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世界卓球クアラルンプール大会速報

 合宿中の休養日だった2月21日の日曜日、吉村真晴と大島祐哉は午後にふたりで練習を行ったという。「仲良しグループ」でいることは難しい、プライド高きトップ選手の集団の中で、互いを認め合う親友のふたり。

 吉村は強烈な変化サービスから、バックハンドでも決定打が打てるスタイル。台上のボールタッチも柔らかい。一方の大島は、台上プレーやバックハンドにまだ課題を残すが、強靱なフィジカルを生かし、猛烈な回転量のパワードライブ連打で相手を蹴散らす。同じ右シェークドライブでも対照的なプレースタイル。しかし、共通するのは、心の底から卓球が好きだということ。ハードなフットワーク練習でも、嬉々(きき)としてボールを追いかけ、休憩時間もラケットを手放さない。

 全日本で右肩の故障から復帰した吉村は、ブランクの期間を体力トレーニングに充てることで、体力測定の数値は全体的に伸びたという。「一年前より下半身が安定して、フォアドライブが連打できるようになってきた。スクワットも最大重量が115キロから120キロに上がりました。大島は140キロくらい上げるので、自分はフィジカルはまだまだですけどね」(吉村)。

 一方、大島はさらに身体能力が高まっている。特に太ももの裏側、瞬発力を生み出す筋肉「ハムストリング」の発達がすごい。今、日本男子で最も大きく、速く動ける選手と言っても過言ではない。体力測定の3種目あるジャンプ種目でも、すべて日本男子でトップの数値を叩き出す。
 「大きく動けるので、『このボールなら抜けた』と相手が思うボールでも、届いて返すことができる。相手にプレッシャーを与えられる。競った時に、相手はもっと厳しいコースに打とうとしてミスが出ます。もちろん、フォアハンドの連続攻撃にも生きていると思いますね」(大島)。

 「吉村が出る試合もあるし、ぼくが出る試合もある。どちらが出ても、出た時にはしっかり点を取ろうとふたりで話している。海外選手の弱点や、自分たちの課題についても話し合える仲ですね。ふたりとも良い状態で世界卓球に臨みたい」(大島)。若武者ふたりの爆発力に期待・大だ。
  • 休憩時間にサービスを試していた吉村

  • 大島は練習時間が終わっても、まだまだやり足りない感じだ

  • 中国選手にも負けない、大島の健脚

 全日本選手権で、歴代最多タイとなる8回目の優勝を飾った水谷隼。06年ブレーメン大会以来、6大会連続となる世界選手権団体戦。今回の合宿では、疲労から右肩に痛みを抱えることもあったというが、かなり回復してきている。全日本選手権では、変化の激しいチキータを要所で使い、対戦相手を翻弄したが、「最近はチキータはあまり使っていません。肩への負担も大きいので、本番で使うかどうかは何とも言えない」と語る。

 世界団体初出場の06年ブレーメン大会では、グループリーグで0勝3敗と苦いデビューだった水谷。しかし、08年広州大会のグループリーグ第4戦でシュテガーに敗れてから、グループリーグでは実に20連勝中。10年大会でオフチャロフやボル、12年大会でサムソノフ、14年大会でアポローニャやフレイタスと、強豪選手を次々に破ってきた。倉嶋監督が絶対の信頼を寄せるのも納得の成績だ。

 「世界団体では、1ゲーム目をほとんど取れている。相手にプレッシャーをかけて自分は余裕は持てるので、スタートダッシュもかけられる。1ゲーム目はサービスも効くので、それがスタートダッシュにつながっていると思います。
 ぼくは、どちらかといえば団体戦のほうが伸び伸びできる。1回負けてもまだチャンスがあるし、団体戦のほうが好きですね。シングルスよりあまり緊張しないので、自分のやりたいことができる」(水谷)

 公開練習では、NTメンバーの平野友樹(協和発酵キリン)、そして大島の強打を相手に、自在なコース取りのカウンターを見せていた水谷。「ここから徐々に調子を上げていきたい」と、クアラルンプール大会にきっちり照準を合わせていく。
  • キレのあるカウンターを放っていた水谷

  • パーソナルコーチの邱建新さんと、練習の合間に言葉を交わす

 2月28日に熱戦の火ぶたが切られる世界選手権団体戦クアラルンプール大会。現在、日本男女チームは東京・北区のNTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)で調整合宿を行っている。2月22日に行われた公開練習の模様は、卓球王国WEBのトピックスページでもお伝えした。この大会速報ページでは、より詳しく、より深く、選手たちの仕上がりや語ったコメントについて紹介しよう。

 まず、日本男子チーム。今大会が2回目の世界選手権団体戦となる倉嶋洋介監督。前回大会はグループリーグ初戦のギリシャ戦で敗れ、選手起用など大幅なプランの変更を余儀なくされた。「前回と前々回はグループリーグで1敗していて、ここのところ全勝がない。しっかり第3シードとしての実力を見せたい」と意気込む。
 グループリーグ(1次リーグ)のオーダーは、すでに選手に伝えてあるという。もちろん、オーダーの変更は十分にあり得る。「オーダーを100%信じるなと選手たちには言っている。オーダーから外れる選手のモチベーションが下がったり、準備不足になっても困りますからね。『ある程度は決めておくけれど、全員が出られるよう準備してほしい』と伝えている」(倉嶋監督)。

 やはりオーダーの軸となるのはエース水谷、そして2番手の丹羽。国際大会で十分な経験を積んでいるふたりに寄せる信頼は厚い。大島、吉村という若手ふたりには勢いはあるが、やはり崩れた時の怖さがある。このふたりをどう起用するかが、倉嶋監督の腕の見せ所だ。「特に吉村は、リオ五輪にしっかりつなげてあげたい。自分の力でここまでやれたんだという、自信を持たせてあげたい。起用法は難しいですが、それがぼくのひとつのミッションでもある」と倉嶋監督は言う。

 グループリーグの対戦相手は、初戦から順番にベラルーシ、シンガポール、ポーランド、ウクライナ、そしてポルトガル。サムソノフのいるベラルーシ、フレイタス・モンテイロ・アポローニャという「三銃士」がいるポルトガルのみならず、シンガポールにはガオ・ニン、ポーランドにはワン・ツォンイ、ウクライナには世界選手権ベスト16のコウ・レイと、手ごわい帰化選手勢が顔を揃える。吉村・大島に経験を積ませたくても、オーダーでの冒険はなかなか難しいが、果たして倉嶋監督が勝負に出る試合はあるのか。今大会は、例年以上にオーダーに注目だ。
  • バックハンドの強化に取り組む大島に、アドバイスを与える倉嶋監督

  • 倉嶋監督が「リオ五輪につなげてあげたい」と語るキーマン・吉村