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世界選手権ザグレブ大会(個人戦)

 郭躍のフォアクロスのフォアドライブ、バッククロスのバックドライブを武器に張怡寧のミドルへ台上から速攻をかけ、両サイドにドライブ攻撃をことごとく決める。完勝のゲーム内容だった。たぶん、クロスゲームになる、と予想したが、前日のミックスダブルスの決勝戦で郭躍が男子ボールに対して、随所にファインプレーを見せた。その勢いと感覚がそのままこのゲームに展開されたと思われる。
●男子シングルス準々決勝
王皓(中国) 4(11-4,11-9,11-3,11-3)0 朱世赫(韓国)
●男子シングルス準々決勝
馬琳(中国) 4(11-9,11-7,12-10,9-11,11-6)1 サムソノフ(ベラルーシ)
●女子シングルス準決勝
李暁霞(中国) 4(11-7,5-11,11-5,11-5,11-5)1 郭炎(中国)
26日10時から行われた女子シングルス準決勝で、郭躍が張怡寧にストレート勝ちをおさめた。
序盤からフォアハンドで相手の両サイドを攻めた郭躍。それに対し張怡寧はしのぐばかりで、いつものように巻き返すことができない。先手をとろうとしても、ドライブがミス。女王らしくないプレーを連発。結局、最後まで流れが変わることなく、郭躍が攻めきって勝利した。
初の決勝進出を果たした郭躍、このまま一気に頂点まで駆け上がれるか

●女子シングルス準決勝
郭躍(中国) 4(11-8,11-7,11-9,11-4)0 張怡寧(中国)
 ベスト8決定戦で韓国の柳承敏と呉尚垠が対決。激しい斬り合いのようなラリーでシーソーゲームを展開。3-2と呉尚垠がゲームをリードした6ゲーム目の4-5。呉尚垠がラケットを台にぶつけ、バック面の先端のラバーが切れたところで、審判が「スペアラケットに替えるように」注意したが、呉尚垠は拒否。スペアラケットを持っていなかったか、スペアではプレーしたくなかったのだろう。審判は執拗に勧告し、審判長も登場。しかし、柳承敏は「今のままで良いから試合を続けよう」と審判に言う。「私は問題ないからこのままのラケットでやらせてくれ、柳承敏もOKっと言っているじゃないか」と審判にアピール。5分ほどもめたが、結局、試合続行。それが影響合ったかどうかわからないが結局そのゲームを柳承敏が取り、結局は4-3で柳承敏が勝利した。
 世界選手権の大事な場面では何が起こるかわからない。クレアンガ対韓陽戦で、クレアンガが手とラケットを台にぶつけ、瞬時に、何もなかったかのようにスペアラケットに替えて逆転勝ちしたのとは対照的だった。
ベスト8決定戦 ボル対クレアンガ
 戦術分析を行おう。
 ボルが徹底的にクレアンガの強打を封じ込めた。クレアンガの両ハンド、特にフォアハンドのクロスとストレートへのフルスイングのドライブに対して、ボルの対応は困難であり、そのため徹底して、クレアンガのバックミドルのコースへボールを集めた。クレアンガはバックハンドもコースを突いて入れるだけで、ボルの前陣でのフットワークによってそのボールを狙い打ちされた。とは言っても、時々放つクレアンガの両ハンドドライブには世界一流の威力があった。
 やはり現代卓球で勝利を得るためには徹底的に相手の弱点を見抜き、最後まで攻め続けることが重要である。特にボルの速攻とカウンターテクニックを織り交ぜたプレーは、中国に対しても脅威になる存在と言える。
●混合ダブルス決勝
王励勤/郭躍(中国) 4(13-11,11-7,8-11,11-9,9-11,12-10)2 馬琳/王楠(中国)
男子シングルスのベスト8決定戦の残りが行われ、ボルガ打撃戦の末にクレアンガを下し、柳承敏は同士討ちで呉尚垠をフルゲームで破った。中同士の対戦で、ハオ、王励勤が勝ち進んだ。

●男子シングルス・ベスト8決定戦
ボル(ドイツ) 4(11-6,8-11,11-4,15-13,11-4)1 クレアンガ(ギリシャ)
柳承敏(韓国) 4(8-11,12-10,11-9,3-11,10-12,11-9,11-7)3 呉尚垠(韓国)
ハオ帥(中国) 4(11-7,7-11,14-12,11-13,10-12,11-9,11-9)3 陳杞(中国)
王励勤(中国) 4(11-9,11-9,11-7,11-6) 侯英超(中国)

韓国エース対決を制した柳承敏/呉尚垠はバックは走っていたがわずかに及ばず/こちらもライバル対決制したハオ帥、飛ぶ!
 国際卓球連盟の理事会(board of directors)で昨年に続き討議されたスピードグルー(揮発性有機溶剤入り接着剤)の禁止時期は、玉虫色となった。理事会終了後のグルーに関するプレスリリースにすべての人が首をかしげた。
 プレスリリースでは以下の通り。

 グルー禁止の事項とグルーをテスト(検査?)する事項は分離することを決定した。
 すべての選手が揮発性有機溶剤入り接着剤を直ちにやめることを決めた。「この決定はすぐに実行されるがそれは選手の健康に影響があるからだ。我々は選手の健康を考慮しなければならない。事実、日本ではアレルギー性ショックで選手が入院するという事態が起きている」とシャララ会長は語った。
 ただし理事会は北京五輪やビッグイベントの準備もあるし、健康への危険性はかなり低いという面もある。テストを始める時期は、2008年9月1日からになった。(投票の結果、28対12で、使用を継続)「ただし2回目の事故が起きた場合、もしそれが選手にとても危険なケースとなった場合は、ただちにグルーテスト行う」(シャララ)「もし選手が部屋を換気し、正しく使うならばとても小さな危険性だと言えるだろう」
また、ジュニア委員会では2008年1月からは、ジュニアの大会で有機溶剤入り接着剤を禁止することを決定した。

解説
2日前にシャララ会長は記者会見で、「日本での事故を重く見て、選手の健康に危害を与える可能性あるのならすぐに禁止したい。2008年ではなく2007年9月1日以降の使用禁止にしたい。今回の日本の事故を最初で最後にしたい。ただ用具関係の決議は理事会決定だが、会長としては2007年9月という希望を持っている」と異例のコメントを発していたが、結局、理事会では北京オリンピックを控えていることと、健康を害する危険性が低いというということで、玉虫色の決定となった。「グルーをやめるように勧告する」というのはどれほどの強制力があるのか。やめることを勧告するがテストは2008年8月末まではしない、ということはどういうことなのか。
 大会2日目には卓球メーカーを集めた緊急ミーティングでシャララ会長は、スピードグルーの危険性を懇々と説明。理解を求めた。そして、翌日の記者会見では、会見のほとんどをグルー禁止のいきさつ、理由を記者の前で語った。その決意は相当強いことを示した。「理事会での決定は5分5分」と言っていたが、ふたを開けてみれば、大差でグルー禁止の前倒し案は却下され、その代わりにジュニア大会での禁止を早めた。さて、日本ではどのように「ジュニア禁止」を実行するだろうか。最近ではジュニア選手がシニアの大会に出るケースは多い。選手の混乱は避けたいところだ。
 もちろん、2度目の事故を待つわけにはいかない。しかし現実として、日本での事故によって国内の関係者に与えたショックと、国外の理事や関係者の間には温度差がある。いずれにしても、接着剤による余計な手間や心配、サプリメント(接着補助剤)を使う、使わないという部分ではなく、真にスポーツアスリートとしてコートで戦う競技に、卓球がなっていくことを望みたい。