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北京五輪 アジア大陸予選会

 日本の3人は素晴らしい試合を見せた。まさに大和魂だった。特に最後を締めた岸川は肩を痛めながら力を振り絞って戦った。「吉田じゃないのか」という声はあっただろう。特に広州で活躍した吉田をはずしての岸川。相当な重圧の中で戦い、見事にそれに応えた。そこから解放された岸川は涙が止めどもなく流れた。水谷、岸川の20歳、19歳コンビは日本の将来を予感させる素晴らしい若者だ。

岸川「本当にうれしいです。(ジャン・ソンマンは)グループリーグでやった時は2-0で勝ってて、3ゲーム目も9-7から逆転負けした。ただ0-4で負けた相手ではなく、競って負けた相手だったので、やり方を考えればチャンスはあると思っていた。1試合目は打ちすぎて負けてしまった。マリオには、違う戦い方で、決め球を使わずにもやる勝ち方があるぞと言われました。
 作戦を全く変えて臨んだのが良かった。競ると思ってました。2-0になった時に次のゲームが勝負だと思った。3-0にしてあとは勢いでいけたらいいなと思って、3ゲームを取れたのが良かった。肩はむちゃくちゃ痛いです。試合前からずっと痛かった。それは不安だったけど、米沢さんもつきっきりでやってくれたんでそれが良かった。マリオも宮崎さんも隼もアドバイスしてくれて、それが良かった。ぼくが最後だとは思っていた。他の二人はランキング的にも先に決めるだろうと思った。福岡さんも良い試合をしてくれたし、隼も負けそうだったけど頑張って、ぼくにつなげてくれたので、ぼくだけ予選落ちするのは絶対、それはぼくのなかで許せなかった。本当に良かった。

 また同じカットマンを当たるのもそうだし、世界選手権も出番が少なく、不安もあった。でも我慢してきて良かった。全部報われた。あんなに肩が痛くなったのは初めてで、それが自分の中で不安になった。この試合方式は負けてもチャンスがあるので、とにかく我慢して我慢してやるしかなかった。本当に強い選手ばかりだし、本当にみんながオリンピックに出たくて出たくてしょうがない大会、本当に過酷でした。こんな大会は初めてです。
 いろんな人が支えてくれて、応援してくれて、自分のためでもあるけど、そういう人たちのために負けられないと思っていた。吉田さんとか強い選手がいたのに、ぼくを選んでくれたので、予選落ちするわけにはいけなかったし、この予選のためにいろいろなことに気を使って生活してきたので、本当に良かった。
 世界選手権ではぼくより調子が良い3人がいたので、出ろと言われれば出るし、そうでない時にはベンチでサポートして盛り上げるのが、出ない選手の役目。悔しいというのはない。出番がもう少しあって、調整できるかなと思ったけど、その点が不安でした。

 今回は相当精神的に鍛えられた。最後に、カットマンは好きじゃないのに、しかも予選で負けた選手とやって、肩も痛い中でやったので、これが今後につながると思います。今からはオリンピックだけを見て頑張っていきたい」
 岸川がグループリーグで負けた北朝鮮のジャン・ソンマンに勝ち、五輪の代表権を獲得した。ギリギリの試合で勝ち得た代表。試合後、涙で10分間ほどベンチから動けなかった岸川。グループリーグで対戦し、肩を痛めた相手のジャン・ソンマンと対戦し、今回は試合前からその肩が痛かったが、痛みをこらえながら、まさいに精神力と最高のカット打ちで攻め、ストレートで決めた。おめでとう!
写真はジャンと対戦する岸川、水谷と抱き合って喜ぶ。そしてベンチで涙が止まらなかった
 日本のエースが苦しみながらも北京への切符を手にした。最後の蒋澎龍戦はしびれるような試合だった。水谷は記者に囲まれて語った。

「本当にうれしいし、ホッとした気持です。最後の蒋澎龍戦、サービスからも、レシーブからも同じ展開で、相手も待っているがわかったので、最後のゲームは少しアグレッシブにやった。審判にサービスを注意されていたので、サービスをいろいろ出しづらかった。思うようなサービスが出せなくなった。審判にフォールトを取られるのが怖くて、YGサービスやロングサービスが出せなくなった。精神的にすごいきつかった。

 最後の10-11で蒋澎龍が浮いたレシーブをミスしたのは、いつもああいうところで「ミスれ」と心で言うんだけど、今日は「取ってやるぞ」と前向きだった。それが相手にわかったんじゃないですか。中盤は凡ミスが多くて、ただお互い崩れたほうが負けだと思って、なるべく平常心でいるように心がけました。今からですね。やっとスタート地点に立った。金メダルを獲りたい。特に団体戦では勝ちたい。

 最初はリーグ戦でやると思っていたんですけど、こっちに来て新しい試合方式を聞きました。きつかったですね。岸川さんとの試合も大事でした。ただ、北朝鮮とのカットマンじゃなくて、蒋澎龍だったのも運があった。
 7-3とか8-4とかでリードしていても余裕が持てなくて不安。安定した精神状態でいられなかった。最後は自分から攻めていこうと。これは世界選手権での経験が生きたと思います。昔はオリンピックに出るのが目標だったけど、今はそのオリンピックで金メダルを獲ることが目標だったので、出られてうれしい。競ったときにまだ凡ミスが出るので、もっともっと疲れているときとか精神的にきついときに練習をやり込まなければいけないというのを痛感しました」
写真は代表を決めた蒋澎龍との死闘、そして宮崎監督と
 この3日間は苦しい試合だった。福岡春菜はようやく北京への切符を手にした。
「きのうは相手にも、雰囲気にものまれてしまったので、今日は何があっても思い切ってやろう、最後の1本まで絶対食らいついていこうと思いました。点数のことを考えないで、1本ずつ作戦を考えてやったのが良かった。

 相手(キム・ジョン)には2回勝っている相手でしたが、苦しかった。ただラッキーだったのは相手も私への対策をやってきていなかったこと。昨日は試合が終わったら疲れて、食欲もなかったんですけど、まだ最終日までチャンスがあるんだと思って、食事を取り、相手のビデオを見ていつもと同じようにしました。
 オリンピックが決まっても、このままではやばいなというのが正直なところです。こういう試合は極限の状態で勉強になったけど、オリンピックはこれより厳しいと思うし、足りないところばかりなので、これからもっと身につけるべきことが多い。

 極限状況というのは、予選グループ初戦のインド選手戦の時には足はがくがくで手は震えるし、一方でみんなの気をもらって戦っているとも思います。後押ししてもらっていることを感じます。いつも支えてもらっているスタッフ、ナショナルチームのメンバー、中国電力のみなさん、作馬さんやその家族、それに私の知らない人たちがみんなで応援してくれているというのを広州で感じたので、そういう人たちの気持を北京まで持っていきたい。

 愛ちゃんや早矢香ちゃんには昨日も、おとといもメールをもらって、「一緒に戦っているんだからね」とメッセージをもらったのはとてもうれしかった。二人を追いかける形でここにきて、その二人にそう言ってもらったから嬉しかった。二人には全然及ばないけど、そういう気持ちでいることが団体戦でも重要になってくると思う。早矢香ちゃんからは手紙を渡されて、愛ちゃんからはメールをもらって、「福岡さんらしくやれば大丈夫、応援いけなくてごめんね」と。米沢さんがいてくれたことが体力的な面でも精神的な面でも心強かった。
 作馬さんには無理言って来てもらった。作馬さんに教えてもらってちょうど10年目で少しは恩返しできたかな。もっと頑張ろうとさっき言われたので、もっともっと作馬さんを喜ばせたい」
 五輪アジア大陸予選は3日目を迎え、日本の水谷隼と福岡春菜が代表を決めた。まず2時半から女子Cトーナメントに出場した福岡は、北朝鮮のキム・ジョンと対戦。勝てば代表が決まる。この選手は広州の世界選手権では王楠に勝つほどの力を持っている。しかし、過去にキム・ジョンと2回戦い、2勝している福岡は自信を持って試合に臨み、ストレートで下して、まず日本1人目の代表を決めた。
 続く3時15分からの試合は水谷。相手は蒋澎龍。広州の世界選手権ではストレートで下した相手だが、水谷は緊張のせいか、プレーにキレがない。勝負は最終ゲームまでもつれ、一進一退。ジュースになり、10-11で蒋澎龍がマッチポイント。ここで水谷のレシーブがバックに高く浮いた。万事休すと思った瞬間に蒋澎龍が痛恨の空振り。結局、水谷が13-11で破り、劇的な最後で五輪代表を決めた。残るは岸川のみとなった。
写真は福岡対キム・ジョン、応援する福岡選手のお母さんと作馬さん、そして水谷
 予選2日目の初戦で水谷が北朝鮮の選手に敗れ、岸川が韓国のユンに勝ったために、無情にも日本人同士の対決となった。応援も出来ない。試合内容は地元観衆がうなるほどのハイレベルなラリー戦。せつない試合だった。これは五輪予選なのだ。
「少しの差で決まる勝負だった。岸川さんが無心でやっていたので、自分も無心でやることを心がけた。北朝鮮戦では、3球目のミスが出た。明日頑張るしかない」と試合後の水谷。
 一方、中国の王楠は韓国の唐に大接戦の末に敗れた。素晴らしい試合内容だった。帰化選手、吉林省出身の唐は試合後、韓国ではなく中国のメディアに取り囲まれた。負けても終わらないのがこの五輪予選。試合後の王楠は悔しいけれども涙はない。コーチと激論を飛ばした。
 それにしてもこの複雑な試合方式は誰が考えたのだろう。「今までのリーグ戦で決める試合方式よりも数倍しんどい。まさに究極の心理トーナメントだ」と日本卓球協会の前原強化本部長は語る。
写真は左からメディアに囲まれる唐、代表を決めた王励勤、そして日本人同士の対決

●女子Aトーナメント1回戦
王楠(中国) 12、9、4、3 ヒョン・リョンヒ(北朝鮮)
唐イェソ(韓国) -8、13、6、-8、11、-9、5 キム・ジョン(北朝鮮)
コムウォン(タイ) -8、13、6、-8、11、-9、5 張瑞(中国香港)
福岡春菜(中国電力) -7、12、11、6、-7、3 キム・ミヨン(北朝鮮)
●2回戦
唐イェソ 8、-3、10、-4、10、-9、10 王楠
コムウォン -7、12、11、6、-7、3 福岡
→福岡はCトーナメントへ  
★唐イェソ、★コムウォンは五輪出場資格を獲得

[明日の試合予定]
●女子Cトーナメント
福岡春菜 vs. キム・ジョン(北朝鮮)

 女子Aトーナメントで五輪出場に王手をかけた福岡春菜(中国電力)。しかし、思わぬ伏兵、小気味良い速攻プレーを見せるコムウォンに惜敗。コムウォンは28歳のベテランだが、昨シーズンはドイツのブンデスリーガにも参戦した選手だ。福岡は明日のCトーナメントでキム・ジョン戦に勝利すれば五輪出場資格を獲得できる。ここは一発で決めたいところだ。

 また、同じAトーナメントで世界ランキング4位の王楠が、かつての国家チームのチームメイト唐イェソにゲームオール10本という大激戦の末に敗れた。元女王にとってはプライドを傷つけられる敗戦となったが、明日の対戦相手はこちらも元遼寧省チームのチームメイト・張瑞。2001年の全中国運動会ではともにペアを組み、ダブルスで優勝している親友同士。無情の対戦となった。
 下は金星を挙げた唐イェソのコメント。
「王楠はオリンピックの金メダリストで、私は勉強させてもらうつもりで試合に臨んだ。今日の私は実力以上のものが出せたし、王楠はベストのプレーではなかったので、幸運にも出場資格を獲得できました。もちろん、すごく嬉しいです。(出典:香港卓球協会)」

写真は福岡を破ったコムウォンと福岡
●男子Aトーナメント1回戦
王励勤(中国) 9、6、3、6 張ユク(中国香港)
蒋澎龍(チャイニーズタイペイ) 6、9、-9、-5、11、-9、7 イ・チョルグク(北朝鮮)
ジャン・ソンマン(北朝鮮) -10、8、-9、7、-10、8、7 尹在榮(韓国)
キム・ヒョクボン(北朝鮮) 8、-7、10、-11、-11、5、9 水谷隼(日本)
→水谷はトーナメントB1回戦へ

●Aトーナメント1・2位決定戦
王励勤 9、5、4、6 蒋澎龍
キム・ヒョクボン 6、8、14、7 ジャン・ソンマン
★王励勤、★キム・ヒョクボンは五輪出場資格を獲得

※以下は日本選手の記録のみ
●男子Bトーナメント1回戦 
岸川聖也 9、6、-7、5、-9、10 尹在榮
水谷隼 4、5、8、3 張雁書(チャイニーズタイペイ)
●2回戦
水谷 6、-11、-10、7、-9、5、4 岸川
→水谷はCトーナメント、岸川はDトーナメントへ

[3月8日の試合予定]
●男子Cトーナメント
水谷隼 vs. 蒋澎龍 ※勝者は代表資格獲得
●男子Dトーナメント
岸川聖也 vs. サハ(インド)
→勝者はEトーナメントでCトーナメントの敗者と対戦。勝者は代表資格獲得

 男子でまず代表資格を獲得したのは、現世界チャンピオンの王励勤(中国)と、伏兵だった北朝鮮のキム・ヒョクボン。王励勤はもちろん順当だが、キム・ヒョクボンはグループD3位から、同グループ2位のアチャンタ(インド)の南アジア代表枠獲得に伴う繰り上げで2位となり、そのグッドラックを見事に生かした形だ。

 Aトーナメントで敗れた水谷は、Bトーナメント2回戦で岸川とまさかの同士討ち。敗者にも代表資格獲得のチャンスが残されているとはいえ、ナーバスな一戦になったが、水谷が競り勝って五輪出場に王手。岸川は明日のDトーナメントでサハ(インド)に勝ち、続くEトーナメント1回戦で勝利すれば代表資格を獲得できる。
 水谷、岸川とも明日は一気に突っ走って五輪出場を決めたい。それにしても今回の第2ステージの試合方式は複雑だ…。
岸川の肩が壊れている。ジャン・ソンマンという北朝鮮のカット選手と対戦し、惜敗したが、ダメージを受けたのは勝敗だけでなく、その肩だ。次の試合からはゲーム間でもアイシングをしたり、肩をぐるぐる回す仕草が目立った。特に香港の張ユクとの試合ではつらそうだったが、相手の張ユクのほうも肩を回していた。北朝鮮のカット選手は「壊し屋」ということだ。グループはぎりぎりの3位通過。前回までは上位者によるリーグ戦だったのだが、今回からは決勝トーナメントが行われ、これが非常に複雑。いずれにしてもまだチャンスはある。今日が正念場だ。
写真は張ユクとの試合での岸川
 アジア予選初日、水谷は北朝鮮のイ・チョルグクに0-3から逆転勝ち。タイペイの張雁書には完勝して、全勝でグループ1位通過。福岡もインドのダスに苦しみながらも何とか1位通過で五輪出場に大きく前進した。
 会場は香港市内から近くの公園内体育館だが、日本で言うとどこかの学校の体育館のようだ。あくまでも予選会なので入場料は無料。しかし、王励勤や王楠が見られるということで、少ない観客席がいっぱいになるほどだ。