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●張本智和のコメント
・・・試合を振り返ってください。
「試合と試合(の時間)が少し空いて、相手も丹羽さんで独特のペースの人なのでずっと不安でしょうがなかった。丹羽さんも思い切ってきた。3ゲーム目からサービスや打つコースを変えて、逆転できたので今日はよく耐えた。2ゲーム目を取られた時には正直、0−4で負けるかなと思った。0−2の3ゲーム目の1−3で本当にダメだと思ったけど、ラリーにするしかないと思った」

・・・チキータが少なかった。
「シンガポールは湿気が強くて、今日も1本目のチキータがミスした時点でもう絶対やらないと決めました。横上回転の難しいサービスですけど、ストップをするしかなかった。今日も最初ストップはうまく止まらなかったけど、少しずつ止まるようになった。悪いなりによく耐えた。内容はあまり良くないけど、勝てたことが大事。日本人との試合は嫌じゃないけど、丹羽さんはどの選手にもないような独特の技を持っているし、警戒していて、丹羽さんのビデオは何十回も見たんですけど、あのスタート(0−2)。研究が少なかったら負けていた。アジアカップのリベンジができて良かった」

・・・明日の許シン戦は?
「6回やって、勝ったことのない相手で、絶対勝てる戦術はないけど自分を信じてやるだけです」

・・・湿気があるからチキータを使わなかったと言ってますが、丹羽選手は戦術としてストップをやられて、それがやりにくかったと言ってます。
「チキータはしたかったけど、1球ミスした時点で絶対入らないと思った。ちょうどロングサービスを出されていた。横上サービスをストップにするのは小さく止まらないけど、何本か止まって、少し浮いても相手も手こずっていた。チキータができたら出だしはもう少し楽だったかもしれない」

・・・湿気でボールが滑るという意味?
「理由はわからないけど、ヨーロッパでやるのと全然感覚が違った。ボールが持ち上がらない、重く感じました」

・・・4ゲーム目、張本君は早く終わらせて、次のゲームを11本勝負でやりたいし、丹羽君はFAST5に持っていこうとしていた。駆け引きがありました。
「ぼくはそのゲームを取ることで精一杯だったけど、7−1くらいで残り2、3分で、次を11本でやりたかった。そこで5本勝負になると、運で左右されてしまう」

・・・改めて試合を振り返って感じる点は?
「相手もオリンピックがかかっているし、ぼくもオリンピックが決まっている身として負けられない。いろいろプレッシャーはあったけど、いつもの丹羽さんとは違って、勝ちを意識して固さがなくはないと感じた。プレー以外のことを含めて試合なんだと感じました。アジアカップの時だったら、この感じだと0−4か1−4で負けていた。自分が良かった点もあるけど、相手が少しプレッシャーを感じていた部分もあると思います。
 明日の相手(許シン)はぼくとは格も違うので、勝っても負けても、しっかり表彰台に上がれるように頑張りたい」
●試合後の丹羽孝希のコメント
・・・試合を振り返ってどうでしたか?
「ぼくは向かっていくだけだったので、序盤は良いプレーができた。2−0でリードしたあたりで時間を気にしてしまった。特に4ゲーム目は3本で負けてしまった。あと15秒くらいでFAST5だった。ぼくの狙いはFAST5に入ってから勝負だと思っていた。2−2でFAST5に行く作戦だった」

・・・チャンスはあったのでは?
「最後のほうはチャンスがどんどんなくなっていく感じだった。最後はぼくのサービスをバック前にストップしてきたし、向こうのサービスの配球も良くなってきた」

・・・今大会、最初は参加できない大会でしたが。
「出られる予定じゃなかったので、勝っても負けてもリラックスしてできた。今日は負けたけど充実感はありました。ラッキーですよ。1回勝てたし」

・・・水谷さんとの差もあまりない状況ですが。
「来週ワールドカップがあり、そこが一番大事になるので、その大会にすべてを賭ける気持ちで頑張りたい。五輪争いを抜きにしてもワールドカップはすごく大きな大会なので、今まで3回ベスト8なので、3位を目指して頑張りたい」

・・・張本選手とはいつ以来ですか?
「春のアジアカップです。あの時はチキータをしてきたけど、今日はぼくのバック前に止めてきた。チキータをしてくれたほうがロングサービスで散らしたりいろいろできるけど、ストップに絞られることでサービスが効かない状態になった。向こうのほうが冷静だった」

・・・水谷選手は「五輪代表の2番手はほぼ不可能だ」と言っていますけど。
「ぼく自身、ドイツオープンの鄭栄植戦が勝負で、そこで負けてから本当に吹っ切れた。シングルスの代表をぼくもあきらめていた。そうしたら、プレーも良くなってきて、運も味方についた。そのプレッシャーから解放されたのが良かった。まあ、他力ですけど」

・・・他力だけど、自分に流れが来ていることも感じている?
「感じてます。今回のT2の4人キャンセルも普通あり得ない。それならグランドファイナルの1人のキャンセルもあり得る。ついてますね」
*16名出るグランドファイナルは丹羽は現在17番目で、リザーブ選手となっている

・・・グランドファイナルを除いても、あと2大会(ワールドカップ、北米オープン)残っています。
「ぼくとしてはドイツオープンで負けてから五輪争いのことは吹っ切れています。カナダ(北米オープン)は正直出るかどうかはわからない。ワールドカップでベスト8、ベスト4に入ることを目指して、それが達成できたらあとの試合をキャンセルするつもりで、ワールドカップにすべてを懸けます」

・・・今回のT2出場は大きかったね。
「大きいですね。ドイツオープンに勝てば、T2にもグランドファイナルにも出られると思っていて、それなのに鄭栄植に負けて、T2も出られないと思って、厳しいと思っていた。複雑ですけど、ついていると思います」

・・・今年に入って、なかなか勝てないことが続いていたけど、最近、少し調子が上がっている感じがします。精神面の影響かな。
「7大会連続1回戦負けをしてから、今は4大会連続1回戦を突破している。プレーも良くなっている。気持ちの問題だと思う」

・・・試合後、握手した時、張本選手が何か言ってましたね。
「ひざは大丈夫ですか、と言われました(笑)」

・・・ひざは痛い?
「体はボロボロです。試合が続いているし、まだ続く。それが終わったら早く休みたい。そのために今頑張っている感じです」
T2ダイアモンド3日目
●女子シングルス準々決勝
田志希(韓国) 10、10、−4、−3、2、−4、4 陳夢(中国) 

 平野美宇を破り、勢いに乗っている 田志希が世界ランキング1位の陳夢を最終ゲーム5−4で下した。安定感とカウンターのうまい田が陳のミスを誘った試合だった。
   
●男子シングルス準々決勝
張本智和(日本) −6、−9、8、3、5、3   丹羽孝希(日本)

 丹羽は長いラリーにせずにサービス、レシーブからの早めに決着をつけたい。1ゲーム目は張本の得意のバックにもミスが出て、11−6で丹羽が先取。1本ごとに気合を入れる張本と、淡々と試合を進める丹羽の試合ぶりは実に対照的だ。
 2ゲーム目、思うようにラリーができない張本にやや焦りが見え、丹羽はいつものクールな試合ぶり。9−9から丹羽がサービスエースで10−9。次をサービスからの連続攻撃で丹羽が取り、11−9とゲームを連取した。

 3ゲーム目、張本のフォアドライブが丹羽を襲う。丹羽は懸命にブロックとカウンターで対抗。6−6から10−6と張本が離す。10−8になったところで張本がタイムアウトを取った。張本がぶつ切りの下回転サービスを丹羽のフォア前へ出し、丹羽のチキータはネットミス。11−8で張本が1ゲームを取り返す。
 4ゲーム目、出足から張本の台上バックドライブが決まる。一気に5−0と張本リード。11−3でこのゲームを張本が取り、ゲームカウントを2−2にした。
 5ゲーム目、早いテンポで試合が進む。丹羽得意のカットブロックを張本がネットミスして3−4。5−5から張本はフォアドライブで得点。次にはバックドライブを決め、7−5と張本がリード。8−5、9−5と張本の強打が炸裂。11−5と張本が3ゲームを連取した。
 5本勝負のFAST5に突入した6ゲーム目。一気にたたみかけたい張本。2−2からお互いのサービスエースで3−3。最後は丹羽のドライブがオーバーミスして5−3で張本が勝利した。

●女子シングルス準々決勝
孫穎莎(中国) 8、6、10、−9、3  丁寧(中国)

 五輪金メダリストの丁寧は若手の孫穎莎に完敗。五輪の中国代表候補の丁寧だが、この試合見る限り、力の差は歴然としている。ボールの威力、動きの速さでは孫穎莎に歯が立たなかった。

●最終日の組み合わせ
<男子準決勝>
張本智和(日本) vs. 許シン(中国)
林ユン儒(チャイニーズタイペイ) vs. 林高遠(中国)
<女子準決勝>
孫穎莎(中国)  vs. 王曼昱(中国)
伊藤美誠(日本) vs. 田志希(韓国)
【LEDに苦しむ水谷。勝負の3ゲームを落とし、勝機を逃す】

T2ダイアモンド3日目
●男子シングルス準々決勝
林高遠(中国) −3、7、10、4、2    水谷隼(日本)

1ゲーム目、水谷はLEDフェンスが見えない「サイド」を選択した。前日のオフチャロフ戦のようにボールが比較的見やすいほうでプレーして、1ゲーム目を先取したいからだ。3−3から一気に8本連取し、11−3とゲームを奪った。サービスが効いている。
 2ゲーム目、反対のサイドに行って、サングラスをかけた水谷。やはりボールが見にくいのだろう。「サングラス効果」(?)か、出足で3−0。4−2、5−3、台上強打で6−3とするも、6−7と逆転される。フォアドライブが決まり7−7としたが、7−11で2ゲーム目を落とした。ラリーになると得点できない展開だ。
 3ゲーム目、0−2からすぐに2−2に追いつく。4−4、カウンターブロックが決まり5−4。5−5から5−7、6−7から水谷のフィッシュを林がドロップショットで6−8、水谷がサービスエースで8−8に追いつく。9−9からバックの強打をミスして9−10。サービスエースで10−10。ジュースなしの1本勝負。最後は林のYGをチキータしたがミスして、11−10で林がゲーム連取した。
 4ゲーム目、出足から林がリード。水谷の見えにくいサイドでやや戦意喪失気味。4−11で落とす。
 5ゲーム目、5点勝負のFAST5に突入。5−2で林が水谷を下した。水谷はベスト8で今大会を終えた。

【「アンラッキーなことをぼくは受け入れるつもりだ」水谷】

・・・試合を振り返ってどうでしょう。
「2ゲーム目、6−3とリードした時にミスしてから一気に流れが相手に行ってしまった。自分から積極的に仕掛けなければ勝てない相手なので、最初は良いスタートが切れてプレーも良かった。このゲームを取れたら行けるかもと頭をよぎってから固くなってしまった。3ゲーム目も10−10から落としたのが悔やまれます」
・・・今大会でも得るものはありましたか?
「競った場面で自分が攻めている時には中国も脅威に感じていると思う。今の卓球は守るだけでは勝てないので、リスクを冒しても攻めなければいけない」
・・・このT2はどうでしたか?
「自分にとってこの環境は地獄ですね。雰囲気は素晴らしいので、複雑な思いです」
・・・2ゲーム目も惜しかったが、光の影響を受けにくいサイドだった3ゲーム目を落としたのが大きかったですね。
「作戦どおり、見えやすいサイドをまずとって、1ゲーム目が取れた。2ゲーム目は取られても良いと思ったけど、思いのほかリードもした。そこで落としたのは想定内。3ゲーム目は取りたかったのに取り切れなかった。取らなければいけないゲームでした。できる限り時間を稼いで4ゲーム目を5点勝負(FAST5)にしたかった。5本勝負のほうがチャンスはあるから。だけど、4ゲーム目も11点勝負で簡単に落とした。2−2になっていればチャンスはあったので、(勝負は)3ゲーム目ですね」
・・・昨日のコメントで、五輪は3番手でも・・という言葉がありましたが、改めてどうですか?
「その気持ちは変わってない。厳しいし、ほぼ(2番手になるのは)不可能ですね」
・・・グランドファイナルでの逆転も可能ですけど。
「(丹羽は)ワールドカップもあるし、カナダ(北米オープン)もあるし、現時点では状況によって変わる。でも、今回、9月のT2(丹羽はノミネートされず、水谷が参戦予定だった)がキャンセルされたり、今回も4人がキャンセルして丹羽が繰り上げって出るとか、自分はどうにもできないアンラッキーなことが起きて、これをぼくは受け入れるべきだと思っている。もがいて頑張ろうとしたけど、結果は苦しい状況になった。これでシングルスに出られなくても、もし団体に選んでもらえて、ミックスに出場できればそこでベストを尽くしたい。そのどれかでメダルを獲れれば、そのためにシングルスに出られなかったと前向きに考えることはできる」
・・・グランドファイナルのラストチャンスに懸けるけども、この状況に納得しているのかな。
「あまりにもアンラッキーなことが続いた。あるべきもの(T2)がなくなって、ないもの(丹羽の出場)が生まれてきたから、受け入れるしかない。これだけのことが起きたらしょうがない。それに、最近、自分のパフォーマンスもあまり良くないから、団体とミックスは自信があるからそこでメダルを獲れるように集中したい」
・・・もちろんグランドファイナルには気持ちを切らさずに向かっていきますよね。
「もちろんそうです。最後の試合ですから。家族やファンの皆さんからも応援してもらっているので、自分が落ち込むと周りも悲しむので、前向きにやっていきたい」
T2ダイヤモンド3日目
●女子シングルス準々決勝
王曼昱(中国)  7、−6、−5、1、0、1 陳幸同(中国)
●男子シングルス準々決勝
林昀儒(チャイニーズタイペイ)−10、6、6、2、−1、2  フランチスカ(ドイツ)

●女子シングルス準々決勝
伊藤美誠(日本) 9、4、9、6  佐藤瞳(日本)

 出足から伊藤のミスは少ない。ドライブによるカット打ちでチャンスをつかみ、決定打はスマッシュだ。そこにバックドライブやストップを織り交ぜ、佐藤を激しく揺さぶる。佐藤はしっかりと粘りながら時折放つ攻撃に活路を見いだす。
 佐藤の動きも悪くない、カットにもミスは少ないのだが、伊藤の攻撃の正確性と緩急の変化の前にリードを奪えない。各ゲーム、中盤から伊藤が突き放す展開だ。佐藤の健闘もむなしく。30分で伊藤は退けた。
「日本選手の対決でしっかり勝つことは重要。目の前の試合に戦うことに集中しているので、1戦1戦頑張りたい」と伊藤のコメント。
 これで伊藤は明日の準決勝で、陳夢と田志希の勝者と対戦する。

●男子シングルス準々決勝
許シン(中国) 7、6、−7、7、2  鄭栄植(韓国) 
石川が敗れた後、「負けられない」という気持ちが平野を狂わせた

 平野美宇の目からこぼれ落ちる涙。彼女は泣き崩れるのを耐えているようにも見えた。それは胸が締め付けられような瞬間だった。

 シンガポールで行われているT2ダイヤモンド。今年のワールドツアーの上位16名が参戦でき、世界ランキングに直結するボーナスポイントが付与される。日本は先週のオーストリアオープンの後、男女とも張本智和と伊藤美誠が東京五輪の代表を決めているが、シングルスの2人目の切符を、男子の丹羽孝希、水谷隼、女子の石川佳純、平野美宇が大接戦で争っている。
 日本卓球協会は、来年1月の世界ランキングによって上位2名をシングルス代表とすることを選考基準として発表している。実質的には、このT2の後、男子ワールドカップ(水谷不参加)と12月の北米オープン・チャレンジプラス(水谷不参加)とワールドツアー・グランドファイナルがある。女子はあと2大会を残すのみで、五輪代表は決まる。
 過去1年間の上位8大会の獲得ポイントで決まる世界ランキング。対象となる今年のワールドツアーの合算ポイントは、平野美宇が現時点で10295、石川佳純が10230と、平野がわずか65点のリード。
 女子2人の大会の獲得最低ポイントは900。北米オープンでは優勝すると1100が入るので、200点が上乗せされることになる。しかし、この大会には中国の若手が12名もエントリーしている。それら強豪選手をなぎ倒しながら、「優勝のみが目的」の大会に向かう。

 日本の卓球愛好者は120万人とも言われるが、仮に半分が女子だとしても数十万人の中からわずか3人が五輪の代表として東京の舞台に立てる。そしてシングルス枠はわずかに2名。
 そんな高いピラミッドの頂点でしのぎを削る2人のアスリート。しかし、死闘とも言える国内競争は4年ごとに繰り広げられてきた。リオ五輪前もしかり、さらに過酷だったのは2012年ロンドン五輪の時だ。2011年4月の世界選手権ロッテルダム大会の直後に発表される世界ランキングで代表を決めるルールだった。世界大会前に、女子は福原愛、平野早矢香、石川佳純が横一線に並んだ。結果、わずかに1勝上回った福原と石川がシングルスの切符を手にして、平野は団体戦要員に回った。
 試合後の会見で、福原も石川も手放しで喜びを表現しなかった。彼女たちはともに戦った平野を気遣っていたのだ。一方、少し時間をおいて開かれた平野の囲み会見で、疲れ切った表情で登場した平野も、「やれることはすべてやりました。もし団体戦に選ばれたら、日本のために頑張ります」と言いながら、大粒の涙を流した。胸が締め付けられる会見だった。3人は翌年のロンドン五輪で日本卓球史上初のメダルを獲得し、卓球三人娘として日本中を感動させた。日本人同士が激しく戦う代表争いだが、代表が決まれば、3人はどこの国よりも心を通わすチームワークを見せた。
 五輪が特別なのは、選手たちの強い思いがそこに向けられ、喜びと悔恨のストーリーが交錯するからだろう。

平野の口から出た「死ぬ気で頑張る」という言葉の意味

 昨日のT2ダイヤモンドのミックスゾーン。平野美宇が「良いゲームができる時とできない時の差が大きい。海外の選手からすれば単なる試合でも、私たちはプレッシャーがかかっている」と言ったところで、言葉に詰まり、彼女の目から涙がこぼれた。「その時に全然自分のプレーができない、こんなんじゃ(五輪へ)出場しても……今のままじゃだめだと思うので、あと2大会に賭けたい」
 他国の選手は日本とは五輪代表の選考方法は違う。すでに内々に代表が決まっている国(協会)もある。今回のT2の試合の重要度は間違いなく日本選手が一番大きい。
 同じ平野でも、7年前の早矢香の涙と、今回の美宇の涙はその意味が違う。美宇の戦いはまだ終わっていないからだ。このT2での襲いかかってきた重圧によって自分本来のプレーができなかった、自分のふがいなさに流した涙だったのだ。

 平野美宇が代表権を争っているのは石川だが、平野が戦っているのは「平野美宇自身」なのだ。コートの相手を倒そうとするのだが、「勝ちたい」「負けられない」という重圧が平野自身を狂わせた。昨日の試合はそんな戦いだった。
 涙をぬぐいながら、「次の試合に向けて卓球に死ぬ気で賭けるように頑張りたい。同じような負けはしたくない」「あと2大会で決まるので、どれだけ自分のプレーができるか、成長した自分を見せたい」と語った平野。いつもおっとりして、メディアの笑いを誘うようなリアクションを見せる平野の口から発せられた「死ぬ気で」という言葉。それは恐ろしいほどの本音のワードだった。

 リオ五輪では3人の代表に入れず、リザーブとして、練習相手をしたり、観客席で応援に回っていた平野美宇。試合に出れない悔しさがその後の彼女の成長を支えたはずだが、それでもなお、彼女の心を狂わす重圧がある。前日に伊藤美誠に負けていた石川。もし、平野が勝ちきっていれば、100点を加えた165点の差をつけることができたが、それもかなわなかった。
 前日に敗れた石川の目には涙はなかった。熾烈な争いをすでに4年前、8年前に経験している石川は、あと2大会の勝負に気持ちを切り替えている。
 平野美宇と石川佳純との差はわずか65。勝負は12月12日から始まるワールドツアー・グランドファイナルで決まる。 (今野)
 卓球の試合をまさに裏方として支える人たちがいる。それは監督やコーチ、フィジカルトレーナーではなく、「食」で選手たちをサポートするJA全農(全国農業協同組合連合会)の取り組みである。
 シンガポールで行われているT2ダイヤモンド。東京五輪を控え、熾烈な五輪代表レースを繰り広げる中、世界ランキングに直結する大会として、選手の精鋭たちが集まっている。
 JA全農は、大会会場の選手ラウンジや関係者・VIPラウンジに、日本産米の「おむすび」や「いなり寿司」を提供して、本大会を「ニッポンの食」でサポートしている。
 また、全農インターナショナルアジア株式会社が中心となり、11月15日~30日の間、シンガポールで飲食店舗を展開する「牛角」や「哲平食堂」と連携し、「ジャパンフードキャンペーン2019」を開催している。
 11月20日に開催された「T2ダイヤモンドシンガポール大会」のメディアカンファレンスで同社の高須博幸代表取締役社長が登壇し、今大会へのサポート内容や「ジャパンフードキャンペーン2019」について説明した。

 スポーツアスリートにとって、大切なのは心技体智。メンタル、テクニック、フィジカル、タクティクス・・・そのフィジカルとメンタルに影響を与えるのが「食」なのだ。
 こういう古いエピソードがある。1973年の世界選手権サラエボ大会。当時、世界の覇権を争っていた日本と中国。当時の団体戦は3人による9シングルスマッチ。もつれると4、5時間越えることも珍しくはなかった。夜に始まった日本対中国の男子団体。劇的な幕切れで中国の勝利。足になまりをつけたように重い足取りでホテルに戻った日本選手団。深夜ということもあり、ホテルのレストランは閉まっている。疲れ切った選手たちは、空腹に耐えながらベッドに滑り込むことしかできなかった。
 一方、中国は選手団付きの料理人を本国から帯同させていたので、激戦の後、温かい食事を取ることができた。その後の個人戦でも中国は勝利を重ねたのは言うまでもない。

 現在は、日本選手団も大きな大会には栄養士を帯同させ、常に力が発揮できる「和食」などを準備している。最近の日本の卓球選手の活躍にはこういう食のサポートが欠かせなくなっている。

 JA全農は香港オープンでは日本選手団をサポートし、ドイツオープン、今回のT2ダイヤモンドでは日本選手団のみならず、世界から集まってくる卓球選手たち、スタッフにおにぎりなどの提供をしている。
 また、今年からはすべてのワールドツアーの前に食材をトレーニングセンターに送り届け、サポートしている。また、子どもたちの全国大会、全日本選手権ホープス・カブ・バンビの部も後援している。 
 日本の卓球選手や大会にはこういう陰のサポーターがいることを忘れてはならない。
●男子シングルス1回戦
水谷隼(日本) 10、−9、−5、9、2、−0、4  オフチャロフ(ドイツ)

 1ゲーム目、スタートからオフチャロフが飛ばしていく。10−5から水谷がジリジリ挽回し、10−9で早くもオフチャロフはタイムアウト。水谷のドライブレシーブで10−10に追いつく。最後は水谷がYGの下回転サービスでエースを取り、11−6と逆転でゲームを先取。
 2ゲーム目からはオフチャロフのペーストなり、1−2とゲームをひっくり返された水谷。4ゲーム目を取り、2−2にして、FAST5になった5ゲームを取るも、6ゲーム目がオフチャロフが取り、3−3とされ、最終ゲームへ。
 最終ゲーム、4−4。最後は思い切って渾身のバックドライブで勝負を決めた。ネット記事やワイドショーを騒がせていた水谷が、もやもやとした空気を振り払うような最高のプレーを見せた。

——試合を振り返ってください。
「T2は特別なルールなので、今回接戦をものにできたので良かった。この半年間、5試合くらい、マッチポイントを握っていてから逆転負けが続いていて、苦しい試合ばかりだった。今日も、マッチポイントを取ったときに負けるんじゃないかと不安になったけど、最後は自分を信じてプレーができて良かった。この接戦をものにできたことはこれから先の試合にも生きてくる。次も苦しい試合を勝ちきれるように頑張ります。今日は相手が積極的に攻めてきて、守りになることが多かったけど、守りで緩急をつけて点数を取れることができたし、サービスで点を取ることもできた」
——1ゲーム目、ゲームポイントを取られてからの逆転したのは大きかったと思う。
「1ゲーム目はあっという間に点数が離れた。今日はトスで勝って、サイド(場所)を取った。このコートは光の影響を受けにくいサイドがあるので、1ゲーム目をそのサイドを取って、1ゲーム目を絶対取りたかったけど、序盤からリードされた。1ゲーム目を取られていたら2ゲーム目も取られたと思う。逆転できたのは、たまたまですね」
——後ろのLEDの文字の白さや背景のライトも気になるけど。
「気にすればするほど見えなくなるので、何も考えずに適当に打つしかない」
——最終ゲームの前の気持ちはどういう感じだったのだろう。
「最近はゲームオールでは連敗、負け続けだったので、今日もそういう展開かと思った。負け方が良くないパターンかと思ってました。戦術も考えるけど、最近の悪い流れを絶ちきるように、気持ちで負けないようにプレーしました」
——最終ゲームの4−4で、サービスがネットインしてミスしたかと一瞬ヒヤリしました。
「ロングサービスをするのは決めていたけど、まさかネットインするとは思わなかった。相手もチキータしようとしていたので入っていたらかなりの確率でサービスエースを取れていたんじゃないか。読みは悪くなかった。いつもよりサービスの質が低かったかな。次は相手は絶対チキータをしてくると思ったので、それまでフォア前への縦回転のサービスをツッツキで返していたので、最後はそのサービスを出しました。最後、ループではなくて、バックハンドで振り切れたのは成長したところなのかと思います」
——昨日は、代表争いをしている丹羽選手が勝っているけど、その影響は?
「それはないですね。状況的には、ぼくのシングルス(2枠入り)は難しいと思うので、あまり気にしないで、何とか3番手に選ばれるように頑張るだけです」
●男子シングルス1回戦
林昀儒(チャイニーズタイペイ) −10、7、−10、3、3、4   張禹珍(韓国)

 世界10位の林昀儒と14位の張禹珍の対戦。林昀儒は前回のT2マレーシア大会の優勝者だ。お互い互角の展開でゲームカウントは2−2となり、FAST5に突入。攻める張禹珍と、柔らかいボールタッチで張の攻撃をかわしながら連続強打を放つ林。
 5、6ゲーム目を林が取り、激しい試合を制した。17歳ながら落ち着いた試合ぶりを見せた。

●女子シングルス1回戦
陳夢(中国) 4、5、7、3  馮天薇(シンガポール)

 一時期、勝てなくなっていた馮天薇が復活しつつある。不調と言うよりも33歳という年齢のための力の衰えかと思っていたが、世界ランキングを9位まで上げてきた。トレードマークだったちょんまげではなく、少年のようなショートカットにしたせいか、動きまで若々しく感じられる。
 馮天薇の上昇の秘密はコーチかもしれない。中国の国家チームを定年で引退した呉敬平コーチが馮天薇のベンチに座っている。この呉コーチは、かつて王皓、馬琳という世界チャンピオン、五輪金メダリスト、そして最近では樊振東を指導したカリスマコーチなのだ。
 一方、陳夢のベンチにはかつて呉敬平の教え子だった馬琳が座っている。女子選手にとってコーチの存在は大きい。両者のベンチは師弟対決となっていた。
 しかし、6月以降、世界1位の座を死守する陳夢の壁を馮天薇が突き崩すことは困難だった。ドライブの威力と言い、守りから攻めへの転換の早さと言い、陳夢に隙はなかった。「呉敬平マジック」も世界1位には通用しなかった。

●女子シングルス1回戦
田志希(韓国)  −3、5、9、−9、3、−3、3  平野美宇(日本)

 対戦成績では3勝0敗と平野美宇にとって分の良い相手の田志希。五輪代表レースで石川佳純と激しく争っている平野。その石川が前日1回戦で敗れているので、是が非でも勝ちたい一戦。1ゲーム目から平野の集中力は素晴らしく高い。11−3でゲームを先取。
 2ゲーム目、平野が打ち急ぐ場面もあり、終始、田志希がリードして11−5で取り返す。
 3ゲーム目は一進一退。7−7から田志希が離し、11−9で連取。いつもの平野のプレーではない感じがする。
 4ゲーム目、5−5、6−6、7−7から田志希がサービスミス。次を平野は攻撃で得点し、9−7とする。さらに3球目フォアドライブで10−7。10−9とされるも最後はフォアのカウンタードライブを決め、11−9として、ゲームカウントを2−2とした。
 5ゲーム目はFAST5になり、5本勝負。5−3で田が取る。チームワールドカップでも両者は対戦していたが、田の動きはこの日のほうが遙かに良い。
 6ゲーム目、スタートから平野は攻めまくる。5−3で取り返し、最終ゲームに突入した。
 7ゲーム目、いきなり長いラリーを平野が制し、1−0でスタートしたが平野のミスがあり、1−2。平野のバックドライブがクロスに決まり、2−2。3−3から次を平野は台上フリックのミス。最後は田のバックドライブが平野のブロックをはじき、5−3で田が平野を下した。
 試合後のミックスゾーンで、平野の目から涙がこぼれた。それは単なる悔し涙ではなく、重圧の中で自分のプレーができなかった、自分への怒りの涙だったのかもしれない。

 試合後の平野のコメント。
——試合を振り返ってどうですか?
「2ゲーム目の凡ミスが多かった。あまり前のことは考えないようにしたけど、良いゲームができる時とできない時の差が大きい。海外の選手からすれば単なる試合でも、私たちはプレッシャーがかかっている。その時に全然自分のプレーができない、こんなんじゃ(五輪へ)出場しても……今のままじゃだめだと思うので、あと2大会に賭けたい。次の試合(北アメリカオープンとワールドツアーグランドファイナル)に向けて死ぬ気で卓球に賭けるように頑張りたい。同じような負けはしたくない」

——1ゲーム目は相当集中していた。しかし、同時に重圧が大きかったのか?
「1ゲーム目は良かったけど、2ゲーム目に自分にミスが出たら相手の調子が上がってきた。ずっと同じように心を保てたら勝てたと思う」

——最終ゲームの前の心理は?
「負けている時には思い切ってできるのに、リードしたり、3−3になった時に勝ちたい気持ちが出てきてしまう。打ち急いだり、単調になってしまう」

——前日、石川さんが負けたことが心理的に影響はありましたか?
「私が今日勝っても負けてもリードしている状態なので、思い切ってできるかなと思うけど、今日は焦ってしまったり、(ボールを)入れにいってしまうことがあった。あと2大会で決まるので、どれだけ自分のプレーができるか、成長した自分を見せたい」

●男子シングルス1回戦
林高遠(中国) 8、9、10、−9、4 ファルク(スウェーデン)

 打ちまくるファルクに対して、中陣からのドライブで粘った林高遠。両ハンドのカウンターを浴びせ、スマッシュチャンスを奪った。世界選手権2位のファルクは1回戦で沈んだ。
 
●女子シングルス1回戦
孫穎莎(中国) 9 、2、−9、6,1   鄭怡静(チャイニーズタイペイ)

 女子は第1シード、世界ランキング3位の孫穎莎が登場。東京五輪の中国女子の代表は、現時点で五輪金メダリストの丁寧、世界ランキング1位の陳夢、同2位の劉詩ウェンの3人が有力視されている。
 しかし、先のチームワールドカップの決勝で日本の伊藤美誠を逆転で下した孫穎莎の存在感は大会ごとに増している。19歳の孫穎莎は、ベテランの丁寧に故障とかの不安があれば、すぐにでもその座を引き継ぐだけの強さをすでに備えている。
 世界11位の鄭怡静を圧倒した孫穎莎の両ハンド強打。恐るべしだ。

●男子シングルス1回戦
鄭栄植(韓国) 5、10、−7、3、−4、−2、3   梁靖崑(中国)   

 世界7位の梁靖崑に、世界21位の鄭栄植が挑んだ。韓国の貴公子とも言われるイケメンの鄭栄植は、昨シーズンはTリーグのT.T彩たまでプレーし、日本にもファンが多い。
 出足から飛ばしたのは鄭栄植。バックドライブが次々と梁靖崑を襲い、先に勝利に鄭栄植が王手をかけた。しかし、FAST5で梁が息を吹き返し、勝負は最終ゲームへ。5−3で鄭が梁を破り、雄叫びを上げた。ワールドチームカップのリベンジを果たした。

●女子シングルス1回戦
丁寧(中国) 8、−8、6、7、2 何卓佳(中国)

 10代の時から中国女子を支えてきた丁寧も29歳。今月上旬のチームワールドカップでは準決勝で腰を傷め、今大会への出場も危ぶまれたが、動きは悪くない。リオ五輪のシングルスと団体で2個の金メダルを獲得した彼女のモチベーションは、来年の東京五輪で有終の美を飾ることだろう。
 しかし、孫穎莎がすぐ後ろに迫っている。チームの精神的な支柱でもある丁寧の存在感は大きく、大舞台での経験を買われて3度目の五輪の舞台を踏む準備を彼女はしている。
 そんなスーパースターに襲いかかったのは21歳の何卓佳。中堅にさしかかる年齢の何卓佳は勝つことでしか、自分を証明できないはずだ。前陣からの両ハンドの異質攻撃を、丁寧は前・中陣でしのぎつつ、カウンターで狙う展開。打球点を変えたり、回転の変化をつけながら何卓佳を崩していった。4−1で丁寧がベテランの巧みなプレーで下し、準々決勝進出を決めた。