スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 卓球が初めて実施種目となった第5回東アジア競技大会。中国は男女シングルスのタイトルは獲得したものの、女子団体と混合ダブルスで香港、女子ダブルスで日本(福原愛・平野早矢香)にタイトルを譲り、獲得タイトル数は4に留まった。
 新採用のスコートが戦局に影響したかどうかは定かではないが、中国が女子団体で敗戦を喫したのは、2000年代の主要な大会では2002年アジア競技大会・女子団体決勝の北朝鮮戦、2005年アジア選手権・女子団体準決勝の韓国戦に続いて3回目。敗戦の共通点は、ひとりで2点落とす選手がいたことだ。02年アジア競技大会では王楠、05年アジア選手権では牛剣鋒、そして今大会では昨年の全中国チャンピオンである文佳が、5シングルスの試合で2点を落としている。
 もっとも、今回の団体代表メンバーは、国家女子チームの施之皓監督曰く「3軍・4軍クラス」。「今回の代表メンバーは、大きな国際大会に出場した経験のない選手ばかりだったし、主要な目的は選手たちを鍛えることだった。新しいロンドン五輪までの周期(2008~2012)を迎え、我々はすべての選手たちに機会を与えたい。彼女たちは高い学費を払ったわけだが、その中から何かを学んでほしい(施之皓)」(※出典『解放日報』)と余裕のコメントを残している。

 男子団体は何とか優勝したものの、世界ランキング1位の王皓が全くの誤算。準決勝の香港戦で唐鵬にゲームオールまで迫られ、決勝ではトップで水谷隼に完敗。エースの重責を果たすどころか、若手選手たちの足を引っ張ってしまった。新浪体育に寄せたコメントも「試合の流れが悪く、焦りが出てしまった。ラケットの打球感も合わなかった」と何とも歯切れが悪い。公式プロフィールでは65kgになっている体重も、現在ではどう考えても70kg台の後半くらいはありそうで、ファンの間からはすでに「快点減肥!(早く痩せろ!)」という声も上がっている。
 卓球競技の開幕前日(12月1日)に26歳の誕生日を迎えた王皓。このペースで28歳で迎えるロンドン五輪まで太り続けることはさすがにないだろうが、馬琳のようにコーチ陣から「ダイエット指令」を出される日も、そう遠くないかもしれない。

 男子シングルス決勝を戦った許シンと張継科のふたりは、男子ダブルスでも優勝。3冠王となった許シンはこの大会を無敗で終え、張継科も唯一の敗戦が男子シングルス決勝の許シン戦だった。許シンはダブルスも強く、来年の世界団体選手権モスクワ大会では、陳杞に替わって代表入りする可能性も高い。しかし、許シンは右膝、張継科は腰と、ともに将来に影響を及ぼしかねない故障を抱えている。特に張継科は準々決勝の吉田海偉との激戦で腰痛が悪化し、「両脚が痺れるほどだった」と述べている。故障はトップ選手の宿命だが、同時にフィジカルの強さはトップ選手の必須条件。個性あふれる卓球を見せてくれる若いふたりには、体のケアも入念に行ってほしいものだ。

Photo上:今大会、3冠に輝いた許シン。写真は男子団体表彰
Photo下:初お目見えのスコート。姚彦のスタイルは申し分ないが、デザインは…?
(写真提供:日本卓球協会)
 昨日12月2日にスタートした第5回東アジア競技大会・卓球競技。男女団体の予選リーグの組み合わせは以下のとおりで、男女とも同じ組み合わせになっている。

★男子団体・女子団体予選リーグ
A組:中国、日本、マカオ
B組:韓国、香港、チャイニーズ・タイペイ

 日本女子は昨日の予選リーグの中国戦で、中国に3-0で敗退。トップで平野が曹臻に0-3、2番で福原が饒静文に0-3で敗れ、3番石川は姚彦から2ゲームを先取する健闘を見せたものの、2-3と逆転を許した。本日12月3日、10時30分から行われている男子団体の日本vs.中国では、ぜひとも日本男子がアジア選手権のリベンジを果たしたい。両チームの代表メンバーをもう一度おさらいしておきましょう。

日本 JAPAN
男子:★水谷隼・★吉田海偉・岸川聖也・松平賢二
女子:★福原愛・★平野早矢香・石川佳純・藤井寛子・若宮三紗子

中国 CHINA
男子:王皓・ハオ帥・★許シン・★張継科・雷振華・劉イ
女子:曹臻・★姚彦・饒静文・★文佳・楊揚・侯暁旭

 ★印はシングルスの代表選手。男女シングルスに出場するのは、各国合わせて総勢12名しかいない。両チームのエースである王皓、曹臻は団体戦のみの出場で、個人戦にはエントリーしていない。世界ランキング1位の王皓は最近試合続きで調子を落としており、この大会は若手選手の「引率」という印象もある。
 混合ダブルスに侯暁旭とのペアで出場するカット主戦型の劉イ(火×4)は、河北省男子チームのエース。国家男子チームのカット主戦型の選手は、侯英超がフランスリーグのルバロワ、王シがDTTL(ドイツ)のフルダ・マーバーツェルとすでに海外でプレーしている。劉イも今後国家男子チームの主力になる可能性は低いが、対カットのトレーナーとして育成されることになりそうだ。卓球では長い伝統を誇る河北省だが、男子選手は国家チームのトレーナーに徴用されてしまう場合も多く、河北省出身の男子中国代表は王浩(ワン・ハオ/87年世界選手権ベスト8)以来だという。王浩も劉イと同じカット主戦型だった。

 もうひとつのトピックスとしては、女子チームの選手たちが「スコート」を着用して試合に臨む。以前、張怡寧が個人的にスコートで試合に出場したことはあるが、中国代表として公式にスコートを着用するのは今大会が初めて。175cmの長身でモデル体型の姚彦や、キュートなルックスの楊揚が着用すれば、香港でも話題を集めそう。「よりスコートが似合うように、香港に行く前の数日間はダイエットをしてきた。果物しか食べなかった」(出典「新浪体育」)と姚彦がコメントしている。最強軍団・中国といえども、うら若き女性には違いないのだ。

Photo上:前回はゼッケンだけ登場した劉イ。全中国運動会の女子ダブルスで優勝した侯暁旭とペアを組む
Photo下:長身の姚彦、果物だけで大丈夫?
 今日、12月2日から香港・クイーンエリザベススタジアムで開催される第5回東アジア競技大会・卓球競技。卓球競技が初めて開催される記念すべき大会で、04年アテネ五輪・男子ダブルス銀メダリストの李静が、開幕式の選手宣誓を務めることが明らかになった。香港のスポーツ選手の代表として、審判代表である欧陽国棋(テニス)とともに宣誓を行う。
 開幕式は12月5日の夜に香港文化センター広場で開催。卓球競技はサッカー、バスケットボール、バレーボールとともに2日から行われ、香港男子チームは順当に勝ち上がれば、5日の13時30分から男子団体準決勝を戦う。夜に開幕式を控える李静にとっては、少々落ち着かない戦いを強いられることになるかもしれない。11月24日に行われた東アジア競技大会のPRイベントでは、香港を代表する男性歌手のひとりである陳奕迅(イーソン・チャン)が見事な卓球の腕前を披露するなど、卓球に対する香港市民の視線はなかなか熱いようだ。

 会場となる3,500名収容のクイーン・エリザベス・スタジアム(伊利沙伯体育館)は、これまでに数多くのコンサートやスポーツイベントが行われてきた。卓球の大会では、1997年のITTFプロツアー・グランドファイナルが記憶に残る。その前年、1996年にスタートしたグランドファイナルは、この97年度大会からビッグゲームとしての歩みをスタートさせている。当時17歳の馬琳が優勝したサムソノフ(ベラルーシ)と大激戦を演じ、19歳の王励勤が決勝進出を果たした。その後、2000年にシドニー五輪・アジア大陸予選会が開催され、2006年には再びプロツアー・グランドファイナルの会場となっている。

Photo:06年ITTFプロツアー・グランドファイナルで、クイーン・エリザベス・スタジアムでプレーする李静。勝利の雄叫びが観客を沸かせるか?
「もし馬琳や王皓がもっと英語を話すことができたら、我々のチームの世界チャンピオンたちが英語でメディアに対応できたら、中国卓球チームはよりスムーズに卓球の普及を押し進めることができるだろう。
 どうやったら、他の国の優れた選手たちと直接コミュニュケーションを図ることができるか。どうやったら。世界チャンピオンとしての風格を示すことができるか。どうやったら、海外のメディアにもうまく対応できるか。2008年以降、我々はこの三点について顧みることで、最終的に“英会話”と“礼儀”、そして“メディア対応”という三つのプログラムを国家男子チームの練習メニューに組み込むことを決めた」
(劉国梁)

 中国男子チームの劉国梁監督による上記のようなコメントが、11月25日付の『北京青年報』に掲載された。国家男子チームはすでにメディア対応のプログラムなどを実行に移し、専門家による講義が行われているという。
 国家チームの選手たちの礼儀やマナーについては、今年の世界選手権横浜大会の後、記者会見での選手たちの態度を批判する記事がいくつか現れた。今年3月にはITTF(国際卓球連盟)のシャララ会長が中国を訪れ、中国選手のプレー態度やファンサービス、メディア対応の向上を求める文書を中国卓球協会に渡している(中国リポート2009/05/15『素行が悪ければ、金メダルも無意味?』を参照)。今回の三つのプログラムの実施は、国家チームのひとつの回答と言えそうだ。

 日本のEA(エリートアカデミー)でも「知的能力開発プログラム」として、メディア対応の講義や英会話レッスンなどが行われている。「一人っ子政策の国」中国では、スポーツ選手のみならず、甘やかされて育った若者たちの礼儀に対する批判の声は多い。今回のプログラムが、国家チームの継続的な事業として行われていくのかどうか、注目されるところだ。

Photo:選手たちの教育に乗り出した劉国梁監督。国家男子チームで一番英語が得意な選手は王励勤とのこと
 今月16~22日までインド・ラクナウで行われた第19回アジア卓球選手権で、アジア卓球連合の執行委員会会議が行われ、中国国家体育総局・副局長で中国卓球協会会長の蔡振華が、新たにアジア卓球連合の会長に選出された。現職の李富栄は終身名誉会長に就任した。また、2011年の第20回アジア卓球選手権を8~9月にレバノン・ベイルートで開催すること、2010・2011年のアジアカップを中国・広州と日本で開催することも合わせて決定している。

 1972年に日本・中国・北朝鮮の3カ国によって創設されたアジア卓球連合。これ以前にもアジアの卓球協会を統括する組織として、アジア卓球連盟が存在していたが、日本は71年世界選手権名古屋大会への中国の参加を取り付けるため、アジア卓球連合の創設に先立ってアジア卓球連盟を脱退している。アジア卓球連合の初代会長は、日本卓球協会の会長も務めた川上理三。第2代会長は城戸尚夫(1974~76)、第3代会長は後藤淳(1976~2001)と日本がリーダーシップを発揮してきた。2001年から李富栄が第4代会長に就任し、蔡振華は第5代会長となる。

 今年2月、約30年間に渡って会長職にあった徐寅生の跡を継ぎ、第3代中国卓球協会会長に就任した蔡振華。中国バドミントン協会の会長職も李富栄から引き継いでおり、今回のアジア卓球連盟会長への就任によって、中国卓球界のトップの世代交代はほぼ完了した。世代交代というより、蔡振華への一極集中と言ったほうが適当かもしれない。蔡振華と同年代に活躍した選手たちでは、国家女子チーム監督の施之皓が目立つくらいで、その他は省チームの総監督クラスに留まっている。蔡振華は主な肩書きだけでも国家体育総局副局長、中国卓球協会会長、中国バドミントン協会会長、アジア卓球連合会長、中国共産党・第17回中央委員会候補委員と、名刺1枚にはとても収まりそうにない。(文中敬称略)

Photo:中国卓球界のビッグ・ボスとなった蔡振華
 11月16~17日、黒龍江省七台河市の七台河職業学院体育館で「2009七台河 国際男子卓球争覇賽」が開催された。
 今大会の出場選手はモンテイロ(ポルトガル)、クリサン(ルーマニア)、韓陽(日本)、プリモラッツ(クロアチア)、朱世赫(韓国)、呉尚垠(韓国)、王皓(中国)、馬琳(中国)の8選手。観戦チケットは一番高い「特甲票」が1280元(約16,700円)、一番安い乙票でも680元(約8,800円)となかなかの高額チケットだが、観客の入りは上々だったようだ。決勝戦の模様は中国中央電視台(CCTV)でも生中継されている。
 大会の結果は以下のとおりだ。

★2009七台河国際男子卓球争覇賽・結果 11.16~17/七台河職業学院体育館
[優勝]馬琳
[2位]呉尚垠
[3位]朱世赫
[4位]王皓
[ベスト8]韓陽、プリモラッツ、クリサン、モンテイロ

 決勝で相まみえたのは、馬琳と呉尚垠。馬琳は初戦でクリサンを相手にゲームカウント0-3の大ピンチから逆転、続く準決勝で朱世赫を4-0で一蹴して勝ち上がった。一方の呉尚垠はプリモラッツ、そして王皓を撃破。10月の男子ワールドカップでも馬龍(中国)を破っており、中国にとって最も危険なライバルとなっている。決勝は馬琳が2-0とゲームをリードした後、呉尚垠が2-2に追いつく接戦となったが、第5・6ゲームともに6-6から得意の変化サービスで突き放した馬琳が勝利。離婚スキャンダルにもめげず(?)、05年度大会以来の優勝を果たした。
 現世界チャンピオンの王皓は、初戦でモンテイロを苦しみながらも破ったが、準決勝で呉尚垠、3位決定戦で朱世赫にともに3-4で惜敗。11月10~11日にトルコ・イスタンブールで行われた「2009アジア・ヨーロッパチャレンジ」でもボル(ドイツ)に0-3で敗れており、「王皓の対外的な強さはすでに過去のものだ」という記事が早くも現れはじめている。スケジュールはあまりにハードだが、言い訳ができないのがチャンピオンだ。日本から参戦した韓陽は08年世界団体戦で勝っている朱世赫に敗れ、準決勝進出はならなかった。

 ちなみに「2009七台河 国際男子卓球争覇賽」の前身は、黒龍江電視台の主催で2005年から2007年まで行われていた「“龍”世界男子卓球争覇賽」。湖南省の湖南衛視が主催していた「国球大典」(06年からITTFトーナメント・オブ・チャンピオンズとして開催)と並び、中国国内で行われる数少ない国際大会のひとつだった。戦いの舞台は、広さが2800平方メートルもある黒龍江電視台の巨大スタジオ。プレーの環境としてはあまり良くないのだろうが、中国ではテレビ局の主催する大会が、テレビ局の大きなスタジオやホールで行われるケースは少なくない。
 「“龍”世界男子卓球争覇賽」の歴代チャンピオンは、05年度大会は決勝でパーソン(スウェーデン)を破った馬琳(中国)、06年度大会はボル(ドイツ)を破った王皓(中国)。そして07年度大会は、馬琳から大金星を挙げたロスコフ(ドイツ)を決勝で破ったダークホース、ケーン(オランダ)が優勝。日本からも松下浩二(06年度)、時吉佑一(07年度)らが出場している。

Photo上:ゲーム終盤での強さを見せた馬琳。離婚の調停次第では、まだまだ稼がねばなりません…
Photo下:呉尚垠、32歳になってもまだまだパワーは健在
 今年4月25日、故郷である北京市で37歳のビジネスマン・李超さんと盛大な結婚式を挙げたリ・ジャウェイ(李佳薇/シンガポール)。先月13日にシンガポールで第一子となる男の子を出産した。4月に結婚して10月に出産…、いわゆる「奉子成婚(できちゃった婚)」だったのだが、無事に出産を終えられて何よりでした。
 名前は「かしこい、聡明な」という意味のある「睿」の文字を入れ、李天睿くんと命名。つわりにかなり苦しんだというリ・ジャウェイだが、天睿くんの体重は3,575gと堂々たるもの。さすが、披露宴で40kgのウェディングドレスを着る「体育系花嫁」だけのことはある。ウェディングドレスには、スワロフスキのクリスタルがちりばめてあったのだ。

 そして今月13日、シンガポールの最高級ホテル、マリーナ・マンダリン・シンガポールで、李超夫妻は天睿くんの「満月酒」のお祝いを行った。子どもが生まれて1カ月経ったお祝いのことで、中国ではホテルなどで盛大に行うことも多い。シンガポール卓球協会の李美花会長をはじめ、テオ・チーヒエン(張志賢)副総理も多忙を極める中、お祝いに駆けつけている。
 出産前には体重がかなり増えたというリ・ジャウェイだが、出産後に計画的にダイエットを行い、すでに10キロほど体重を落としているそうだ。「あと5キロ体重を減らして、来年の春節(旧正月/今年は2月14日)の前には練習を再開したい」(リ・ジャウェイ)。2児の母である倪夏蓮(ルクセンブルク)のように、ヨーロッパへ帰化したベテラン選手が出産後もプレーを続けるケースはあるが、トップクラスの女子選手が短期の出産期間を経て現役復帰というのは、ほとんど聞いたことがない。アジアの女子選手の場合、これまでだと大半が30歳になる前に引退していたからだ。
 リ・ジャウェイは昨年9月の女子ワールドカップを最後に実戦から遠ざかっているが、5月23~30日にモスクワで行われる世界団体選手権での復帰が伝えられている。日本女子チームにとっては、手ごわい女傑のカムバックということになりそうだ。

Photo:フォア表ソフトのシェーク異質速攻という、世界的にも希少なスタイルであるリ・ジャウェイ。切れ味鋭いフォアスマッシュは健在か?
 
 04年アテネ五輪男子決勝で王皓(中国)が柳承敏に敗れて以来、3回の世界選手権と北京五輪で全ての金メダルを独占している中国。長く続く「ゴールドラッシュ」の鉱脈は尽きそうにないが、そんな中国国家チームが先月、「金一黄金」のブランドで知られる北京金一文化発展有限公司と2012年までのスポンサー契約を締結した。北京金一文化発展有限公司は2010年に上海で行われる上海国際博覧会・公式貴金属グッズを発売しており、11月に広州で行われるアジア競技大会のスポンサーにもなっている。
 10月23日に国家体育総局で行われた調印式には、卓球・バドミントン管理センターの劉風岩主任、北京金一文化発展有限公司の鐘葱董事長を始め、女子チームの孔令輝コーチ、馬琳、王皓、郭炎などが出席。高名な12名の画家が描いた干支が刻まれた純金のバー「国粋生肖」が、鐘葱董事長から記念品として贈られた。

 金(きん)の産出国というイメージはあまりない中国だが、2008年に金産出国として有名な南アフリカを抜き、世界一の金産出国になっている。内陸部の四川省・甘粛(かんしゅく)省・陜西(せんせい)省が産出量が多く、「金の三角地帯」と呼ばれているという。世界的な金融不安が逆に追い風となり、金相場は各市場で最高値を更新しており、中国でも投資目的で金を購入する人が急増。金の消費量でも中国は世界一に躍り出ている。
 北京五輪が終わり、国家チームもしばらくスポンサー契約のニュースを聞かなかったが、北京金一文化にはスポンサーになるだけの余裕と勢いがあるのだ。2009年シーズンの超級リーグのスポンサーだった香港の宝飾ブランド「周大福」も、ジュエリーだけでなく、投資目的の金の購入によって業績を伸ばしている。黄金に光り輝くウェアはルールではご法度だが、中国代表のウェアにどのような「金一黄金」のロゴが入ってくるのか、ちょっとだけ注目してみたい。

Photo:山東省男子チームの周シン選手に、ゼッケンだけご登場願いました。金、金、金。金が三つで読みは「xin(シン)」。金という苗字で、名前にこのシンをふたつ重ね、ひとりで金×7という人も実在するそうで…
 10月28日~11月2日に行われた「2009年全国優秀青少年ピンパン球調賽」、その1の男子に続いて、女子の結果をお伝えします。

1. ★陳夢 チェン・ムン(山東) 1994年1月15日生まれ 15歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 09年アジアユース競技大会優勝
2. ★顧玉ティン グ・ユゥティン(女+亭)(雲南電網) 1995年1月14日生まれ 14歳
左シェーク両面裏ソフトドライブ型 09年アジアユース競技大会2位
3. ★鄭詩暢 ジョン・シチャン(僕陽卓球学校) 1992年1月18日生まれ 17歳
右シェーク両面裏ソフトカット主戦型 08年全国優秀青少年卓球調賽2位
4. ★劉曦 リウ・シ(河北)
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 08全中国ジュニア選手権3位
5. 李佳イ(火×4) リ・ジァイ(遼寧) 1994年1月8日生まれ 15歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 09全中国運動会ダブルスベスト4
6. 趙岩 ジャオ・ユェン(江蘇) 1993年11月28日生まれ 15歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 09全中国運動会団体ベスト8
7. ★易芳賢 イ・ファンジェン(武漢宏大) 1992年3月27日生まれ 17歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 06U-17中国青少年チャレンジマッチ優勝
8. ★熊欣芸 シォン・シンユン(広西) 1992年1月6日生まれ 17歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 08世界ジュニア選手権ベスト16
9. ★車暁曦 チャ・シャオシ(黒龍江) 1993年3月3日生まれ 16歳
右シェーク両面裏ソフトドライブ型 09アジアジュニア選手権3位
10. 劉先慧 リウ・シェンホイ(解放軍)
09U-17中国青少年チャレンジマッチ出場

★準々決勝以上の記録
劉曦(河北) -9、6、6、8、5 趙岩(江蘇)
顧玉ティン(雲南電網) 10、-4、8、8、-5、7 易芳賢(武漢宏大)
陳夢(山東) 6、3、4、6 熊欣芸(広西)
鄭詩暢(僕陽卓球学校) 3、8、4、7 李佳イ(遼寧) ※僕には「さんずい」が付く
●準決勝
顧玉ティン 11、12、8、6 劉曦
陳夢 2、1、3、-8、5 鄭詩暢
●決勝
陳夢 9、11、4、7 顧玉ティン

 女子シングルスの1~10位の選手は上記のとおり。10位の劉先慧のプレースタイルが確認できなかったが、上位はシェークドライブ型の選手で占められている。しかも、いずれも堂々たる体躯(たいく)の選手ばかりだ。優勝した陳夢は2年前のプロフィールで163cmだが、全中国運動会で見た感じでは170cm近い印象だった。3位の鄭詩暢も170cmを超える長身、その他にもプロフィールでは趙岩が167cm、易芳賢と車暁曦が165cm。李暁霞や郭炎、張怡寧にはまだ及ばないが、「体格の良いシェーク攻撃型」というのが中国のジュニア女子の主流だ。

 決勝を戦った陳夢と顧玉ティンは、今年のアジアユース競技大会決勝、全中国ジュニア選手権決勝に続いて決勝で相まみえ、1歳年上の陳夢がいずれも勝利を収めている。雲南電網から出場している顧玉ティンも、もともとは陳夢と同じ山東省の選手。ふたりとも山東省女子チームの喬雲萍監督の門下生だ。中国の卓球関係者もその将来性に太鼓判を押す陳夢は、全中国運動会・女子シングルス2回戦では郭炎(北京)と手に汗握るラリー戦を展開。最後に決定打の詰めの甘さが出て敗れたが、全く互角の試合内容だった。今大会の準々決勝以降のスコアを見ても分かるとおり、その実力は頭ひとつ抜きん出ており、両ハンドの重いドライブは威力十分。練習時間以外では「寝るのが好き」という、なんとも茫洋(ぼうよう)とした雰囲気の持ち主は、どこまで伸びるのか分からないスケールの大きさがある。中国の若手男優では人気No.1である黄暁明の従兄弟(いとこ)ということで、話題性も十分だ。

 その他の注目選手では、3位の鄭詩暢は最近頭角を現してきた武楊に続くカット主戦型。全中国運動会で李佳(日本生命)と組んで4位と大健闘した李佳イは、もうすぐ国家2軍チーム入りすると全中国運動会の時に話していたが、遼寧省では珍しく(?)右利きの有望選手が現れた。ベスト8には入れなかったが、車暁曦も身体能力を活かした連続攻撃は迫力がある。
 19歳の丁寧、18歳の劉詩ウェンの後から、陳夢らが順調に伸びてくれば、「王朝」は盤石だ。陳夢が昨年の世界ジュニアで異質攻守のA.ゾルヤに敗れ、劉詩ウェンが全中国運動会の団体予選で右ペン表速攻の王大琴に敗れ、丁寧がカット主戦型に弱いなど、現時点では変化卓球に脆さを見せる時もあるが、それも徐々に克服されていくだろう。やや人材不足の感がある男子に比べ、中国女子はやはり層が厚い。戦型がシェークドライブ型に偏っていることに突破口を見出したいが、それは他国も同じ状況だ。

Photo上:まさに「未完の大器」、陳夢
Photo中:全中国運動会の女子シングルス2回戦で、郭炎に惜敗した陳夢。郭炎が超・真剣モードで戦っていた
Photo下:全中国運動会の女子ダブルスで、準決勝という大舞台を経験した李佳イ
 10月28日~11月2日にかけて、「2009年全国優秀青少年ピンパン球調賽」が開催された。1992年1月1日以降に出生した17歳以下の選手が出場する選抜大会で、男子109名、女子100名の選手が出場した。出場人数はずいぶん多いようだが、中国のジュニア以下の年代の競技人口を考えると、出場できるのはトップクラスの、ほんのひと握りだ。筆者も知らない選手ばかりなのだが、現在分かっているデータだけでもご紹介しましょう。
 開催種目は男女シングルスのみ。男子シングルスの1~10位の選手は以下のとおり。データが不明な選手は入っていませんが、ご容赦ください。

■男子シングルス ※★は国家2軍チームの選手
1. ★呉家驥 ウ・ジァジィ(通信体育協会) 1995年1月16日生まれ 14歳
[右ペンホルダー両面裏ソフトドライブ型] 09中国U-17チャレンジマッチ5位
2. ★宋鴻遠 ソン・ホンユェン(山東魯能) 1993年1月29日生まれ 16歳
[左シェーク両面裏ソフトドライブ型] 08世界ジュニア選手権団体・複・混合複優勝
3. ★鄭培峰 ジョン・ペイフォン(福建) 1996年3月28日生まれ 13歳
[右ペンホルダー両面裏ソフトドライブ型] 08全国ジュニア大会・南ブロック優勝
4. ★尹航 イン・ハン(解放軍) 1994年5月12日生まれ 15歳
[右シェーク両面裏ソフトドライブ型] 09ITTFカデットチャレンジ優勝
5. 陶文章 タオ・ウェンジャン(魯能青島) 1996年4月21日生まれ 13歳
[左ペンホルダー両面裏ソフトドライブ型] 08全国ジュニア大会・北ブロック優勝
6. ★林高遠 リン・ガオユェン(広東) 1993年1月19日生まれ 16歳
[シェーク攻撃型] 09全中国ジュニア選手権優勝
7. ★劉イ(火×4) リウ・イ(河北) 1992年11月8日生まれ 17歳
[右シェークフォア異質カット主戦型] 09全中国運動会団体ベスト8
8. 陳柏宇 チェン・ボォユ(山東魯能) 15歳
07全国卓球重点単位大会・団体優勝
9. ★程靖チィ(王+其) チェン・ジンチィ(河北) 1994年3月7日生まれ 15歳
[左シェーク両面裏ソフトドライブ型] 08世界ジュニア選手権混合複3位
10. 李天宇 リ・ティエンユ(北京)
[左シェーク攻撃型] 06東アジアグランプリホープス3位

★準々決勝以上の記録
●準々決勝
鄭培峰(福建) -10、6、-8、11、8、-9、9 陶文章(魯能青島)
呉家驥(通信体協) 7、6、-5、-4、5、9 陳柏宇(山東魯能)
宋鴻遠(山東魯能) 5、10、10、7 林高遠(広東)
尹航(解放軍) 9、9、-2、9、-6、-5、10 劉イ(河北)
●準決勝
呉家驥 -9、8、7、-17、11、6 陶文章
宋鴻遠 -5、5、8、-4、9、-9、6 尹航
●決勝
呉家驥 2、5、-10、8、-6、6 宋鴻遠

 8位の陳柏宇の戦型が不明だったが、それ以外の9名の選手を見ると、かなり戦型が分散していることがわかる。
 優勝した呉家驥をはじめ、3人のペンホルダードライブ型がいることは注目に値する。優勝した呉家驥は通信体育協会(郵便・電信などの分野の体育協会)から出場しているが、出身は遼寧省撫順市。撫順市卓球クラブで早くから才能を買われ、14歳にして国家2軍チーム入り。王楠や劉詩ウェンを輩出した撫順市から飛び出した、若手のホープだ。3位の鄭培峰は、12歳で出場した昨年の全中国選手権でハオ帥から1ゲームを奪い、ハオ帥に「僕が12歳の時より間違いなく強い」と言わしめている。福建省チームのメンバーであり、ペンドライブ型の「神様」郭躍華(福建省チーム総監督)の薫陶を受けていることも注目される。
 5位の陶文章も合わせた3名のペンドライブ型はいずれも13~14歳。卓球を始めた年齢が王皓が活躍しはじめた時期と重なっており、「王皓を目指すペンドライブ型」の第一世代と言えなくもない。中国では、王皓に憧れてペンホルダーの両面裏ソフトドライブ型になる子どもたちが増えているそうで、今後、中国卓球のひとつの潮流になっていきそうだ。

 2位の宋鴻遠、4位の尹航、6位の林高遠、9位の程靖チィといったシェーク攻撃型の選手たちはやや小粒だが、ジュニア代表として国際大会に出場しているので、ご存知の方も多いかもしれない。今月25~29日に行われるITTFプロツアー・ポーランドオープンには、08年世界ジュニア代表の宋鴻遠と程靖チィを飛び越して、林高遠と尹航が抜擢されている。その他にも、全中国運動会・団体戦で活躍した上海市チームの尚坤、山東省チームの方博がポーランドオープンに出場するが、中国のジュニア世代の競争は本当に激しい。数年前の世界ジュニア代表でも、結局1軍チームに上がれず、超級リーグの下の甲Aや甲Bリーグでプレーしている選手がたくさんいる。
 今回の大会が行われた江蘇省太倉市は、明代(1400年代初頭)の有名な航海家・鄭和が大航海(遠くアフリカまで遠征)に出発した、古くからの港街。この調賽の上位選手で、無事世界へと漕ぎ出し、難破することなく目標を達成できる選手が果たして何人いるか?

その2に続きます…

Photo上:男子のジュニアの中で最も有望な尹航。2歳年上のカット主戦型、劉イをゲームオールジュースで下す
Photo下:昨年の世界ジュニア選手権で、ダブルス2種目と団体で優勝した宋鴻遠