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世界ジュニア

 世界ジュニア選手権も大会第5日目が終了。帰りのホテルへのバスの中で、中国のコーチが「あと3日か……」とつぶやいてました。

 今日はブログのようになってしまった世界ジュニア速報。しかし、明日は男子シングルスに吉田・町・村松・酒井、女子シングルスに谷岡・前田・加藤・伊藤、男子ダブルスに吉田/町、村松/酒井、女子ダブルスに谷岡/前田、加藤/伊藤と全8選手4ペアが一気に登場。団体戦に出場できなかった町くんのプレーに期待です。

 男女シングルス・ダブルスとも2ラウンドずつ進行するため、明日は常にフロアのどこかで日本選手が試合をしているでしょう。ホテルの前を歩いていた野良牛くん(下写真)のように、のんびりしているわけにはいきません!
 会場の外には、細々とではあるがメーカーブースも出ている。ドイツのヨーラとティバー、そしてインドのスタグ。スタグのブースに何度か顔を出していたら、すっかり顔を覚えられてしまった。
 「おい、この3つの筒、何に使うかわかるか?」とクイズを出された取材班。どうみてもただの青いプラスチックの筒。「わからないな」と言ったらおもむろにその筒をつなげはじめた。「こうやって使うんだよ」。

 落ちているボールが筒の中に収納されていくボールピッカーらしいです。うーん、アイデアは認めるけど、これはいらないな…。
 大会第5日目、日本勢で唯一試合のあった加藤美優(JOCエリートアカデミー/写真上)は、テニソン(インド)とフェルマース(オランダ)を下し、明日の女子シングルス1回戦へ駒を進めた。
 自分のプレーで最も自信があるのは「台上プレー」という加藤。「2試合目の後半くらいから良いプレーができました。だんだん足が動くようになって、フォアが入るようになってきました。個人戦は少しでも多く試合がしたい」と試合後に語った。難しそうなプレーが平気でできる選手だ。
 今年1月の平成23年度全日本では、女子シングルスで4回戦まで進出して注目を集めたが、来年1月の全日本もすごいことをやってくれそうな気がする。

 写真下は加藤のベンチに入った三原孝博コーチ。大正大、そして日産自動車で活躍した頃の、ドライブマンのお手本のようなフォアドライブをご記憶の方も多いはず。女子チームの選手たちの良き兄貴分という感じだ。

お昼寝中…

2012/12/13

 今日も30℃を超えているハイデラバードの街。日本は結構冷え込んでいるようですが、こちらはまさに南国の風情。皆サン、バタバタ倒れたかのように芝生で寝てます。
 練習場の入り口で寝ていたのは…、昨日の決勝3番で負けてしまった徐晨皓クン。彼は世界ランキングがないので、今日の男子シングルス予選リーグに出なければいけません。「寝てないで練習シナサイ」とちらっと思いましたが、この大物感、なんとも憎めない選手です。
 地元インドの観衆から大きな声援を集めているのが、ブラジル女子チームのブルーナ・アレクサンドレ。3歳の時に血栓症で右手を失ったが、兄の影響で7歳の時に卓球を始め、今年はロンドン・パラリンピックへの出場も果たした。

 フォアに振られるとどうしても体勢は苦しくなり、中陣に下がってしのぐプレーが多いのだが、他の選手にはない独特の間合いと眼を持っている。球速は決して速くないが、中陣からのフィッシュでノータッチを取ったりする。速さでは相手に対抗できない分、回転・コース・タイミングによって、いかに相手の逆を突くかで勝負している。

 女子シングルス予選リーグでは、フランスのプフェフェールから6回のマッチポイントを奪うも、あと1点が遠かった。メディアシートを埋め尽くして応援していたお客さんたちも「オ〜〜ゥ!」とがっかり。そろそろどいて下さいね〜。

下写真がブルーナ。昨日速報に登場したスポーツアナウンサーのグルプラサドくんも、「後で彼女にインタビューするんだ」と言っていた。
 トップ選手顔負けのテクニックを見せるとはいえ、さまざまなところにティーンエイジャーの素顔を見せる選手たち。

 一昨日の男子団体準決勝トップ、フランス男子チームのエースであるシモン・ゴーズィは、中国の樊振東に完敗した。ヨーロッパの若手選手は、こういう時にラケットをバッグにたたき込んだり、結構ぞんざいな扱いをする時がある。
 ゴーズィもちょっと荒っぽく、自分のバッグにラケットを放り投げた。そのラケットの上に、バッグの中に入っていたウェアがかぶさった。練習で使って、着替えたウェアだったかもしれない。

 そのままベンチに座ろうとしたゴーズィ。しかし、一瞬の間のあとで、彼はラケットにかかったウェアを静かに手で払いのけた。
 ラケットケースに丁寧にしまう訳でもない。しかし、不思議に心に残る光景だった。普段の生活ではかなり「やんちゃ」だというゴーズィだが、卓球に対しては真摯なものを持っているのだろう。

 今朝のホテルから会場へ向かうバスは、選手たちで満員だった。ルーマニアの女子チームの監督が遅れて乗ってきた時、勝ち気を絵に描いたようなプレーをするスッチが、サッと席を譲っていた。バスに揺られながら、笑顔で監督と話していたスッチ。輝いてましたね。
 男女とも団体銀メダルを獲得した日本チーム。残る個人戦で金メダル獲得を狙う。日本勢は体力面も考え、混合ダブルスにはエントリーしていないが、残る4種目で中国に一矢も四矢も報いたいところだ。

 明日は混合ダブルスと男女シングルスの予選リーグが行われる。女子シングルスの予選リーグに加藤美優が登場。団体戦でその実力は実証済みだが、グループリーグはきっちり勝ち上がりたい。

 ハイデラバードは野犬の遠吠えが響いています。世界ジュニアも折り返し、明日からまた頑張ります!
 男子団体決勝3番で、酒井明日翔(あすか/写真上)は「王様」になった。見た目はどちらかというと王子様だが、徐晨皓戦で見せたプレーは衝撃的。台上バックドライブから、高い打球点で叩きつぶすような両ハンドドライブを連発して、徐を防戦一方に追い込んだ。
 第4ゲームの6−8という大事な場面で、フォアサイドを切られたボールをサポートの横から打ち込もうとしたり、ラケットをワイパーのように使う横回転のバックブロックを見せたりと、やりたい放題。まさに試合の支配者だった。徐晨皓ももう少し台から距離を取り、逆襲を狙うという選択肢もあったはずだが、酒井のリズムに完全に乗せられた。この団体決勝での勝利が、高校1年生の酒井をどこまで成長させるのか。

 トップ吉田、2点を落としたとはいえ村松もよく頑張った。吉田は樊振東に対し、フォア対フォアで優位に立てなかったが、決勝進出は吉田の力なくしてはあり得なかった。ラストの林高遠との試合が観たかった。村松も疲労の蓄積で顔色は蒼白に近くなっていたが、4番の樊振東戦では酒井のプレーに魅せられた観衆の応援をバックに、好プレーを連発。フォアクロスで打ち合い、バックドライブでバッククロスに打ち抜いた。

 最初は余裕しゃくしゃくだった中国ベンチも、4番の村松戦では応援に相当気合いが入っていた(写真下)。日本はよく戦った。選手たちに拍手を送りたい。明日は日本男子は試合がないので、ゆっくり調整してほしい。
 最強軍団の次代を担う選手たちとはいえ、中国選手たちには明らかに緊張の色が見られた。中国にとって、団体戦の優勝こそ至上のもの。一昨年の世界ジュニア女王・朱雨玲ほどの選手が、トップの伊藤戦の終了後、ベンチで安堵感をあらわにしていた。

 決勝という大舞台で、日本選手にも緊張の色がなかったとは言えない。しかし、出場した伊藤・谷岡・前田の三選手は持ち味を出していた。トップ伊藤の打球点の高いフォア強打は十分通用していたし、バックフリックで何度も朱雨玲のフォアを抜いた。谷岡の粘りのカットプレーが会場を沸かせ、ようやくフォアハンドに当たりが出てきた前田は、チーム唯一のゲームを顧若辰から奪った。

 それでも中国の壁を崩せなかった。最近は卓球の「男性化」が指摘される中国女子だが、台上技術は非常に繊細かつ厳しい。たとえばストップひとつにしても、日本選手は止めるストップだが、中国選手は切るストップ。この切るストップに対して、日本選手は1ゲームに1本か2本、必ずミスが出る。この差は非常に大きい。その他にもツッツキやブロックなど、ジュニアながら細かい部分の完成度が非常に高い。

 台上技術という小さな石が、パワーボールという大きな石をがっちり固めている。だから中国の石垣は堅牢で、緊張で消極的なプレーになっても崩れることがないのだ。
●男子団体決勝
 中国 3-1 日本
○樊振東 9、5、7 吉田
○林高遠 3、9、4 村松
 徐晨皓 6、-11、-6、7、-9 酒井○
○樊振東 6、-7、7、6 村松
 林高遠  −   吉田

 日本、3番酒井が徐晨皓をゲームオール9点で破って会場を沸かせ、4番村松も素晴らしいカットの守備とフォアドライブの打ち合いを見せたが、惜しくも及ばず。
 中国男子も中国女子と同じく、10大会で9回目となる優勝を飾った。

写真上は決勝の大舞台で目の覚めるようなプレーを披露した酒井、写真下は日本から2点を挙げた樊振東。やはり注意すべきはこの男だった。