スマホ版に
戻る

速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

第4回世界ジュニア選手権大会

負けたとはいえ日本男子の戦いは感動を与えるものだった。ベンチの横にいた。高木和は試合に行く前に「行って来ます」と手を差し出してきた。目は闘志に燃えていた。こんなことは初めてだ。結果、敗れたがあと1本の差しかない。15歳の健太も堂々たる試合でその才能を存分に発揮した。心の底からのガッツも出した。大矢は相手を圧倒する闘志を出した。勝利の瞬間、胸が熱くなった。
最近、若手、特にドイツに行っている男子を指して「礼儀がなっていない。人間教育をするべきだ。ドイツではなく日本でしっかりと礼儀、精神をたたき込むべき」と言う関係者は少なくない。それはそうかもしれない。しかし、今回の選手たちは本当に立派だ。単にヨーロッパで練習し、試合をしていることをマイナスの部分で指摘していいのだろうか。彼らは会えばしっかり挨拶してきた。負けた後のインタビューでもしっかり答えてくれた。何より、試合になれば「魂のこもった試合」を見せてくれた。今の一般の選手にない良い部分をたくさん持っている。彼らの良い部分をもっと伸ばしつつ、スポーツマンとしての大切な部分を教えればいい。今回の戦いをもっと強化関係の人たち、母体の人に見て欲しかった。彼らは日本代表として素晴らしい戦いをした。
 会場を沸かせた日本の健闘と気力だった。負けたとはいえ会場の人に感動を与えるような試合だった。トップの松平も惜しかった。高木和はいずれも競り合いで2点落としたがそこにはわずかな差しかない。大矢も魂の卓球を見せた。堂々の準優勝だった。
「優勝したかった。でも決勝までいけたのは収穫があった。この悔しい思いが彼らがシニアになった時に生きてくると思う。相手の方がサービスが断然に良かった。ラリーでは差がさほどなかったが勝負所でいいサービスを出され、それをうまくレシーブできなかった。高木和は2点落としたがいいゲームをして十分に評価できる。もっとサービス力さえついていけば十分にやれる。今年は中国も2年連続負けられないという必死さが伝わってきた。高木和、松平健太、大矢、彼らの卓球は間違っていない。これから世界ランキングをあげていくだけ。2位といっても胸を張って、これからの個人戦を戦いたい」と河野監督。
〈男子団体決勝〉
     日本 1-3 中国 
松平健 4-11, 11-7, 11-13, 9-11 徐克
高木和 15-17, 8-11, 11-9, 2-11 呉ハオ
大矢  11-8, 5-11, 11-8, 7-11, 11-6 姜海洋
高木和 13-15, 10-12, 10-12     徐克
 本当にあと少しだった。宇土が2点取られたが、競り合いの中での敗戦。サービス、レシーブ力で中国が上だった。しかしラリー戦では互角の戦い。ゲームオールの8本で落とした宇土のトップの試合をものにしていれば流れはどうなったかわからない。「選手はよくやった。相手が中国というのを意識しすぎた面があるのかも。しかし、中国とこんな試合をしたのは初めて。僅差だったし、あと少しの技術があれば勝てた試合だった」と大岡監督。
〈女子団体決勝〉
      日本 1-3 中国
宇土  11-9, 3-11, 11-9, 4-11, 8-11 馮亜蘭
石垣  2-11, 12-14, 11-7, 10-12 木子
照井  11-9, 6-11, 12-10, 11-7 文佳
宇土  12-10, 8-11, 3-11, 9-11 木子
「高木和の最後は難しいことせず、レシーブが真ん中にいけばいいと。どんな悪いとき、2,3点連続して失点した時でも顔に出さないように試合前に注意しました。ここまで来たら優勝したい。チェレンジできることが幸せ。日本の人がみんな願っているので優勝したい。中国は去年よりもメンバーは強い。日本は勢いだけです」と決勝を決めた後、河野監督は興奮しながら語った。
前回は北京チームを派遣してきた中国だったが、今回はナショナルチームの2軍(ジュニア)の代表だ。見ていても相当に強い。しかし、日本男子には勢いがある。それに中国が予想できないほどの個性派集団。どんな試合になるか楽しみだ。
「自分の卓球は前向きにやらないとだめな卓球だから」と大矢。3番で貴重な勝利をたたき出した。「ぼくはサービスがいいと言われているので、練習から意識してサービスからの3球目攻撃をやっている。ヨーロッパ選手は両ハンドが強いのでミドルを攻めるように心がけた。1-1で3番は重要なので絶対勝ちたいと思った」

〈12月12日〉
〈女子団体準決勝〉
 日本 3-0 ハンガリー
石垣 11-9, 12-14, 11-7, 11-6 ペルゲル
宇土  11-9, 11-6, 11-8  リ・ビン   
照井  11-3,11-6 11-9  バルガ

 中国 3-1 ルーマニア
木子 6-11, 11-3, 5-11, 11-6, 7-11 サマラン
馮亜ラン 11-3, 11-, 12-10    ドデアン
文佳 11-5, 11-6, 11-5    ママリガ

〈男子団体準決勝〉
 日本  3-1  ドイツ
高木和  11-6, 7-11, 11-6, 11-9 フィルス
松平健  11-6, 9-11, 4-11, 4-11 オフチャロフ
大矢   11-7, 11-3, 11-6 メンゲル
高木和  11-13, 11-9, 10-12, 11-3, 13-11 オフチャロフ

 中国  3-0  ロシア
徐克   11-7, 8-11, 11-8, 11-1 ゴロバノフ
呉?   11-7, 11-8, 11-9    パイコフ
姜海洋  11-3, 11-4, 9-11, 11-9 ウトチキン
女子はハンガリーに完勝。石垣、宇土が相手のツインエースを押さえ込み、3番の照井が勝利を決めた。「試合前は不安になったけど、去年は0-3で負けた相手に3-0で勝ってすっきりしました。宇土の存在が大きい。照井を3番に持って行けるのがこのチームの強み」と大岡監督。
男子はあつい試合を展開。「フィルスには前にやって簡単に勝っていたので今回逆にナーバスになった。オフチャロフとの最終ゲームでリードされてタイムアウトも考えたが、そこから集中した。自分のフォアドライブのほうがバックハンドよりも質が高いと思ったのでフォアで攻めた。相手ボールは離れると沈んでくるので、台上で攻めた。相手のバックサービスがどこにくるか最後までわからなかった。最後はサービスが長く出てきたのを狙っていた。相手は世界ランキングが自分より上なので挑戦し、思い切ってできた」と2点取った高木和のコメント。
 日本の男女が強い。特にシニアの日本男子は世界選手権などでもパッとしないことが多いため、今回の活躍は取材していても楽しい気分になる。現地時間の12日の夕方には準決勝がスタートする。日本女子は昨年苦汁を飲まされたハンガリーとの対戦。なかなかの強敵だ。一方、男子はドイツ。国際大会などで何度も対戦し、いい勝負の相手だけにクロスゲームは必至。
 準々決勝の終わった夜、9時に会場からホテルに戻った。このタクシーとのやりとりがエジプトでのすべてを物語っている。いつも値段交渉なのだ。この時には止まったタクシーに値段を聞いたら、いつも値切って40ポンドなのに、自分から「30でいいよ」だって。珍しい(!)エジプト人だ。ところが、乗ったら窓が閉まらない。それに本当にぼろい車で走りながら、プスプス音がして、今にもエンジンが止まりそう。途中高速道路のようなところを走るのだが、車体が吹っ飛びそうなスピードで、しかもほとんど粉塵の中のオープンカー状態。またまたのどを傷めました。
「すばらしい試合でした」。試合後、開口一番、河野監督は興奮気味に語った。「韓国に対してこんな勝ち方をした日本は記憶にない。みんなが持ち味を出し、バックハンドをフォアハンドと同じように使える。健太も韓知敏に完璧に勝った。明日のドイツ戦は勝っても負けてもクロスゲームになる。自分たちのプレーをするだけ」
去年の岸川・水谷のツインエースを擁する日本も強かったが、今年のチームもそれに勝るとも劣らない強さを持っている。高木和の成長は大きい。安定した強さで、ドイツオープンでの活躍ですっかり自信をつけたプレーぶりだ。前陣での両ハンドのライジングショットは相変わらず。大矢は力感あふれる両ハンドで相手を押しまくっている。緻密な相手とやるときは課題があるが、打ち合いになったら滅法強い。その豪快さは異彩を放っている。そして松平健太の成長は目を見張るばかりだ。サービスは相変わらず効いているが、それに加え、バックハンドの鋭さ、フォアハンドの安定、そして天才的な台上のアタックが光っている。この個性的な集団はドイツを粉砕できるか。
準々決勝
日本 3-0 韓国
高木和    11-6, 11-8, 11-8    徐明徳
松平健    11-6, 11-6, 11-7  韓知敏
大矢       11-2, 15-13, 11-7  李尚洙

ドイツ 3-1 フランス
ロシア 3-2 チャイニーズ・タイペイ
中国 3-0 イングランド
日本女子はタイペイに完勝。準決勝進出を決め、2年ぶりのメダルが確定した。「宇土がトップでムードメーカーになっている。明日のハンガリーにはいけるんじゃないかと私も選手も思っている」と試合後の大岡監督。
準々決勝
 日本 3-0 チャイニーズ・タイペイ
宇土  11-5, 11-7, 4-11, 11-6   熊乃儀
石垣  11-7, 11-5, 11-7     鄭怡静
照井  11-4, 11-7, 7-11, 11-4  侯雨伶
中国 3-0 ロシア
ハンガリー 3-0 ポーランド
ルーマニア 3-2 韓国
日本男子の準々決勝の相手は韓国。才能あふれる選手たちが競い合いながら伸びていく日本に対して、韓国は限られた人材をハードトレーニングで鍛えていくやり方。対照的なチームの対決は見物だ。現地時間の夕方6時に試合はスタートする。