまでも全日本には幾度も出場しているが「やっぱり、ここ(全日本)でプレーできるのは楽しいし、うれしいですね」と宮澤は語る。「4回戦まで勝ち上がって、水谷さんと試合をすること」が今大会の目標。レペゼン新潟・宮澤僚太は全日本の舞台を楽しんでいる。
●ジュニア男子4回戦(一部)
宇田(JOCエリートアカデミー/大原学園) 8、5、12 手塚(静岡学園高)
加山(愛工大名電高) 5、-4、8、9 阿部(希望が丘高)
田中(愛工大名電高) 4、9、10 吉山(TC中原)
手塚(明徳義塾中・高) 9、-3、10、4 吉田海(希望が丘高)
中橋(鶴岡東高) -4、17、-5、9、5 曽根(愛工大附中) 
金光(大原学園高) -4、9、9、-10、3 遠藤(野田学園高)
戸上(野田学園高) 1、10、3 原田(石田卓球クラブ)
浅津(JOCエリートアカデミー/帝京) 5、-9、5、12 横谷(愛工大附中)
小野寺(専修大北上高) 7、5、7 谷垣(愛工大附中)
濵田(愛工大附中) 7、9、10 岩永(帝京安積高)
宮川(野田学園高) -11、-7、8、9、8 篠塚(愛工大附中)
張本(JOCエリートアカデミー) 4、7、3 伊藤(安田学園中)

ジュニア男子4回戦が終了し、ベスト16が決定!

第1シードの宇田、第2シードの張本ほか、戸上、金光など優勝候補が順当に勝ち上がる中、白熱のラリー戦を展開したのは宮川と篠塚の左腕対決だ。篠塚が堅いブロックからすかさずカウンターで打ち抜く攻守転換の早さを見せ、2ゲームを先取。しかし、3ゲーム目以降はガッツマンの宮川が篠塚の堅守にもひるまず、両ハンドで攻め続けた。中盤から守勢に回るラリーが多くなった篠塚。打球センスは抜群のものがあるだけに、よりタフなメンタルを身につけてほしい。
  • 逆転で左腕対決を制した宮川

  • 敗れたカデット14歳以下王者の篠塚

 ジュニア男子は4回戦が終了し、ベスト16が出揃った。強豪中学・高校の選手がズラリと並ぶ4回戦のコートで「福島東稜高」という、見慣れない(失礼)高校名の選手を発見。惜しくもこのラウンドで敗れたが、福島東稜高2年の小池龍成がベスト32まで勝ち上がる健闘を見せた。

 福島東稜高は福島県福島市にある私立の学校。スポーツが盛んな学校だが、卓球部もここ数年で実力をつけており、昨年のインターハイでは地元・福島で学校対抗初出場を果たした。チームを指導するのは福島出身で、駒澤大でもプレーした桑原勝人先生。「選手の個性を考えて、一人ひとり違ったアドバイスをしてくれる」(小池)と熱心な指導でチームを鍛える。小池の試合でもベンチに入り、細かくアドバイスを送る姿が印象的だった。

 桑原監督からのアドバイスで鍛えたフォアドライブを武器にベスト32まで勝ち上がった小池だが「ベスト32まで来られて、高校でやってきた成果は出てきていると思う。でも、もっと上まで行きたかった」と満足はしておらず、今後の目標はインターハイでのランク入りと2年連続での学校対抗出場。昨年のインターハイは地元開催のため、学校対抗に2校が出場できたが、今年は再び出場枠が1校に戻る。福島には強豪の帝京安積高がいるが、「意地でも帝京安積に勝って学校対抗でインターハイに出たい」とライバルに対抗心を燃やす。福島から全国へ、自身にとって最後となる今夏のインターハイでの大暴れに期待したい。
女子シングルス1回戦、そのチーム名に目が留まったのが、山形・墨猿の後藤祐加選手。山形県酒田市の出身で、全日本には酒田工業高時代から出場。石川の金城大を経て地元・酒田に戻り、介護の仕事をしながら練習を続けているという。

1回戦の対戦相手は、福井商業高時代にインターハイベスト8の実績もあり、中央大の主力として活躍する山本笙子選手。残念ながらストレートで敗戦。「金城大時代に何回も試合をしたことがあったんですけど、強くなっていてすごいなと思いました」と試合後に語った。
「練習は週に1回くらい。勤務の状況に合わせて、やれる時に練習する感じです。仕事でも体は使うんですけど、せっかく卓球をやってきたので続けたいなと。今は高校生に教えたり、練習したりしています。今後も教えたりしながら、一緒に打てればと思います」

ちなみに何とも印象的な「墨猿」というチーム名。同じチームにイカ釣りが趣味の人たちがおり、先に墨猿という名前で活動していたのを、クラブ名としてもってきたとのこと。「イカ墨」の墨だったんですね。
  • 黒地のウェアも墨っぽい? 墨猿の文字が凛々しいです

●混合ダブルス4回戦
森薗/伊藤(明治大/スターツSC) 9、8、2 田添/前田(専修大/日本生命) 
及川/安藤(専修大) 6、7、13 大西/小脇(関西学院大)
大島/早田(木下グループ/日本生命) -10、4、9、7 沼村/中村(野田学園高/岩国商業高)  
森田/平(シチズン時計/サンリツ) -9、9、7、7 川島/加藤(JR北海道)
軽部/松本(シチズン時計/サンリツ) 7、7、9 横山/土田(原田鋼業/中国電力) 
郡山/秋田(専修大/中央大) 6、9、6 坪井/平(筑波大/日立化成) 
張/森薗(東京アート/日立化成) 9、-4、-9、4、7 張本/平野(EA・EA/大原学園) 
吉村/石川(名古屋ダイハツ/全農) 9、8、5 吉村/平野(愛知工業大/豊田自動織機) 

※EA=JOCエリートアカデミー

混合ダブルス4回戦、張本/平野は張/森薗ペアに敗れ、ベスト16止まり。張本が目標としていた4冠はならなかった。「2−1でリードしていて、良いペースになっていたんですけど、自分のミスがどんどん増えてしまって、負けて悔しいです。ミックスはふたりで組むのでコンビネーションが大事。それは良かったと思うけど、相手のペアのほうがコンビネーション、役割分担や戦術がハッキリしていた」と試合後の平野。やはりペアとしての経験の差はあったか。勝利への焦りから、後半は張本/平野の強打のミスが多くなった。

張本/平野は今年10月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われる第3回ユース五輪に出場する。第1回大会優勝、第2回大会準優勝の日本は、中国から若手エースの王楚欽・孫穎莎も出場するこの大会で、王座への返り咲きを狙う。平野は「張本くんとはユース五輪でまたダブルス(混合団体)を組むことになると思うので、そこで優勝できるように頑張りたい」とコメントした。

森薗/伊藤は2連覇中の田添健/前田に圧巻のストレート勝ち。序盤から集中力高く、森薗のチキータでペースをつかみ、伊藤のバック表ソフトの攻守で翻弄する。ダブルスでの経験豊富な両者、その実力は相当なものだ。
  • 森薗/伊藤は高い集中力で田添/前田にストレート勝ち

  • 8入りを逃した張本/平野