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世界卓球パリWEB速報

星野美香の眼★
 張継科の攻めに入った時の打球点は、前回世界チャンピオンになった時よりも早くなった気がする。許がバックストレートへのボールに反応できないシーンがたびたびあった。この試合では、ストップも許を上回るくらいポイントを挙げていた。

 対する許は1ゲーム目を落としたのが痛かった。出足で3ー0とリードし、8ー5でリードしていて、そこから8ー11と逆転された。その途中、許が6ー4でリードしてラリーでポイントした後、主審がラリーが終わってからレットを取って、ノーカウントにした。
 そして、ゲームカウント0ー2で迎えた3ゲーム目、許が4ー3でリードした時点で、張継科が許のラバーにクレームをつけた(許はその前のプレーでラケットを台にぶつけていた)。許は主審に注意され、結局スペアラケットに替え、そこでプレーを再開した。世界選手権では予想しないようなアクシデントも発生する。常にあらゆる事態を想定して、準備をしておかなければならない。

 許の打球点は張継科よりかなり遅く、勝ちにくい部分もあるが、それも含めて彼のプレースタイル。ラリー戦ではフォアハンドで相手を打ち負かせるパワーがあるからだ。しかし、今日の許はフォアドライブが走っていなかった。私はもう少し接戦になると思っていたが、心理的なストレスがかかったのかもしれない。
●男子シングルス準決勝
張継科(中国) 8、2、9、10 許シン(中国)

男子シングルス準決勝、前回優勝の張継科が許シンを圧倒し、明日の決勝へ進出。

動きが悪く、自慢のフォアドライブがいつも以上に落ちてしまった許シンに対し、張継科は打球点の高い両ハンドドライブを叩きつけ、終始主導権を握った。世界最高峰の打撃戦を期待したのだが、中国勢同士の試合によくある「探り合い」「外し合い」のまま試合が終わってしまった印象だ。

第3ゲーム、許シン8ー6のリードから張継科が8ー10と逆転し、9ー10となったところで張継科がタイムアウト。次の一本で張継科のバックハンドがネットインとなり、張継科が3ゲーム連取。
第4ゲームは張継科7ー3のリードから、許シンが7点連取で7ー10と逆転したが、許シンがここでゲームポイントを決めきれない。張継科が10ー10に追いつくと、前陣バックドライブから超高速の回り込みドライブをバックストレートへ決める。最後も張継科の回り込んでのバックストレートへのドライブに、許シンが全く反応できず。

ワールドツアーなどでは勝ったり負けたりのふたりだが、ビッグゲームではまだ実力差があるか。
星野美香の眼★

★松平健太対許シン
 松平健太は、許シンのドライブをいとも簡単に前陣でブロック出来るのだからすごい、の一言に尽きる。そして甘いボールは早い打球点でドライブするし、台上からのプレーでも先手をとっていた。また、3ゲーム目の3−3からはスーパープレーも飛び出した。松平がフォアへ飛びつき、次のバックへの返球を今度はバックへ飛び込んでバックハンド、さらにフォアへ振られたボールに飛びつき、そのボールがエッジで入った。 
 2−1と松平がリードした4ゲーム目、許は松平のフォアへ攻撃し、次にバックを攻める戦い方をしていた。相手に早い打球点でブロックさせないためだ。また、長いサービスも多用してきた。一方、松平もフォアに攻めてくるのを待ってカウンターで対抗した。3−7と松平はリードされたが、7−7と追いつき、8−8,9−9、9−10、10−10と進んだ。勝負に「もしも」はないが、このゲームを取っていれば、試合は松平に流れただろう。
 5、6ゲーム目は、許が松平が上手くストップレシーブできないようにサービスをフォア前へ横、横下と混ぜ、長いサービスも多用した。そこから松平が台上から先手が取りにくくなってきたようだ。
 松平がこれから今の技を磨き、戦術の幅を広げていったなら、当たり出して止まらない選手になる日がきっと来ると思う。
 
★王皓対閻安
 試合の中での読みの差、経験の差が勝敗を分けた試合だった。あれほど力を持っている閻安ですら、6ゲーム目では手も足も出ないようなゲーム展開になる。閻安はバックサイドで、王皓はフォアクロスで勝負したい。二人とも自分の得意なコースに持って行こうとする。そこでサービスやレシーブをどこへ出すと早く先に攻められるかを考えている。王皓はチキータレシーブをされないように、フォアサイドから閻安のフォア前に出すサービスも使っていく。その試合の流れの中で王皓のほうが読みが鋭かった。

★馬龍対ボル
 馬龍のフットワークと筋力はすごい。逆をつかれても、ボールを盛り返して返すことができる。それを顕著に表したのが、2ゲーム目の9−9からのラリーだった。ボルは馬龍のフォアへ流しレシーブを使い、馬龍は回り込もうとして逆をつかれたが、そこからフォアへ飛びつき得点した。この得点がこの試合の流れを馬龍に大きく引き寄せた。
 出足から馬龍がすごいスタートダッシュをかけた。ベンチから攻めを指示されていたのだろう。3球目から回り込んでフォアドライブ攻撃をしている。バックハンドを一本強めに打ち、すかさず回り込んでフォア攻撃に持って行った。
 対するボルは、2ゲーム落としたあとの3ゲーム目から得意のバックサイドからシュートドライブを使い、馬龍のフォアを攻め、相手の回り込みの足を止め、ゲームを取り1−2とした。このように、ボルが馬龍のフォアをフォアシュートドライブで攻めているときにはゲームを取っている。
 4ゲーム目、馬龍は10−5から10−8まで追い上げられた。そこで中国はタイムアウトを取り、その後、ボルに対してバックへロングサービスを出し、3球目で攻撃し、そのゲームをものにした。劉国梁監督からサービスの指示を受けたのだろう。
 最終的に、馬龍の攻め方と強ドライブがボルの攻めを封じた一戦だった。
男子ダブルスと女子シングルスの表彰が行われ、男子ダブルス銅メダルの水谷/岸川ペアが登場。笑顔で銅メダルを受け、日本チームとも記念撮影。
女子シングルス優勝の李暁霞は、ようやくその手に収まった優勝カップを、誇らしげに掲げた。
●男子ダブルス決勝
荘智淵/陳建安(チャイニーズタイペイ) ー9、10、6、11、ー9、8 馬琳/ハオ帥(中国)

準決勝で王励勤/周雨(中国)を下した荘智淵/陳建安が、決勝でも馬琳/ハオ帥を破って初タイトル。荘智淵のフットワークを活かしたフォアドライブと、フォアストレートにも強打が打てるサウスポー陳建安の前陣フォアドライブがかみ合った。
チャイニーズタイペイが世界選手権のタイトルを獲得するのは、初の快挙。ベテラン荘智淵はこれまで世界選手権のタイトルに縁がなかったが、この優勝で球史にその名を刻んだ。

馬琳は最後の世界選手権と言われるパリ大会で、タイトルを獲得できず。ダブルスへのモチベーションはあまり感じられないプレーだった。
●男子シングルス準々決勝
張継科(中国)  -9、6、10、2、3  バウム(ドイツ)
●女子シングルス決勝
李暁霞(中国) 8、-4、7、10、-6、11 劉詩ウェン(中国)

男子シングルス準々決勝で現五輪王者の張継科が勝利した後、女子シングルスを制したのは同じくロンドン五輪の女王、李暁霞だった。チームメイトの劉詩ウェンを4ー2で下し、世界選手権決勝3回目の進出で、初の女王の座を手に入れた。

かつて超級リーグなどの国内大会では、劉詩ウェンにかなり分が悪かった李暁霞。劉詩ウェンの早いピッチの両ハンドの前に守勢に回り、押し切られる形が多かった。しかし、この女子決勝を押し切ったのは李暁霞のほうだった。バック対バックのピッチの早いラリーから、ある程度リスクを冒してでも回り込み、バックストレート、バッククロスへ強打を放ち、劉詩ウェンを締め付けるように攻めて行った。

劉詩ウェンも第5ゲームを取り返し、第6ゲーム8ー10とマッチポイントを握られたところから11ー10と逆転。「最終ゲームにつなげば、あるいは」と思わせたが、李暁霞が再び12ー11と逆転。最後はフォアフリックで劉詩ウェンのフォアサイドを切ってから、驚異的に打球点の早いバックドライブで劉詩ウェンのバックサイドへ。小柄な劉詩ウェンの泣き所を容赦なくつぶして、優勝を勝ち取った。

試合後の会見で「あなたは中国選手の中では小柄だが、何か小柄な選手に対するアドバイスはあるか」と聞かれ、「私もできるものなら大きくなりたい」と苦笑した劉詩ウェン。最後は広角に攻められた時のわずかな対応力の差が、勝敗を分けたか。
★倉嶋監督・松平健太の試合後のコメント

倉嶋監督「半年くらい前から、健太はいつ結果を残してもおかしくないと思っていた。高い意識で練習していたから。まさかこの大舞台で爆発するとは思っていなかった。すごく努力するし、フィジカルも強くなってきている」

松平健太「勝てるチャンスはあったのに、その1本、2本を逃したのがすごく悔しいです。(2−1とリードした4ゲーム目ジュースで落とした)3−7から逆転して、そのゲームポイントはずっと向こうに取られていたので苦しかった。ゲームポイントを取っていたら出すサービスとかをイメージしていたので、そこまでいけなかったのは実力の差だと思う。
 サービスはいろんな種類を出せるようになってきて、一番効いているサービスを後半に使っていきました。向こうのボールをカウンターしても威力がすごいので、半分以上はミスしてしまうので、ブロックをせざるを得ないし、ブロックは自分の技ですから。

 許は左利きなので、フォアから打たれたら回り込みたいけど回り込めない。フォアに送ったらゆっくり打ってくるので、それをブロックにしたら戻してしまう。そのボールをフォアで狙うのは課題ですね。

 5ゲーム目はサービスを変えて、いろんなサービスを出したらそれが裏目に出てしまった。3−3まで良かったけど、それで離された。今までも許が打ってぼくがブロックするという展開で、向こうが焦ってくる感じです。ぼくとやる前の許は、それまでの試合で全部4−0で全部8本以下だったので、調子が良いなと思っていたけど、ぼくの時にはそうでもなかった。焦っていた。許には毎回手応えは感じているので、負けたことに悔しい。また一緒かと。
 今大会は90点くらいですかね。許にも勝てそうな試合を落としたし、あの4ゲーム目を取っていれば違ったと思うので、そこを取れなかったのがあとの10点です」

 
●男子シングルス準々決勝
許シン(中国) 8、-9、-6、12、5、8 松平健太

松平健太、世界ランキング1位の許シンにあと一歩及ばず!

試合前の予想どおり、健太のフォアに回転量の多いボールを集めてきた許シン。健太の堅いブロックを警戒して、3球目でのパワードライブを強振する場面はほとんど見られず、中陣で粘り強くフォアドライブを連打してきた。しかし、健太もそのボールを両ハンドのブロックで正確にブロック。時に小さく止め、時に低く伸ばし、許シンのミスを誘う。バックを攻められたボールに対して、バックブロックしてから体をくるりと一回転させる「回転ブロック」では、ベルシーの観客を驚嘆させた。

勝負のポイントは第4ゲーム。中盤でリードされながら追いつき、ジュースの連続となった場面だった。結局ゲームポイントを奪うことはできなかったが、このゲームを取っていれば…。ここで主導権を渡さないあたりは、さすが世界1位だった。
●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) 4、9、-9、8、-8、9 ボル(ドイツ)

馬龍が要所を締め、ボルに勝利。左腕のボルが馬龍のフォアへボールを飛ばしても、馬龍は驚異的な飛びつきで追いつき、回転量の多いフォアドライブで返球。このドライブをボルは連続で攻めることができず、逆にブロックやカウンターのミスが出た。時折混ぜるロングサービスも効果的だった。
豪打で相手をねじ伏せるのではなく、相手ができることを少しずつ減らしていき、確実に勝利を収めるような試合運びだった。
●男子シングルス準々決勝
王皓(中国) ー8、9、6、ー12、8、2 閻安(中国)

王皓は後輩の閻安の切れ味の鋭いフォアドライブに苦しめられたが、勝負どころでカウンターの3球目裏面ドライブや中陣からの裏面パワードライブを連発。フォアハンドの積極性も光った。閻安は第5ゲーム中盤でリードして、やや勝利を意識したが、フォアハンドのイージーミスが数本あり、王皓はそこを見逃さずにループドライブなどでミスを誘い、試合の均衡は崩れた。