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世界卓球パリWEB速報

 ペンテコステ(聖霊降臨祭)の振り替え休日だった今日、5月20日。世界選手権パリ大会(個人戦)はその幕を閉じた。
 個人戦5種目のうち、男子ダブルスのタイトルはチャイニーズタイペイの荘智淵/陳建安へ、混合ダブルスのタイトルは北朝鮮のキム・ヒョクボン/キム・ジョンへと渡った。表彰式では毎年のように、中国の国歌「義勇軍行進曲」を繰り返し聞くのが通例になっていたが、今回は初めて聞く2曲。特にタイペイの場合は、IOC(国際オリンピック委員会)が承認した国旗歌を聞くという、貴重な体験をした。

 中国が男子ダブルスと混合ダブルスでベストメンバーをエントリーしなかったことは、やはり疑問の余地は残る。両種目に出場した中国選手たちのモチベーションも低かった。手っ取り早くタイトルを分散させ、世界の卓球界を活性化させようというそのやり方は、砂漠化への対策として、岩や石を緑のペンキで塗るのに似たところがないだろうか。

 ただし、中国がタイトルを独占している状況を見て、中国が卓球をつまらなくしていると論じるのも筋違いのように思う。競技スポーツである以上、純粋に、頂点を目指して努力を続けているという点では中国選手たちも同じ。ライバルの育成に苦心するのは、本来は彼らの仕事ではないはずだ。そういう意味では、馬琳を下し、許シンをあと一歩まで追い詰めた松平健太、才能を高く評価される水谷隼・丹羽孝希といった選手を擁する日本は、もっともっと中国を脅かし、卓球界を面白くしていきたい。

 世界選手権パリ大会の特集号は、6月21日発売の卓球王国8月号。タイトルはズバリ「愛してるぜ、パリ」。花の都の熱狂とエスプリを、読者の皆さんにお届けします。どうかご期待ください!

 毎日、ディスコのような大音量の中にいたので、いささか耳が疲れました。自動車が水たまりを掻き分ける音が響く、雨のパリ。これにて世界選手権パリ大会の速報を終了いたします。速報ページをご覧いただいた皆さん、ありがとうございました。
 来年のゴールデンウイークは世界団体選手権東京大会。今からスケジュール帳に書き込んでおきましょう!
勝負は二人がタイムアウトをとった4ゲーム目だった。どちらものこのゲームがほしかったはずだ。

 王は10-7とリードしていて、このゲームを取れなかったのは悔しいだろう。王の戦い方も決して悪くなかった。張のフォアを狙い、バックストレートへの攻撃を多くして、チキータを狙っている張に対して、フォア前ではなくバック前に出すタイミング、決して落とさない打球点の高いドライブ。その王の戦術をもってしても、張を倒せなかった。

張のねじ伏せるようなバックドライブは打球点が早いだけではなく、回転量も多い。特に4ゲーム目、8-10からのバックドライブは、台の上からでもあれほどの回転がかけられるものなのかと驚かされる。二人のドライブのラリーは台より下でとらえたとしてもあまり放物線を描かず、弾道が低い。回転量と筋力があるからだ。

もうひとつの張の特徴は、下半身と上半身のバランスが悪く、体勢が整っていない状態でも、そこから早い打球点でドライブをかけられる点だ。だから王の予想を超えたボールがくるのだろう。もちろん張は高度な技術だけでなく、攻め方も読みもハイレベルだ。1ゲーム目、2-2からノータッチで抜くバックストレートへのドライブ。6ゲーム目の後半には、王がフォア前を裏面で返球すると、すかさずバックへ送りポイントをとる攻め方などがその良い例だ。勝負所も知っている。だからこそ、世界選手権で2回、オリンピックでも優勝することができるのだろう。
●男子シングルス決勝
張継科(中国) 7、8、ー6、12、ー5、7 王皓(中国)

この男を止められる者はいなかった。張継科、2連覇!
序盤から、裏面ドライブを苦にせず、前陣でのバックハンドとバックドライブで対応する張継科に対し、王皓はフォアハンドの手数を増やし、積極的に勝負に出る。不完全燃焼の内容だった準決勝に比べ、決勝は両者とも全力を尽くした内容だった。
王皓としては、7ー2、10ー7とリードした第4ゲームを取りきれなかったのが大きく響いた。7ー4で王皓がタイムアウト、12ー13で張継科がタイムアウト。両選手ともここが勝負と見てタイムアウトを使い、実際にこのゲームが勝敗を分けた。

ロンドン五輪で優勝して、五輪・世界選手権・ワールドカップを制する「大満貫」を達成した後、「もう一度大満貫を達成したい」と語っていた張継科。今回の優勝は、さらなるビクトリーロードへの序章なのか。優勝を決め、観客席に陣取っていた地元・青島(ちんたお)の応援団、そして両親と抱き合い、優勝を分かち合った。
 女子ダブルス決勝が終わった後、93年世界選手権でガシアン(フランス)が優勝してから20年であることを記念して、ガシアンとジャン-ミッシェル・セイブ(ベルギー)という、93年世界選手権決勝を再現したエキシビションマッチが開催された。恐ろしいことに、セイブはまだ現役で今大会にも出場していた。

 ふたりとも茶目っ気たっぷり。セイブが変な声を出してロビングを上げたり、ガシアンがセイブを振り向かせている間にこっそりサービスを出したり…。爆笑でした。
 そして場内では、93年世界選手権決勝のラストシーンが流され、セイブとガシアンがふたりでそのシーンを再現。観客の声援が加わると、ホントにガシアンが目の前で優勝した気分になるから不思議。念の入ったことに、ガシアンのベンチには当時のフランス男子のマルタン監督まで座らせていた。

 セレモニーはこれにとどまらず、ガシアンとセイブが表彰台に登り、国歌の「ラ・マルセイエーズ」を流すあたり、日本人感覚からすれば悪ノリだが、フランスの観客は大盛り上がり。胸がスカッとしたかもしれない。なんとも壮大なノスタルジーだが、不思議に心地よい空間だった。
 表彰台の上では涙を見せていたセイブ。ガシアンにホロッとくるようなことを言われた…のかな。
  • 信じられないことに、これはフィクションです

●女子ダブルス決勝
李暁霞/郭躍(中国) ー5、5、7、5、7 丁寧/劉詩ウェン(中国)

女子ダブルス優勝は李暁霞/郭躍。09・11年大会に続く大会3連覇を達成した。大会前に頸椎を傷め、シングルスのエントリーを回避した郭躍だが、李暁霞との名コンビはさすが。丁寧/劉詩ウェンがフォアハンドに頼り、打球点が下がりがちになる中で、うまくバックハンドのブロックと強打を混ぜて広角にコースを突き、ラリーを優位に展開していた。

星野美香の眼★女子ダブルス決勝
 李暁霞/郭躍ペアの、郭躍の読みとコース取りが非常に冴えていた試合だった。両ペアとも右利きと左利きの選手のペアリングで、左利きの選手のフォアサイド(=右選手のバックサイド)への攻めを基本にしながら、ストレートへの攻めを混ぜていた。3ゲーム目から、郭躍は相手ペアが自分のフォアサイドを攻めてくるのを待っていて、それを速いドライブで攻め返していた。次に、相手が郭のバックサイドへコースを切り替えるのも、またも郭は待っていた。こうなると、郭躍の勢いは止まらない。バックサイドから、フォアドライブでもバックドライブでも、ストレートへ攻めていた。このコースを左利きの選手が使えると、ダブルスは強い。
 逆に丁寧と劉詩ウェンは、郭躍にコースを読まれ、先手が取れずに後手後手に回っていた。この郭躍の抜群の読みとの差が、勝敗を分けた。
 会場からセーヌ川を渡った対岸にある、真新しい卓球ショップ「Ping-Passion」。店長のファビエさんいわく、パリ市内に2店舗あるのだとか。編集部トモと編集部ユウが相次いで訪問してきました。急に怪しいジャポネがふたりもやってきて、ビックリしたんじゃないかナ…。
★大会最終日・5月20日のタイムテーブル

14:00(日本時間21:00)
●女子ダブルス決勝 郭躍/李暁霞(中国) vs. 丁寧/劉詩ウェン(中国)
15:30(日本時間22:30)
●男子シングルス決勝 張継科(中国) vs. 王皓(中国)

大会最終日のパリ・ベルシースポーツホールは2試合のみ。しかも今日は朝から雨。こんな天気の中を、2試合だけのために来てくれる観客のために、女子ダブルスと男子シングルスの決勝は好ゲームを期待したい。

張継科と王皓は前回の世界選手権決勝、ロンドン五輪決勝に続く対戦。過去2回は張継科が勝利しているが、今大会はどうか。ピッチの早さなら張継科が上。王皓は昨日の馬龍戦のような思い切った攻めができるか?
 王皓は馬龍に対して、ほんの少しでも打球点を落としたら点を取れない、馬のまわりこんでのパワードライブを打たれたら不利、という事を十分知っている。そのために1ゲーム目から徹底した戦術をとった。それは、打球点を落とさないフォア攻め。馬の苦手なフォア前から3球目攻撃、先に攻められても前で勝負する。
 この戦術を主とし、相手の一手先を読みながら試合を進めていった。2ゲーム目、馬龍がフォアを待っている時はバックへ速いボールを送っている。フォア前を待っている時は、他のコースへサービスを出し、待ちを外してから攻めていった。対する馬は、4ゲーム目からレシーブを変えていき、これをしないと勝てない、と気持ちを吹っ切ったように見えた。ただ、王のようにその徹底した戦い方をずっと持続する事はできなかったようだ。それができるようになった時、馬龍は世界チャンピオンになれる選手だと思う。
●男子シングルス準決勝
王皓(中国) 9、7、3、ー7、ー12、3 馬龍(中国)

馬龍の背中には、隠れた電源のスイッチでもあるのか?
そう言いたくなるような男子シングルス準決勝・第2試合だった。

出足から、王皓の打球点の早い裏面ドライブの前に、バック対バックで後手に回った馬龍。思い切って回り込むこともできず、王皓のフォアを狙って仕掛けることもできない。王皓のサービスは、これまでの巻き込むような左横回転サービスに新たに右横回転のサービスも加わり、馬龍のレシーブが乱れた。少しでもストップが浮けば、すかさず世界最速と言われる王皓の台上ドライブが炸裂。第3ゲームまでの馬龍は完全に電源「OFF」だった。

突然、馬龍のスイッチが「ON」になったのは、第4ゲームを奪い返し、第5ゲーム2ー2でものすごいフォアクロスの引き合いの末に得点してから。
中陣で、低く体を沈み込ませながらパワードライブを連発する馬龍。王皓もいつになくフォアドライブの手数が多く、ラリーは一気に白熱した。会場に「Allez!MaLong!(アレ(頑張れ)マロ〜ン!)」の声が何度も響く。馬龍は10ー11でマッチポイントを奪われながら逆転し、14ー12で奪取。逆転の目もあるかと思われた。

ところが、第6ゲームでまたも馬龍のスイッチは「OFF」になる。フォアドライブの積極性を失い、王皓の裏面ドライブに対するバックハンドのミス、ストップのミスを連発。世界のトップ選手とは思えないほどあっけなく、2ー4から2ー10までリードを広げられ、あえなく敗戦。観客があっけにとられるほどだった。

当たりがついた時の強さは、まさに「世界最強」という称号がふさわしい馬龍。しかし、王者になるために必要な「覇気」を見せることができなかった。
●女子ダブルス準決勝
李暁霞/郭躍(中国) ー10、7、7、4、ー9、8 馮天薇/ユ・モンユ(シンガポール)
丁寧/劉詩ウェン(中国) 8、6、ー5、ー10、4、ー8、9 陳夢/朱雨玲(中国)

男子シングルス準決勝と交互に行われている女子ダブルス準決勝。…少々盛り上がりに欠けるのだが、丁寧/劉詩ウェンと陳夢/朱雨玲の一戦は、好ラリーも随所に展開された。

郭躍は03年パリ大会から、女子ダブルスで5大会連続で決勝に進出し、準優勝3回のあとに現在2連覇中。これで6大会連続の決勝進出だから大したものだ。下写真左は李暁霞/郭躍、右は馮天薇/ユ・モンユ