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リオ五輪メダリスト・全日本選手権10度優勝の水谷隼選手の新刊書籍がいよいよ発売!
水谷選手の頭の中を文字化した「地球上最速の対人競技・卓球の戦略論」

『卓球王 水谷隼 終わりなき戦略』
 〜勝つための根拠と負ける理由〜
 水谷隼・著
 定価(本体1,700円+税)

卓球という対人競技の面白さ、楽しさ、奥深さ、勝つためのロジック、勝つためのプロセスをこの一冊に書き記し、皆さんに伝えたかった。それは水谷隼の生き様とも言えるし、「水谷の卓球」の真髄とも言える。それこそが私が卓球界に残したいものだ。〈「あとがき」から一部抜粋〉


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 緊急事態宣言が解除されたとは言え、まだ感染拡大が収まらない7月上旬に石川佳純は対面取材に応じてくれた。もちろん、取材する側もヘアメイクの方も感染予防に気を配りつつ、3年ぶりの撮り下ろしの撮影とインタビューが始まった。その取材を彼女自身が心待ちにしてくれていた様子がなんとも嬉しい。

 過去の全日本選手権後の「チャンピオン・インタビュー」と違い、じっくり話を聞いていると改めて石川佳純の「素の部分」が見えてきて、興味深いものになった。先日放送されたNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で紹介された石川とはまた別の顔も見えたような気がした。
「楽しく卓球をしたいけど、無理なんですよ。プロは勝つことが仕事なので、楽しく勝てることもあるけど、苦しく辛いことを乗り越えて勝たなければいけない。ただ、その過程を楽しみたいですね」(卓球王国最新号10月号)
 長く日本の女子卓球界のトップランナーとして走り続け、東京五輪に向かっている石川の言葉。13歳で全日本選手権ベスト4に入り、球界を震撼させた当時の卓球少女は天真爛漫だった。そんな明るさを残しながら、変貌したアスリートの言葉がインタビューの中に詰め込まれいる。

 1時間のインタビュー後に、彼女の美しい基本打法を撮影した。これほどの美しい打法を持っている選手は世界でも類を見ない。中学生時代の石川を取材した際に、ミキハウスの大嶋雅盛監督に「驚くほど左右のバランスが良い」という言葉を聞いたことがある。通常、卓球選手は小さい頃から利き腕だけを酷使するために左右のバランスが崩れ、それが打法に表れたり、故障の原因になることが多い。右利きの選手ならば、立った時に右肩が下がっていることが卓球選手では多い。それが身体の歪みを作り、腰や膝などを傷める原因になるのだが、石川は立ち姿を見ても左右のバランスが良く美しい。

 一方で、左右のバランスが素晴らしいゆえに、ボールもきれいな弧線を描きながら飛んでいく。つまり「クセ球」がない。相手からすれば、美しい球道ゆえに返球しやすいとも言えるかもしれない。これが対人競技の卓球の難しさとも言える。
 
 昨年の東京五輪代表レースを劇的な結末で終え、シングルスの代表権を得た石川佳純は、来年の東京五輪開催が決まらない中、どういう心境でいるのだろう。「オリンピックはあってほしいけど、それは私が決めることではない。でも、あるという前提で全力で準備をするし、そこに向けてモチベーションを保つことはできます」(卓球王国最新号)。

 不確実な東京五輪、想定する相手を卓球台の向こうに見つけられない日々。しかし、石川佳純の生き方はブレることがない。彼女にとって東京五輪は言葉にできないほど大事な大会ではあるが、五輪が彼女の選手生活の終点ではないからだ。
「いろいろやっても続かなくて、努力ができない人間なんだと小さい頃は思っていました。でも卓球に出合って、夢中になるものとして、のめり込むことを覚えたんです。頑張ったと言うより、楽しいから夢中になっていた。卓球が私にとっては巡り合えた一番のスポーツだった」
 夢中になれる、彼女の中での一番のもの。それが石川佳純にとっての卓球だった。
  • 最新号は「石川佳純」満載の一冊です

 卓球の試合は、必ずどちらかの選手(あるいはペア)のミスでラリーが終わる。1ゲームの行方が決まる11の得点の裏には、必ず11のミスがあるわけだ。
 そして、ミスには種類がある。お互いに全力を尽くしたラリーで、コースを狙った強打がわずかにオーバーしたのなら、「これでダメならしかたない」と納得できるだろう。高く浮いたチャンスボールの打ちミスは、「やっちゃった!」とは思うけれども、次のプレーへ気持ちを切り替えやすい部分もある。

 それでは、どんなミスが選手への影響が大きいのか。個人的に、中級レベルまでの選手で一番尾を引くミスは、バックサイドのツッツキやブロックに対する「回り込んで詰まって打ちミス」のパターンだと思う。せっかく頑張って回り込んだのに、ツッツキに対して詰まってネットミスをしてしまったり、ブロックが食い込んで来て攻撃をミスしてしまう。気持ちの切り替えが難しい、なんとも「萎(な)える」ミスだ。なんとかボールを相手コートに運んだとしても、浅くてあまいボールになり、ブロックで振り回される。

 こういうミスをする時、選手の頭は「攻めよう!」という意識に支配されている。そこで無理に回り込んで自滅の罠(わな)にハマってしまうと、プレーは次第に防戦一方になっていく。そんなタイミングでベンチから「弱気になってるぞ!」「攻めろ!」という声がかかり、また回り込んで同じようなミスをしたら、プレーは完全に崩壊してしまうだろう。

 そんな自滅のパターンから選手を救うべく、卓球王国10月号(8月発売号)の「脱・自滅」のフットワーク・第2回は、回り込みがテーマだ。詰まってしまう平行足での回り込みから脱却し、相手のコート全面にボールが打てる基本の回り込みの動きから、対上回転/下回転でのフットワークの調節、回り込む時に備えておくべき意識に至るまで、9ページで丁寧に紹介する。

 「攻めなきゃ!」「回り込まなきゃ!」という強迫観念で、プレーの幅を狭めていたアナタ。今回の「脱・自滅」のフットワークを読んでも、すぐに回り込みがうまくなるわけではないですが……試合でのプレーがずいぶん楽になることは保証いたします(柳澤)。
  • 「詰まってミス」「入れるだけ」の回り込みから脱却しましょう

●【インタビュー】「石川佳純」という生き方
●【技術特集】石川佳純の美的スイング
●【特別企画】石川佳純×シスコ 技術(テクノロジー)による強化&進化
●【技術特集/NEW】縦回転トリックサービス〈Vol.1〉
●【技術特集/NEW】ペン裏面打法の系譜
●【特別企画】IHプレイバック「熱い夏は終わらない」
●【報道】「卓球の火」を消さない! 地方大会報道
●【技術特集】脱・自滅のフットワーク〈Vol.2〉
●【技術特集】「健太塾」夏期講座(2)
●【技術特集/NEW】卓将のピンポイント・レッスン〈Vol.1〉
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●【ビギナー】公立中学必見!「短期超上達法」〈Vol.5〉
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●新連載! 縦回転トリックサービス
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ほか、お楽しみに!!

 卓球王国2020年10月号(8月21日発売)定価 800円(本体727円+税) 表紙などはこちら↓

 それにしても、これまで文章でだけ知っていて、その光景を想像するしかなかった数々の卓球史のエピソードを、マンガという形に具体化し、広く世に残すことができるというのは、耐えがたい快感である。

 今回発売された第1巻では卓球の元となったテニスのさらに元となった「ジュ・ド・ポーム」という16世紀フランスの球技の誕生から、卓球が日本へ伝来して独自の発展を遂げるまでを描いた。登場する人物たちは、セルロイド球を発明したジェームズ・ギブ、ピンポンセットを普及させたジョン・ジェイクス三世、国際卓球連盟を創立したアイボア・モンタギュー、史上最長1ポイント2時間12分のラリーをしたエーリッヒとパネス、あまりに強力なフィンガースピンサービスによって卓球のルールを変えてしまったソル・シフ、卓球を日本に持ち込んだ坪井玄道といった、豪華絢爛てんこ盛りの錚々たる方々だ。

 第2巻では日本の卓球が世界に羽ばたく様子から1950年代の卓球ニッポンの黄金時代までを、球聖・今孝、史上最強と言われた藤井則和、そしてミスター卓球・荻村伊智朗を中心として、用具やルールの変遷、名勝負を織り込んで描いた。

 どの場面も壮大な卓球物語の1コマであり、卓球に人生を懸けた人々の情熱に満ち満ちている。登場人物たちが残した文章を要所で引用し、台詞にも彼らが手記やインタビューなどで語った言葉をできるだけ散りばめて、マンガに彼らの魂が宿るよう心掛けた。

 現在制作中の第3巻では、1960年代になっていよいよ中国が台頭し、必死にそれと対抗しながらも敗れゆく日本の姿を描いている。その後はヨーロッパの卓球が復興しアジアとヨーロッパが拮抗する怒涛の1970年代をピンポン外交、用具の高性能化を交えて描く。さらに1980年代の中国 vs. スウェーデンの死闘と日本での卓球暗黒時代の混迷、そして1990年代の卓球メジャー化への挑戦から2000年代の日本の卓球の再興を経て2016年のリオ五輪での日本の活躍による卓球フィーバーまでを描く。

 この壮大な物語の最後は、書き始めたときから決めている。それは、リオ五輪での卓球フィーバー冷めやらぬ2016年11月、深夜の吉祥寺で、久保彰太郎さん(「バタフライ」の数々の卓球用具を開発)と私の会話の場面だ。

 久保さんは、自らが作り出した高性能の用具によって卓球があまりにも用具偏重になり、スポーツとして間違った方向に成長してしまったことに自責の念を抱いていた。私はその考えに同意できず反論したが、久保さんの考えを変えることはできなかった。

 久保さんが亡くなったのはその翌年の1月だった。生前の久保さんを納得させることはできなかったが、このマンガの最後でもう一度、久保さんに反論させていただく。あなたが作り出した、この素晴らしく高度で面白いスポーツに魅せられて我々はここにいるのですと。

 もしも久保さんがこのマンガを読んだら何と言ってくれただろうか。自責の念は変わらなかったかもしれないが、目を細めて喜んだに違いない。第2巻に登場する21歳の自分の姿に「イケメンすぎます」と苦言を呈しながら。
(完)

 『マンガで読む 卓球ものがたり1』はコチラ
 『マンガで読む 卓球ものがたり2』はコチラ

 「テーブルテニスコレクター」を苦しみながらも読んでいると、執筆している人の中に、アラン・デュークというとんでもないイギリス人研究家がいることがわかってきた。なにしろこの方、卓球史において重要な人物を見つけると、その人の生没年はもちろん、当時の住所や家族構成、はては祖父の代からの一家の歴史など、もはやどこが卓球史なのかわらないことまで調べ上げて発表するというとんでもないお方なのだ。

 ホイ氏の回答に納得できなかった私はデューク氏に連絡を取り、E.C.グッドが架空の人物なのはわかったが、モデルになった人物はいなかったのかを尋ねた。デューク氏は私の疑問に興味を持ち、さっそく調査をしてくれた。その結果、E.C.グッドに限りなく近いフレデリック・グッドという当時25歳の人物がいたことを突き止めてくれた。フレデリック・グッドは、1902年の大会で3回優勝しており、当時の新聞に「ラバー貼りラケットの先駆者のひとり」と書かれ、ロンドン郊外のパットニーに住んでいたという点も伝説とぴたりと一致していた。薬局のエピソードまでは記録に残っていないので真偽のほどはわからないし、ラバーの発明者は先述したようにフランク・ブライアンであることに変わりはないが、ともかく、E.C.グッドは名前は違ったが実在したことがわかったのだ。

 こうして、ときには卓球史の研究に小さな貢献をし、私自身も新しい発見をしたりしながら、行きつ戻りつしながら卓球マンガを書き進めた。

 当然ながら目を通した文献は膨大になった。書籍だけではなく、卓球レポートなどの専門誌、新聞記事も集めた。何がどこに書いてあるかは到底覚えられないので索引が重要になる。一度読んでも記録をしていないと二度と見つけられなくなるので、ちょっとでも使えそうなものは念のためにすべて記録した。この索引がなくなったらと想像するだけで恐ろしい。

 こうした苦労をしたので、私が藤井基男さんの著書を参考にしたように、将来、私の仕事を引き継ごうという物好きな人が現れたときのために、各巻の巻末に参考文献を載せた。マンガの何ページが参考文献の何ページに基づいているかまで書いた異様に詳しいリストだ。「どうだ、まいったか」と読者をマウンティングする目的も兼ねていることは言うまでもない。あまりにも大変だったので、これくらいはさせてもらいたい。

〜制作秘話5(8/7掲載予定)に続く〜

 『マンガで読む 卓球ものがたり1』はコチラ
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 こうした調査をしている中で、実は史実そのものにも怪しいところがある事実に直面した。資料によって情報が食い違うのだ。たとえばラバーが発明されたエピソードとして、1902年のある日、E.C.グッドというイギリス人が薬局でつり銭皿を見てそのゴムマットをラケットに貼ることを思いつき、そのラケットを使って大会で楽々優勝したというのが定説だったが、本によってはA.C.グッドと書いてあったり、薬局ではなく銀行と書いてあったりする。おまけに、どうしたわけかそのE.C.グッドなる人物の写真が一枚もない。同時代の人物の写真は普通にあるのにだ。

 そこで、アメリカの卓球史研究家であるチャック・ホイ氏に問い合わせたところ、ホイ氏自身が2007年に書いた論文が送られてきた。それによると、E.C.グッド伝説には何の根拠もなく、それどころか1901年にフランク・ブライアンという人がラバー貼りラケットの特許を出していて、1902年に発売している証拠文献があるので、ラバーの発明者はフランク・ブライアンだという。E.C.グッドの写真がないのも当然で、実在した証拠がない人物だというのだ。

 卓球史など完全に事実関係がわかっているのだろうと思ったら全然そうではなく、いまだに新事実の発見が続いていたのだった。卓球の歴史マンガを書くということは、そうした際限のない深い沼に足を踏み入れる行為であることを知って、愕然とした。

 チャック・ホイ氏がラバー発明についての論文を発表したのは、ITTF(国際卓球連盟)が発行している「テーブルテニスコレクター」という会報だった。さっそくそれらをITTFのウェブサイトで閲覧して驚いた。もともとこの会報は名前の通り、古いラケットなどのコレクターどうしの情報交換の場だったらしいのだが、それが高じて、今では世界最先端の卓球史研究の場になっていたのだ(2017年から実態に合わせて誌名が「テーブルテニスヒストリー」に変わった)。

 ここからさらに私の生活は大変なことになった。なにしろこの会報はすべて英語なので、英語の達人ならぬ私には読むのに恐ろしく時間がかかるのだ。あちこち拾い読みをすると、後から否定された情報だったりするので、新しい号からくまなく読まなくてはならない。そもそも卓球はイギリスで生まれたので、誕生時期の他の参考文献もすべて英語だ。

 それらの中でマンガの役に立つのはほんの一部だが、それがどこに書いてあるのかは読んでみないとわからないので読むしかない。辞書を引きながらいかにも卓球マンガの役に立たなそうな文章に意味を書き込んだりしていると、いったい何のためにやっているのかと、目的を見失いそうになることもしばしばなのであった。

〜制作秘話4(8/5掲載予定)に続く〜

 『マンガで読む 卓球ものがたり1』はコチラ
 『マンガで読む 卓球ものがたり2』はコチラ

 今回のマンガでの私の役割は登場人物の台詞や説明文が主だが、もうひとつの役割としてマンガ家さんに提供する資料の作成がある。卓球を知らないマンガ家さんにとって、卓球のプレーを違和感なく描くことは難しい。特に難しいのはグリップだ。そこで、マンガ家さんが描いた絵の構図に合わせて私がポーズをとった写真を貼り付けて送る作業が必要となった。プレー場面のほとんど全コマなのでおびただしい数にのぼり、大変ではあったが、手だけとはいえ私の一部が荻村伊智朗や田中利明として描かれるのだから、これほど楽しいことがあろうか。自然と笑みがこぼれた。

 また、歴史ものなので、登場人物の顔や服装、建物などできるだけ史実に忠実に描いてもらいたい。当然ながらそんな資料をマンガ家さんが持っているわけがない。マンガ家さんどころか、おそらく世の中で私しか持っていないものすらある。

 ということは、それらを正しく描こうがデタラメに描こうがそれを判別できる読者などほとんどいないので、無意味な努力にも思えるが、それらが作品の迫力となって必ずや読者に伝わると信じて調べた。実はそれは言い訳で、本当の理由は、調べればわかるかもしれないものを調べないで描くのは気持ちが悪いというだけのことである。

 ある本に載っている参考文献を手に入れて、さらにその本に載っている参考文献を手に入れたりしているとキリがなく「これ以上見つからないでくれ」と思うことさえあった。困ったことにAmazonなどで意外に簡単に手に入ってしまうのだ。新しい資料が見つかると嬉しいやら苦しいやらであった。

 こうして入手した本に出てくる写真を元に描いてもらった。たとえば、初代国際卓球連盟会長のモンタギューが出てくる場面は、モンタギューの自伝「THE YOUNGEST SON」に収められていた家や家族の写真をもとに描いてある。日本で最初にピンポン球を製造した人物については「セルロイドハウス横浜館」というセルロイドの博物館のような施設に問い合わせ(そんなのがあるのだ!)、永峰清次郎という人物であることを突き止めた。その情報を元に、SNSなどを使ってそのお孫さんお二人を探し当て、当時の写真を入手した。

 卓球そのもの以外の描写にもこだわった。たとえば、1938年の世界選手権で審判がマイクを使ってアナウンスする場面では、当時の動画にぼんやり映っているマイクの形から、それがフィリップス社の4211型という製品であることを骨董品のウェブサイトで特定し、鮮明な写真を入手するといった調子だ。

 こんなことをしているので、書くよりも調べている時間の方がはるかに長く、さっぱり進まずに3年もかかってしまった。いくら苦労して正確に描いても面白くなければ意味がないわけだが、こうした努力も通常の面白さとは別の価値を生んでいるものと信じている。

〜制作秘話3(8/3掲載予定)に続く

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