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中国リポート

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 1月7日、アラブ首長国連邦・ドバイで行われた「2014ITTFスターアワード」。各賞の受賞者やワールドチームカップの出場選手たちがスーツやドレスに身を包み、世界一高い超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」にあるアルマーニ・ホテルに集結した。

 ドバイがチームのスポンサーになっている中国チーム。ワールドチームカップには男女チームともベストメンバーで臨み、ITTFスターアワードの表彰式典にも劉国梁総監督、孔令輝女子監督を含めオールスターが勢揃いした。
 男子チームの張継科、馬龍、許シンはスーツがなかなかよく似合っている。張継科は青年実業家のようでもあり、馬龍は実に爽やか。そして許シンは……、見事にオチをつけてくれた。間違いなくダテ眼鏡です。一方、中国女子チームはなかなか攻撃的なファッション。しかし、方向性がバラバラで目がチカチカします。丁寧は2014年度の女子選手賞を受賞。おめでとう!

※写真提供:ITTF(国際卓球連盟)
  • 張継科、なかなかキマってます。左はITTFのバイカート会長

  • さわやか馬龍、幹部候補生という感じですね

  • 中国ではダテ眼鏡が結構人気があるようで…

  • 朱雨玲のチーママなファッションが印象的

  • アクリル板の卓球台でプレーを披露。劉詩ウェン、高いヒールで大丈夫?

 新年好! 皆さま、2015年も卓球王国および中国リポートを宜しくお願いいたします。まずは12月26〜30日に行われた、来年の世界選手権個人戦の中国代表選考会『直通蘇州』男子第2ステージ、その最終結果からお伝えしましょう。

★★★ 『直通蘇州』男子第2ステージ 12.26〜30 北京市・国家体育トレーニングセンター ★★★

[最終順位]

1    樊振東  (14勝1敗)
2    許シン  (13勝2敗)
3    方博   (11勝4敗)
4    梁靖崑  (11勝4敗)
↑↑↑ 上位4名は第3ステージ進出 ↑↑↑

5    ハオ帥  (10勝5敗)
6    徐晨皓  (9勝6敗)
7    崔慶磊  (8勝7敗)
8    閻安   (8勝7敗)
9    林高遠  (7勝8敗)
10   周雨   (7勝8敗)
11   劉吉康  (6勝9敗)
12   尚坤   (5勝10敗)
13   范勝鵬  (4勝11敗)
14   于子洋  (4勝11敗)
15   程靖チィ (2勝13敗)
16   馬特   (2勝13敗)

 樊振東、許シン、方博、梁靖崑の上位4名が、2月2〜7日に江蘇省鎮江市で行われる『直通蘇州』第3ステージへ駒を進めた。総合1位の樊振東は第10戦でハオ帥に2ー3で敗れたものの、第13戦の許シンとのビッグマッチでは、第1ゲームに8ー0と完璧なスタートダッシュ。このゲームを11ー4で奪うと、続く2ゲームをともに11ー8で奪い、3ー0のストレートで勝利。劉国梁総監督に与えられた課題を、見事にパスしてみせた。

 ちなみに樊振東はこの第2ステージの結果に関わらず、第3ステージへの出場は決まっていたが、樊振東が1位になっても第3ステージへ進出できる選手枠は5位まで広がることはない。第3ステージ出場が決まっているのは、現時点では馬龍・張継科・樊振東・許シン・方博・梁靖崑の6名で、残り2名は推薦となる。昨年末の世界ジュニアでベスト8に終わった梁靖崑は、大健闘の第3ステージ進出。自力で世界代表の切符を手にできる、千載一遇のチャンスが訪れた。

 世界選手権個人戦の代表選考会は、毎回のように試合方式が変わる。前回の『直通巴里(パリ)』では、勝ち抜いた5名がシングルスの出場枠を獲得。一方、前々回の『直通鹿特丹(ロッテルダム)』では、シングルスの出場枠ではなく、あくまでも「代表権」の獲得にとどまり、総合2位で代表権を獲得したハオ帥がシングルスにエントリーされなかった。今回の『直通蘇州』第3ステージの試合方式はまだ発表されていないが、シングルスの出場枠を懸けた戦いになりそうだ。
  • 梁靖崑、ビッグチャンスをつかむか(写真は14年世界ジュニア)

 先週金曜日に「良いお年をお迎えください」と言ってしまった中国リポート担当。しかし現在、北京にある国家チームのトレーニングセンターでは、2015年世界選手権個人戦・蘇州大会の中国代表選考会、『直通蘇州』の男子第2ステージが進行中。最終結果を掲載できるのは年明けになると思いますが、せっかくなので現時点での途中経過をお伝えしましょう。

★★★ 『直通蘇州』男子第2ステージ 12.26〜30 北京市・国家体育トレーニングセンター ★★★

[3日目終了時点での総合順位]

   樊振東(9勝0敗)
   許シン(8勝1敗)
   ハオ帥(6勝3敗)
    方博(6勝3敗)
    徐晨皓(6勝3敗)
    林高遠(6勝3敗)
   閻安(5勝4敗)
    周雨(5勝4敗)
    梁靖崑(5勝4敗)
10  崔慶磊(4勝5敗)
11  于子洋(3勝6敗)
12  程靖チィ(2勝7敗)
    范勝鵬(2勝7敗)
    劉吉康(2勝7敗)
    尚坤(2勝7敗)
16  馬特(1勝8敗)

 16名の選手が参加している今回の『直通蘇州』男子第2ステージ。国内大会の成績上位者3名、馬龍・張継科・樊振東の3名は規定により出場が免除されることになっていたが、劉国梁総監督が動いた。「樊振東はまだ若い。今回の選考会に出場しなかったら、鍛錬の機会をひとつ逃してしまうことになる」との判断から、樊振東を16名のメンバーのひとりに加えた。ただし、成績は参考記録の扱いとなり、今回の第2ステージの成績に関係なく、第3ステージに進むことができる。第2ステージの上位4名に馬龍・張継科・樊振東の3名、そして国家チーム推薦の1名を加えた8名で第3ステージが行われ、ようやく中国男子1人目の代表が決まる。

 5日間の日程で、第3日目は休みとなる男子第2ステージ。全勝で折り返したのは「追試」を与えられた樊振東。まだ上位選手との対戦はないものの、9試合中6試合でストレート勝ちと圧巻の強さを見せている。2位につけている許シンは、周雨に敗れて8勝1敗。3位以下は大混戦で、誰が抜け出すかわからない状況だ。5勝4敗で7位に並んでいる閻安と周雨は、先日劉国梁総監督から、こんなハッパをかけられている。「周雨と閻安には国際大会で何度も機会を与えたが、彼らはそれを勝ち抜くだけの突破力を見せられなかったし、プレーにも大きな変化がない。ロンドン五輪後、我々は張継科、馬龍、許シン、樊振東、周雨、そして閻安の6名を主力選手に指定したが、リオ五輪が近づくにつれて、主力選手は張継科、馬龍、許シン、樊振東の4人に絞られつつある」(出典:『捜狐体育』)。

 閻安は劉吉康、尚坤という中堅どころに2ー3で競り負けたのが響き、周雨は程靖チィ、林高遠、于子洋と同じ左腕選手に連敗。この第2ステージで結果を残せなければ、蘇州大会の男子シングルスの出場枠「6」に入ることは難しくなるかもしれない。
  • ここまでは全勝とキッチリ結果を出している樊振東

  • 最近影が薄い気がする閻安。ここが踏ん張りどころか

 中国卓球界の2014年の10大ニュース、1〜5位はこんな感じでいかがでしょう。

1 王皓、現役引退を発表
・お伝えしたばかりのニュースながら、衝撃度ではやはりこれはナンバーワンか。世界選手権での獲得タイトルは「9(団体6・単1・男子複2)」、北京・ロンドン五輪の男子団体優勝や、ワールドカップ(3回優勝)・ワールドチームクラシック(4回優勝)のタイトルを合わせると、獲得した世界タイトルは合計「18」。五輪での3回の準優勝などで「千年老二(万年二位)」というありがたくないあだ名も頂戴したが、その存在感は圧倒的だった。

2 張継科、ワールドカップでフェンスを破壊
・あまりありがたくないニュースだったが、中国国内に巻き起こした反響は大きかった。「フェンス1枚壊しただけなら、『(歓喜で)我を失った』ということで、2000ドルや5000ドルの罰金で済んだかもしれない。しかし、問題は2枚目のフェンスを蹴破ったことだ。あれは見過ごせない」(ITTF・シャララ元会長/出典『ピンパン世界』)。全額没収された優勝賞金が、フェアプレー賞の基金に充てられたのはピリッと皮肉が効いていた。

3 超級リーグで2色ボールを初採用
・オレンジと白の「2色ボール(紅双喜製)」が、超級リーグ・プレーオフで初お目見え。「ボールの色が2色だろうと3色だろうとあまり気にしない」という張継科の身もフタもないコメントもあったが、テレビ放映のスロー映像では効果的との声も。

4 世界卓球2014東京大会、男子団体で7連覇達成
・東京で行われた世界卓球で、中国男子が01年大阪大会から続く連続優勝記録を「7」に伸ばした。10年モスクワ大会で連覇が「8」で途切れた女子も2連覇。相変わらずの強さを発揮したため、ニュースとしてのインパクトはもうひとつ?

5 アジア競技大会・女子団体、決勝トップで丁寧が敗れる
・海外選手には無類の強さを発揮してきた丁寧が、韓国・水原で行われたアジア競技大会の女子団体決勝トップで、福原愛選手に敗れた。福原選手はこれが丁寧戦の初勝利。中国でも今年最大の「爆冷(番狂わせ)」として報道された。

 中国リポート、9年目に突入する2015年も頑張ります。皆さん、良いお年をお迎えください!
 2014年も残すところあとわずか。1年の総決算として、今年起こった中国卓球界の重大ニューストップ10をまとめてみました(あくまでも私的なランキングです)。まずは6位から10位まで発表!

6 ユース五輪と世界ジュニア、中国で初開催
・ジュニアクラスの二大ビッグゲームがともに中国で開催。南京で行われたユース五輪では3種目制覇、上海で開催された世界ジュニアでは7種目制覇を果たし、中国がタイトルを独占した。ユース五輪ではIOCのトーマス・バッハ会長、ジャック・ロゲ前会長も卓球会場に姿を見せた。

7 中国超級リーグ、山東魯能がアベックV
・8月7〜10日に男女プレーオフ準決勝・決勝が同じ会場(於:山東省微山県)で行われ、男子決勝は山東魯能が江蘇中超電纜・紫砂に3ー0で快勝。女子も山東魯能が八一冀中能源を3ー1で破り、4年ぶりの男女アベック優勝を達成した。男子チームは張継科、女子チームは李暁霞という絶対的エースを擁し、短期決戦に強さを見せた。

8 甲Dリーグ第1ステージ、世界最速のプラボール使用大会に
・4月に江西省宜春市で行われた中国卓球クラブ甲Dリーグの第1ステージで、プラスチックボールが使用され、史上初のプラボール使用大会となった。使用球に選ばれたのは「双魚(Double Fish)」製のシーム(継ぎ目)ありのプラボール。

9 全中国選手権で樊振東と朱雨玲が優勝
・11月2〜9日、湖北省黄石市で行われた全中国選手権で、男子シングルスは樊振東、女子シングルスは朱雨玲が優勝。樊振東は決勝で馬龍を4ー2で破り、馬龍に「彼との試合はこれからもっと厳しいものになるだろう」と言わしめた。朱雨玲は決勝で優勝候補筆頭の丁寧を4ー2で撃破。

10 中国卓球協会の蔡振華会長、中国サッカー協会の会長を兼任
・中国卓球協会の蔡振華会長が、サッカー超級リーグの八百長問題に揺れる中国サッカー協会の第5代会長に就任。「私の思いを表すなら『決心・信心・恒心(不変の意志)』だ」と決意を述べた。卓球、バドミントン、サッカーと3つのスポーツ協会で会長を務める蔡振華氏。その存在感は増すばかりだ。
 31歳の誕生日を迎えてほどなく、現役引退を表明した王皓。地元である吉林省長春市の新聞『新文化報』の取材に対し、「もう二度とプレーヤーとしてラケットを握ることはない。2016年のリオ五輪ではぼくはもう33歳になっているし、出場を狙うのは現実的ではない。これからは八一解放軍チームの総監督として、選手たちの指導に当たる」と述べた。「自分の競技人生に100点満点で点数をつけると何点?」という質問に対しては、「99点。足りない1点はもちろん五輪の金メダル。大満貫を達成できなかったことだ」と語っている。彼の引退について、多くの元チームメイトや著名人もコメントを寄せた。

 「王皓は偉大な卓球選手だ。五輪のシングルスで痛恨の敗戦を喫しながら、10年以上に渡って世界のトップクラスをキープできたんだから。05年世界選手権で彼とペアを組み、ダブルスのタイトルを獲得できたことは印象深いよ。それはぼくにとって最後の世界タイトルになったからね」(孔令輝)
 「スポーツ選手の競技人生は、成功よりも失敗のほうが永遠に多いものだよ。数え切れないほどの失敗が、他の人からは見えないだけだ。王皓は五輪で3大会連続銀メダルという成績だったけど、柔軟な思考の持ち主でなかったら、(その他の大会で)あれほどの成績は収められなかったかもしれない」(王励勤)
 「幸運にも、王皓のいくつかの栄光の瞬間に私は立ち会うことができた。王皓の引退は、世界の卓球界から裏面打法の“代言人(イメージキャラクター)”がいなくなってしまうことを意味する。軍人としての任務はこれからも続いていくが、選手としての王皓は一代の伝説になった」(CCTV・李武軍アナウンサー)

 現役引退後、王皓は八一解放軍チームの総監督に就任し、樊振東や周雨ら後進の指導に当たる。劉国梁や孔令輝、劉国正や閻森といった選手たちは、現役引退後にすぐに国家チームのコーチになったが、現在は中国卓球協会も方針を転換。現役引退後は母体などで指導経験を積ませ、コーチとしての適性も見極めたうえで、国家チームのコーチ陣に加えていくという。馬琳は広東省、王励勤は上海市の卓球・バドミントン管理センターの主任。地元の体育界での上下関係のしがらみや付き合いも多いようで、世界ジュニアの時にVIPシートで観戦していた王励勤は、少々やつれて見えた。それもひとつの経験か……。
 王皓、王励勤、馬琳。「二王一馬」のうち、誰が最初に国家チームに戻されることになるのか。
  • 13年全中国運動会の会見での様子

 12月22日、09年世界選手権のチャンピオンで、04・08・12年五輪銀メダリストの王皓が現役引退を発表した。昨年の王励勤・馬琳の引退に続き、王皓も国家チームを去ることで、08年北京五輪で金・銀・銅を独占した「二王一馬」時代は終わりを告げたことになる。

 王皓が現役引退を発表したのは意外な場所だった。チームメイトであるハオ帥の第一子であるハオ耘成くんの、生後100日のお祝いの会「百天宴」の席上だ。国家チームの劉国梁、劉国正、肖戦らのコーチ陣や、張継科、馬龍、樊振東など多くの選手たち、そして元チームメイトの陳杞や馬琳も出席する中、グラスを掲げて乾杯の挨拶に立った王皓。彼が語ったのはお祝いの言葉だけでなく、現役引退に当たっての感謝の言葉だった。
 「国家1軍チームに入って14年、2軍チームでも2年を過ごしました。チームのすべての人たちに感謝しているし、たくさんのコーチの方々がぼくを助けてくれて、大きく成長させてくれた。もちろん、チームメイトにも感謝の言葉を贈りたい」(王皓:出典『北京青年報』)。王皓はハンカチで涙をぬぐいながら語ったという。王皓の言葉を受け、劉国梁総監督が「まず一杯飲み干そう。そして次の一杯は、引退する王皓のために捧げよう」と周囲を促し、ささやかな引退の儀式が執り行われた。

 お祝いムードの宴席での引退発表は、少々場違いな気もするが、王皓の現役引退はすでに秒読み段階であり、コーチ陣や親しい選手たちはもう知っていたはず。まだ若手選手の頃から世話になった先輩たちも同席する中で、感謝の言葉を述べたかったのかもしれない。今後、正式に引退のセレモニーが行われる可能性もある。裏面打法の後継者が育たないまま、コートに別れを告げる巨星。太りすぎてダイエット指令を受けるひと幕もあったが、その存在感は抜群だった。敬礼。

 王皓の引退については、のちほど続報もお伝えします…。
  • 裏面打法のこの写真、今まで何回見たでしょうか(写真は13年全中国運動会)

  • 01年全中国運動会での一枚。まだ18歳だった

 12月17日、北京市にある国家卓球チームのトレーニングセンターで、男子選手4名による5ゲームスマッチのトーナメントが行われた。来年1月8〜11日にアラブ首長国連邦・ドバイで行われるワールドチームクラシックに出場する、5人目の中国男子代表を決める戦いだ。4人の男の名は崔慶磊、方博、尚坤、劉イ。

 いまだに大会としてのグレードというか、格付けがハッキリしないワールドチームクラシックだが、中国では伝統的に(?)このワールドチームクラシックの優勝メンバーも「世界冠軍(世界チャンピオン)」のひとりとしてカウントする。これまでに中国からは、男女合わせて108人の世界チャンピオンが誕生しているのだが、古くは謝超杰(91年大会)や林志剛(94年大会)、最近ではハオ帥(2010年大会)、范瑛(2011年大会)、常晨晨(2013年大会)などがワールドチームクラシック(ワールドチームカップ)の優勝メンバーとして、世界チャンピオンの系譜に名を連ねている。
 今回のトーナメントで優勝した選手は、ワールドチームクラシックの5番目の代表権を獲得すれば、「109人目の世界チャンピオン」の称号を手にする可能性が高いわけだ。……前置きが少々長くなったが、その結果は下記のとおり。

★★★ 2015ワールドチームクラシック・男子第5代表決定戦 12.17 ★★★

●準決勝

方博 7、2、5 劉イ
崔慶磊 ー8、10、ー8、7、9 尚坤
●代表決定戦
方博 11、6、4 崔慶磊
※方博がワールドチームクラシックの代表権獲得

 初戦でカットの劉イを粉砕した方博が、代表決定戦でも3歳年上の崔慶磊に完勝。すでに代表入りを決めている張継科・馬龍・樊振東・許シンの4名に続き、ワールドチームクラシックの中国男子代表に決定した。試合が終了した後、方博は次のように語っている。「何日か前からすごくキツい状態で、思い悩んでいたし、プレッシャーもすごかった。でも、結果的に勝つことができてよかった。今はまだ出場権を得ただけ。これをスタートラインにしてひとつずつステップアップしていきたい」。

 09年世界ジュニアで男子選手としては初の4冠を獲得し、将来を期待された方博だが、同世代の許シンや閻安に先を越され、成績は伸び悩んだ。もともと回転半径の大きいフォアのパワードライブが武器だが、バックハンドの技術にやや難があった。しかし、国家チームの先輩・ハオ帥は方博について、次のように語っている。「プラスチックボールになって、彼のバックハンドの弱点は克服されつつあり、持ち味であるフォアハンドのパワーがさらに生きるようになっている」(出典:『中国体育報』)。

 張継科・馬龍・樊振東という同じ右シェークドライブ型のチームメイトと比べると、まだ明確な個性を打ち出せていないようにも感じる方博。ワールドチームクラシックでも、決勝トーナメントで起用される可能性は低いが、タイトル獲得ということになれば、飛躍のきっかけをつかめるかもしれない。
  • 豪快なパワードライブを放つ方博(写真は13年世界選手権)

  • 13年全中国運動会では故障の影響もあり、2回戦敗退。試合後に涙

 12月12日、2015年4月26日〜5月3日に中国・蘇州で行われる世界選手権・個人戦の代表選考会、『直通蘇州』の女子第1ステージが開催された。出場したのは国家女子チームの丁寧、劉詩ウェン、朱雨玲、陳夢、武楊の5名。現世界女王の李暁霞は肺炎にかかり、治療の際に受けた点滴が体に合わずに体調不良が長引き、欠場を余儀なくされている。結果は下記のとおり。

☆☆☆ 『直通蘇州』女子第1ステージ 12.12 北京市・牛欄山第一中学体育館 ☆☆☆

●第1戦

丁寧 5、7、1 陳夢
劉詩ウェン 5、7、7 武楊
●第2戦
武楊 8、8、7 朱雨玲
劉詩ウェン ー13、6、4、11 陳夢
●第3戦
朱雨玲 ー8、10、7、9 丁寧
陳夢 10、4、ー6、5 武楊
●第4戦
劉詩ウェン 8、8、3 丁寧
朱雨玲 7、7、ー1、9 陳夢
●第5戦
劉詩ウェン 10、ー7、6、6 朱雨玲
武楊 11、7、ー9、ー6、4 丁寧

☆最終成績
1  劉詩ウェン(4勝0敗)
2  武楊(2勝2敗)
3  朱雨玲(2勝2敗)
4  丁寧(1勝3敗)
5  陳夢(1勝3敗)
※劉詩ウェンが世界選手権個人戦・蘇州大会の代表権獲得!

 落としたゲームは2ゲームのみという、抜群の強さを見せた劉詩ウェンが、男女を通じて代表第1号となり、シングルスの出場権を獲得した。第4戦では最大のライバルである丁寧にも完勝。1日で4試合を戦い抜くハードなタイムテーブルの中、昼の休憩と試合のない第3戦の時間を休養にあてることができたのも幸いしたか。「朱雨玲や丁寧は午後に3試合行うスケジュールで、体力的にも精神的にもハードだったと思う。私は運が良かった部分もあります。過去の世界選手権のシングルスでは、3位が2回、2位が1回。蘇州ではさらに良いプレーを見せ、自己新記録を更新したい」(劉詩ウェン/出典『新京報』)。

 この11〜12月、国家チームは国際大会への出場は少なく、プラスチックボールへの順応に重点を置いて練習を重ねている。劉詩ウェンは「プラスチックボールは、さらに高い身体能力が求められる」と語っており、練習では右肩の故障の再発などで苦しい日々が続いたという。そんな彼女を支えたひとりが、地元である広東省の卓球・バドミントン管理センター主任に就任した馬琳。今回の『直通蘇州』では劉詩ウェンのベンチコーチにも入った。
 一昨年の世界選手権パリ大会・女子決勝で劉詩ウェンが李暁霞に惜敗した後、ベンチで落胆する劉詩ウェンの肩に、馬琳がそっと手を置いたのを覚えている。勝利の栄光だけでなく、敗戦の苦みを知り尽くした男。馬琳のバックアップは、劉詩ウェンにとって大きな意味を持つだろう。

 『直通蘇州』の第2ステージは来年1月末に行われる予定。女子1軍チームの重点強化選手である李暁霞・朱雨玲・丁寧・陳夢に、重点強化選手以外の4名を加えた8名でトーナメントを行い、優勝者が第1ステージ2位の武楊と代表決定戦を行う予定だ。蘇州大会の女子シングルスに出場できるのは6名。今回の第1ステージに出場した5名に李暁霞を加えた6名になる可能性は高いが、新たな俊英の登場はあるだろうか。
  • ライバルたちを一蹴した劉詩ウェン(写真は14年アジア競技)

  • 武楊は第5戦で丁寧との激戦を制し、2位(写真は14年アジア競技)

 11月18〜22日、国家男子チームは1軍チームと2軍チームの交流リーグ戦を開催。1軍チームの総合成績下位10名(崔慶磊・馬特・朱霖峰・尹航・鄭培鋒・任浩・劉イ・呉ハオ・張煜東・孔令軒)と、2軍チームの総合成績上位7名(于子洋・周啓豪・呂翔・王楚欽・劉丁碩・呉家驥・薛飛)の計17名が参加。上位5名が今年の年末からスタートする、2015年世界選手権個人戦・蘇州大会の中国代表選考会『直通蘇州』の出場権を獲得し、下位4名は2軍チームへ降格、もしくは残留となった。最終成績は下記のとおり。

1位   崔慶磊(10勝4敗)
2位   馬特(10勝4敗)
3位   于子洋(9勝6敗)
4位   朱霖峰(9勝6敗)
5位   尹航(8勝7敗)
6位   周啓豪(8勝7敗)
7位   呂翔(8勝7敗)
8位   鄭培鋒(8勝7敗)
9位   王楚欽(8勝7敗)
10位  任浩(7勝8敗)
11位  劉イ(7勝8敗)
12位  劉丁碩(7勝8敗)
13位  呉ハオ(6勝9敗)
14位  呉家驥(6勝9敗)
15位  薛飛(5勝10敗)
16位  張煜東(4勝11敗)
17位  孔令軒(※途中棄権)


 実力接近の大激戦というべきか、滅茶苦茶にもつれた泥試合というべきか。大相撲の十両の成績を見ているような感じだ(?)。もちろん、今回のリーグ戦はプラスチックボールを使用して行われている。

 1位となった崔慶磊は、昨年の全中国運動会・男子シングルスで馬琳に完勝し、引導を渡した右シェークドライブ型。派手さはないが、巧みな球さばきと一発の強打を誇る、天才肌のベテランプレーヤーだ。2位の馬特は長身のカット主戦型。同じカットで、同じように顔が長い劉イとは明暗を分ける形になった。プラスチックボールは回転量が落ち、バウンド後の変化が小さくなるために「カットマンには不利」という声がある一方で、国家男女チームのリーグ戦や入れ替えリーグ戦の結果を見ていると、一概にカットが不利とは言えない。国家男子2軍チームの劉国正監督は、「入れにいくカットは安定感が増すが、台から下がると回転量が落ち、変化が少ない。カットと攻撃、両方に有利と不利がある」(出典:『ピンパン世界』)と述べている。

 3位の于子洋と4位の朱霖峰はともに左シェークドライブ型。3球目パワードライブでの速攻を得意とする于子洋に対し、朱霖峰は堂々たる体格からパワードライブを連発し、ラリー戦を得意とする。于子洋は同じ世界ジュニア代表の呂翔、王楚欽、劉丁碩、薛飛らが成績を残せない中、確実に3位に入ったのは実力の証明か。 ちなみに若手中心の17名の戦型を見てみると、右シェークドライブ型が7名、左シェークドライブ型が7名、右ペンドライブ型が3名、右シェークカット型が2名。かつてないほど左シェークドライブ型が多い。これまで国家男子チームが輩出した11名の五輪・世界チャンピオンはいずれも右利き。サウスポーはどうしても「ダブルス要員」というイメージが強くなるが、その傾向を彼らが変えられるか。
  • ふたりのそっくりさんチョッパー、こちらが馬特

  • こちらが劉イ。体型がまたよく似てるんです

  • パワーも結構あります、崔慶磊