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平成24年度全日本選手権大会

 男子シングルスでの新チャンピオン誕生で幕を閉じた、平成24年度全日本選手権。この大会の詳細は、2月21日発売の卓球王国4月号に掲載します。代々木第一体育館に6日間カンヅメになって取材した熱闘の模様、そして男女シングルスチャンピオンのインタビューももちろん掲載予定。どうかお見逃しなく!
 この18歳の新チャンピオンの思考回路は、一体どうなっているのか。
 水谷が勝負師の本領を発揮して、第4ゲーム終盤に一気にたたみかけ、ゲームカウント1−3とリードを許した丹羽孝希。多くの観客が「やはり水谷強し」と感じたに違いないこの場面。しかし、優勝者インタビューで「逆に開き直って、良いプレーができた」と語ったとおり、ここから丹羽の両ハンドのスイングはさらに速さと強さを増していった。

 水谷のフォアクロスへ大きく曲がるフォアドライブに台から下げられても、最後は必ず前陣に戻ってカウンターの強打。入っても入らなくてもカウンター。水谷にしてみれば、ゲームをリードしているのに試合の主導権を奪えない感覚だったのではないか。
 第6ゲーム、7−5から見せた2本のカウンターは圧巻。バック対バックから電光石火の回り込みでバックストレートに、しかもサイドライン上にカウンタードライブを打ち込み、次の一球では深く切れたツッツキからの回り込みシュートドライブ。コーナーどころか、サイドラインの真ん中くらいを切って入った。さすがの水谷もこれは取れない。

 速攻選手のプレーを評して「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるが、それはあくまで客観的なもの。自分のカウンターにリスクを感じながらプレーしている選手には、丹羽のようなプレーはとてもできないだろう。
 昨年8月のロンドン五輪・男子団体準々決勝の香港戦では、さすがに緊張している様子が見えた丹羽だったが、今回の決勝後に「ロンドン五輪を経験したので、今日は特に緊張することもなく、自分のプレーを伸び伸びできた」と語った。思うような結果が残せなかったが、五輪での経験は決して無駄ではなかった。

 打球点の早さはすでに中国と互角か、それ以上。「今回の優勝だけでは満足できないです」とまだまだどん欲なところを見せる丹羽。5月の世界選手権パリ大会では、クールな表情ですごいことをやってのけるかもしれない。
●男子シングルス決勝
丹羽孝希(青森山田高) 8,-3,-8,-9,7,5,9 水谷隼(beacon.LAB)

 手に汗握る大熱戦、これぞ卓球、これぞ全日本という戦いを丹羽が紙一重の差で制し、男子シングルス初優勝を果たした!

★丹羽孝希の優勝インタビュー
「1−3でリードされて、逆に開き直れて良いプレーができた。水谷さんには打たされる展開になるので、ミスを減らしていこうと思っていました。青森山田での最後の大会で2冠を獲れてうれしいです。5月の世界選手権個人戦では、中国選手をひとりでも多く倒せるように頑張ります」

★水谷隼の決勝後のインタビュー
「今大会は苦しい試合が続いて、今日の決勝に限っては3−1のリードから負けてしまったので本当に悔しい。6連覇がかかっていた去年のようなプレッシャーはなかったけど、今回の全日本は緊張しました。思い切っていくはずだったのに、試合では消極的になってしまった。点数が欲しくて、大事な場面で入れにいってしまった」
  • 丹羽、史上3人目の高校生チャンピオン

  • 水谷はあと一歩で優勝を逃した

  • 勝負どころでビビることなく両ハンドを振り抜いた

●女子ダブルス決勝
藤井寛子/若宮三紗子(日本生命) 6,5,8 小野思保/森薗美咲(日立化成)

女子ダブルス決勝は藤井/若宮が3ー0で完勝した。
2ゲーム先取した3ゲームも消極的にならず、3球目バックスマッシュ、ロングサービス、前陣カウンタードライブと積極的に攻め抜いた。
これで藤井/若宮は4連覇を達成。女子ダブルスの4連覇は神田絵美子/山下恵子(昭和55〜58年度)以来で、連続優勝のタイ記録だ。5月の世界選手権パリ大会でのメダル獲得を目指しているふたり。藤井は優勝者インタビューで「パリ大会では自分たちらしいプレーをしたい(藤井)。応援してもらえるようなプレーをしたい(若宮)」と語った。

 小野/森薗ペアは、フォアサイドを厳しく攻められ、大きく動かされる展開が多かった。小野は前回・前々回大会では阿部恵(サンリツ)とのペアで決勝に進出し、2大会連続2位。今年から所属が日立化成に変わり、新パートナー森薗とのペアで、みたび決勝に進出したが、またしても藤井/若宮ペアの前に涙をのんだ。
  • 女子ダブルスで史上2組目の4連覇!

  • 小野/森薗、決勝で敗れるも健闘

  • 優勝の瞬間、藤井/若宮は歓喜の抱擁

●男子シングルス準決勝
水谷隼(beacon.LAB) 6,-11,2,6,11 大矢英俊(東京アート)
丹羽孝希(青森山田高) 12,-8,-8,8,8,7 松平健太(早稲田大)

 男子シングルス準決勝、水谷vs大矢は4−1で水谷が完勝。水谷は変幻自在のボールさばきの中で、フォアストレートへの攻撃をうまく混ぜて大矢の待ちを崩し、守備力に課題のある大矢のバックサイドを攻略した。試合後、大矢は「すごく勝ちたかったです。めちゃくちゃ調子が良かったんですけど、水谷のボールに対応できませんでした」とコメント。久々に存在感を示した大矢だが、準決勝の壁が厚い。

 準決勝のもうひと試合、丹羽vs松平健はスーパーラリーの連続。丹羽の超高速フォアカウンター、松平の中陣から連発するバックドライブが観客を驚嘆させた。松平がゲームカウント2−1とゲームをリードしたが、丹羽が3ゲーム連取で逆転。「4ゲーム目に勝ちきれなかったのが悔しい。5ゲーム目から丹羽のサービスにうまく対応できなくなったのが敗因です」と松平は試合を振り返った。

 男子シングルス決勝は、水谷と丹羽の「天才サウスポー対決」となった。女子の福原vs石川に勝るとも劣らぬ夢のカードだ。平成22年度大会では水谷が一方的なスコアで完勝し、「完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめしたいと思っていた」と試合後に語ったが、果たして今回はどのような結末になるのか?
●女子ダブルス準決勝

藤井寛子/若宮三紗子(日本生命) 7,6,6 根本理世/北岡エリ子(中央大)
小野思保/森薗美咲(日立化成) 6,5,9 池田好美/平野容子(東京富士大)

藤井/若宮 vs 根本/北岡の準決勝。藤井/若宮は完璧なカット打ちを見せた。若宮が前後に揺さぶり、藤井が決定打を決める、藤井が強烈なドライブを打ち、若宮が鋭いコースに決めると、根本/北岡に付け入る隙を与えなかった。
  • 藤井/若宮の前に敗退した根本/北岡

●男子準々決勝
松平健太(早稲田大) 12,-9,9,2,-6,-6,11 岸川聖也(スヴェンソン)

 松平健太と岸川聖也のハイレベルなラリー戦は、岸川が9-10での相手のマッチポイントをしのぎ、11−10と逆転。ここで長いラリー戦が展開され、岸川が先手を取りながら松平が盛り返してこちらもマッチポイントをしのぐ。最後は松平が13−11で熱戦に決着をつけた。 

★試合後の岸川のコメント
「レベルの高い試合でした。マッチポイントを取りながら負けたのは悔しいけど、1−3から追いついたのは評価できる。今大会8決定の高木和に勝ったのは収穫だった。今回見つかった課題を次につなげなければいけない」
●男子シングルス準々決勝
丹羽孝希(青森山田高) 5,3,6,6 平野友樹(明治大)
松平健太(早稲田大) 12,-9,9,2,-6,-6,11 岸川聖也(スヴェンソン)
大矢英俊(東京アート) 6,5,6,6 松平賢二(協和発酵キリン)
水谷隼(beacon.LAB) 9,-9,3,6,-7,-9,3 張一博(東京アート)

 前回ベスト8の丹羽孝希が平野に完勝し、初のベスト4入り。レシーブから非常にスイングの速い台上バックドライブを連発し、時折長いツッツキを混ぜて全く平野に的を絞らせない。コースを読み切ったカウンタードライブの打球点は、バウンドと同時に打っているのではないかと思えるほど。昨日、カットの塩野と前回優勝の吉村を下して勝ち上がった平野だったが、なす術なし。

「昨日勝った塩野さんや吉村に申し訳ない。情けないです。技術力が全然違っていた。細かい部分では勝負できないので、何とかラリー戦に持ち込みたかったんですが、そこまで行きませんでした」と試合後の平野。
 それにしても、準々決勝の舞台でも丹羽のプレーに重圧は全く感じられない。恐るべき高校3年生だ。
●女子ダブルス準々決勝

藤井寛子/若宮三紗子(日本生命) 4,7,6 鈴木李茄/宋恵佳(青森山田高)
根本理世/北岡エリ子(中央大) 5,8,6 福岡春菜/土井みなみ(中国電力)
池田好美/平野容子(東京富士大) 10,-9,7,8 田代早紀/藤井優子(日本生命)
小野思保/森薗美咲(日立化成) -7,-8,9,7,4 石塚美和子/山梨有理(十六銀行)

3連覇中の藤井寛子/若宮三紗子は冷静に試合を進め、着実に厳しいコースをつき、点に結びつけていった。準決勝で対戦する根本理世/北岡エリ子のカットペアをどう攻略するか見物だ。
  • 準決勝進出を決めた藤井/若宮

  • 福岡/土井を破った根本/北岡のカットペア

 2014年世界団体選手権の会場にもなる代々木第一体育館。1964年の東京五輪の開催に備えて建設されたので、東京五輪から50年という節目の年の開催になる。設計はあの有名な故・丹下健三氏。昭和の名建築のひとつですね。

 昨年までの会場の東京体育館と比べると、やはり少々年季が入っている。会場が広く、照明の位置が高いため、センターコートでもちょっと暗い感じだ。報道の立場からすると、記者席がフロアではなく観客席にあり、フロアへ降りるには42段の階段を上り下りしなければならないので、……イイ運動になります。動線が複雑で、すべて階段を使って移動しなければならないので、世界大会の会場としてはもう少し「バリアフリー」にする工夫が必要かもしれない。

 昨日ほどではないが、今日も体育館の外には長い行列ができていました。