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世界選手権ザグレブ大会(個人戦)

読者のみなさま、最後までこのページをご覧いただき有り難うございました。この模様は次号8月号で、カラー50ページ以上の大特集でお届けします。発売日は6月21日です。どうぞ、お楽しみに~!!
 表彰式後の記者会見の席上で、暗い顔で長電話をする馬琳。
──記者会見前に長く電話をしていたけど、誰と……。
馬琳「・・・家から電話があって、難病を患っていた祖父が自殺したという電話が入って・・・祖父はぼくに会いたがっていて、いつ帰ってくるのか聞いていたけど・・・」
 痛恨の決勝での敗退。しかも3回目の銀メダル。しかも、5ゲームの7-1とリードし、優勝はすぐ目の前にあったが、優勝できない馬琳。その悲しみに覆い被せるように中国の実家から悲報が届いた。記者会見でその質問をされ、途切れ途切れに答えながら涙を流す馬琳。横にいた王励勤は驚いて、馬琳の肩に手をやった。5月27日は馬琳にとってあまりに悲しすぎる日となった。
 王励勤は01、05年に続いて3度目の優勝。これは男子としては荘則棟に並ぶ記録である。一方の馬琳は今回が3度目の決勝だったが、またしても敗れた。
王励勤「今、とても幸せな気持です。決勝の出足は悪くて、調子が出ていくのが遅かった。馬琳の調子は良かった。1-3とリードされた後の5ゲームが大切だった。1点ずつを取ることに集中した」
馬琳「3回目の決勝の敗戦だったけど、それはそれで大変な成績だと思っている。北京五輪は地元だし、大切な大会。そこで金メダルを取りたい」
 第6ゲームは王励勤の両ハンドドライブの威力と安定感が戻り、随所に素晴らしいファインプレーを見せ、7-3とリードを広げた。しかし、馬琳の調子も良く、反撃に転じ、鋭いラリー戦と回り込んでの台上フォアドライブで4本取り返し、7-7で並んだが、王励勤の前陣での鋭く振り切った両ハンドドライブを打ち込み、3本連取し、11-8で王励勤がフルゲームに持ち込んだ。最終ゲームに入り、王励勤のプレーの調子が最高潮に達し、回り込んでのフォアドライブがことごとく決まり、この場面でのストレートコースに打つ決断力と戦術の緻密さで前半を6-3でリードした。馬琳は得意の台上フォア攻撃と鋭いサービスからの3球目フォアドライブを決め、6-5とばん回しかけたが、波に乗せてしまった勢いの止まらない王励勤の攻撃力が、後半になるにつれ、加速していくようなすべてのラリーをことごとくポイントに結びつけ、大逆転の勝利を手にした。
 悔やまれるのは3-1でゲームをリードし、5ゲーム目に7-1とリードした時点で、少し勝ちを意識した馬琳から勝利の女神が逃げていったような気がした。
 王励勤対馬琳の決勝。世界ランク1位と2位の実力者同士の決勝となった。第1ゲームは馬琳がスタートダッシュ良く5本連取。7-1と大量リードした。王励勤はフォアへ大きく振られたドライブに対して、タイミングが合わずにドライブミスを連発し、調子を整えることなく一方的に馬琳に攻め込まれた。第2ゲームは、お互いの台上での攻防からラリー戦とつながり、フォアハンドドライブの威力が衰えない馬琳がラリー戦を制し、11-8でゲームを連取した。第3ゲームに入り、王励勤は戦術を変え、フォアのラリー戦を避け、得意とするバックハンドのカウンター攻撃を多用し、馬琳のフォアサイドへボールを集め、体勢を崩した。その結果、6ポイントを連取し、作戦が成功した。馬琳もフットワークが良くフォアドライブで粘るが、ことごとく王励勤のバックハンドカウンターが決まり、11-5で王励勤がこのゲームを奪った。
 第4ゲームに入り、馬琳の変化サービスが効き、連続ポイントとサービスエースを取り、4本連取し、有利にゲームを運んだ。特にサービス、3球目が切れのある鋭いフォアドライブとなり、11-4で馬琳が奪い返した。
 勢いに乗った馬林は第5ゲームに入り、王励勤のバックミドルにドライブで攻め、バックハンドのカウンターを防ぎ、6本連取し、7-1と試合の流れを決定づけたように見えた。ところが、ここから王励勤が底力を見せ、高度なラリー戦に打ち勝ち、今までの劣勢を盛り返した。長いラリー戦で疲れの見えた馬琳を、バックハンドの前陣カウンターをストレートコースへ打ち、馬琳のフォアサイドを揺さぶり、6本連取で取り返し、7-7。高いレベルの技の集中力を見せた。後半になるにつれ、さらに攻めの厳しさを見せた王励勤は得意の前陣回り込みバックストレートに鋭いフォアドライブを放ち、劣勢から優勢に切り替え、4本連取。といった素晴らしい後半のゲームの詰めであった。
男子シングルス決勝は前大会と同じく、王励勤対馬琳。前回負けている馬琳はリベンジを果たすべく、序盤からエンジン全開。コートを縦横無尽に駆け回り、フォアドライブで果敢に攻めた。3-1とリードし5ゲーム目も7-1と突き放した馬琳。このまま一気に優勝かと思われたが、王励勤がここから猛攻を見せる。6本連取ですぐに追いつくと、ゲームを奪い、そのまま一気に最終ゲームへ。王励勤の勢いは止まらず、馬琳も粘りを見せたが、11-6で王励勤が勝利し、2大会連続の優勝を決めた。馬琳はまたも勝利の女神はほほえんでくれず、2大会連続の準優勝という悔いの残る結果に終わった。

●男子シングルス決勝
王励勤(中国) 4(4-11,8-11,11-5,4-11,11-9,11-8,11-6)3 馬琳(中国)
またも中国の同士討ちとなった女子ダブルス決勝戦は、先輩の張怡寧/王楠が、若手の郭躍/李暁霞を下して、3連覇を達成。
勝ちを意識したのか、若手組はラリー戦で安定感を欠き、ゲームを奪うことができなかった。3冠がかかっていた郭躍だったが、惜しくも偉業は逃した。

●女子ダブルス決勝
張怡寧/王楠(中国) 4(11-5,11-6,13-11,11-9)0 郭躍/李暁霞(中国)
日本男子宮崎監督のコメント
「2001年からドイツを拠点とした若手の強化を始めて、ジュニアの大会では良い成績をおさめてきたんですが、なかなかシニアに結びつかなかった。しかし、今までいろいろ経験つんできて、やっと落ちついて自分のプレーができるようになってきた。
今回は直前にドイツで1週間集中した合宿を行えた。クレアンガやボルやメイス、プリモラッツなどいい選手と練習でき、雰囲気も良かった。その後ザグレブで合宿もした。李静、高礼澤、ガオニン、ヤンツーと一緒にできた。レベルの高い合宿を2週間連続ででき、直前のコンディショニング作りは、完璧に近いものができたと思う。それが出足のいいスタートにつながった」

男子ダブルスで中国ペアを破った岸川/水谷。ドイツでの強化が見事に実を結んだ
 昨日の男子シングルス準々決勝は意外とワンサイドゲームが多く、盛り上がりに欠けたが、この王励勤対柳承敏は世界選手権らしい、語り継がれるべき試合だった。王励勤の勝ちを予測する人が圧倒的に多い中、柳承敏は一世一代の当たりを見せたが、最後は惜しくも敗れた。敗者の柳承敏へ会場が拍手を送った。
柳承敏「今大会はしっかりと準備し、自信もあった。王励勤とはもう何度もやっているので、細かい作戦というものはない。秋場の応援の自分の力になったと思っている。今まではプロツアーでは思うように成績は上げられなかったが、こういう大きな大会とは準備が違う。世界選手権にはしっかりとした準備としっかりした練習で望んでいるので自信も違う。今回負けた借りは北京五輪で返したい」
 王励勤対柳承敏の第1ゲームはリーチを生かした柳承敏が中陣からの大きく曲がるフォアクロスを生かし、ポイントを上げ、台については、相手のミドルへの先手攻撃で一気に11-6でゲームを決めた。第2ゲームは王励勤が台上での逆モーションでコースを突き、主導権を握り、8-3とリードし、一気に11-3で取り返した。第3ゲームは執拗にミドルに攻めてくる柳承敏のボールに対して、王励勤は徹底したオールフォアでの攻撃に切り替えた。しかも、前陣でのピッチの早い両ハンドも効果があり、11-7で王励勤で取り、ゲームを2-1とリードした。
 第4ゲームは先手を取った王励勤が5-1とリードしたが、柳承敏は素晴らしいフットワークと大きく振り抜かれたフォアハンドドライブで7-7と追いつき、コースも第1ゲームと同じ、フォアドライブで相手のミドル攻めが戻り、7-9と柳承敏が逆転した。しかし、緊張から来る過剰な集中力がサービス、レシーブを狂わせ、10-10のジュースに入り、両者とも動きに精彩を欠いたが、13-12から柳承敏が大きなフットワークから会心のフォアハンドドライブを相手のフォアサイドに決め、13-13。柳承敏がひるむことなく前陣でバックストレートへフォアハンドドライブを放ち、14-13とリード。ジュースで2本連続ファインプレーができる世界のトップクラスは競った時でも最高のパフォーマンスを見せる。結果はサービスミスで14-16と柳承敏が2-2に持ち込んだ。
 第5ゲームは1ゲーム目と同じように柳承敏が徹底したミドル攻撃に転じたが、体力勝負に出た王励勤は大きくフォア対フォアのドライブで応戦し、前半の展開にはなかった小技から大技とペースを変えた。体力の消耗が見えだした柳承敏は6-11でこのゲームを落とした。第6ゲームのスタートから激しいロング戦のラリーからロビング戦となり、王励勤が打ち抜いた。この後、柳承敏はミドル攻めとミドルに小さく止める作戦に戻り、本来のフットワーク力と威力のあるフォアドライブで王励勤のミスを誘い、7-7としたが、王励勤は柳承敏のミドル攻撃を待ちかまえ、カウンターで3本しのいだ後、見事にストレートに打ち抜いた。7-10とリードされた柳承敏はサービスエースを取り、フォアハンドドライブでポイントし、台上でも切れのあるフォアハンドスマッシュを決め、ジュースに持ち込み、ここからジュースに強い柳承敏が得意のロング戦でゲームポイントを取り、続けざま、レシーブ攻撃でこのゲームをものにした。
 第7ゲーム、最終ゲームに入り、スタートから6ゲーム目と同様に長いロング戦の末に柳承敏が取ったが、ここから王励勤はフォア対フォアのラリーを避け、徹底した台上バックハンドから連続バックハンド攻撃に作戦を変え、トータル6ポイントものバックハンド攻撃で優勢に立ち、9-4とリードした。柳承敏も最後の力を振り絞り、フォアハンドでよく動き、3本連取したが、最後は相手を良く見た王励勤が丁寧にバックハンドでコースを突き、勝利した。
 この試合を見て、世界選手権での対戦となるとこのような1時間半を超える死闘とも言える試合が展開される。技術と戦術と強靱な体力が最後の勝負に結びつくと思われる。