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☆女子代表選考会「直通莫斯科」 主な試合の結果
[第1日目(1月31日)]
馮亜蘭 3-2 郭炎      李暁霞 3-1  丁寧  武楊  3-2  范瑛
劉詩ウェン 3-2 馮亜蘭   馮亜蘭 3-2  郭炎  李暁霞 3-0  姚彦
[第2日目(2月1日)]
木子  3-1 劉詩ウェン   郭躍  3-2  武楊  郭炎  3-0  丁寧
丁寧  3-1 劉詩ウェン   郭躍  3-2  丁寧  郭躍  3-0  曹臻
常晨晨 3-1 劉詩ウェン   李暁霞 3-0 彭陸洋  武楊  3-0  木子
[第3日目(2月2日)]
王シュアン 3-0 劉詩ウェン 曹臻  3-2  丁寧  李暁霞 3-2 侯暁旭
曹麗思 3-2 李暁丹     郭躍  3-0  范瑛  郭炎  3-0  姚彦
[第4日目(2月3日)]
李暁霞 3-2 劉詩ウェン   郭炎  3-2 李暁霞  郭躍  3-2 李暁霞
劉詩ウェン 3-0  范瑛   李暁丹 3-0  郭躍  馮亜蘭 3-0  郭躍
劉詩ウェン 3-1 彭陸洋   曹臻  3-2  姚彦  郭炎  3-0  文佳
[第5日目(2月4日)]
郭躍  3-2 劉詩ウェン   郭躍  3-2  郭炎  李暁霞 3-0  武楊
劉詩ウェン 3-0  郭炎   李暁霞 3-1 常晨晨  彭陸洋 3-1  曹臻

 中日(なかび)で18時30分スタートとなった第3日目を除く4日間は、すべて試合は10時スタート。最終試合は22時15分スタートで、終わるのは23時を過ぎるというから、かなりハードなスケジュールだ(最終日は13時45分が最終試合)。
 郭躍と李暁霞が19勝2敗の成績で並び、直接対決の成績によって郭躍が代表権を獲得した今回の「直通莫斯科」。郭躍は大会第4日目に李暁丹と馮亜蘭に相次いでストレートで敗れ、李暁霞も同じく第4日目に、郭炎と郭躍に2-3で惜敗している。21試合を戦い抜く「直通莫斯科」、疲労もピークに達する第4日目に大きな勝負の分かれ目があった。

 全中国運動会後は大会への出場機会がなく、また「直通莫斯科」の前には肩をはじめ多くの故障を抱え、計画的な練習ができなかったという郭躍。大会初日、第2試合の侯暁旭戦、第3試合の木子戦で集中力の低いミスを連発し、ベンチコーチの孔令輝が怒りのあまり観客席に引き上げるというハプニングもあった。しかし、郭炎、李暁霞、丁寧といったライバルたちをいずれも3-2で下し、つかんだ19勝2敗という成績は見事だ。
 一方、惜しくも2位に終わった李暁霞は、集合訓練が始まって5日目に高熱と腹痛を発し、急性虫垂炎(盲腸)と診断されて北京に帰京。手術をせずに投薬での治療を選択し、集合訓練に復帰してからわずか3日で今回の「直通莫斯科」を迎えた。大会第3日目には症状が悪化、痛み止めを飲みながら戦って侯暁旭を破ったものの、その後の試合を棄権している。しかし、翌日には再びコートに立ち、郭躍と郭炎に競り負けた2敗だけで戦い抜いた。昨年は「空白の一年」と言われるほど、低迷を極めた李暁霞だが、今回の戦いぶりが大器覚醒のキッカケになる可能性はある。

 結果的に、世界団体選手権モスクワ大会の代表メンバーと予想される5名が上位を占めた今回の「直通莫斯科」。国家女子チームの施之皓監督は5名の選手に対し、「現状ではまだ課題もあるが、彼女たちは張怡寧が同じ年代だった頃よりもレベルは高い。これからさらに成長していってくれるはずだ」(出典:体壇周報)とコメントを寄せている。3月7~14日に行われる二回目の「直通莫斯科」では、今回は取りこぼしが多かった劉詩ウェン、丁寧らの反攻はあるのか。

Photo上:痛み止めを飲みながら、根性のプレーを見せた李暁霞。世界ランキング5位であっても、団体メンバーの座は約束されたものではない
Photo下:序盤で出遅れたものの、郭躍、郭炎を破り、劉詩ウェンにもゲームオールと肉薄。久々に存在感を見せた06年世界ジュニアチャンピオンの馮亜蘭
 昨日2月4日、国家女子1軍チームの22名による、世界団体選手権モスクワ大会の代表選考会「直通莫斯科(直通モスクワ)」が終了した。最終結果は以下のとおり。

☆「直通莫斯科」女子最終成績 〈1.31~2.4〉
1. 郭躍     19勝2敗
2. 李暁霞    19勝2敗
3. 郭炎     17勝4敗
4. 劉詩ウェン  15勝6敗
5. 丁寧     14勝7敗
6. 曹臻     13勝8敗
7. 馮亜蘭    13勝8敗
8. 李暁丹    13勝8敗
9. 姚彦     12勝9敗
10. 彭陸洋    12勝9敗
11. 文佳     11勝10敗
12. 木子     11勝10敗
13. 武楊     10勝11敗
14. 常晨晨    10勝11敗
15. 王シュアン  10勝11敗
16. 楊揚     8勝13敗
17. 饒静文    7勝14敗
18. 范瑛     5勝16敗
19. 曹麗思    5勝16敗
20. 聶維     4勝17敗
21. 侯暁旭    3勝18敗
22. 周芳芳    1勝20敗

 実力者が順当に上位を占める中、19勝2敗で郭躍と李暁霞が並び、直接対決で3-2で勝利していた郭躍が1位。04年世界団体選手権ドーハ大会から、4大会連続での世界団体選手権代表の座を射止めた。
 モスクワ大会の代表第1号となった郭躍に続き、選手たちには自力で代表権を獲得するチャンスがあと2回残されている。2月17~21日に行われるITTFプロツアー・カタールオープンと、2月23~27日に行われるITTFプロツアー・クウェートオープン。プロツアーでも屈指のレベルの高さを誇るこの2大会で、2大会とも優勝した選手が代表第2号となる。さらに、3月7~14日に今回の「直通莫斯科」の1~16位の選手が、8人ずつ2つのリーグに分かれてリーグ戦を行い、リーグの1位選手同士の代表決定戦で勝利すれば代表第3号だ。残る2名、もしくは3名(プロツアー2大会での優勝者が出なかった場合)は、国際大会での成績などを考慮し、協会が代表を決定する。

選手同士の対戦結果などは、後ほど詳しくお伝えします!

Photo:郭躍、張怡寧不在の中国女子チームでリーダーシップを発揮できるか
 昨日もお伝えしたとおり、1月31日に世界団体選手権モスクワ大会の女子代表選考会「直通莫斯科」がスタートしている。「莫斯科」はモスクワの音訳で、中国語で発音すると「モォスークゥ」という感じだ。09年2~3月には世界選手権(個人戦)横浜大会の代表選考会「直通横浜」が行われているが、世界団体選手権について言えば、前回の08年広州大会は選考会は行われなかった。同年8月に行われた北京五輪の重要な前哨戦だったためだ。世界団体選手権の代表選考会が行われるのは、06年2~3月に行われた「直通不莱梅(ブレーメン)」以来ということになる。
 女子で「直通莫斯科」に出場する22名のリストは以下のとおり。5日間で総当たりのリーグ戦を行い、21試合を戦い抜くハードなスケジュールだ。

★「直通莫斯科」国家女子1軍チーム・出場選手リスト
劉詩ウェン リウ・シウェン    18歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR1
郭躍    グオ・ユエ      21歳  左S両面裏ソフトドライブ型   WR3
郭炎    グオ・イェン     27歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR4
李暁霞   リ・シャオシア    22歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR5
丁寧    ディン・ニン     19歳  左S両面裏ソフトドライブ型   WR7
范瑛    ファン・イン     26歳  右Sフォア裏・バック表カット型 WR10
曹臻    ツァオ・ジェン    23歳  右Sフォア裏・バック表攻撃型  WR16
姚彦    ヤオ・イェン     21歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR26
武楊    ウ・ヤン       18歳  右Sフォア裏・バック表カット型 WR34
李暁丹   リ・シャオダン    19歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR37
常晨晨   チャン・チェンチェン 23歳  左S両面裏ソフトドライブ型   WR38
文佳    ウェン・ジア     19歳  左S両面裏ソフトドライブ型   WR48
饒静文   ラオ・ジンウェン   24歳  右Sフォア裏・バック表攻撃型  WR60
木子    ムゥ・ズ       21歳  右Sフォア裏・バック表攻撃型  WR66
王シュアン ワン・シュアン    20歳  右Sフォア裏・バック表攻撃型  WR78
曹麗思   ツァオ・リィス    18歳  右Sフォア表・バック裏攻撃型  WR100
侯暁旭   ホウ・シャオシュ   20歳  右S両面裏ソフトドライブ型   WR118

彭陸洋   パン・ルゥヤン    24歳  右S両面裏ソフトドライブ型   ※WR29
馮亜蘭   フォン・ヤァラン   20歳  右S両面裏ソフトドライブ型   ※WR51
楊揚    ヤン・ヤン      20歳  右S両面裏ソフトドライブ型   ※WR77
周芳芳   ジョウ・ファンファン 23歳  右Sフォア表・バック裏攻撃型  -
聶維    ニエ・ウェイ     22歳  右Sフォア裏・バック表攻撃型  -

※WR=現在世界ランキングのない選手の過去最高位
※劉詩ウェン=雨+文
※王シュアン=王+旋

 世界ランキング10位以内の選手が6人出場し、「選考会で優勝するのは、世界選手権で優勝するより難しい」と言われるのも納得のレベルの高さ。09年2~3月に行われた「直通横浜」の出場選手とほぼ同じメンバーで、長期休養中の張怡寧が出場せず、09年世界ジュニア優勝の武楊と09年全中国運動会女子複優勝の侯暁旭が抜擢されている。カット主戦型の武楊は思わぬ波乱の立て役者になるかもしれない。
 プレースタイルでは、女子では07年世界選手権ザグレブ大会の代表選考会「直通薩格勒布」に出場した李楠(左ペンホルダー裏ソフトドライブ型)を最後に、ペンホルダーの選手は選考会に出場していない。ともに左シェークドライブ型の郭躍と丁寧が全く異なるスタイルであるように、選手それぞれに打法に特徴があるため、中国女子が没個性的だという印象はないが、やはりペンホルダー不在は寂しい。その一方で、フォア表ソフト2名を含め、シェークの異質攻撃型が7名もいるのが印象的だ。出場選手22名の平均年齢は21.27歳とかなり若い。
 「直通莫斯科」の途中経過も引き続きお伝えします!

Photo上:世界ランキングを1年で50位も上げてきた武楊、2軍チームからステップアップ
Photo下:全中国運動会では、郭躍と組んだダブルスで優勝した侯暁旭
 昨日1月31日、江蘇省南通市の「通州国際卓球訓練基地」で、国家女子1軍チームによる世界団体選手権モスクワ大会の代表選考会「直通莫斯科」がスタートした。劉詩ウェン、李暁霞、郭炎といった実力者が順調に白星を重ねたが、開幕初日のマスコミの注目を集めたのは、なんといっても訓練基地を訪れたひとりの女子選手だった。「このまま引退か、それとも現役続行か」。その去就が注目される張怡寧が、訓練基地で会見を開いたのだ。先日マカオで行われたITTFプロツアー・グランドファイナルでは、夫婦揃ってお忍びで観戦に訪れていたが、公式の場に登場するのは昨年10月の全中国運動会以来だ。

 これまでの茶髪のショートヘアとは違い、やや長めの黒髪で会見場に姿を現した張怡寧。「今回、訓練基地を訪れた理由は?」との問いには、「コーチやチームメイトの会うためです。テレビの放映でしかみんなの姿が見られないから、とても会いたかった。毎日のように夢に見るくらいでした」と笑顔で答えた。
 そして気になる今後の去就については、張怡寧本人もまだ明確な決定は下していないようだ。「このまま引退するとしても、自分の競技人生に悔いは全くありません」と述べる一方で、「自分にはまだ確かに、潜在能力があるとも感じています」とコメント。「オフの期間が長過ぎると、現役復帰は難しいのでは?」という質問に対しても、「すぐに元の状態には戻せると思います。落ちた筋力を取り戻すことが重要になるので、トレーニングはキツいでしょうけど(笑)」と自信をのぞかせた。この会見の直前には、張怡寧は引退してアメリカのビザ取得の準備を進めているという報道も流れたが、これについてははっきりと否定した。

 国家女子チームの施之皓監督は「今日の落ち着いた服装などを見ても、張怡寧は大人の女性になって、まるで別人のようだね。しかし、どんな役割でも見事に演じるのが張怡寧だ。ひとたび選手としてコートに立てば、すばらしいアスリートという役割を完璧に演じてくれるだろう」とコメント。「国家女子卓球チームには確かに彼女のような選手が必要で、今後もチームの一員として、栄光の歴史を築いてくれることを願っている。しかし、我々は彼女の選択を尊重するし、彼女が引退したとしても自信を持って進んでいかねばならない」(施之皓)。やはり、張怡寧に対する未練は隠せないようだ。

 今回の「直通莫斯科」では、試験的に丁寧と李暁霞のベンチにも入った張怡寧。李暁霞には「(張怡寧が)今後コーチになったとしても、きっと超一流のコーチになれると思う。彼女は本当に超人ですね」と言わしめている。今は新婚生活を享受し、休養につとめている張怡寧。その動向については、今しばらく見守るしかなさそうだ。

Photo:全中国運動会で、マスコミの取材攻勢を受ける張怡寧。今回の会見にも、大勢の報道陣が詰めかけた
 1月27日、大韓卓球協会は2009年の年間最優秀選手に、韓国女子チームのエースである金キョン(王+景)娥を選出したことを発表した。
 金キョン娥は昨年5月の世界選手権横浜大会(個人戦)ではベスト32とやや振るわなかったものの、プロツアーではデンマークオープン2位、中国オープン・イングランドオープン3位、さらにダブルスでは朴美英とのペアで2大会に優勝するなど、好成績を連発。国内の所属チームである大韓航空女子チームでも、スーパーリーグや総合選手権など主要4大会を完全制覇する活躍を見せた。
 年間最優秀選手は男子選手の選出が多く、金キョン娥は意外にも今回が初受賞。08年度は大韓航空女子チームの後輩、唐イェ序に最優秀選手の座を譲ったが、32歳にして初の勲章を手にした。今シーズンも中国超級リーグに助っ人選手として参戦が予定されており、2012年ロンドン五輪に向けて闘志満々だ。

 同時に大韓卓球協会は、最優秀新人選手としてアジアジュニア選手権を制した金ミン(王+民)鉐と、ワールドジュニアサーキットなどで活躍した金東賢を選出。世界ジュニア選手権で銅メダル2枚を獲得した金ミン鉐は、同年代の徐賢徳、鄭栄植とともに「三銃士」と呼ばれる韓国男子期待の若手。金ミン鉐は呉尚垠がエースのKT&G、徐賢徳は柳承敏・朱世赫の2枚看板がいる三星生命、そして“イケメンプレーヤー”として注目の鄭栄植は金擇洙が監督を務める大宇証券と、スーパーリーグのライバルチームにそれぞれ入団。この3人の他にも李尚洙、丁祥恩、韓知敏と韓国男子の若手は層が厚く、パワーでも中国には引けをとらない。日本男子にとっても警戒すべき相手だ。

 また、金ミン鉐が入団するKT&G(韓国唯一のたばこの製造会社)には、07年世界選手権ザグレブ大会代表の李政三の復帰が伝えられている。09年1月に軍隊を除隊した後、チームの練習への参加を拒否していたが、1年ぶりの復帰となったようだ。李政三は韓国では珍しい左中国式ペンドライブ型、ザグレブ大会でプリモラッツ(クロアチア)を破ってベスト32に進出している。長身から繰り出すパワフルな両ハンドドライブで、再び国際舞台へ復帰するか。

Photo上:年間最優秀選手に選ばれた金キョン娥。日本女子にとっては天敵とも言える存在だ
Photo下:進境著しい金ミン鉐
 現在、江蘇省通州市の「通州国際卓球訓練基地」で集合訓練を行っている中国女子チーム。1月24日には、同じ江蘇省の蘇州市で行われた慈善活動に、施之皓監督と郭躍、劉詩ウェンの3名が参加した。
 取材に訪れたメディアの注目はやはり女王・張怡寧の去就。施之皓監督は「もう一度はっきりさせておきたい。張怡寧はまだ現役引退はしません。ただし、彼女の休暇がいつ終わるかはまだ決定していない。現時点でひとつだけ言えることは、彼女が5月の世界団体選手権モスクワ大会には出場しないことです」(出典『新京報』)と発言。張怡寧のモスクワ大会欠場を公の場で認めた。

 2000年クアラルンプール大会から、5大会連続で世界選手権・団体戦に出場してきた張怡寧の欠場は、最強を誇る中国女子にとってもかなりの痛手。張怡寧は団体戦の初陣である00年クアラルンプール大会決勝で徐競(チャイニーズタイペイ)、04年ドーハ大会の日本戦で梅村礼に敗れているものの、06・08年大会では際立った安定感でチームを優勝に導いてきた。個人戦も含めた、世界選手権への連続出場記録は10でストップすることになる。
 モスクワ大会の国内選考会「直通莫斯科」では、優勝した1名だけが出場の権利を獲得する中国女子チーム。現時点で団体メンバー(最大5名)として有力視されるのは郭躍・郭炎・李暁霞・劉詩ウェン・丁寧の5名だ。これまで世界団体選手権に出場していないカットの范瑛、異質速攻の曹臻を抜擢するメリットは少ないため、「直通莫斯科」でダークホースが出現しない限り、ほぼこの5名で確定ではないか。ベテランの郭炎はモスクワ大会出場の可能性は低いと思われたが、トーナメント・オブ・チャンピオンズとプロツアーグランドファイナルを制するなど好調をキープしており、若いメンバー構成から見ても3大会連続(団体戦)の代表入りが濃厚だ。

 06年ブレーメン大会、08年広州大会の決勝に起用された王楠・張怡寧・郭躍のうち、ふたりが抜ける中国女子。しかも郭躍は2大会連続で決勝で黒星を喫している。郭炎、李暁霞はこれまで重要な試合には出場しておらず、劉詩ウェンと丁寧は世界団体選手権には初出場。今回の中国女子チームはやや不安定な要素が多い。中国香港は帖雅娜・林菱らが選手としてのピークを過ぎ、シンガポールはエース格のリ・ジャウェイに出産のブランクがあるなど、ライバルチームも戦力充実とは言いがたい中で、やはり日本女子チームの活躍に期待したい。

Photo:08年広州大会での張怡寧のプレー。再びそのオールラウンドプレーを披露する日は来るのか?
 昨年12月に行われた「2009年国家卓球チームコーチ報告会」で、国家男子チームの劉国梁監督から王皓へ、ある“プレゼント”が手渡された。中国の卓球関係のネットで、「網民(ネットユーザー)」たちが王皓に寄せた批評を集め、プリントしたものだ。ネットで王皓は「肥皓(フェイハオ)」というあだ名が付けられ、「恋愛問題に激太り、王皓ももう落ち目」「太り過ぎ、五輪が終わってから何をやってたのか」「王皓、痩せないとボルどころか、伸び盛りのオフチャロフや水谷隼にも勝てなくなるぞ」等々の批評が寄せられている。ついに王皓にダイエット指令が下されたのだ。

 2000年に国家チームに入った時、王皓は身長176cmで体重65キロと公表されていた。しかし、報道によると昨年は81kgまで体重が増えたという。世界選手権横浜大会でタイトルを獲得した時は、「少し太ったかな」と思ったくらいだったが、9月の全中国運動会では明らかに太っていた(中国リポート2009/10/15『全中国運動会その1-太っても強かった王皓』参照)。国家チームの選手たちは、1~3月の間は世界選手権に向けたハードな集合訓練があるため、体重が落ちる。そして世界選手権が終わり、それぞれの所属チームに戻って超級リーグを戦う間は、移動続きで練習量が落ち、体重が増えてしまう。集合訓練による強化が中心だった90年代までは、一部のベテランを除いて太めの選手などいなかったはずだ。

 厦門(アモイ)での国家男子チームの集合訓練で、王皓は食事制限とトレーニングを行い、馬龍や馬琳、王励勤らチームメイトがプロツアー・グランドファイナルを戦う間にも、厦門で居残りダイエット合宿。…これはグランドファイナルの出場資格を満たせなかったためだが、すでに体重は5kgほど落ちたそうで、1月14日の「ペンホルダーvs.シェーク対決」の映像でも体の線がシャープになったように見える。王皓の部屋には体重計がおかれ、リバウンドを戒めているとのこと。世界選手権モスクワ大会で、以前のようにほっそりとした王皓に会えそうだ。

 それにしても、王涛に劉国梁に王皓、人民解放軍に所属する軍人たちが太り過ぎを指摘されるのは不名誉なことに違いない。王涛はダイエットに成功し、王皓もダイエット中となると、最後には劉国梁監督に矛(ほこ)先が向けられるのか?

Photo:全中国運動会での王皓。大会最終日の表彰なので、これでも少し痩せていました…
 1月14日に行われた「雅居楽地産-“金球拍”直横大対決」から、トピックスをもうひとつ。このシェークとペンホルダーの対決の3番ダブルス終了後、「金球拍(純金のラケット)」の贈呈式が行われた。
 これは中国卓球協会としても初めての試みとなるが、中国男子チームの選手たちの中から、1.国内大会での獲得ポイント1位の選手、2.国際大会での獲得ポイント1位の選手、3.最優秀指導者、の3人を選出。受賞者には純金のラケットをあしらったトロフィーが送られるというものだ。このトロフィー、なんと時価20万元(約360万円)というから驚く。「ずいぶん奮発したな」と思ったら、昨年10月に中国卓球協会は金製品ブランドの北京金一文化発展有限公司と契約していたのだ。

 この「純金のラケット」を獲得したのは、国内大会の最優秀選手として全中国運動会の団体・単・混合複を制した王皓。国際大会の最優秀選手として、アジアカップ、アジア選手権、プロツアーグランドファイナルなどを制した馬龍。そして最優秀指導者は、馬琳・王皓の担当コーチである呉敬平が選ばれた。
 学校の先生のようなルックスが、中国男子チームのコーチでも異彩を放つ呉敬平は、1954年5月9日生まれの55歳。試合が行われた成都市からほど近い内江市隆昌県の出身で、まさに故郷に錦を飾る授賞となった。91年から国家チームのコーチとなり、呂林、秦志ジェン、馬琳、王皓らを育てたペンホルダー育成のスペシャリストだ。

 また、今回の「直横大対決」は、収益のすべてが四川大地震の被災地へ寄付されるチャリティマッチ。試合前日の1月13日には、ボルや柳承敏を含めた出場選手たちが大きな被害を受けた四川省北川県を訪問。犠牲者に黙祷を捧げ、子どもたちと卓球を楽しんだことが報道されている。

Photo上:国家チームの辣腕コーチ・呉敬平(左)
Photo下:赤十字を通じて、四川大地震の被災地へ義援金を送っている柳承敏
 1月14日に四川省成都市で行われた「雅居楽地産-“金球拍”直横大対決」。この対決では、シェークとペンホルダーの「口撃」合戦も存分に行われた。
 まず試合が行われる前に、チーム・シェークハンドの王涛監督と陳静コーチ(88年ソウル五輪金メダリスト)、チーム・ペンホルダーの劉国梁監督と曹燕華コーチ(83・85年世界選手権優勝)が会見。劉国梁監督が「我がチームのメンバーを見て下さい、五輪のここ2大会の金メダリストがチームにいるんですよ。今さら実力を語る必要もないでしょう」と自信満々のコメント。王涛も負けじと「左にいる陳静は中国初の五輪シングルスの金メダリスト、右にいる馬龍は世界ランキング1位、みんなシェークですよ!」と応戦。一触即発(?)の空気を演出した。

 さらに試合の前座として行われたのが、なんと張継科と許シンによる漫才。張継科がシェーク、許シンがペンホルダーの代表として、「ペンホルダーとシェーク、どちらが強い?」をテーマに大熱演。柳承敏とボルを招待選手としてメンバーに加えたため、はじき出される結果となってしまったこのふたり。その持て余したエネルギーをすべて漫才に注ぎ込んだようだ…。ちなみに漫才の台本を書いたのは、国家チームのコーチ陣でも随一の文筆家として知られた李暁東。昨年いっぱいでコーチとしての第一線を退き、時間にも余裕があったのだろう。
 その内容の一部を要約してみると…。

許シン:僕は未来の劉国梁だね。シェークの選手なんて、片っ端から倒してやるよ
張継科:それなら僕は蔡振華。君たちペンホルダーはみんな、シェークに管理される運命だ
許シン:シェーク? 包丁みたいな握りして、動かないからでっぷり太って。もう肉屋がコートにいるみたいだね
張継科:ペンホルダー? みんな計算高くて、頭を使ってばっかり。見てよ馬琳を、頭を使いすぎてもうハゲそうじゃないか。それにペンホルダーはみんな年取ると、太って動けなくなるね(ここで場内のビジョンに王皓が大映しに)。

 …国家チームのコーチが書いたとは思えないほど、きわどい内容だ。そしてこのふたり、実に楽しそうに漫才をやっている。台本を書いたのは李暁東コーチ、天下御免で先輩たちに毒が吐けるのだからたまらない。アドリブで悪口を追加しているかもしれない。

↓中国の映像サイト「56.com」のふたりの熱演映像(かなり重いです)
http://www.56.com/u25/v_NDg5NzA4NzA.html

上写真:横浜大会では馬龍、全中国運動会では王励勤、そして今度は張継科と笑いのダブルスを組んだ許シン
中写真:見かけによらず饒舌だった張継科
下写真:馬琳、計算高い…?
 1月17日に終了した平成21年度全日本卓球選手権大会。中国でも早速『前中国代表・王輝が全日本選手権制覇』など、全日本選手権に関するニュースが流れている。福原愛への注目度も相変わらず高いようだ。
 その全日本選手権の期間中、中国では世紀の一戦が開催された。中国リポート2010/01/06「ついに決着? 『ペンホルダーvs.シェークハンド』慈善賽」でもお伝えしたとおり、1月14日に四川省成都市で「雅居楽地産-“金球拍”直横大対決」が行われたのだ。結果は下記のとおり。

[横板(シェーク)隊 3-1 直板(ペンホルダー)隊]

★第1試合 ボル(ドイツ) 7、-5、-7、-7 馬琳(中国)○
・馬琳のミスに乗じてボルが第1ゲームを奪ったものの、常に先手を奪う馬琳が2ゲーム連取で逆転。第4ゲーム、馬琳8-5でボルがタイムアウト、馬琳8-7となって「ここが勝負」と馬琳もタイムアウト。ここから馬琳が3点連取で勝利を決め、チーム・ペンホルダーが先制

★第2試合 ○王励勤(中国) 9、11、11 柳承敏(韓国)
・各ゲームは競り合うも王励勤がストレート勝ち。王励勤は第2ゲームに9-10、10-11と2回のゲームポイントを奪われながらしのぎ切った。超級リーグの四川全興でプレーした柳承敏、凱旋を勝利で飾ることはできず。チーム・シェークが1-1に戻す。

★第3試合 ○馬龍/ボル(中国/ドイツ) 11、-7、9、7 王皓/柳承敏(中国/韓国)
・馬龍/ボルという夢のダブルスが、04年アテネ五輪決勝を戦ったふたりが組んだペンホルダーペアに勝利「僕らのペアはボールの威力はあったけど、やはり安定感で及ばなかったね。彼らは右利きと左利きで、ペアリングも良かった」(王皓)。

★第4試合 ○馬龍(中国) 6、6、-9、-9、4 王皓(中国)
・世界ランキング1位と2位のビッグマッチは、09年世界選手権横浜大会の準決勝、09年全中国運動会決勝の再現。馬龍の威力と安定感を備えたドライブが、王皓の3球目攻撃を上回った。最終ゲームは馬龍が6-0でスタートダッシュし、王皓へのリベンジを果たした。 

 こうして試合はチーム・シェークの勝利に終わった。敗れ去ったチーム・ペンホルダーは、全員がシェークに転向…ということはないが、それぞれに見ごたえある試合が展開されたようだ。 これからはエキシビションマッチとして、ボルが右ペンドライブ型、馬琳が左シェークドライブ型というように戦型を交換して試合をしたり、さまざまなラバーを貼ったラケットを用意して、試合前にくじ引きでラケットを決めるのも面白いかもしれない。中国ではハイレベルなラリーはいくらでも観ることができる。卓球をアピールするためには、何か違う付加価値も求められているのかもしれない。

左写真:4番で激突した馬龍(上)と王皓(中/写真は全中国運動会)。馬琳に惜敗したボル(下/写真はプロツアーグランドファイナル)