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中国リポート

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1. 広州でアジア競技大会の“宝貝”選抜を開催

 11月12日に広東省広州市で開幕する第16回アジア競技大会。その開催に合わせ、現在広州市では『2010中国移動・亜運(=アジア競技大会)卓球文化節』というキャンペーンを実施中。その目玉となるのが『愛ピン宝貝選抜大賽』だ。『宝貝(バオベイ)』は英語の『baby』の音訳で、スポーツの世界では試合を盛り上げるチアリーダーや応援団のことだ。
『亜運卓球“宝貝”選抜大賽』では、自薦・他薦を問わず、アジア競技大会・卓球競技の形象大使(イメージキャラクター)となる人を広く募集。『宝貝』というと普通は女性のことだが、男性でもOKらしい。年齢は18~24歳で独身、男性は身長165cm以上、女性は身長160cm以上という条件が付けられている。すでに1万人を超える応募があり、広州市の各大学を会場として行われる第一次審査を経て、星海音楽学院で行われるファイナルステージに向け、候補を絞り込んでいくとのこと。
 ↓下は『2010中国移動・亜運卓球文化節』のホームページ
http://life.dayoo.com/life/94326.shtml

2. 孔令輝、10万元のカメラを恋人にプレゼント

 「いよいよ結婚間近!」「実はもう別れている?」とたびたびマスコミを賑わせているビッグカップル、00年シドニー五輪金メダリストの孔令輝と女優の馬蘇(マァ・スー)。
 最近、急にカメラに凝りだしたという馬蘇。手にしているのは、ニコンの最上位機種であるニコンD3S。カメラ本体だけで3万元(約40万円)以上する。馬蘇曰く、孔令輝が10万元(約130万円)以上をかけて、カメラ本体とレンズを3本買ってくれたとのこと。プレゼントしてくれたのか、おねだりして買わせたのかは定かではないが…。ちなみに、馬蘇にとってこのプロモデルはあまりに専門的すぎて、まだほとんど使っていないそうだ。
 昨年の馬蘇の誕生日には、プラダの新作バッグをプレゼントした孔令輝。果たしてゴールインはいつの日になるのか…。

Photo:世界選手権モスクワ大会での孔令輝。だんだん“王子”の面影が薄れていくような…
 10月12日の午後2時、国家男子1軍チームのコーチである秦志ジェン(晋+戈)に第一子となる男の子が誕生した。体重6斤(3000g)の男の子で、母子ともに健康とのこと。
 …すでに引退して5年近くになるので、「秦志ジェン? 誰?」という方もいるかもしれない。01年世界選手権で、楊影と組んだ混合ダブルスで金メダルに輝くなど、世界選手権のダブルスで金1・銅3のメダルを獲得したダブルスの名手だ。

 1976年10月5日生まれ、今年で34歳になった秦志ジェンは江蘇省鎮江市の出身。6歳で卓球を始め、93年に17歳で国家1軍チーム入り。翌94年にはワールドチームカップの団体メンバーに抜擢されているが、同世代の孔令輝や劉国梁が一気に頭角を現していったのに比べ、秦志ジェンはなかなか期待に応えられなかった。重点強化選手から、韓国のペンドライブ型を仮想した「陪練(トレーナー)」に格下げされた、不遇の時代もあったという。「中国の(ひと昔前の)左のペンドライブ型」といったら、誰もが秦志ジェンのひとつ年上の先輩、閻森を思い出すのではないだろうか。世界選手権のシングルスにはついに出場の機会が与えられなかった。
 しかし、現役時代の後半に見せたテクニックの冴えは抜群。裏面打法はまだ発展途上だったが、固いバックショートに加え、「陪練」時代の経験を活かしたバック強打も、他の中国選手にはない技術だった。

 05年全中国運動会での団体優勝を花道に現役を引退し、現在は国家男子1軍チームのコーチをつとめている秦志ジェン。担当するのは馬龍、許シン、呉ハオと国家チームの中枢(ちゅうすう)を担っていく選手たちで、さらに昨年1月から王励勤も担当選手となった。お子さんも生まれ、公私ともに充実の秦志ジェン、コーチとしてもバリバリ手腕を発揮していきたいところだ。

Photo上:09年世界選手権で、許シンのベンチに入った秦志ジェン
Photo下:こちらも横浜大会でのひとコマ、2つ年下の王励勤との師弟コンビ
☆女子シングルス
●3回戦

丁寧(北京市) 9、7、9、-7、12 武楊(山西省)
饒静文(湖北省) 12、-2、5、-5、-6、6、9 李暁霞(山東省)
曹臻(解放軍) -10、2、6、6、7 馮亜蘭(湖北省)
文佳(遼寧省) 5、4、5、4 李暁丹(山西省)
●準々決勝
劉詩ウェン(広東省) 6、11、-6、3、7 范瑛(江蘇省)
丁寧 13、-10、1、4、11 郭躍(遼寧省)
曹臻 8、8、-7、7、-4、7 饒静文
郭炎(北京市) 6、4、9、-14、4 文佳(遼寧省)
●準決勝
丁寧 9、-9、8、3、6 劉詩ウェン
曹臻 10、-7、6、-3、8、8 郭炎
●決勝 丁寧 13、11、4、12 曹臻

 全中国選手権女子シングルスは、郭躍、劉詩ウェン、曹臻を連破した丁寧が初優勝。世界選手権モスクワ大会決勝での敗戦に加え、超級リーグでは甲Aとの入れ替え戦も経験した苦しいシーズンに、久々の明るいニュースとなった。
 丁寧にとって、優勝への最大の難関となったのは準決勝の劉詩ウェン戦。超級リーグなどの対戦成績では劉詩ウェンがリード。丁寧が序盤でリードしながら、劉詩ウェンが逆転する展開が多かったが、この試合では最後まで攻撃の手を緩めず。勝負を焦った劉詩ウェンにもミスが多く、丁寧がこの試合を4-1で乗り切ると、決勝は曹臻に競り合いながらもストレート勝ち。08年大会も準優勝の曹臻は、2大会連続で2位に甘んじた。「決勝は4-0だったけど、決して楽な試合ではなかった。お互いに緊張して硬くなると思ったので、試合中は一球一球、集中してプレーすることを心がけた」(丁寧/出典『北京晨報』)。モスクワ大会からの帰国後、すぐに超級リーグが開幕したため、落ち込んでいる暇はなかったという丁寧。この優勝で完全復活なるか。

☆女子ダブルス
●準決勝

郭躍/李暁霞(遼寧省/山東省) 10、10、5、3 曹臻/馮亜蘭(解放軍/湖北省)
曹麗思/陳夢(北京市/山東省) 11、-9、-10、9、7、4 劉詩ウェン/丁寧(広東省/北京市)
●決勝 郭躍/李暁霞 11、-9、-11、6、7、5 曹麗思/陳夢

☆混合ダブルス
●準決勝

呉ハオ/木子(山東魯能/解放軍) 8、7、7、-1、-8、11 王励勤/郭炎(上海市/北京市)
陳杞/劉詩ウェン(解放軍/広東省) 9、-13、10、5、7 邱貽可/李暁丹(四川省/山西省)
●決勝 呉ハオ/木子 7、5、9、9 陳杞/劉詩ウェン

 女子ダブルス優勝は郭躍/李暁霞が2大会ぶり3回目の優勝。シングルスでは振るわなかった両選手だが、ペアを組んだ時の攻撃力、安定感はさすがに世界最強ペアの貫禄。ちなみに、14歳で全中国選手権を制した李暁霞とは対照的に、郭躍はまだ全中国選手権のシングルスのタイトルがない。前回大会の文佳も相当なダークホースだったが、過去の大会を見ても00年大会の白楊、06年大会の彭陸洋など、伏兵がタイトルをさらうことが多い大会だ。
 そして混合ダブルスでは、こちらも超が付くダークホースの呉ハオ/木子が優勝。3回戦で横浜大会を制した李平/曹臻との激戦を制し、国家チームの主力級ペアを4連破する大活躍を見せた。左シェークドライブ型の呉ハオは、超級リーグのシングルスでは5勝止まりだが、ダブルスではすでに32勝を挙げているダブルスの名手。今後の成績次第では、陳杞の後を継ぐダブルス要員への道も開けるか?

 Photo上:全中国で初優勝を飾った丁寧
Photo中:実力者の曹臻だが、なかなか国家チームのトップクラスに食い込めない
Photo下:呉ハオのハオは、「景+頁」です
(写真はすべて09年全中国運動会)
☆女子団体
●決勝トーナメント1回戦

湖北省 3-2 遼寧省   北京市 3-2 山西省
●準々決勝
北京市 3-0 黒龍江省  解放軍 3-1 河南省
広東省 3-1 江蘇省   湖北省 3-2 山東省
●準決勝
[北京市 3-0 解放軍]

○丁寧 9、5、9 曹臻
○郭炎 -9、4、6、9 木子
○盛丹丹 7、-10、9、6 楊揚
[湖北省 3-0 広東省]
○饒静文 -9、9、8、12 劉詩ウェン
○馮亜蘭 7、5、9 周芳芳
○劉娟 6、8、9 蔡賽
●決勝
[北京市 3-1 湖北省]

○丁寧 -8、5、10、4 饒静文
 郭炎 -2、-12、-11 馮亜蘭○
○曹麗思 8、5、11 劉娟
○丁寧 3、8、-7、6 馮亜蘭

 2010全中国選手権、女子団体優勝は北京市。08年全中国選手権、09年全中国運動会に続く優勝を果たした。
 大エースの張怡寧が抜けても、郭炎と丁寧がいれば優勝は当然、とも思えるが、実際には優勝までの道のりは楽ではなかった。アラブ首長国連邦のドバイで行われたワールドチームカップから続く強行軍、さらにドバイの40℃を超える気温と空調の効いた会場の気温差などで、郭炎と丁寧が発熱のアクシデント。特に郭炎は症状が重く、団体第1ステージの2試合では、丁寧が1試合出場するのみに留まった。「ドーピング検査がすごく厳しくなっているので、むやみに風邪薬を飲むわけにはいかない。水をガブガブ飲んで、チームドクターからもらった服用できる薬を飲んで、やっと症状がおさまってきた」(郭炎)。

 郭炎と丁寧が揃って出場した決勝トーナメント1回戦でも、山西省のエース李暁丹に丁寧と郭炎が敗れ、ラストまで追いつめられたが、ここを乗り切ると準々決勝、準決勝はストレート勝ち。決勝では湖北省を相手に1点落としたものの、丁寧がシングルス2得点。4番では今シーズンの超級リーグで3連敗している馮亜蘭から2ゲームを先取し、第3ゲームは2-6から怒濤の9点連取で優勝を決めた。
 奇しくも団体決勝が行われた10月5日は、張怡寧の29歳の誕生日。丁寧は張怡寧に「生日快楽(ハッピーバースデー)」のメールを送ったそうだ。張怡寧、家でゆっくり過ごせる誕生日は、本当に久々ではないだろうか。

 また、一気に決勝まで勝ち上がり、女子団体のダークホースとなった湖北省は、腰痛を抱える郭躍が欠場した遼寧省を決勝トーナメント1回戦で撃破。準々決勝では山東省の李暁霞に2点取られながらも競り勝ち、準決勝ではトップ饒静文が劉詩ウェンを破る活躍を見せた。名門チームを連破しての決勝進出に、古豪復活の感あり。中陣からパワードライブを連発する馮亜蘭、前陣異質速攻の饒静文、サウスポーの技巧派ペンドライブ型・劉娟とバラエティに富む布陣で、劉娟が3番で渋くポイントを稼いだ。

Photo上:丁寧、女子団体ではMVP級の活躍
Photo下:湖北省の3番手、劉娟。05年8月の超級リーグ岡山大会にも来日したベテラン
 10月3~10日に江蘇省・張家港市で行われた全中国選手権。男子シングルスの結果は以下のとおりとなった。

★男子シングルス
●2回戦

宋鴻遠(魯能青島) 8、3、-7、-6、5、-6、8 ハオ帥(天津市)
尹航(解放軍) -6、8、10、-9、8、9 陳杞(解放軍)
徐克(解放軍) 4、5、10、7 侯英超(北京市)
●3回戦
ジャイ一鳴(遼寧省) 9、6、3、8 馬龍(北京市)
邱貽可(四川省) -10、-6、-6、4、10、11、6 許シン(上海市)
●準々決勝
邱貽可 6、9、-5、7、-4、10 ジャイ一鳴
雷振華(遼寧省) 11、-8、-3、13、-3、4、9 馬琳(広東省)
王皓(解放軍) 6、7、-6、10、5 張超(広東省)
張継科(山東魯能) -8、9、9、11、-11、11 王励勤(上海市)
●準決勝
邱貽可 8、9、-5、9、8 雷振華
張継科 -8、-3、12、7、7、12 王皓
●決勝
張継科 12、11、3、11 邱貽可

 張継科が決勝で邱貽可を破り、2008年大会に続いて2連覇を決めた。有名無名を問わず、実力者がズラリと揃う全中国選手権。1988年以降で見ると、男子シングルスで連覇を果たした選手は、91・92年大会の馬文革しかいない。実力者であるひとつの証明と言えそうだ。
 接戦となった準々決勝の王励勤戦で左足の肉離れを起こし、翌日の男子シングルス準決勝に臨んだ張継科。「王皓戦では出足から足の痛みは感じなかった」と言うものの、2ゲームを先取され、第3ゲームも7-10とゲームポイントを握られた。しかし、このピンチをしのぎきって逆に4ゲームを連取し、見事な逆転勝ち。「王皓の調子が良いのは、試合が始まってすぐに感じた。技術的にはほとんど差はない。第3ゲームの7-10の場面でも、最後まで決して試合を諦めず、打開策を探し続けた」(張継科)。チームの優勝に貢献したモスクワ大会に始まり、8月に中国オープン優勝、9月に超級リーグで所属する山東魯能・路安集団が優勝、そして10月の全中国選手権優勝。2010年はまさに張継科イヤーだ。

 決勝では敗れたものの、邱貽可の健闘も光る。超級リーグ・プレーオフからの好調を維持し、3回戦で許シンに0-3から逆転勝ちして勢いに乗った。準々決勝で対戦するはずだった馬龍がジャイ一鳴に敗れ、当たりが楽になったことも上位進出の一因。直線的な弾道で相手コートを襲う両ハンド強打が武器だが、決勝では張継科とのフットワークの差が出たか。
 そして、中国リポートでも負傷のニュースをお伝えした馬龍。負傷の影響はともかく、大会にエントリーし、しかも団体準決勝では王皓と陳杞を破っているのだから、3回戦での敗戦は大きなマイナスイメージ。いつも辛口の劉国梁監督のコメントも手厳しい。「馬龍のメンタルはここのところあまり良くない。ミーティングでも彼には厳しく言っておいた『今後、同じように負けることがあれば、いつまでもチャンスは続かない。ロンドンを諦めて2016年まで待てとはっきり伝えるぞ』」。

★男子ダブルス
●準決勝

王皓/馬龍(解放軍/北京市) 6、8、-7、-9、-9、9、7 張超/呉ハオ(広東省/山東魯能)
陳杞/方博(解放軍/山東魯能) 12、9、4、-9、8 馬琳/張継科(広東省/山東魯能)
●決勝
王皓/馬龍 3、-8、11、10、7 陳杞/方博

 男子ダブルス優勝は王皓/馬龍。ダブルスは所属先に関係なく、ビッグゲームを視野に入れた実戦的なペアリングを試している。09年全中国運動会で優勝した王励勤/許シンはペアを組まず、王励勤/ハオ帥と許シン/閻安のペアリング。王励勤/ハオ帥はベスト8に入ったが、準々決勝で陳杞/方博に1-4で敗れた。
 その3に続きます…。

Photo上:張継科、「二王(王励勤・王皓)」を下して2連覇(写真は10年世界選手権)
Photo下:邱貽可、もう少し早くこの活躍を見せていれば…(写真は09年世界選手権)
 10月3~10日まで、2008年大会に続いて江蘇省・張家港市で開催された全中国選手権。全中国運動会の開催年には行われないので、2年ぶりの開催ということになる。日本では全日本選手権というと選手たちの目の色が変わるが、なぜか中国では全中国選手権のステータスは今ひとつ。トップ選手が軒並み欠場することもあり、意外な選手がシングルス決勝に勝ち上がったりする。
 それでは、まず男子の3種目、男子団体・シングルス・ダブルスの結果から見ていこう。

★★★ 2010全国卓球選手権 10.3~10/江蘇省張家港市 ★★★

★男子団体
●準々決勝

解放軍 3-2 江蘇省   北京市 3-2 天津市
上海市 3-0 山東魯能  広東省 3-2 河北省
●準決勝
[解放軍 3-2 北京市]

○王皓 9、9、-9、-8、8 閻安
 陳杞 -6、-8、7、-7 馬龍○
○柳洋 10、10、9 侯英超
 王皓 -5、-7、-8 馬龍○
○陳杞 -8、9、-6、3、7 閻安
[広東省 3-0 上海市]
○馬琳 -10、4、9、-9、8 許シン
 張超 -3、-8、-5 王励勤○
○林高遠 8、-6、7、-9、8 雷振華
 馬琳 10、-6、-3、8、-7 王励勤○
○張超 16、-9、4、-8、6 許シン
●決勝
[広東省 3-2 解放軍]

○馬琳 10、6、6 陳杞
 張超 -1、-3、4、-9 王皓○
 林高遠 -9、-6、10、-9 劉亜楠○
○馬琳 4、-10、-10、9、13 王皓
○張超 8、9、13 陳杞

 準決勝で上海市、決勝では解放軍との激闘を制した広東省が2003年大会以来となる、6年ぶりの優勝を飾った。超級リーグのプレーオフ準決勝で腰を傷めた馬琳が、4番で王皓と大激戦。ゲームカウント1-2の6-9と、敗戦まであと2点の瀬戸際に追いつめられたが、ここから5点連取でゲームをひっくり返し、最終ゲームも15-13で制してラストにつないだ。王皓は準決勝の馬龍戦でプレー中に転倒し、足を負傷しながらも健闘したが、一歩およばず。
 そしてラストで陳杞を圧倒したのが、広東省の「剃り込み隊長」こと張超。これまで分が悪い陳杞に対し、積極果敢な攻撃でストレート勝ち。「陳杞はロシアリーグから戻ったばかりで、あまりプレーに迫力がなかった。ぼくらは馬琳には本当に感謝しなければならない。30歳という年齢で、体力も消耗するプレースタイルなのに、我々を引っ張ってタイトルをもたらしてくれた。本当に奇跡と言ってもいいことだよ」(張超)。

 さて、準決勝・決勝の記録を見て、「あれ?」と思った方もいるかもしれない。江蘇省男子チームのエース陳杞が解放軍チームで出場し、遼寧省男子チームのエースである雷振華が上海市チームで出場しているのだ。実は今年4月の中国国内の選手登録一覧でも、すでに彼らの所属の変更が伝えられていた。
 これは中国ではしばしば見られる、「轉会(チュアンホイ)」と言われる選手のトレード。たとえば今年、遼寧省と上海市の間で行われた「轉会」では、遼寧省男子チームの雷振華と上海市女子チームの姚彦がトレードされた。上海市男子チームは王励勤と許シンに雷振華が加わって選手層が厚くなり、サウスポー中心の遼寧省女子チームにとっては、右利きの実力者・姚彦の加入は大きい。ともに男女チームの実力にかなり差があるため、片方のチーム力を特化するトレードが成り立つ。江蘇省と解放軍の「轉会」の場合は、陳杞と国家女子2軍チームの李彦謹のトレードで、どうにも不釣り合いな気がするのだが…。もっとも、その陳杞も決勝では2点を落とし、解放軍の助っ人としての役割を果たすことはできなかった。

 今年行われた「轉会」は、すべて2013年に行われる第12回全中国運動会への布石。陳杞は2013年まで解放軍チームの一員として国内大会に出場する。超級リーグに関しては、来シーズンも江蘇省チーム所属のままでプレーするそうだ。
 …「轉会」についてつらつらと書いていたら、スペースがなくなってしまいました。男子シングルスはその2に譲ります。

Photo上:馬琳、ここ一番での集中力はさすが
Photo下:パワフル張超、なんと準々決勝から3試合連続ラストで勝利
(写真は10年全中国運動会)
 現世界ランキング1位で、来年の世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)、2012年ロンドン五輪の有力な優勝候補である馬龍が、左足に故障を抱えていることが伝えられている。

 10月3~10日に江蘇省張家港市で行われた『2010年全中国卓球選手権』(試合の結果は後ほどお伝えします)。馬龍はこの全中国選手権の団体予選リーグで欠場が続き、報道陣の間で話題に。そして、北京市男子チームのチームメイトである侯英超から、「馬龍は足をケガしている。チームには帯同しているが、今大会に出場するかどうかわからない」ことが明らかになり、北京市男子チームの張雷監督も報道陣の質問に答えざるを得なくなった。以下は張雷監督のコメントだ。
「馬龍は左足を傷めている。当初の診断では、左足の外側の骨、足首のやや上の部分に亀裂が見られるということだった。超級リーグで傷めたもので、昔からの古傷だったところだ。国家チームの首脳陣とも話し合っているが、もし今後に影響が出るようなら全中国選手権は棄権させても構わない。傷を悪化させて、かつての劉国正のような事態になってしまったら、取り返しがつかない」(張雷/出典『新浪体育』)。
 来月にはアジア競技大会を控え、男子団体とシングルスへの出場が有力視される馬龍。もし手術ということになれば、アジア競技大会の欠場はもちろん、今後のビッグゲームにも大きな影響が出るし、手術をしなくてもアジア競技大会への出場は微妙だ。「今はなるべく安静にしているしかない。手術はリハビリに長い時間がかかるから、手術せずに骨が癒着するのが一番だ。なるべく手術は避けたい」(張雷)。

 「馬龍、競技生命の危機か」と加熱する報道の一方で、馬龍本人はプレーへの影響は確かにあるとしながらも、「骨にヒビなんて入ってないよ。そんな重大なものじゃなくて、ちょっとくじいただけ。試合で集中している時には痛みなんて感じない」と楽観的だ。ちなみに全中国選手権では、男子団体決勝トーナメントから試合に出場。チームのベスト4進出に貢献し、準決勝の八一解放軍戦では王皓と陳杞を連破。一方でシングルスでは、ベスト8決定戦でジャイ(曜の右側)一鳴に0-4のストレートで敗れている。
 左足の故障の影響がどれだけあるのかは不明だが、馬龍の最近のプレーがやや精彩を欠くのは事実。中国男子チームの劉国梁監督も、故障には一切触れず、「彼がすでに崖っぷちにいることは確かだろうね」とバッサリ。「馬龍時代」の到来は、近いようでまだ遠いようだ。

Photo:馬龍、アジア競技大会には出場できるのか(写真は10年世界選手権)
☆2010「361°」中国卓球クラブ超級リーグ・女子最終順位
1. 山東魯能
2. 大同雲崗-金地砿業
3. 遼寧鞍山城投房産
4. 山西大土河・華東理工
5. 広東深セン長園集団
6. 八一冀中能源
7. 内蒙古銀行
8. 北京控股
9. 江蘇中超電纜

☆女子シングルス・勝利数十傑(プレーオフ含む)
1. 李暁霞(山東魯能/27勝7敗)
2. 丁寧(北京控股/26勝12敗)
3. 劉詩ウェン(広東深セン長園集団/25勝6敗)
4. 郭躍(遼寧鞍山城投房産/22勝10敗)
5. 馮亜蘭(内蒙古銀行/19勝13敗)
6. 李暁丹(大同雲崗-金地砿業/18勝9敗)
7. 郭炎(山西大土河華東理工/18勝10敗)
8. 武楊(大同雲崗-金地砿業/14勝10敗)
9. 曹臻(八一冀中能源/11勝15敗)
10. 王シュアン(江蘇中超電纜/10勝18敗)

☆女子ダブルス・勝利数五傑
1. 彭陸洋/李茜(山東魯能/14勝6敗)
2. 彭雪/リ・ジャウェイ(北京控股/11勝6敗)
3. 饒静文/帖雅娜(山西大土河華東理工/11勝7敗)
4. 文佳/常晨晨(遼寧鞍山城投房産/7勝5敗)
5. 馮天薇/劉娟(大同雲崗-金地砿業/7勝7敗)

☆参戦した日本選手の最終成績
福原愛(広東深セン長園集団) シングルス1勝4敗

 山東魯能の2シーズンぶりの優勝で幕を閉じた2010超級リーグ女子。
 常に上位に勝ち上がる安定感では、超級リーグ随一である山東魯能。今シーズンはエース李暁霞の復調に加え、彭陸洋と李茜のダブルスが確実に得点を稼いだのが大きかった。初優勝した2005年からの成績を見てみると、06年2位・07年4位・08年優勝・09年2位、そして今シーズンは優勝。スポンサー、クラブ名、そしてメンバーが目まぐるしく変わる超級リーグにあって、このクラブだけは青々と茂った緑に囲われているような印象がある。
 2000年に山東魯能電力集団によって、山東省卓球チームを引き継ぐ形で設立され、「中国初のプロフェッショナルクラブ」を自認する山東魯能。07年に発足した山東魯能体育文化発展有限公司が卓球とサッカーの2部門を統括しており、運営する山東魯能卓球学校には中国全土から有望な若手が集まってくる。女子チームの場合、超級リーグのすぐ下の甲Aにセカンドチームの山東魯能(紅)と山東魯能(緑)が参戦しており、一番下部のリーグである乙Bまで、すべてのリーグに選手を出場させている。

 そして、今シーズンの超級リーグ女子で最も特筆すべきは、大同雲崗-金地砿業の躍進。第1ステージの第10節から、第2ステージ準決勝の山西大土河華東理工戦まで、驚異の10連勝。国家1軍チームの主力選手がいないクラブが、ここまで活躍するというのは、超級リーグでもちょっと例がない。3-0で圧倒した試合は少ないが、シンガポール女子の周樹森監督がコーチとしてベンチに入り、変幻自在のオーダーで連勝街道を突き進んだ。戦力の入れ替えが少ない超級リーグ女子、昨シーズンまで北京女子チームの指揮を執っていた周監督の頭には、各クラブの戦力とオーダーの傾向がすべてインプットされていたはずだ。エースの李暁丹は国家チームでも同スタイルの選手が多く、主力にのし上がるのは容易ではないが、貴重なカット主戦型の武楊は国際大会に起用される機会が増えそうだ。

 4シーズンぶりに超級リーグに参戦した福原愛(ANA)はシングルス1勝4敗。リ・ジャウェイ(北京控股)にゲームオールデュースで敗れた惜しい星もあった。他協会所属の選手は1名しか出場できないため、姜華君(香港)との併用になり、両選手とも波に乗り切れなかった感がある。
 攻撃型の選手のレベルが非常に高い超級リーグ。サービスや打球のピッチも含め、中国選手独特のプレーに対応していくのは、世界のトップクラスでも難しい。第1ステージのホーム&アウェーでの2回の対戦では、相手のプレーに慣れる間もなくシーズンが終了、ということになる。優勝した山東魯能が男子は朱世赫、女子は金キョン娥とカット主戦型の選手を加入させ、要所でポイントを稼いだのは、「外援」の起用法としては注目すべきだろう。

 来シーズンは8チームで優勝を争う中国卓球クラブ超級リーグ。例年どおり、6月上旬の開幕となる見込みだ。

Photo上:超級リーグで3度目の栄冠をつかんだ李暁霞
Photo中:シングルス18勝をあげた李暁丹
Photo下:郭躍、劉詩ウェン、丁寧らを連破した金キョン娥。第1ステージで活躍
★2010「361°」中国卓球クラブ超級リーグ・男子最終順位
1. 山東魯能・路安集団
2. 八一熔盛重工
3. 浙商銀行
4. 寧波海天塑機
5. 江蘇神鷹炭繊
6. 廊坊銀行海潤
7. 上海浦宏神木
8. 四川郵儲・先鋒汽車
9. 錦州銀行

★男子シングルス・勝利数十傑(プレーオフ含む)
1. 王皓(八一熔盛重工/30勝11敗)
2. 張継科(山東魯能・路安集団/28勝8敗)
3. 馬琳(寧波海天塑機/21勝10敗)
4. 許シン(廊坊銀行海潤/19勝12敗)
5. 馬龍(浙商銀行/18勝5敗)
6. 王励勤(上海浦宏神木/17勝12敗)
7. 邱貽可(四川郵儲・先鋒汽車/16勝16敗)
8. 雷振華(錦州銀行/16勝23敗)
9. 陳杞(江蘇神鷹炭繊/14勝10敗)
10. ハオ帥(浙商銀行/13勝6敗)

★男子ダブルス・勝利数五傑
1. ハオ帥/呉尚垠(浙商銀行/13勝2敗)
2. 張超/方博(山東魯能・路安集団/13勝6敗)
3. 徐輝/ジャイ一鳴(錦州銀行/12勝8敗)
4. 張ユク/崔慶磊(廊坊銀行海潤/8勝8敗)
5. 徐克/閻安(八一熔盛重工/7勝3敗)

★参戦した日本選手の最終戦績
水谷隼(四川郵儲・先鋒汽車) シングルス2勝3敗/ダブルス2勝7敗
※入替戦はシングルス1勝・ダブルス1敗
韓陽(江蘇神鷹炭繊) シングルス0勝2敗/ダブルス0勝2敗

 2010「361°」中国卓球クラブ超級リーグが約4カ月におよぶ日程を終えた。
「馬琳を得る者が天下を制する」。数年前までは、それが超級リーグ男子の合い言葉だった。2000年代に入ってから、常に馬琳のいるチームが優勝してきたからだ。昨シーズン、馬龍が圧倒的な勝率でチームを優勝に導き、いよいよ「馬龍を得る者が天下を制する」時代が到来するかと思われた。
 しかし、馬龍はプレーオフ準決勝2試合で3敗を喫し、優勝候補筆頭と思われたチームも準決勝敗退。優勝した山東の張継科、2位の八一で復調をアピールした王皓も予想外の失点が目立ち、エースとして100点はつけられない。馬琳は腰の故障で準決勝でリタイアし、王励勤は序盤の不調がそのままチームの低迷につながってしまった。
 現在、世代交代の時期を迎えている中国男子。王励勤、馬琳のプレーが下降線をたどり、若手の馬龍、張継科、許シンもまだ「大エース」と呼ぶには物足りない。今シーズンの超級男子には優勝請負人と呼べる選手は存在しなかった。モスクワ大会閉幕から10日後にスタートするタイトなスケジュールの中で、混沌としたシーズンになったという印象だ。

 各チームのエースが優勝を決め切れない中で、プレーオフで大暴れしたのが韓国の朱世赫。準決勝で馬琳の腰を“破壊”し、決勝では第3戦ラストで侯英超に大逆転勝ち。値千金の一勝でチームを優勝へと導いた。超級リーグ通算43勝は「外援」の中でも群を抜く成績だ。ちなみに昨シーズンの決勝で優勝を決めるポイントを挙げたのも、香港の唐鵬。2シーズン連続で「外援(助っ人選手)」が優勝を決めたというのは注目に値する。
 日本人選手では、水谷隼(明治大・スヴェンソン)はシングルス2勝3敗。所属する四川チームとのコミュニケーションの不足もあり、地元四川省のマスコミを中心に「数試合しか出ない水谷は契約違反?」「四川チームの幹部が憤激!」という報道もあった。一方で、四川での練習環境も水谷にとって十分なものではなかったようだ。順位決定戦での水谷の活躍で「免責」となったのはいかにも中国だが、馬龍や王皓との激突を期待したファンにとっては残念なシーズン。韓陽はシングルス0勝2敗だが、敗れた相手が王皓、張継科と不運な部分もあった。

 少し間が空いてしまいましたが、続けて女子の最終結果&総評もお伝えします。

Photo上:ライバルの馬龍、許シンをしのぐ存在感を示した張継科
Photo中:男女を通じて唯一シングルス30勝に到達した王皓
Photo下:無念の降格となった錦州銀行。ダブルスの名手・徐輝は来季の移籍もあり得る
※写真はすべて09年全中国運動会
★2010中国卓球クラブ超級リーグ/男子超級・甲A入替戦 9.28

[四川郵儲・先鋒汽車 3-2 天津華明]

○水谷 -9、5、8、4 李平
 邱貽可 -7、-3、-5 李尚洙○
 水谷/金義雄 1-3 李尚洙/徐賢徳○
○邱貽可 7、-8、9、-5、5 李平
○許鋭鋒 4、8、4 徐賢徳

 9月28日、15時00分。北京市崇文区体育館路にある国家体育総局卓球トレーニングセンターで、男子超級リーグと甲Aリーグの入替戦が開催。四川郵儲・先鋒汽車が8年ぶりの超級リーグ昇格を目指す天津華明を逆転で破り、超級リーグ残留を決めた。
 順位決定戦以降は全試合に参戦している水谷隼(明治大・スヴェンソン)は、関東学生1部秋季リーグの最終戦と重なる日程の中で、この入替戦に出場。トップで09年世界選手権混合複優勝の李平と対戦し、3-1で完勝した。四川は韓国からの助っ人選手である李尚洙(10年スロベニアオープン優勝)に単複で2点取られ、窮地に追い込まれたが、4番邱貽可が李平とのゲームオールの激戦に勝利。ラストで許鋭鋒がガッツあふれるプレーで徐賢徳(09年世界選手権ベスト32)を一蹴し、最後の最後まで苦しみながら、超級リーグ残留を決めた。

「この結果は素直に喜ぶべきだろう。超級に残留してファンの期待に応えられたし、邱貽可は厳しい場面でも強気なプレーを見せ、許鋭鋒も強敵をたびたび下した。彼らにはまだまだ伸びる余地がある。水谷も勝利を挙げ、我々の超級残留に貢献してくれた」(四川・代天雲代表/出典『成都商報』)。水谷は8~9位決定戦と入替戦でシングルス2勝を挙げ、今シーズンを締めくくったが、代天雲代表は来季は若手の強化とともに、より多くの試合に出場できる外国選手の獲得を表明しており、水谷の四川でのプレーは今シーズン限りとなりそうだ。

 一方、超級昇格をあと一歩で逃した天津の落胆は大きい。エース李平は2失点を喫し、試合後は茫然自失。実は李平は試合開始直前(2時15分)に行われたラケット検査でラバーの厚さが4mmをオーバー。スペアラケットを用意していなかったため、急いで家に戻るなどしてアップをする時間がなくなり、用具も心身も万全の状態でプレーできなかったようだ。「トップでは本当に緊張した。水谷も緊張しているのは感じたし、第3ゲームにはチャンスがあったけど、必勝の信念が足りなかった」(李平)。超級に復帰すれば、本来のエースであるハオ帥をチームに呼び戻し、超級で戦う目処(めど)も十分に立ったはずだが…。馬文革監督は「この敗北が天津チームの終点じゃない。来年も超級への挑戦は続けるよ!」と前向きなコメントを残している。

☆2010中国卓球クラブ超級リーグ/女子超級・甲A入替戦 9.21

[北京控股 3-0 江蘇江陽正恒鋼管]

○丁寧 11、6、8 朱朝暉
○曹麗思 8、6、-6、5 趙岩
○リ・ジャウェイ/彭雪 9、10、12 朱朝暉/張薔

 超級リーグの女子入替戦は北京控股が完勝。江蘇は成長株の右シェークドライブ型・趙岩が曹麗思から1点を奪うに留まった。昨シーズンの優勝から一転して入替戦、張怡寧の存在の大きさを改めて感じさせるシーズンだった北京。若手の底上げがなければ、来シーズンも苦しい戦いを強いられることになりそうだ。

Photo上:難敵・李平を下した水谷(写真は10年世界選手権)
Photo中:馬文革監督、超級にあと一歩届かず(写真は09年全中国運動会)
Photo下:北京控股に一矢報いた趙岩(写真は10年荻村杯)