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 グランドファイナルの大会最終日、午後の部と夜の部で2試合ずつの入れ替え制だが、午後の部も観客はよく入っている。会場の鄭州オリンピックセンター体育館の前には、入場待ちの行列ができた。

 少し外を歩いていると、何度も「ダフ屋」から「チケットある?」「チケット買うよ!」と声を掛けられた。ダフ屋の数はざっと見ても30人以上はいたでしょうか。チケットを値切ろうと、集団でダフ屋を取り囲む馬龍ファンの姿も。さすがにたくましい……。
 ITTF(国際卓球連盟)が主催するワールドツアーのグランドチャンピオンを決める、ITTFワールドツアー・グランドファイナル。もちろん、生粋の国際大会なのだが、今大会の雰囲気はまるで中国の国内大会。全中国運動会か何かのようだ。

 海外からわざわざ中国まで応援に来るのは、日本の一部の熱心なファンだけだし、会場の雰囲気が圧倒的に中国びいきになるのは致し方ない。しかし、中国選手と海外選手の対戦になると、ゲーム間にアナウンサーが中国語で中国選手の応援をあおり、会場は中国語の大声援に包まれる。さすがにこれは、両方の選手にエールを送ることができないものか。中国選手のサポーターが作った横断幕が四方を埋め尽くし、中国選手のサービスがフォルトを取られると悲鳴やブーイングが起きる。

 大会の人気No.1は、圧倒的に馬龍。アナウンサーがゲームの合間に会場のファンにインタビューすると、例外なく好きな選手は「馬龍」。男性ファンまで「我愛ニィ、馬龍!(愛してます、馬龍)」と言ったほど。また、会場でのクイズで「歴代のグランドファイナル最多優勝選手は?」という問題に対して、「馬龍!」と答えた女性ファンは優勝年度から開催地までスラスラ答えて、観客をたじろがせたほど。ホテルには馬龍をひと目見ようと、女性ファンが大挙して詰めかけている。

 ちなみにメディアシートにも、例によって、どこから潜り込んだのかという馬龍の女性ファンが一番良い席を取っている。メディアどころか、ホームページにスコアを入れるスタッフでさえ、馬龍が1点取るたびに大きな拍手を送るほど。記者席の他の中国メディアも、7割くらいはどうも仕事をしているように見えないのは、いつものことだが……。
●男子シングルス準決勝
樊振東(中国) 7、−11、3、3、−9、3 林高遠(中国)
馬龍(中国) 7、14、7、−4、−4、6 許シン(中国)

 中国が4強を独占した男子シングルス、ファイナリストは樊振東と馬龍!

 林高遠を4−2で下した樊振東は、バックドライブでフォアサイドを攻められた時の対応に進化を見せた。林高遠の高速バックドライブを、前陣ですばやく飛びついてクロスに打ち返し、余裕があればストレートへのカウンターも狙う。以前はフォアサイドを突かれた時の対応や、そこからの戻りが遅れて台から下げられるシーンもあったが、この前陣でのフォアの飛びつきは見事だった。

 そして大会第3日目のラストマッチは、馬龍対許シン。圧倒的な数のファンが会場に詰めかけた馬龍、10−7からジュースにもつれた2ゲーム目を16−14で競り勝って、一気に3ゲーム連取。許シンもお互い手の内を知り尽くした馬龍に対し、不用意に中陣に下がっては不利になると、前陣でのフォアドライブと裏面ドライブの連打で応戦する。昨日の張本戦では満身創痍の状態だった許シンだが、同士討ちのシングルスでも集中したプレーを見せ、2ゲームを取り返す。

 好ラリーの連続に、時計の針が23時を回った会場にはまだほとんどの観客が残り、大声援を送った。結果は4−2で馬龍の勝利。馬龍は最多記録を更新する6回目の優勝まであとひとつとした。
●女子シングルス準決勝
陳夢(中国) −10、8、5、11、11 伊藤美誠
王曼昱(中国) 9、3、8、3 王芸迪(中国)

女子シングルス準決勝、伊藤美誠は陳夢に対し、1ゲーム目1−9から大逆転で奪うも、1−4で敗れて3位で大会を終えた。

激戦の混合ダブルス決勝から、休憩時間は2時間ほど。「体力は以前よりもついてきているし、疲れはない」という伊藤だが、試合中に腰に痛みを感じたという。「骨が痛いか、筋肉が痛いかわからないんですけど、試合中に痛みを感じて、今は歩くだけでも痛い。3ゲーム目の5−10くらいのところで痛いと思った」(伊藤)。

1ゲーム目の1−9からの大逆転は、バック表の変化で相手のミスを誘い、11−10からロングサービスでのサービスエースで得点。強打・強打での逆転ではなく、最後まで冷静にプレーしてゲームをひっくり返すあたりは、さすがの「強心臓」だった。しかし、6−3とリードした2ゲーム目に6点連取で逆転され、一気に試合の流れを引き寄せられなかったのは惜しまれる。「2ゲーム目を取り切れなかったのが(試合を)離せなかったポイント。1ゲーム目を取った後の2ゲーム目は大事だなと思いました」と試合後に語った。

4ゲーム目以降もスコアは競り合ったが、レシーブからの多彩なテクニックを見せることができず、陳夢の得意とするバック対バックの展開からミスが出るシーンが多かった。これまで大きな故障がなかった伊藤だが、これだけプレーのレベルが上がれば、身体への負担も相当大きなものになる。東京五輪に向け、身体のケアも今まで以上に重要になる。

「この1年、自分の中ではすごく成長できた年です。実力が上がったなと感じる大会もあった。来年の1月に五輪代表が発表になりますけど、東京五輪の前に目の前の1試合1試合をやりきること。ワールドツアーも大事ですし、目の前の1試合を勝ちきって五輪につなげていきたい。どんな状態でも勝てるように、たとえばすごくヘトヘトの状態でも。そして実力を上げることが最優先です」(伊藤)

 女子シングルス準決勝のもうひと試合は、ワンサイドゲームで王曼昱が勝利。ともに国家チームでは、張継科の担当コーチとして有名だった肖戦コーチの指導をうけるふたり。ここまで対戦相手をバック対バックで押し込んできた王芸迪だが、バックの回転量とコース取りでは王曼昱が一枚上。さらに王曼昱は、王芸迪のお株を奪う思い切った回り込みドライブを連発し、あっという間に勝負を決めた。同年代の孫穎莎に差をつけられた感のある王曼昱だが、今大会のプレーは気迫に満ちあふれている。
●混合ダブルス決勝
許シン/劉詩ウェン(中国) −9、−6、3、8、9 水谷隼/伊藤美誠

 混合ダブルス決勝、2ゲームを先取した水谷/伊藤は、そこから3ゲームを連取されて無念の逆転負け。昨日、「今年、何度もミックスの決勝で負けているので、そのリベンジがしたい」と語っていた水谷だが、激しいシーソーゲームに屈した。

 1ゲーム目を7−9からの4点連取で奪った水谷/伊藤。水谷が思い切り良く回り込んでフォアドライブを決め、許シンの強打にも伊藤がよく反応する。逆に中国ペアはらしからぬイージーミスが多く、水谷/伊藤が5−1、9−3とリードを広げて11−6で連取した。

 しかし3ゲーム目、伊藤の巻き込みサービスを許シンがレシーブドライブして、水谷がバックブロックをオーバーミス。ここから8点連取を喫して、3−11であっさり落とす。昨日、張本との熱戦で疲れているはずの許シンだが、下がった時は大きく曲がるカーブドライブで日本ペアにプレッシャーをかけ、本来のリズムを取り戻してゲームカウント2−2のタイとなる。

 最終ゲームもスコアは離れず、5−7となったところで水谷/伊藤がタイムアウト。5−8から8−8と追いつくが、許シン/劉詩ウェンが8−10でチャンピオンシップポイントを奪う。水谷/伊藤は1点を返すが、またもあと1点及ばなかった。「最初の2ゲームは良い形で取れて、3・4ゲーム目は中国ペアのパフォーマンスも上がってきた。最終ゲームは負けましたが、お互いとても良いプレーができたので非常に自信になりました」と会見でコメントした水谷。リベンジの舞台は……東京五輪で訪れるのか?
●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) −9、8、−7、4、−8、9、8 梁靖崑(中国)
樊振東(中国) 10、5、7、−5、9 カルデラノ(中国)

 大会第3日目の12月14日は、男子シングルス準々決勝の残り2試合からスタート。初戦の馬龍対梁靖崑戦は全く互角の大熱戦。両選手ともよく似たスタイルで、安定したバックドライブでチャンスを作り、すかさずフォアでカウンター。両者とも1ゲーム目から声を出すほど気合いが入っていた。

 最後にフォアクロスへのフォアのカウンタードライブを決めた馬龍は大きく1回転してガッツポーズ。「世代交代はまだ許さない」と言わんばかりのガッツを見せた。

 その試合を、コートに一番近い関係者席から見守っていたのが中国卓球協会の劉国梁会長。その横にいる、帽子を目深にかぶった黒ずくめの男は……、かつての馬龍のライバル・張継科だった。そろそろ去就をハッキリしなさい。

 続く樊振東対カルデラノは、1ゲーム目からカルデラノのストレートへの豪打が全開。7−2、9−5とリードを奪い、勝利した前回大会の再現なるかと思われたが、ここから樊振東が6点連取で大逆転。カルデラノは「樊振東! 4比0!」とストレート勝ちを期待する観衆の前で、4ゲーム目を返したが、得意とする両ハンドのストレート攻撃が冴えた樊振東が勝利した。これで中国は男子シングルスの4強を独占。準決勝は今夜行われ、馬龍対許シン、樊振東対林高遠という対戦カードだ。
 今まで勝ったことのない、許シンからの白星を逃した張本智和。試合後に戻ってきたベンチに、何度も拳を打ちつけた。以下は試合後のミックスゾーンでのコメント。

 「笑うしかないですね。涙を通り越して笑うしかないです。試合中はずっと冷静に戦えていたので、今でも冷静なんですけど、何が足りなかったのかよくわからない。男子ワールドカップから調子が良くて、誰とやっても競れる自信はあった。2ゲーム目を競って取って、今日はいけるかもしれないと思いました。7ゲームを通じて自分が押していたところもあると思う。それでも最後勝ちきれなかったのは、自分も悪くなかったけど、相手も良かった。もっと良いプレーをしないといけない。自分が悪くなかったからといって甘えずに次に生かしたい。

 許シン選手からマッチポイントは取りましたけど、『あと1点が取れない』という感じはありました。6ゲーム目の10−9で少し急いでサービスを出してしまって、7ゲーム目も10−8で相手のサービスで、最後のゲームはレシーブで全然取れていなかった。中国選手とは十分競ってきて、十分戦ってきたのに、勝てなかった。追い詰めたというよりは、また勝てなかったという気持ちのほうが大きいです。自分が練習して、やってきている方向は悪くないと思えるので、最後の気持ちや決断が足りない。もっと自分の限界を超えないと勝てないのかなと思います。

 今年1年、なかなか大事なところで勝ちきれずに、最後の1試合までこういう結果になってしまったので、今までで一番悔しい1年だった。来年は二度と後悔しないよう、すぐ練習を始めたいと思います。この負けが東京五輪の勝ちにつながればいいと思いますけど、自分はオリンピックより目の前の試合に勝つことがうれしい。今はただただ悔しいです」(張本)
●男子シングルス準々決勝
林高遠(中国) 11、4、5、7 林昀儒(チャイニーズタイペイ)
許シン(中国) 6、−13、5、−3、−9、11、11 張本智和

 敗れた瞬間、コートに大の字になった張本。大きな壁だった許シンから6ゲーム目10−9、7ゲーム目10−8と計3回のマッチポイントを握りながら、またも勝利ならず……!

 許シンに対して1ゲーム目を落とした張本だが、昨日の最終戦で趙子豪に苦戦した許シンは、明らかにプレーに精細を欠いていた。疲労の色が隠せず、6ゲーム目終了後には左手首をテーピングする場面も。満身創痍の感があった許シンに対し、張本はフォアハンドで積極的に仕掛ける。フォアハンドの打ち合いでも許シンを圧倒して4ゲーム目を取り、5ゲーム目に10−6から10−9と挽回されながらも渾身のチキータで得点。ついに「許シン越え」の時が来たと思われた。

 しかし、6ゲーム目10−9での張本の最初のマッチポイント、7ゲーム目10−8での二度のマッチポイントは、いずれも実らず。裏面打法に頼らざるを得なくなっていた許シンは、決死の裏面連打で死地を脱した。7ゲーム目10−8から10−11と逆転されながらも、一度はしのいだ張本だが、最後は11−13。許シンに声援を送り続けた地元の大観衆が、一気に沸騰した。

 準々決勝のもうひと試合、林高遠と林昀儒の一戦は、1ゲーム目を逆転で奪った林高遠が気合い満点のプレーで林昀儒を押し切った。長短の読みにくい林昀儒のサービスに対し、林高遠は強引に打ちにいかず、低くツッツキでレシーブして林昀儒に打たせた。林高遠のバックの守備力は高く、フォアハンドの打ち合いでもパワーで上回った。天才レフティ・林昀儒にもまだまだ課題はあるようだ。
●女子シングルス準々決勝
伊藤美誠 7、7、11、5 佐藤瞳
陳夢(中国) 7、7、−9、−6、−9、5、1 劉詩ウェン(中国)
王芸迪(中国) 11、5、8、−9、8 孫穎莎(中国)
王曼昱(中国) 6、−7、7、5、4 陳幸同(中国)

 女子シングルス準々決勝、伊藤はカットの佐藤を攻略し、ストレート勝ちで初の4強進出を決めた!

 「今年伊藤さんと5回対戦して、5回やっても1ゲーム取るのがやっとの試合が多くて、実力差を感じました。カットでほとんど点数が取れない」と試合後の佐藤のコメント。フォアミドルを突いてチャンスボールをバッククロスにスマッシュ、逆にバッククロスに強打してからフォアミドルに回転量の多いボールを送ってミスを誘うなど、ミドル攻めを交えた完成度の高いカット打ちを見せた。正確なフットワークと打球点、スイートスポットを外さない連続強打など、プレーの精度がさらに増している印象だ。以下は試合後の伊藤のコメント。

「(佐藤戦は)1ゲーム目から自分らしく戦えましたし、3ゲーム目も挽回されてもしっかり自分のものにできて良かったなと思います。佐藤選手とは出る大会、出る大会で対戦していて、お互いに良くわかっている中で試合をして、4−0で勝つことができて自分でも自信になりました。

 1回戦の鄭怡静戦は去年のグランドファイナルのリベンジだと思って試合をしたんですけど、試合展開としては去年負けた試合によく似ていた。でも最後取り切れたのは大きいし、久しぶりに競って勝つことができて自信になりました。最後まで思い切っていけたかなと思います。

 グランドファイナルでベスト4に入るのは初めてなのですごくうれしいですし、一つひとつ目の前の試合を勝つことを目標にしている。明日も一つひとつ頑張りたいと思います」(伊藤)

 準々決勝のその他の試合では、陳夢が劉詩ウェンをゲームオールで破り、世界選手権決勝のリベンジ。そして有力な優勝候補だった孫穎莎が、王芸迪にノックアウトされた。平野を破った王芸迪の「対攻撃」の強さは本物だ。以前はフィジカルを生かしたフォア連打がトレードマークだったが、前陣で威力あるバックドライブを連打して、孫穎莎の多彩なコース取りとテクニックを封じた。明日の準決勝では伊藤と陳夢、王芸迪と王曼昱が対戦する。
●男子シングルス1回戦
馬龍(中国) −8、6、−10、2、7、3 鄭栄植(韓国)
張本智和 12、4、6、4 フランチスカ(ドイツ)

●混合ダブルス準決勝
許シン/劉詩ウェン(中国) 3、11、1 林昀儒/鄭怡静(チャイニーズタイペイ)
水谷隼/伊藤美誠 9、2、13 黃鎮庭/杜凱琹(香港)

●女子ダブルス準決勝
木原美悠/長崎美柚 −3、−4、3、12、12 孫穎莎/王曼昱(中国)
田志希/梁夏銀(韓国) −8、3、6、8 陳思羽/鄭先知(チャイニーズタイペイ)

●男子ダブルス準決勝
寥振ティン/林昀儒(チャイニーズタイペイ) −2、8、−7、5、10 ボル/フランチスカ(ドイツ)
樊振東/許シン(中国) 9、9、9 梁靖崑/林高遠(中国)


 男子シングルス1回戦のラスト2試合、そしてダブルス3種目の準決勝の結果は上記のとおり。張本智和の勝利に続いて、水谷/伊藤、そして木原/長崎も勝利!
特に世界ジュニア優勝ペアの木原/長崎は、今年の世界選手権優勝ペアの孫穎莎/王曼昱に「下克上」の勝利だ!

まず、張本智和。1ゲーム目から大きな声を出す張本に、会場が大きくどよめく。張本のことを知らない観客がほとんどなのだろう。「チョレイ!」を真似して笑いを誘う観客も。
 
 しかし、試合が進むにつれ、少しずつ「チャンベン(張本)、ジャーヨ(加油/頑張れ)!」の声援が増えていった。強烈なバックハンドを誇るフランチスカに、ミドルを交えたバック対バックの速攻で完全に試合をリード。下回転サービスでエースを奪う場面も多く、フランチスカはいら立ちをつのらせていた。ストレート勝ちの張本、今日夜の準々決勝でまたも許シンと相まみえる。

 そして殊勲の星を挙げたのは木原/長崎。1・2ゲーム目は正面からぶつかって圧倒されたが、「1・2ゲーム目は相手のプレーが良かったり、自分たちも良いプレーができなかったけど、3ゲーム目から少し変化を入れて、自分たちの良いプレーが出てきた。その変化が一番良かったと思います」と試合後の木原。木原のフォアストレート、長崎の広角ドライブで長いラリー戦になってもしっかり攻め切った。

 最終ゲームは8−10からスーパーラリーを連発して11−10。ここで孫穎莎も強烈なチキータでのレシーブエースで応戦して11−12と一度は逆転したが、最後は14−12で勝利して歓喜の抱擁。最終ゲーム終盤の木原/長崎のプレーは神がかっていた。「今自分たちが勝ったことに正直ビックリしています。自分たちの得意なプレーで勝って、納得のいく勝ち方ができた。世界ジュニアでは我慢してつかみ取った勝利でしたけど、自分たちも成長できていると思います」。涙を流した長崎は、試合後のミックスゾーンで語った。