速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

2017世界卓球デュッセルドルフ大会速報

 完敗ではあったが、丁寧を本気にさせた平野は中国の強力なライバルとなった。
 試合後のコメントは以下の通り。

「中国選手に負けたことは悔しい。アジア選手権の時には相手は対策を立ててなかったと思うけど、今回は中国は4人も私のコピーを作るほど対策を立ててきた。そこで負けてしまったのは実力不足だった。サービスも前より効かなくなって、相手のサービスは前より質も上がっている。
 ラリーになったら結構良い勝負だったと思うけど、その前で負けてしまった。対策を立てられると、もともと実力は相手のほうが上なのでそこで負けてしまった。ラリーは自信があるけど、その前で負けてしまった。中国選手に勝てるように頑張っていきたい。2年前とは全然違う。今回は相手も自分のことをライバルだと思ってくれているし、自分が得点するパターンが増えている。
 元々メダルと言われていて、いつもよりプレッシャーはあったけど、その中でメダルを獲れたことは本当に良かった」
 アジア選手権で中国の上位選手を3連破した平野は、完全に分析され、研究された。しかし、それさえも想定していた馬場監督が試合後に語ったコメントは以下の通り。

「だいたい相手がやることはわかっていて、自分が向上すべき部分でミスにつながったり、自分が前回と違う戦い方になった時に少し戸惑いもあったかもしれない。
 相手はコース取りを変えてきたし、平野がやることを相手は読んでいて、平野の弱いところついてきて、平野の得意なバックハンドを使わせない戦い方、もしくは大きく動かしてからバックを使わせる戦い方をしてきた。これから平野は強化する部分がたくさん見つかった。バック対バックとか、平野の得意なパターンにはならなかった。
 アジア選手権の時にはそんなに強くないだろうと思っていたかもしれないけど、今回は点数が離れていても気を許すことなく、絶対勝つんだというのは相手から感じられた。ただ、こちらもそうしてくるだろうと想定していたが、思い通りにいかなかった部分がストレスになったかもしれない」
●女子シングルス準決勝
丁寧(中国) 4、8、5、ー5、5 平野美宇

平野、アジア選手権の再現はならず。現世界女王の丁寧に敗れ、銅メダルが確定した。

アジア選手権では「力攻め」で平野に敗れた丁寧。相手のボールを利用するのがうまい平野に対し、丁寧が自分から打つのではなく、平野に打たせる戦術を採用することは十分に予想できた。1・2ゲーム目、丁寧が自分から攻めたボールはほとんどない。平野の攻撃のミスによる失点がほとんどで、もう少し早く修正したかった。

丁寧は下回転系のサービスを平野のフォアに集め、動かしてから先に打たせ、バックハンドで揺さぶってミスを誘った。かつては力攻めで自滅することもあった丁寧だが、それだけの技術・戦術の幅が身についている。また、平野のサービスも研究され、試合を通じて丁寧のレシーブミスはほとんどなかった。

ただし、5ゲーム目の10ー5で丁寧がマッチポイントを握った場面。丁寧は自分が勝ったと勘違いして審判席に歩み寄り、間違いに気づいて苦笑い。すかさずベンチの李隼監督代理がタイムアウトを取り、間を取ったのはさすがだったが、丁寧も心理的には決して楽ではなかったはずだ。結果的には、その丁寧を楽にさせる試合展開になってしまった。

それでも丁寧のフォアをバックハンドのカウンターで打ち抜き、1ゲームを返した4ゲーム目のプレーは冴えていた。中国選手と当たらないブロックに入ったとはいえ、そこで準決勝まで勝ち上がれるのは並大抵のことではない。
平野はまだ17歳。中国の包囲網を破るチャンスはこれから何度も訪れるはずだ。
  • 平野、随所に好プレーを見せるも、丁寧に敗れる

  • 「後の先」のプレーで、平野を封じた丁寧

  • ゲーム序盤で先行される、苦しい展開が続いた

  • 丁寧、女王の意地を見せつけた

 史上最年少13歳でのベスト8入りを決めた張本。
 
 まずは倉嶋監督のコメント。
「優勝したわけじゃないのに、なんで抱きついてくるんだと思い、びっくりました(笑)。出来としてはよくない。相手は熟練しているので、わざと変なサービスを出したりとか、構えの位置を変えたり、揺さぶられたけど、技術的には相手よりまさっていたので、自分の卓球をすればいいと思っていました。
 智和は相手がサービスの構えに入った時に『サッ!』と言うので相手はビックリしてそれに抗議していた。前に国際大会でも言われたことがある。嫌らしい相手はいるから、それも経験のうちで、その中で勝ったのは収穫でした。
 今日は技術の精度が低かった。でも、負ける気は全然なかった。ああいう天才は競り合っても余裕があり、簡単なミスをしないから、安心して見ていられる。
 もし許シンが来ても、林高遠が来ても良い勝負はすると思う。許シンなあバックでフォアに揺さぶってからバックをつぶしていけばいいから、戦術的には組み立てやすい相手です」

 苦しい試合とはいえ、完全に張本の試合だった。内容的にも負ける相手ではなく、相手の心理的な揺さぶりを受けて、1ゲームを落とした張本。
「(4ゲーム目を落として)初めての経験で、ベンチに戻って、あの人、頭おかしいんじゃないかなと言っていたけど、その後も冷静にやれたのが良かった。水谷さんとやった時は自分の100%を出せたけど、今日は50%くらいだった。バックハンドは良かったけど、フォアハンドが良くなくて、もし相手が強かったら今日は負けていた。
 もし勝ったらベスト8だと思ったら試合前に緊張しました。水谷さんに勝った時に、ベスト8には入らなければいけないと思っていた。次の試合でもフォアでも攻めて、カウンターも使い、バックでも攻めて自分らしい試合をしたい。
 苦しい試合だったので、思わず勝った瞬間に監督に抱きついてしまいました」
●男子シングルス4回戦
張本智和 10、8、9、ー9、9 ピスチェイ(スロバキア)
樊振東(中国) 11、ー11、7、3、ー9、3 フィルス(ドイツ)

張本智和、スロバキアのピスチェイを破り、13歳にしてベスト8進出!
33歳と張本よりも20歳年上のピスチェイは、昨シーズンはオーストリアリーグの1部でプレーしていた選手。バックハンド主戦型で、フォアハンドは横殴りにカウンターを狙ってくる。
1、2ゲーム目にサービスが隠れているとフォルトを取られ、審判にしつこく抗議。さらに自身がサービスの構えに入った時、張本が「サッ!」と声を出すのをやめろと再三クレームをつけてきた。張本が構える前にサービスを出して審判に制止されるなど、暴れん坊ぶりを発揮。終盤はやや荒れたゲームになったのは残念だ。

しかし、張本は時にいら立つ場面もありながら、自分のペースを最後まで守った。チキータから回り込んでバックストレートに放つフォアドライブは素晴らしいコンビネーション。中陣から挑発してくるような、ピスチェイのカットもしっかり切ったツッツキで返球し、ピスチェイのミスを誘っていた。

5ゲーム目の10ー6から打ちミスが続いて10ー9になったが、11ー9で勝利してベンチに駆け寄り、倉嶋監督と抱擁した。

13歳での世界選手権ベスト8入り。しかし、まだ張本の潜在能力がすべて引き出されているようには見えない。明日の準々決勝、怪物はさらなる進化を見せてくれるかもしれない。
  • 張本、33歳のピスチェイよりも大人のプレー

  • 試合後は割とケロッとしていたピスチェイ

●混合ダブルス準決勝
吉村真晴/石川佳純 ー11、ー12、5、ー6、5、7、5 方博/ゾルヤ(中国/ドイツ)
陳建安/鄭怡静(チャイニーズタイペイ) 7、ー5、5、6、ー5、ー5、9 黄鎮廷/杜凱琹(香港)  

吉村/石川、2大会連続の混合複決勝進出!

苦しい苦しい戦いだった。1ゲーム目7ー2のリード、10ー9のゲームポイントから逆転され、2ゲーム目も8ー5、10ー8のリードから逆転されて2ゲームを先行される展開。ゲームカウント1ー3と先に王手をかけられた。方博/ゾルヤは即席の国際ペアだが、役割分担が明確で、ゾルヤは前陣に徹して台上のストップとブロック、そしてラリーになれば方博が中陣から、強烈なパワードライブを打ち込んできた。

勝負の分かれ目は6ゲーム目、吉村/石川が2ー3でリードされた場面。方博の攻撃を石川が受ける、日本ペアに取っては厳しい組み合わせだったが、吉村/石川は緩急を使いながら粘り強くポイントを重ね、11ー7で奪取。方博/ゾルヤは気落ちしたか、ゾルヤにイージーミスが多くなり、最終ゲームは5ー2、9ー5と吉村/石川がリードを広げ、10ー5のマッチポイントで石川のバックハンドのカウンターがコートを駆け抜けた!

決勝の対戦相手は、香港ペアをゲームオール11ー9で退けた陳建安/鄭怡静。今日午後の混合複決勝、チャンスは十分にある!
  • 吉村/石川が決勝へ、粘りと集中力でつかんだ勝利

  • 日本ペアを追い詰めた方博/ゾルヤ

★6月3日・大会第6日目のタイムテーブル

● 混合ダブルス準決勝
10:00(日本時間17:00)
吉村真晴/石川佳純 vs. 方博/P.ゾルヤ(中国/ドイツ)
陳建安/鄭怡静(チャイニーズタイペイ) vs. 黄鎮廷/杜凱栞(香港)
 
● 男子シングルス4回戦
11:15(日本時間18:15) 
張本智和 vs. ピスチェイ(スロバキア)
樊振東(中国) vs. フィルス(ドイツ)
 
● 女子シングルス準決勝
12:30(日本時間19:30) 
平野美宇 vs. 丁寧(中国)
朱雨玲(中国) vs. 劉詩ウェン(中国)
 
● 混合ダブルス決勝
15:00(日本時間22:00)
 
●男子ダブルス準決勝
17:30(日本時間6月4日0:30)
丹羽孝希/吉村真晴 vs. 樊振東/許昕(中国)
森薗政崇/大島祐哉 vs. 鄭栄植/李尚洙(韓国)
 
● 男子シングルス4回戦
19:15(日本時間6月4日2:15)
フレイタス(ポルトガル) vs. ボル(ドイツ)
馬龍(中国) vs. 荘智淵(チャイニーズタイペイ)
20:30(日本時間6月4日3;30)
李尚洙(韓国) vs. サムソノフ(ベラルーシ)
丁祥恩(韓国) vs. 黄鎮廷(香港)

昨日は日本勢のメダルラッシュとなった世界選手権個人戦。大会もいよいよ佳境、第6日目のタイムテーブルは上記のとおり。
今日は朝一番から混合ダブルス準決勝、現地時間の15時から混合ダブルス決勝。前回準優勝の吉村/石川が頂点に挑む。男子シングルス4回戦、張本が対戦するピスチェイは、鄭栄植(韓国)を破って勝ち上がってきた。バックのミート打ちが強烈なベテランだが、今の張本ならばそう怖くはない相手だ。

そして今日最大の注目カードは、現地時間12時30分、日本時間19時30分から行われる女子シングルス準決勝、平野美宇対丁寧。4月のアジア選手権では平野が奇跡的な逆転勝ちを収めたが、その時は5ゲームズマッチ、今回は7ゲームズマッチ。大会前の集合訓練で十分に平野対策を積んできた世界女王を、再び破ることができるか。

男子ダブルス準決勝では日本の2ペアが中国、韓国のエースダブルスに挑む。夜の試合は男子シングルス4回戦だが、ベスト16に残っている丹羽の4回戦は明日6月4日に行われる。

さあ、今日もすごい1日になりそうだ!
●男子シングルス3回戦
フレイタス(ポルトガル) 4、4、8、ー6、ー8、ー8、10 フロール(フランス)
林高遠(中国) ー11、9、7、ー8、8、4 アチャンタ(インド)
黄鎮廷(香港) ー10、ー9、5、8、7、ー12、3 M.カールソン(スウェーデン)
オフチャロフ(ドイツ) 2、11、ー9、ー7、ー9、2、8 スッチ(ルーマニア)
フィルス(ドイツ) 6、ー8、5、2、5 呉柏男(香港)
樊振東(中国) 12、4、4、ー11、7 シバエフ(ロシア)

大会第5日目の夜に進行した男子シングルス3回戦。ベスト16を決めるラウンドだ。第4シードの張継科(中国)が敗れた以外は、大きな波乱はなかったが、シード勢にとっても決して楽な戦いではなかった。

地元ドイツのオフチャロフは、スッチ兄妹の兄・フノールに大苦戦。中陣から強烈な両ハンドドライブを連打され、5ゲーム目を落としてゲームカウント2ー3となった時には、場内が一瞬静まりかえった。
第14シードのフレイタスは、快調に3ゲームを連取しながら、投げ上げサービスを使うフランスのフロール相手にゲームオールに持ち込まれ、最終ゲームも一進一退。10ー9のマッチポイントでサービスミスをして10ー10になったが、何とか逃げ切った。彼ほどのボールセンスがありながら、守勢に回るとわずかなオーバーミスが連続してしまう。卓球はつくづくメンタルのスポーツなのだ。

一方、地元ドイツのカットマン・フィルスは観客をグイグイあおり、大声援を味方につけて戦った。昨年の世界選手権団体戦では全く良いところがなかったが、正確なバックカットと強烈なフォアドライブ連打で、波乱の立役者になるだけの力がある。

中国勢では、林高遠が地元のボルシア・デュッセルドルフでプレーするアチャンタ(インド)に大苦戦。優勝候補の樊振東も、シバエフに1ゲーム目にスタートダッシュを許し、勝利目前の4ゲーム目を逆転されて落とすという詰めのあまさが出た。香港の黄鎮廷は、スウェーデンの右シェークフォア表ソフト、マティアス・カールソンに2ゲームを先取され、ゲームオールまで持ち込まれた。

明日もまだまだ、何が起こるかわからない。新たな歴史が生まれるかもしれない。
  • オフチャロフを追い詰め、大観衆をヒヤヒヤさせたスッチ兄妹の兄・フノール

  • 勝利したオフチャロフに笑顔なし。かなり痩せた印象

  • M.カールソンが黄鎮廷を追い詰めた

  • 安堵の表情、黄鎮廷

  • 観客を味方につけたフィルス

  • ゲームオールジュースで辛勝したフレイタス

  • 目前だったストレート勝ちを逃した樊振東

  • ラリー戦に強さを見せ、林高遠に迫ったアチャンタ

●男子シングルス3回戦
李尚洙(韓国) 9、6、ー11、6、10 張継科(中国)

今大会の第4シードで、13年パリ大会以来2大会ぶり3回目の優勝を狙った張継科。しかし、男子シングルス3回戦で李尚洙に敗れ、ベスト32で今大会を終えた。奇跡の復活優勝はならなかった。

バックハンドの打球点の早さでは中国選手に負けない李尚洙。張継科はかつて絶対的な強さを誇っていたバック対バックの高速ラリーで、なかなか得点することができない。試合展開を見ていてよくわかったが、バック対バックの強さを支えていたのは、勝負所での電光石火の回り込みなのだ。長く腰痛に悩まされ、トレーニングの量が落ちた張継科に、もう回り込むだけの足は残っていなかった。

5ゲーム目に10ー8のゲームポイントから10ー10に追いつかれ、次の1本でフォア前に浮いたボールに対する3球目攻撃がまさかのイージーミス。これで勝負あり。最後はバック対バックのラリーで、バックハンドがネットを弾いてオーバーし、李尚洙が大きく吠えた。

ミックスゾーンでは中国のメディアが遠巻きに見守る中、うなだれながら足早に去っていった張継科。彼が再び世界選手権個人戦の舞台に立つ可能性は……低いものだと言わざるを得ない。リオ五輪後に中国国内で再び火がついた人気。会場を埋めた女性ファンの黄色い声援は、張継科時代の最後の花火だったのか。今後の去就が注目される。
  • 李尚洙、勝利の咆哮。オフチャロフを破った前回大会に続く金星

  • 張継科、抜群の勝負強さを見せられないまま敗れた

  • 李尚洙をベンチで支えたのはこの人、金擇洙

  • 第4シードが男子シングルスの舞台を去った

●男子シングルス3回戦
丹羽孝希 ー8、ー9、6、7、8、1 グルーツ(デンマーク)

同じサウスポーのグルーツをゲームカウント0ー2からの逆転で破り、丹羽がベスト16に勝ち上がった。
「このまま負けるんじゃないかと思っていたけど、何とか勝つことができた。全然余裕はなくて、いっぱいいっぱいの試合でした。気持ちだけは切らさずに、必ず挽回できるんだという気持ちでプレーしました」。試合後にそう語った丹羽。抜群の予測能力を誇る男が、信じられないほどノータッチを多く取られた。ゲームカウント2ー2に追いついた5ゲーム目も、8ー8からグルーツが3球目攻撃をイージーミスしていなければ、どうなっていたか……。しかし、一転して最終ゲームは10ー0、11ー1で決着をつけた。

「明日からやっと、シングルスもダブルスも格上の選手との対戦になる。ぼくは格上の選手とやるのが大好きなので、もっと思い切ってプレーできると思うし、今日とは違うプレーを見せられればと思います」(丹羽)。

ともにベスト16に入った張本については、「明日も勝ってベスト8に入ると思うし、ぼくもベスト8に入りたい。彼からは非常に刺激をもらっています。ぼくもこれに満足せずにもっともっと勝っていきたい」とコメント。2020年東京五輪を争うライバルへと成長しつつある張本の実力を認めた。
  • 丹羽、苦しい試合でも勝利につなげられるのは成長の証

  • 独特の間合いで、コースが読みにくいグルーツ