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中国リポート

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 2010年もいよいよ年末。世界団体選手権にアジア競技大会、男女ワールドカップにワールドチームカップ、今年から新規開催のフォルクスワーゲンカップ、アジア・ヨーロッパオールスターズにアジアカップ、さらにITTFプロツアー…。国際大会も盛りだくさんの一年だった。そして今改めて考えてみると、2010年は「中国選手がよく負けた一年」だった。中国選手は同士討ちになるまで負けないというイメージだったのが、今年は例年になく外国選手に苦杯を喫する場面が多かった。
 実際に、今年度の主要な国際大会を振り返ってみると、外国選手に対して無敗を守り、2010年を終える中国の主力選手はひとりもいない。…唯一、陳杞だけが外国選手に負けていないが、プロツアー2大会にしか出ていないので、他の選手たちとは同列に扱えない。世界団体選手権に出場した男女5選手プラス、敬意を表して王励勤の、2010年の国際大会での敗戦歴を見てみよう。

★男子
馬龍:世界団体選手権決勝 2-3 ボル(ドイツ)
   男子ワールドチームカップ準々決勝 0-3 張一博(日本)
王皓:カタールオープン3回戦 2-4 柳承敏(韓国)
張継科:アジアカップ予選リーグ 2-4 高礼澤(香港)
    男子ワールドカップ予選リーグ 2-4 荘智淵(チャイニーズタイペイ)
馬琳:男子フォルクスワーゲンカップ2決勝 1-4 ボル
許シン:カタールオープン1回戦 1-4 徐賢徳(韓国)
    ドイツオープン3回戦 3-4 オフチャロフ(ドイツ)
王励勤:アジアvsヨーロッパ(アジアステップ) 2-3 メイス(デンマーク)

☆女子
郭炎:クウェートオープン 2-4 福原愛(日本)
   中国オープン準々決勝 3-4 金キョン娥(韓国)
郭躍:クウェートオープン2回戦 1-4 福原愛
   中国オープン3回戦 2-4 ション・イェンフェイ(スペイン)
   女子ワールドカップ準決勝 0-4 姜華君
   アジア競技大会団体予選リーグ 1-3 鄭怡静(チャイニーズタイペイ)
劉詩ウェン:世界団体選手権決勝 1-3 王越古/2-3 馮天薇(シンガポール)
      アジア競技大会団体準決勝 2-3 石賀浄(韓国)
李暁霞:アジアカップ予選リーグ 1-4 柳絮飛(香港)
    ワールドチームカップ準決勝 2-3 石賀浄
丁寧:世界団体選手権決勝 2-3 馮天薇

 こうして列記してみると、中国の絶対的な強さは失われたのか、とも思えてくる。特に女子は、これまで王楠や張怡寧といった、国際大会で敗れただけでひとつの「事件」になる女王がいたが、今年は意外なほどよく負けた。男子はサウスポー、女子は異質タイプの選手に敗れるケースが目立つ。
 …しかし、よく見てみると、本当に痛恨の敗戦と言えるのは世界団体選手権の女子決勝ぐらい。ワールドカップやアジアカップの予選リーグ、アジア競技大会やワールドチームカップの団体戦で敗れても、その後の大勢(たいせい)に大きな影響はなかった。そしてモスクワ大会の女子の敗戦にしても、国内では選手起用に対して批判の声が大きかったが、施之皓監督が監督の座を追われることはなかったし、批判の声もいつのまにか収まってしまった。「空気の入れ替え」のような印象だけが残った。

 プロツアーファイナルへの出場権を失うことを承知の上で、シーズン後半のプロツアーに主力選手をエントリーしなかった中国。「強すぎる中国」への風当たりが卓球界で強まる中で、中国は「強すぎる中国」であることを止めようとしているのか。五輪や世界選手権にしても、敗戦は決して許されないが、かつての勝敗操作のような勝利至上主義は陰を潜めている。ロンドン五輪に向けて、各国が助走から疾走へギアを入れ替える2011年。中国選手はどんな戦いぶりを見せるか。

Photo上:カタールオープンで徐賢徳に思わぬ敗戦を喫した許シン
Photo下:郭躍は4名の外国選手に敗れている
 少々伝えるのが遅くなってしまったが、12月9日、北京市の国家体育総局会議場で、『2010-361°中国卓球クラブ超級リーグ』の表彰式典が行われた。
 今シーズンの最佳運動員(MVP)に選ばれたのは、男子は張継科、女子は李暁霞。張継科はMVPに初選出、李暁霞は2002・2005・2007年シーズンに続く4回目の受賞となった。ちなみにMVPは優勝チームのエースに与えられるものではなく、シングルスの平均勝率が最も高かった選手に与えられる。張継科のシングルスの通算成績は28勝8敗で、勝利数では30勝11敗の王皓のほうが上だったのだが、勝率で張継科が上回ったのだ。27勝7敗の李暁霞は勝利数・勝率とも1位で文句なしの受賞となった。

 昨シーズンから、超級リーグのMVPに選ばれた選手には、超級リーグのスポンサーである宝飾品チェーンの『周大福』からMVPリングが贈られている。過去3回の受賞を誇る李暁霞も、時価7万元(約90万円)というMVPリングを貰うのは今回が初めて。「今回のMVPは、これまで以上に“チームの代表”という意識が強い。私たちのチームは決して優勝候補ではなかったけれど、チーム全員の努力によってタイトルを獲得できたことは本当にうれしい」と教科書的なコメントを残した李暁霞だが、張継科と並んでリングを披露した時には「女子のリングは男子ほどかっこよくないですね」と本音がポロリ。急性虫垂炎(盲腸)に苦しんだ年明けから、アジア競技大会での3冠王まで、山あり谷ありの2010年を笑顔で締めくくった。

 一方、男子のMVPである張継科は自らの2010年を振り返り、こうコメントしている。「直通モスクワの第2ステージで代表権を獲得できたことが、自分にとっては最も大きい出来事だった。チーム内で実力を示すことができて自信がついたし、世界団体選手権にも出場できた。もしモスクワに行けなかったら、その後の団体戦(ワールドチームカップやアジア競技大会)でもメンバーに入れなかったと思う」。モスクワ大会決勝のドイツ戦3番で勝利をあげ、中国男子チームの主力選手としての地位を固めた2010年。来年5月の世界選手権ロッテルダム大会では、一気に頂点を狙う構えだ。

Photo上:ライバルの馬龍から、MVPの座を奪取した張継科
Photo下:李暁霞、超級プレーオフでの活躍は見事だった
 前回もお伝えしたように、12月14日から北京市の北の郊外にある昌平区で、1週間の軍事訓練に入った国家男女チーム。
 2003年から毎冬恒例となっている軍事訓練だが、昌平区での実施は2004年の年末以来。その当時は1軍チームの選手だけだったが、今回は1・2軍チームの選手すべてに参加が義務づけられた。訓練がスタートした初日は、北京市で今年一番の冷え込みとなり、最低気温は氷点下11℃、最高気温でも氷点下3℃。選手たちは9人ずつ班に分けられ、宿舎も個室などもってのほか。メンバー全員がひとつの宿舎で生活しなければならない。

「ここに来たら、オリンピックの金メダリストも世界選手権のチャンピオンも同じひとりの兵士だ。規律を守り、厳しい訓練に耐えなければならない。この軍事訓練はいわば、ロンドン五輪での目標を達成するためのひとつの“給油所”。ロンドン五輪までのラストスパートに備え、今回の訓練を通じて思想面の基礎を養ってほしい」(国家体育総局卓球/バドミントン管理センター・劉風岩主任)。アジア競技大会を終え、中国はロンドン五輪に向けて、もう一度選手たちの引き締めにかかっている。選手たちは誰ひとりとして給油所とは思っていないだろうが…。

  もっとも、国家チームの首脳陣たちも、一人っ子政策で育った若手選手たちをムチの連打だけで鍛えられるとは思っていない。この軍事訓練に先立ち、国家チームの選手たちは12月9~11日まで、「東洋のハワイ」として人気がある中国南端の海南島でオフを過ごした。このような旅行は、過去にもあまり例がないのではないか。
 夜間のミーティングもなく、中国にありがちな交歓会もなく、国家チームには珍しい完全なオフ。ただし、7~8月には平均気温が30℃くらいの海南島も、12月はだいたい20~13℃くらい。選手たちもさすがに海に飛び込むわけにはいかず、海辺を散歩したり、温泉にゆっくりつかったり、部屋でトランプに興じたりと、思い思いの時間を過ごしたようだ。そして、その3日後には極寒の軍事訓練へ。何とも分かりやすい「飴とムチ」、沖縄のビーチから網走の刑務所へ行くような感覚かもしれない(?)。

Photo:軍事訓練は野外行進からスタート。これはアジア競技大会でのひとコマです…
 写真などもアップされ、選手たちの日常や素顔が垣間見える微博(ウェイボー)。選手同士でも頻繁にやり取りをして、軽口を叩き合っている。国家チームの監督やコーチからもフォローされているので、あまり際どい内容はNGだろうが、かなり本音に近いつぶやきを残す選手もいる。その代表格が、選手の中で最もフォロワーの数が多い陳杞だ。彼のつぶやきの一部を紹介してみよう。

12/2 17:20 「最近、携帯にしょっちゅう知らないヤツから電話が来る。一日何百回も来るから、電源を切っとくしかない。今日はついに自分の番号を表示して、五千元払えばやめてやるだって。みんな、手を貸してくれないか? この番号のヤツの身元を突き止めてくれ! お願いだ!」

12/8 23:47 「またロシアに来てしまった。無線LANのカードを買うのも大変~」

12/9 00:04 「ロシアは、モスクワとサンクトペテルブルクはまあまあだけど、その他は論外。膝まで雪に埋もれるわ、爆発はあるわ…」

12/12 22:55 「北京は(ロシアよりは)まだ快適だな~~」

 悪質ないたずらに悩まされたり、リーグに参戦しているロシアに毒づいてみたり、北京に戻ってホッとしてみたり…。陳杞もなかなか忙しい。温暖な江蘇省出身の彼には、ロシアの寒さはコタえるだろう。
 微博には、常にプレッシャーを受け続ける選手たちの心情が吐露されることもある。国家2軍チームのカットマン・劉イ(火×4)が「僕には積極的な休養が必要だ。あああああ~! 僕に休みをくれ~、あああああ~!」ともだえてみれば、1軍チームのホープ・許シンは「もう追いつめられた…、時間もない…、とにかく頑張るしかない…」と落ち込んでいた様子。ファンからもたくさんフォローされているので、若者らしい自己アピールと言えなくもないが…。かつては「人民を代表する英雄」だった国家チームの選手像も、微博などを通して少しずつ身近な存在に変わりつつある。

 ちなみに国家チームの選手たちは、現在北京市の郊外にある昌平区で軍事訓練を行っている。酷寒の中で行われる軍事訓練に選手たちもビクビク。最後に、国家チームの“微博女王”であるこの人にご登場願おう。
「今日は最後のごちそう、牛肉スゴい美味しいです。明日から軍事訓練、しばらく美味しいものも食べられないから!」(劉詩ウェン)

Photo上:微博の更新数も非常に多い陳杞
Photo下:劉詩ウェン、軍事訓練中は微博も一時停止です
 すでに日本のネットユーザーにもすっかり定着した感のあるツイッター(twitter)。
 しかし、4億人以上と言われる中国のネットユーザーは、中国国内ではツイッターにアクセスすることができない。そこで代わりに登場したのが、大手ポータルサイトが相次いでスタートさせた“微博(ウェイボー)”だ。微博は『微博客(ウェイボークー/マイクロブログ)』の略。2009年4月に新浪(SINA)がスタートさせた新浪微博を皮切りに、騰訊(テンセント)や網易など、ほとんどのポータルサイトが微博のサービスを行っている。

 中国リポート2010/04/23『馬琳が“微博”でつぶやきを配信中』でもお伝えしたが、卓球選手の間でも微博は人気だ。馬琳は新浪で微博を始めたが、中国でチャットなどに広く使われていたコミュニケーションツール『騰訊QQ』をベースに、騰訊(テンセント)微博が急速に普及。当初は国家チームの選手たちも「新浪組」と「騰訊組」に分かれていたが、現在は騰訊組が圧倒的に優勢で、国家1軍選手チームの選手たちのほとんどが騰訊微博でつぶやきを公開している。劉詩ウェンのように、「新浪」と「騰訊」の両方でアップを続けている猛者もいる。
 それでは、現在確認できている限りで、彼らのつぶやきを受け取るフォロワーのランキングを以下に発表しよう(12月13日現在)。

〈男子〉
1. 劉国梁   2199689
2. 陳杞    1671678
3. 張継科   596589
4. 許シン   590830
5. 馬龍    537823
6. 黄ピャオ  368661
7. 馬琳    268006
(※新浪微博)
8. 王皓    25179
9. 劉イ    4515
10. 周雨    3636
  
〈女子〉
1. 喬紅    796619
2. 劉詩ウェン 749706
3. 李暁霞   689962
4. 郭躍    626740
5. 施之皓   579124
6. 郭炎    476419
7. 常晨晨   222456
8. 曹臻    177020
9. 帖雅娜   146911
10. 丁寧    37709
11. 王シュアン 4794
12. 侯美玲   3102
(※フー・メレク)

 監督やコーチはそれぞれの担当のランキングに入れ、騰訊と新浪の両方で微博をやっている選手はフォロワーの多いほうを採用した。
 意外にも男女とも1位は指導者。男子1位の劉国梁はなんと220万ものフォロワーを集め、今なお1日1万近いペースで増え続けている。騰訊微博でフォロワー数1位の劉翔(陸上/男子110mハードル)の868万にはさすがに及ばないが、騰訊微博をやっている有名人の中でも、かなり上位の数字。ちなみに日本のツイッターの総合ランキング1位であるガチャピンは約85万で、劉国梁はその2倍以上のフォロワーを集めているのだ。劉国梁もガチャピンと比べられても困るだろうが…。

 選手たちの実力や知名度によって、数字のヒエラルキーが明確になっているのが面白い。馬龍は微博を始めてまだ1カ月半ほどだが、あっという間に張継科や許シンに追いついてきた。ちなみに男子の王皓、女子の丁寧の数字が非常に低いのは、長い期間アップされない時期があるため。王皓は5月30日を最後にアップがないし、丁寧は数ヶ月空いた後で再開したばかりだ。
 その2では、彼らが実際に何をつぶやいているのかも、少しご紹介しましょう。

Photo上:相変わらずの人気を微博でも見せつけた劉国梁
Photo下:新浪でも20万近いフォロワーを集め、国家チームの「ブログ女王」である劉詩ウェン
 12月4日、現世界チャンピオンの王皓の27歳の誕生日を祝うファンの集いが、北京市宣武門の繁星戯劇村で行われた。
 王皓は数十人の熱狂的な「皓迷(王皓ファン)」を前に、「2012年のロンドン五輪が近づいてきました。ロンドン五輪で優勝して、大満貫(五輪・世界選手権・ワールドカップでの優勝)を達成できるよう頑張ります」とコメント。写真を見ていつの大会かを当てるクイズや、お絵描き当てクイズなどで楽しい時間を過ごした。大会当てクイズでは、王皓自身も大会名を間違え、課せられた罰ゲームは片手腕立て伏せ10回。ダイエットとリバウンドをくり返しているが、さすが世界チャンピオン、難なくクリアした。

 2008年から誕生日を祝うファンの集いに参加している王皓だが、2008年の誕生日会の席上で、ファンとともに慈善基金を設立する意志を表明した。その後、「皓令天下」慈善基金が設立され、王皓は世界選手権やワールドカップなどのビッグゲームで1勝をあげるたび、基金に2000元(約25,000円)を寄付。世界選手権横浜大会やワールドカップで勝ち星を重ねたことで、この「1勝募金」の総額はすでに48,000元(約60万円)を突破し、基金全体の総額も10万元(約125万円)に達している。

 さて、ここで大きな疑問がひとつある。27歳になった王皓だが、誕生日が12月1日(水)で平日だったため、同じ週の週末である4日に誕生日パーティーが設定されている。「ん、王皓の誕生日は12月15日ではなかったか?」と気づいた方はかなりの王皓ファン。実は王皓、中国国内でも誕生日が「12月1日」説と「12月15日」説でまっぷたつに割れているのだ。
 …人の誕生日に説も何もないものだが、中国の質問箱のようなサイトにも「王皓の誕生日は12月1日ですか、それとも15日ですか」という質問がいくつも投稿されている。その投稿に対しても、「1日に決まっている」「テレビ番組では15日と紹介していた」「私は1日だと思ってたけど…」と答えが定まらない。全中国運動会予選の登録表に「1983.12.1」と記されているので、どうやら1日が本命のようだが…。ぜひ本人に尋ねてみたいが、実のところ本人にもよくわからないのかもしれない。

Photo:はや27歳になった王皓。28歳で迎えるロンドン五輪はラストチャンスか?
 早くも団体戦の第1ステージが終了した世界ジュニア選手権。少し遅くなってしまいましたが、中国ジュニア女子代表チームのメンバーを紹介します。予選リーグでは4試合を戦ってオール3-0のストレート勝ち、落としたゲームはわずかに3ゲームという強さ。決勝での日本女子との対戦はあるのか?

☆『2010Volkswagen世界ジュニア選手権』中国女子代表メンバー
(左数字はエントリーナンバー)


208 GU Yuting 顧玉ティン(女+亭) グ・ユティン
1995年1月14日生まれ/山東省女子チーム所属
左シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング44位
☆主な戦績
2010年アジアジュニア選手権優勝
2010年ユース五輪金メダリスト

・見た目も体格も見るからにパワフルな、女子ユース五輪の初代金メダリスト。すでに国家1軍チームのメンバーで、2軍チームをわずか半年でクリアして1軍チームに上がった。今シーズンは超級リーグにも内蒙古銀行の一員として出場、シングルス3試合ですべて丁寧に当たり、3試合とも敗れるという珍しい記録を残している。前回は決勝で武楊に僅差でかわされたが、今大会で狙うのは優勝しかない。

209 ZHU Yuling 朱雨玲 ジュ・ユリン
1995年1月10日生まれ/四川省女子チーム所属
右シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング23位
☆主な戦績
2010年ジャパンオープン荻村杯準優勝
2010年アジアジュニア選手権準優勝

・今年7月の荻村杯で決勝まで勝ち上がり、一躍脚光を浴びた選手。四川省綿陽市の少年宮で6歳で卓球を始め、早くからその才能を発揮。今年1月のジュニア選抜集合訓練で3位となり、国家2軍(ジュニア)チーム入りを決めた。世界ランキング23位は石川佳純(20位)に次いで2番目に高い。

210 ZHAO Yan 趙岩 ジャオ・イエン
1993年11月28日生まれ/江蘇省女子チーム所属
右シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング64位
☆主な戦績
2010年WJC太原ジュニア&カデットオープン・ジュニア優勝
2010年アジアジュニア選手権複優勝

・キリリとしたまゆ毛と、公称171cmの堂々たる体躯。威力ある両ハンドドライブを武器に、近年低迷が続く名門・江蘇省女子チーム再興の担い手となるホープ。今大会の団体戦では易芳賢とともに3番手として起用されそうだ。10月の全中国選手権ではシングルスで楊揚(07年世界ジュニア優勝)を破り、団体戦で劉詩ウェンにゲームオールまで迫った。

211 YI Fangxian 易芳賢 イ・ファンシエン
1992年3月22日生まれ/湖北省女子チーム所属
右シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング52位
☆主な戦績
2006U-17中国青少年チャレンジマッチ優勝
2010年アジアジュニア選手権複優勝

・今年2月の国家1軍チーム(下位6名)と2軍チーム(上位4名)の入れ替えリーグ戦で、最終戦で周芳芳(広東)を破って初の1軍チーム入りを決めている。現世界ランキング12位の馮亜蘭と同じく、陳静や喬紅を輩出した湖北省武漢市の出身。06年大会優勝の馮亜蘭に続きたい。

Photo上:朱雨玲、世界ランキング23位の実力を証明できるか
Photo中:世界ジュニア初出場の趙岩
Photo下:ぷっくりフェイスの実力者・易芳賢
 12月2日、北京の首都国際空港を飛び立ち、第8回世界ジュニア選手権が行われるスロバキアのブラティスラバへと出発した中国ジュニア代表チーム。
 卓球王国HPでも恒例の速報がスタート。事前情報として日本代表のエントリーや、有力選手の紹介をしていきますが、中国リポートでは中国の代表選手について、もう少し詳しく紹介します。まずは男子編からいきましょう。

★『2010Volkswagen世界ジュニア選手権』中国男子代表メンバー
(左数字はエントリーナンバー)

118 ZHOU Yu 周雨 ジョウ・ユ
河南省男子チーム所属/1992年5月19日生まれ
 左シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング196位
★主な戦績
2009年ワールドジュニアサーキット・香港大会優勝
2010年アジアジュニア選手権優勝

・180cmを超える長身で身体能力が高く、サウスポーから繰り出すシャープなスイングのパワードライブが武器。今年10月の全中国選手権の団体予選リーグ、対広東戦で馬琳と張超を連破し、一躍名を馳せた。中国版ツイッター「微博」では、出発前夜に「明日は朝5時起きでスロバキアに出発。自分の幸運を祈ります、頑張れ」と初々しいつぶやきを残している。

119 WU Jiaji 呉家驥 ウ・ジァジィ
遼寧省男子チーム所属/1995年1月16日生まれ
右ペンホルダー両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング154位
★主な戦績
2009・2010全中国優秀青少年大会2連覇
2010年アジアジュニア選手権準優勝

・全中国優秀青少年大会で2連覇、中国リポートでもたびたび取り上げている「王皓2世」。病院に入院して練習ができない時も、劉国梁の試合のビデオを見ながらサービスを研究していたというエピソードがある。フォアドライブはまだ威力不足だが、裏面ドライブを武器にどこまで勝ち上がるか。

120 LIN Gaoyuan 林高遠 リン・ガオユエン
広東省男子チーム所属/1995年3月19日生まれ
左シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング186位
★主な戦績
2009世界ジュニア男子団体優勝/シングルス3位/ダブルス2位
2009全中国ジュニア選手権優勝

・プロツアー荻村杯U-21決勝、神巧也戦での逆転勝ちは記憶に新しいが、昨年はプロツアー3大会に出場しながら目立った成績は残せず。まだ15歳だが、両親が卓球場を経営する卓球一家に生まれ、4歳で卓球をはじめてすでに卓球歴は11年。サウスポーから繰り出す回転量の多いフォアドライブで攻める。

121 SONG Hongyuan 宋鴻遠 ソン・ホンユエン
山東省男子チーム所属/1993年1月29日生まれ
左シェーク両面裏ソフトドライブ型・世界ランキング166位
★主な戦績
2008世界ジュニア選手権団体優勝/ダブルス優勝/混合ダブルス優勝
2009世界ジュニア選手権団体優勝/シングルス3位/ダブルス優勝

・世界ジュニアはこれが3大会連続での出場となり、男子ダブルス2連覇を含む5つのタイトルを獲得。「まだ世界ジュニア代表を卒業できない」という見方もできるが、今年の全中国選手権ではシングルスでハオ帥を破り、雷振華にもゲームオールまで迫って存在感を示した。林高遠と戦型が同じで名前も似ているので、混同しないように注意。顔は全然違います…。

Photo上:許シンに続け、ペンドラ型の新星・呉家驥
Photo中:前回大会でシングルス3位に入った宋鴻遠
Photo下:まだ15歳の林高遠クンは、荻村杯の客席でスヤスヤ…(ゴメンナサイ)
 アジア競技大会で女子シングルスチャンピオンに輝いた李暁霞。その李暁霞が学んだ済南市体育学校のある山東省の省都・済南市で、なかなか興味深い試合が行われることを『済南時報』が伝えている。その名も「人機大戦」。「人」と「機械(卓球マシン)」が戦う試合のエントリーを、現在受付中だというのだ。
 この「人機大戦」は、今年で第6回を迎える「済南市卓球等級大会」の一環として12月18~19日に行われるもの。会場は済南市の四つ星ホテル「玉泉森信大酒店」の6階にある卓球クラブ。高級ホテルの中に卓球クラブがあるというのも驚きだが、「玉泉森信大酒店」の経営者である常金月氏が大会開催に情熱を傾け、すでに6台の卓球マシンを購入。ツワモノたちの挑戦を手ぐすね引いて待ち受けている。

 それにしても、「ひとりでも試合はできる」と卓球マシンとの“試合”にエントリーを受け付けるとは、なかなかユニーク(?)。ちょっとした発想の飛躍が必要だ。男女とも成績の上位32名までが第2ステージに進み、上位3名が表彰されるとのことだが、肝心の対戦形式については残念ながら記述がない。本当に機械に勝つには、電源のスイッチかコンセントに渾身のスマッシュを叩き込むしかなさそうだが、2009年に河北省邯鄲市で行われた「人機大戦」(他にもやっている人がいるのだ)では、規定時間内に返球したボールの数で勝敗をつけている。おそらく同じような形式で行われるのだろう。
 なかなか高価な卓球マシン、中高生だとマシンのボールを打ったことがない選手も少なくないはず。日本でも高価なマシンを揃え、「ブツ切り下回転」部門や、「超絶パワードライブ」部門などに分けて、どれだけ返球できたかを競う「人機大戦」をやれば、意外に人気を集めるかもしれない。

 …まったく関係のない話ですが、東京・お台場の「台場小香港」という小さな中華街に、かつて1台のマシン付き卓球台が設置されており(現在は不明)、中国リポート担当も挑戦したことがあります。ゲームセンターの一角で、完全にお遊びの雰囲気なのに、両サイドから間断なく放たれるボールにキリキリ舞い。「こ、これはアミューズメントではない」と思いながらマシンに両ハンドの雨を浴びせ、高得点を叩き出しました。
 そして、しばらく経ってからまた卓球台の前を通りがかると、ふたりで台に着き、のほほんとピンポン球を打ち返すカップルの姿が。…カップル用の卓球台を相手に、孤軍奮闘していたわけです。「ふ、ふたりでやれば良かった」と「人機大戦」には勝ちながら、敗北感に打ちのめされた遠い日の記憶であります。

Photo上:頃合いの画像がないので、「精密機械」こと孔令輝にご登場願いました…
 アジア競技大会・卓球競技で、銀1枚・銅4枚のメダルを獲得した韓国。成績の面では銀1枚・銅3枚の前回大会を上回ったが、多くの課題を残す大会となった。唯一の銀メダルを獲得した男子団体では、決勝で呉尚垠・朱世赫・李廷佑の3選手が1ゲームも奪えず、中国にストレート負け。男子シングルスの朱世赫、女子シングルスの金キョン娥も順当に準決勝まで勝ち進んだが、朱世赫は馬龍、金キョン娥は李暁霞に完敗。お家芸のダブルスも、男子の若手である鄭栄植/金ミン鉐が獲得した銅メダル1枚に留まった。混合ダブルス1回戦で、朱世赫/金キョン娥が松平/石川(日本)に完敗した一戦も、大きな衝撃を与えたようだ。

 過去のアジア競技大会の歴史を振り返ってみると、90年北京大会の男子団体で、準決勝で中国を一蹴し、決勝で北朝鮮との壮絶な激闘を制した韓国男子チーム。同大会の女子ダブルス決勝でトウ亜萍/喬紅(中国)に完勝した玄静和/洪次玉。98年バンコク大会では男子シングルスで金擇洙が悲願のビッグタイトルを獲得し、02年釜山大会では、李哲承/柳承敏と李恩実/石恩美が男女ダブルスで優勝して、“ダブルス王国”韓国の意地を見せた。アジア競技大会では中国のライバルとして、確固たる存在感を示してきただけに、合格点にはほど遠い成績だろう。

 大会後、韓国男子チームの金擇洙監督は「犠牲を払ってでも世代交代に重きを置かねばならない。現行のメンバーでは、中国には勝てないということを改めて確認した」とコメント。女子チームの玄静和監督も「特に女子ダブルスの結果には悔いが残る。長期的に若い選手を育成・発掘していかなければならない」と述べ、ともに世代交代の必要性を認めている。長く韓国男子チームの屋台骨を支えてきた呉尚垠も「私と柳承敏、朱世赫では、中国を超えるのには技術的な限界がある。若手の鄭栄植や金ミン鉐、徐賢徳を起用するほうがよい」と述べたほどだ。

 今大会で韓国にとって一筋の光明となったのは、男子ダブルス準決勝で王皓/張継科にゲームオールまで迫った鄭栄植/金ミン鉐。特に鄭栄植は長身と爽やかなルックスで、卓球ファンから支持を集めている。徐賢徳、李尚洙、丁祥恩と若手男子は人材も豊富なのだが、2012年ロンドン五輪を前にした世代交代はなかなか難しい。女子チームは、女子ダブルスに出場した梁夏銀が未来のエース候補。中国と同様シェーク攻撃型の選手が多く、伝統の日本式ペンドライブ型やカット主戦型が少ないのは少々寂しいが、フィジカルの強さを活かしたパワー卓球で、これからも中国の壁に挑み続ける。

Photo上:金擇洙監督、世代交代という難題に挑む
Photo下:王皓/張継科をあと一歩まで追いつめた鄭栄植/金ミン鉐