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中国リポート

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 女子チームが集合訓練を行っていた広東省中山市で合流し、26〜27日に熱身賽(エキシビションマッチ)を行った国家男女チーム。明後日の5月3日に北京を出発し、オーストリアのWSA(ウェルナー・シュラガー・アカデミー)で最後の調整合宿を行い、10日にパリに入る予定だ。

 万全の状態でパリに乗り込みたい国家チームだが、女子チームは故障者が続出。「直通パリ」の第1ステージでひざの故障を再発させた丁寧は、ひざをがっちりテーピングしてエキシビションマッチに臨んだ。「ひざのケガは古傷。世界選手権に影響が出るのは避けられないと思う」(丁寧)。ジュニア時代からしゃがみ込みサービスが武器だった丁寧、このひざの故障とは競技人生を通じてつきあっていくしかない。

 さらに、27日のエキシビションマッチでは、丁寧と組んだダブルスで馮亜蘭/饒静文と対戦していた劉詩ウェンが右手首を故障。その後の試合はすべて棄権した劉詩ウェン、すぐに病院に行ってMRIで検査を受けた。「手首の状態はあまり楽観視できません。世界選手権が近いので、注射を打つくらいしか方法がないですね」(劉詩ウェン)。
 今回のパリ大会を、2016年リオデジャネイロ五輪出場への足がかりにしたかった劉詩ウェン。開幕まで1カ月を切る中での故障に、さすがに焦りを隠せないようだ。中国リポート担当はこの劉詩ウェンをパリ大会の優勝候補筆頭と見ていたが、これで状況はかなり厳しくなった。現時点では、故障を抱える劉詩ウェンと丁寧を抑えて、李暁霞が優勝候補No.1ということになる。
  • 右手首を傷めた劉詩ウェン

「本当に地震というものを体感したのはこれが初めてだ。その瞬間は本当に恐ろしかったし、呆然としてしまった。よそから来た人間は恐れおののいていたけど、成都の人たちは割と落ち着いていた」(劉国梁)
「その時間にぼくはちょうど歯を磨いていた。部屋が揺れるのを感じて、まるで飛行機が通過した時のような轟音が聞こえた」(馬琳)

 4月20日8時2分(日本時間9時2分)、四川省雅安市蘆山県で、マグニチュード7.0の大地震が発生。国家男子チームが集合訓練を行っていた四川省成都市でも揺れが感じられ、コーチや選手たちは慌てて建物の外に避難した。卓球場などの施設点検のため、20日午前中の練習は屋外でのトレーニングに変更された。

 2008年5月の四川大地震など、大地震もたびたび起きている印象がある中国だが、国土全体を見ると地震の発生しない地域が多い。日本人には信じられないことだが、劉国梁総監督が微博(マイクロブログ)で告白しているように、一生地震を知らずに過ごす人もいる。選手たちも相当なショックを受けたようだ。
 また、国家男子チームではコーチの呉敬平と肖戦も四川省の出身。「このような大災害の現状を見て、四川の人間として非常に心を痛めている。被災地の方々が必ずこの困難を乗り越え、美しい郷土を再建することを信じている」(呉敬平)。

 国家卓球チームは被災地に30万元(約480万円)を寄付することを決定。先日の韓国オープンでの、韓国選手との国際ペアで獲得した6千ドルあまりの賞金も、被災地に寄付されることになった。国家男子チームは当初の予定では4月25日に成都市を離れ、広東省中山市で集合訓練中の女子チームと合流する予定だったが、25日まで成都市で訓練を続けるかどうかは今のところ未定だ。

photo:初の地震体験を語った劉国梁監督。しかし、義援金などの行動は相変わらず非常にすばやい
[女子] ◎=世界選手権(個人戦・団体戦)の出場回数
WR1   丁寧 Ding Ning 1990.6.20 左S裏裏ドライブ型 黒龍江省大慶市出身 ◎6回目
WR2   劉詩ウェン Liu Shiwen 1991.4.12 右S裏裏ドライブ型 遼寧省撫順市出身 ◎6回目
WR3   李暁霞 Li Xiaoxia 1988.1.16 右S裏裏ドライブ型 遼寧省鞍山市出身 ◎8回目
WR8   朱雨玲 Zhu Yuling 1995.1.10 右S裏裏ドライブ型 四川省綿陽市出身 ◎初出場
WR10  陳夢 Chen Meng 1994.1.15 右S裏裏ドライブ型 山東省青島市出身 ◎初出場
WR11  武楊 Wu Yang 1992.1.5 右S裏+表カット型 山西省陽泉市出身 ◎2回目
WR15  郭躍 Guo Yue 1988.7.17 左S裏裏ドライブ型 遼寧省鞍山市出身 ◎11回目
WR33  文佳 Wen Jia 1989.2.28 左S裏裏ドライブ型 遼寧省丹東市出身 ◎初出場
WR103 饒静文 Rao Jingwen 1985.3.26 右S裏+表攻撃型 湖北省武漢市出身 ◎初出場
WR─   胡麗梅 Hu Limei 1995.9.28 右S裏+粒カット型 山東省シ博市出身 ◎初出場

[女子種目のエントリー]
☆女子シングルス …… 丁寧、劉詩ウェン、李暁霞、朱雨玲、陳夢、武楊、胡麗梅
☆女子ダブルス  …… 郭躍/李暁霞、丁寧/劉詩ウェン、朱雨玲/陳夢
☆混合ダブルス  …… 王励勤/饒静文、陳杞/胡麗梅、邱貽可/文佳

 上記はパリ大会を戦う中国女子チームのメンバー。10名のうち5名が初出場となった。
 郭躍が頸椎を傷めてシングルスの代表から外れ、郭炎が第一線を退いたことで、世界ランキングの上位を独占していた「トップ5」は崩れた。馬龍・張継科・許シンのトリオが強力な男子同様、女子も世界ランキング1位を経験している丁寧・劉詩ウェン・李暁霞の3名が有力な優勝候補。この3名にカットの武楊と胡麗梅、若手の朱雨玲と陳夢を加えた布陣に隙はない。男子の邱貽可同様、女子の異質攻撃型・饒静文の起用も予想外だったが、国家チームに貢献してきた「功労賞」ということか。

 女子代表10名の平均年齢はちょうど22歳。日本女子の代表8名の平均年齢が23歳なので、日本よりもさらに若返りが進み、中国の新人類と言われる「90後(ジウシィホウ=1990年以降に生まれた世代)」の選手も5名含まれている。日本の学制に当てはめてみると、丁寧は今年4月から新卒の社会人1年目、劉詩ウェンは就活まっただ中の大学4年生、朱雨玲は大学に入学したばかりの大学1年生、胡麗梅は高校3年生という感じ。…す、少しは親近感が沸くでしょうか。アラサーは28歳の饒静文だけです。

 中国チームの劉国梁総監督は、「これはまだ最終エントリーではない。世界選手権開幕の直前まで、いつでも変更することができる」と発言しているが、これは代表選手たちの気持ちを引き締めるための、毎年恒例の決まり文句。故障などがない限り、ここからエントリー変更したケースはほとんどない。パリ大会開幕も、いよいよ間近に迫ってきた。
  • 劉詩ウェンにとってパリ大会はまさに正念場

  • 陳夢、天賦の才をパリで見せつけるのか

 4月16日にITTF(国際卓球連盟)から発表された世界選手権パリ大会(個人戦)のエントリーリスト。中国男子は実に13人もの代表選手をパリヘ送り込む。オーストリアのWSA(ヴェルナー・シュラガー・アカデミー)で行われる直前合宿に帯同するメンバーはオープンになっており、「ずいぶんトレーナーの数が多いな」と思っていたら、なんと全員代表選手だった。中国男子チームの代表メンバーは下記のとおり。

[男子] ◎=世界選手権(個人戦・団体戦)の出場回数
WR1  馬龍 Ma Long 1988.10.20 右S裏裏ドライブ型 遼寧省鞍山市出身 ◎8回目
WR2  許シン Xu Xin 1990.1.8 左P裏裏ドライブ型 江蘇省徐州市出身 ◎6回目
WR3  張継科 Zhang Jike  1988.2.16 右S裏裏ドライブ型 山東省青島市出身 ◎6回目
WR4  王皓 Wang Hao 1983.12.1 右P裏裏ドライブ型 吉林省長春市出身 ◎11回目
WR8  馬琳 Ma Lin 1980.2.19 右P裏裏ドライブ型 遼寧省瀋陽市出身 ◎15回目
WR9  王励勤 Wang Liqin 1978.6.18 右S裏裏ドライブ型 上海市出身 ◎13回目
WR12 ハオ帥 Hao Shuai 1983.10.1 左S裏裏ドライブ型 天津市出身 ◎5回目
WR16 陳杞 Chen Qi 1984.4.15 左S裏裏ドライブ型 江蘇省南通市出身 ◎7回目
WR22 閻安 Yan An 1993.1.12 右S裏裏ドライブ型 北京市出身 ◎2回目
WR29 方博 Fang Bo 1992.1.9 右S裏裏ドライブ型 遼寧省瀋陽市出身 ◎初出場
WR39 樊振東 Fan Zhendong 1997.1.22 右S裏裏ドライブ型 広東省広州市出身 ◎初出場
WR40 周雨 Zhou Yu 1992.5.19 左S裏裏ドライブ型 江蘇省泗陽市出身 ◎初出場
WR—  邱貽可 Qiu Yike 1985.1.18 右S裏裏ドライブ型 四川省成都市出身 ◎5回目

 [男子種目のエントリー]
★男子シングルス …… 馬龍、許シン、張継科、王皓、閻安、馬琳、樊振東
★男子ダブルス  …… 王励勤/周雨、馬琳/ハオ帥、陳杞/方博
★混合ダブルス  …… 王励勤/饒静文、陳杞/胡麗梅、邱貽可/文佳

 男子シングルスの推薦出場枠は馬琳と樊振東が獲得。これは予想どおりの結果だ。中国リポート担当としては、何といっても注目してほしいのは樊振東。インドでその才能に惚れました。ビッグゲームでの経験はないが、すでに実力的には王皓や馬琳を凌駕(りょうが)するほどのものがある。将来性の高い周雨や方博にはベテランとのペアで経験を積ませ、次回大会以降につなげる布陣だが、邱貽可のエントリーだけはナゾである。

 今回のエントリーで目を引くのは、やはり男子ダブルスだろう。前回優勝の馬龍/許シンをエントリーせず、準優勝の馬琳/陳杞ペアをわざわざ崩している。前回のロッテルダム大会でも混合ダブルスにトップクラスをエントリーせず、国家体育総局の蔡振華副局長が「中国がタイトルを獲得しなくてもよかった」と発言していたが、今回はそれを男子ダブルスにまで広げてきた。先日の韓国オープンでの国際ダブルスと同様、中国卓球協会による〝養狼(ヤンラン)計画〟の一環だ。タイトルを多くの協会に分散させることで、より世界的な卓球熱が高まり、「狼=中国のライバル」の育成につながるということだ。

 しかし、世界選手権はあくまで卓球界の最高峰の大会。ベストの選手やペアを派遣しないことは、世界選手権のステータスの低下につながる。タイトルの価値そのものが低くなってしまったら、タイトルが分散したところで、卓球人気の拡大につながるとは思えない。たとえば1990年代前半、黄金時代のスウェーデンを始めとするヨーロッパの強豪たちが、中国や韓国の強打者たちと火花を散らした時代には、及ぶべくもないだろう。
 もちろん「養狼計画」は中国での国際訓練基地の建設など、海外選手の地道な強化を進めている部分もある。しかし、今回の選手エントリーや国際ダブルスなどは少々短絡的で、特有の合理性が裏目に出ている感が否めない。やはり必要なのは真のライバルだ。
  • 〝大満貫〟へのラストチャンスをつかんだ馬琳

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 4月3〜7日に韓国・仁川で行われたITTFワールドツアー、Korean Air韓国オープン。男子ダブルスで中国選手が韓国・フランスの選手と国際ペアを組んだことで注目を集めた。大会初日の練習などでは、ペアを組んだ韓国選手が緊張してしまい、劉国梁監督曰く「混合ダブルスのようだった」そうだが、結局ベスト4を国際ペアが独占。マテネ/許昕(フランス/中国)を除く3ペアは、いずれも中国選手と韓国選手のペアリングだった。

 ここで問題になるのは、獲得賞金をどのように分配するかということ。特に合計6100ドル(約59万円)を獲得した、韓国卓球協会との間で分配が問題になった。
 まず韓国が、賞金のすべてを中国側に譲ることを提案したが、中国もそれを受け入れるのは卓球大国のプライドが許さない。帰国間際の仁川国際空港でも、中国チームを食事に招待した大韓卓球協会側から再三の「賞金は全部中国チームにお渡しする」という要請があったが、ここで劉国梁監督が韓国の慈善団体へ寄付することを提案。韓国、なおも譲らず「それなら中国の慈善団体へ寄付すべき」ということで、結局中国の慈善団体への寄付金となることが決まった。韓国側は全額を寄付するが、中国側は賞金の60%を国に収めねばならず、残りの40%を寄付することになるという。

 今回が初めての試みとなった、中国選手による国際ダブルス。賞金の分配についても、ひとつの前例を作った形だ。ただ、今回は韓国やフランスの選手とのペアリングになったが、劉国梁監督は「レベルを問わず、どの国の選手とペアを組んでも良い」と明言しており、まだレベルの低い協会の選手とのペアも考えられる。その場合は、獲得した賞金も寄付ではなく、相手選手の協会へ渡すケースも出てくるだろう。

photo:韓国オープンで優勝した徐賢徳(手前)/張継科ペア
(写真提供:アン・スンホ/ITTF)
 昨日14日に閉幕した第26回アジアカップ。開幕前日に行われた公開抽選(ドロー)の場に、現在香港に住んでいる張怡寧が登場した。09年全中国運動会での優勝を最後に現役を退いた女王は、昨年4月に女の子を出産。「俏俏(チャオチャオ)」という幼名(小さい頃の呼び名)がつけられた娘さんは、元気に成長している。
 「娘は1歳と少しで、やっと歩けるようになったばかり。一緒にいると本当に疲れますね。でも卓球の試合や練習と比べたら、やっぱり卓球のほうがキツいですね」(張怡寧/出典『文滙報』)

 「もし娘が卓球に興味を持つなら、卓球をやらせてもいい」と以前から発言していた張怡寧。「自分と同じように卓球選手になるとしたら、香港代表として国際大会に出ることになるでしょう」(張怡寧)。子どもが男の子なら、旦那さんの徐威さんのような実業家というのが既定路線だったはずだが、俏俏ちゃんはひょっとしたらラケットを握るようになるかもしれない。ちなみに香港女子チームには、87年世界選手権女子単3位の管建華の娘さん、管夢圓がいる。

photo:張怡寧と娘さんの俏俏ちゃん。俏俏ちゃんはどちらかというとパパ似
(写真提供:『ピンパン世界』)
 今日4月12日、中国女子チームの劉詩ウェンが22歳の誕生日を迎えた。「騰訊」と「新浪」というふたつのポータルサイトに微博(マイクロブログ)のページを持っている劉詩ウェン。どちらのページにも公式ファンクラブのメンバーやチームメイトたちから、お祝いの言葉が舞い込んでいる。

 劉国梁総監督からは、 「棗児、誕生日おめでとう。一歩ずつ成長して、甘さが内からにじみ出るような〝蜜棗〟になってください」 という、何とも粋なコメントが寄せられた。
 「蜜棗(ミイザオ)」というのは、中国ではお茶うけの定番である、ナツメの実の砂糖漬けのこと。これまでにも中国リポートで紹介しているが、「小棗」「棗児」というのが劉詩ウェンの昔からのあだ名なのだ。ジュニア時代のぷっくりした顔の形が棗(ナツメ)の実にそっくりだということで、先輩の郭炎が命名。劉詩ウェンも「最初はイヤだったけど、だんだん慣れてしまった」そうだ。本当に似ているかどうか、気になる人は調べてみて下さい。

 現在、香港で行われているアジアカップに出場している劉詩ウェン。お祝いのメッセージに対して、微博で「みんなありがとう! 祝福のメッセージを貰ってすごくうれしいし、幸せです。これからも自分の夢に向かって走り続けます!」とコメントを返している。
 同世代のどの選手よりも早く色づきはじめた、早熟なナツメの実は、あと一歩熟し切ることができないまま、風に揉まれ、雨に打たれている。2010年の世界団体選手権モスクワ大会、女子団体決勝での痛恨の敗戦から3年。完全復活をアピールするには、来月の世界選手権パリ大会でタイトルを獲得するしかない。

 下写真は中国の卓球雑誌『ピンパン世界』の最新号に登場した劉詩ウェン(2013年4月号/提供『ピンパン世界』)。最近のお気に入りのブランドはクロムハーツとのこと。
 4月6〜7日に行われた、中国女子チームの世界選手権パリ大会代表選考会「直通巴黎(パリ)」第3ステージ。丁寧、朱雨玲、陳夢、文佳の4名が出場し、丁寧と朱雨玲がパリ大会のシングルスの切符を獲得した。結果は以下のとおり。

☆☆☆ 女子「直通巴黎」・第3ステージ 4.6〜7/広東省中山市 ☆☆☆

〈第1ステージ〉●準決勝
朱雨玲 2、8、9 文佳
丁寧 10、7、7 陳夢
●決勝 丁寧 −9、6、5、−7、8 朱雨玲
★丁寧が5人目の中国女子代表に決定!

〈第2ステージ〉※3選手で争い、2連勝した選手が勝ち抜け
陳夢 9、9、3 文佳
朱雨玲 −3、8、9、8 文佳
朱雨玲 −7、7、−5、11、8 陳夢
★朱雨玲が6人目の中国女子代表に決定!

 現世界女王の丁寧が、5人目でようやくパリ大会の代表権を得た。前日の5日の練習で左膝を傷め、チームドクターに治療を受けたが、この第3ステージは絶対に棄権するわけにはいかなかった。準決勝で陳夢をストレートで破ると、決勝では朱雨玲をゲームオールで撃破。第5ゲーム10−8のマッチポイントでは、バックドライブから会心のパワードライブを朱雨玲のフォアサイドに打ち込み、大きくガッツポーズを決めた。
 「自分が負けるなんて少しも考えなかった。もし考えたら、その時点で負けだと思っていた。パリ大会まで、まず体調をしっかり整えていきたい」(丁寧)

 そして中国女子の次代を担うふたり、朱雨玲と陳夢による6人目の代表争いも熾烈を極めた。第1ゲーム、第3ゲームを奪って試合を優位に進めた陳夢が、第4ゲームも6−6から10−7とリードを広げてマッチポイント。しかしここから朱雨玲が追いつき、さらに陳夢が11−10で迎えた4回目のマッチポイントもしのいで、13−11と逆転でこのゲームを奪取。最終ゲームは朱雨玲が中盤からリードを広げ、11−8で熱戦に終止符を打った。

 「勝ちたいと思っている相手にとって、最後の一点を取るのは簡単なことではありません。だから私はあの場面でも、むしろリラックスしていたし、冷静でした」。マッチポイントを奪われた時の心境を聞かれ、そう答えた朱雨玲。このメンタルの強さが朱雨玲の最大の魅力だ。「パリ大会の第一の目標は外国選手に負けないこと。パリ大会でいろいろな経験を積んで、今後の基礎にしていきたい」(朱雨玲)。彼女の視線はパリ大会の先にある、2016年のリオデジャネイロ五輪をとらえているはずだ。

 これで中国女子の7つのシングルス代表枠のうち、李暁霞、劉詩ウェン、武楊、胡麗梅、丁寧、そして朱雨玲と6つまで決定した。残る協会推薦のひとりは誰になるのか。この第3ステージの結果を見る限り、陳夢になる可能性が高そうだ。
  • ようやくパリへの切符を手にした丁寧

  • 朱雨玲はパリ大会のダークホースのひとり

 3月18日に集合訓練を行う広東省中山市に到着した国家女子チームは、翌19日から39日間の日程で集合訓練に入っている。コーチに選手、トレーナーにコック、総勢53名もの大所帯だ。

 辛亥革命(1911〜1912年)の指導者だった孫文の出身地であることから、孫文の号である孫中山にちなんで名前がつけられた中山市。国家女子チームが集合訓練を行うのはこれで6回目になる。現在ワールドチームクラシック(WTC)が行われている広州市までは車で2時間弱ほどの距離。中国女子は丁寧・劉詩ウェン・李暁霞の主力3名にカットの武楊、そして郭躍とエントリー変更された常晨晨を加えた布陣。郭躍は集合訓練には帯同しているが、頸椎だけでなく肩にも故障を抱え、トレーニングの量を落としているという。

 国家女子チームは4月6・7日に「直通巴黎(直通パリ)」の第3ステージを開催。すでに李暁霞、劉詩ウェン、武楊、胡麗梅の4人が代表権を獲得しているが、第3ステージでは丁寧、朱雨玲、陳夢、文佳の4名が2枚の代表切符を争う。残るひとつの代表枠は協会推薦になるだろう。
 世界女王の丁寧は、「直通巴黎」で意外な苦戦が続いている。地元開催のワールドチームカップでも結果を出さねばならず、第3ステージに向けての調整はなかなか難しい。仮に第3ステージで敗れても、推薦出場枠でパリ大会には出場できるだろうが、やはり自力で決めておきたい。「外国選手との試合がまず重要なので、ワールドチームカップに向けてしっかり調整したい。チームメイトの手の内はよく知っているので、大会が終わってからしっかり準備したい」(丁寧/出典:『騰訊体育』)。

 なお、ワールドチームクラシックのグループリーグ初戦では、中国女子はアメリカに3−0で快勝。これが代表監督としてのデビュー戦になる孔令輝監督は、試合後の会見で次のように語った。「ロンドン五輪と同じメンバーを揃えた日本が最大のライバル。次にシンガポールと韓国が来るだろう」。前回も決勝で相まみえた中国と日本。日本は0−3で敗れたが、今回はひと泡吹かせたい。

photo:まずはワールドチームカップでの活躍を誓った丁寧
 3月13日に四川省成都市に入り、中国卓球協会・西部国際培訓センターで40日の集合訓練を行っている中国男子チーム。これまで女子チームが集合訓練に2回使用している成都の訓練基地だが、男子チームが集合訓練を行うのはこれが初めてだ。
 日本のNTC(ナショナルトレーニングセンター)も簡単には中に入れないが、国家チームの集合訓練も徹底しており、関係者以外は練習場や宿舎には近づけない。一度関係のない人間が偶然練習場に入ってしまったことがあり、劉国梁監督は設備の管理責任者である成都市卓球運動学校の戴天元校長にすぐ抗議したという。「戴さん、練習場の管理は一体どうなってるんですか? 見てください、誰でも入って来られるじゃないですか!」(出典:『騰訊体育』)。朝早くから夜遅くまで、少しでも周りより長く練習したがる選手たちの警備は、骨が折れる仕事だろう。

 以前にもお伝えしたことがあるが、選手たちはドーピングの禁止薬物が含まれた食肉の摂取を避けるため、豚肉や牛肉はすべて北京で検査済みのものを成都まで空輸している。選手たちの旺盛な食欲ですぐになくなってしまうため、週に1回大量に配達されるそうだ。地元で買えば安いものだが、検査と空輸を経たお肉は、相当な高級品ということになる。
 さらに国家体育総局トレーニングセンターに所属する厨師(コック)も帯同し、選手たちの料理を作る。この厨師がまた、猛烈に忙しい。朝5時半から選手たちの朝食の準備を始めて、夜の9時前には夕食を作り終わるのだが、居残り練習をする選手たちが食堂に来るのは22時過ぎになるため、厨師はずっと食堂に残って料理を作り直したり、温めたりしなければならない。選手たちの食事が終わるのは日付が変わる頃、厨師がようやく眠りにつけるのは午前1時頃になるという。

 多くのスタッフの努力によって、恵まれた住環境と練習環境が提供され、しかしその姿は市民からはほとんど目にすることができない。河南省の『大河報』では、そんな集合訓練に明け暮れる選手たちのことを「熊猫軍団(パンダ軍団)」と表現している。成都市にあるパンダの繁殖基地に引っかけたネーミングだが、なかなかうまくいったものだ。

 中国男子チームは明日28日から広東省広州市で行われる2013ワールドチームクラシックに王皓・馬龍・許シン・張継科・王励勤の5名が出場。世界代表4名に、世界戦出場の可能性は低い王励勤という何とも微妙な布陣だ。

photo:選手の安全管理にも気を配る劉国梁監督(右)。ちなみに大好物は「西紅柿炒鶏蛋(トマトと卵の炒め物)」