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第7回世界ジュニア選手権大会

 河野正和男子監督のコメント

 全体としてはまあまあだったけど、欲を言えばもう一つメダルがほしかった。中国勢にシングルスのベスト4を独占されて、ダブルスでも2つ持っていかれたので非常に悔しい。去年よりは成績は良かったけど、(優勝を)全部取られたのが反省材料です。
 ここのところ、シニアで日本が中国に勝ったりしているので、「ジュニアでも勝てるよ」というところを実は見せたかった。団体戦での藤本しか中国に勝てなかったので、もう一つ二つ中国に勝ちたかった。

──ラテンアメリカやエジプトのような第三勢力が、少しずつ出てきていますが?

 私もそれは感じています。7年前の第1回大会の時には、第三勢力というのは全然相手にならなかったのが、アメリカに強い選手がいたり、ヨーロッパも盛り返してきたり、力は拮抗してきた。今大会は、大会のレベルとしてはさほど高いとは思わなかった。日本の卓球のスタイルは十分にやっていける。その証拠に水谷くん達が上で勝ってきているし、同じようなスタイルなら十分勝てる。あとは中国に勝てるように、その中国選手に慣れることも必要。中国の卓球に慣れるのが大事。中国で長く合宿したいという考えもあります。
 スピードが落ちてきたことは感じるし、その分ラリーは続くようになっているので、ラリーに強くなる必要がある。そして最も大事なのはサービスからの台上の勝負。台上で先手を取ることが大事。ドイツのフランジスカとかが台上もうまかったけど、ああいうプレーも見習いたい。
 丹羽はタイペイや韓国の選手など、今まで勝てなかった選手に勝てたし、中国のカデットの選手に惜しくも負けたことはよい経験になった。ブロックとかカウンターはうまいけど、それだけでは勝てない。もっともっと攻撃力をつけないと勝てないことを、本人がつかんでくれたと思う。実は松平健太のように「ひょっとしたら……」と思っていたけど、それ(優勝)はできなかった。健太にあって丹羽にはないもの、それは攻撃力。サービスからの3・5球目攻撃が足りないことが優勝できなかった一因ということを本人に伝えました。
 今までも日本には良い選手がいたんです。ところがシニアになると勝てないという時代が何年か続きました。卓球のスタイルが日本はフォアハンドにこだわりすぎて、世界に後れをとっていた。宮崎監督(NT)とも相談して、もっとバックハンドを強くしよう、バックもフォアも同じように振れる選手をもっと多く作ろうと。宮崎監督もホープスから力を入れて、それの芽が出てきた。卓球のスタイル的には世界には劣らない。だからこれからは、パワーをもっともっとつけて、日本的なフットワークを生かした特長を作るように考えていきたい。そうすれば世界のトップを取れる。

──パワーという点では、日本選手の体つき、筋肉の付き方などを見ると、アスリートとして食事をしっかりとっているのか。そういうベースの部分が劣っている気がしてなりません。

 おっしゃるとおりです。それは教育だと思います。医科学委員会を含めて、トレーニングや食事に関する教育をもっともっとして、筋力トレーニングを取り入れるようにしないといけない。
 身体が大きいと後から強くなる。身体の小さい子の方が先に強くなって、あとで身体の大きい子が追いつくという傾向がある。小さい子で敏捷性の良い子に目をつけると、そういう子だけが目立ってしまう。今は技術的に劣るけれども、体格のよい子をナショナルチーム(ジュニア)に推薦することも必要かもしれない。体力は本当に必要です。
 やはりチャンピオンを作りたいので、4、5年のスパンで見て、「この子ならチャンピオンになれそうだ」という子をピックアップして、その子を中心にして脇を固める。そういう強化をしたいし、そのやり方は今までもうまくいっている。日本はまだ下に良い選手が育っているし、チャンスはあると思います。

 団体戦では接戦の多かった方博。しかし個人戦では思い切った両ハンドプレーで、尻上がりに調子を上げ、丹羽に競り勝った林高遠を準決勝で圧倒。決勝でも閻安をよもやのストレートで下した。接近戦をしのいで、やや中距離からのフルスイングの両ハンドドライブはシニア級の威力を持つ方博。馬龍の次の世代として名乗りを上げるだろうか。

photo 左から優勝した方博、2位の閻安、表彰式での方博
この大会で初めてカットマンが優勝した。武楊は長い手足を十分に生かし、コートを支配した。流れるような動きでミスのないカット。シニアでも十分通用するカット技術。今後攻撃力を磨けば中国代表としても活躍できる選手だろう。

photo 左から女子シングルス優勝した武楊と2位の顧玉ティン
[女子ダブルス]
■ 決勝
陳夢/顧玉ティン(中国) 6、5、10、9  金敏姫/梁夏銀(韓国) 

[男子ダブルス]
■ 決勝
方博/宋鴻遠(中国) -7、2、-14、10、8、4 閻安/林高遠(中国)

[女子シングルス]
■決勝
武楊(中国) 6、-12、-6、5、9、5 顧玉ティン(中国) 

[男子シングルス]
■ 決勝
方博(中国)  9、9、7、13 閻安(中国)

photo 左から混合ダブルス優勝の方博、顧玉ティンペア、女子ダブルス優勝の陳夢/顧玉ティン(中国)、男子ダブルス優勝の方博/宋鴻遠

[女子シングルス]
■準決勝
武楊(中国) 6、7、-5、-8、8、4  陳夢(中国)  
顧玉ティン(中国) 8、-12、9、4、4  曹麗思(中国)  

[男子シングルス]
■ 準決勝
方博(中国) 6、6、5、9 林高遠(中国)  
閻安(中国) 7、1、9、-4、-7、4 宋鴻遠(中国)

[混合ダブルス]
■ 決勝
方博/顧玉ティン(中国) -2、4、4、-5、12、7 コシバ/マダラス(ハンガリー) 

女子は団体戦で2位と健闘したが、個人戦でのメダルはなかった。大岡巌女子監督の総括コメント

 団体戦の出足は良かったが、シングルスに入ってから自分たちのプレーができなかった。谷岡、森薗に対して相手が対策を立てていて、それに対応し切れなかった。(選手は)進歩はしているんでしょうけど、もっと新しい技を身につけるとか、もっとパワーをつけるとか、そういう変化が今回の日本選手にはなかった。
 日本選手も技術はあるんだろうけど、戦い方というか、戦術の面ではまずかったなと思う。森薗も相手のいる場所を感じてコースを突ければ良かったけど、いくら全力でいっても相手にコースを読まれていると、カウンターをされたりする。谷岡でも、切ったカットを相手は打ってこなくなっているので、そこでナックルカットとか、新しい技術をここに持ってくれば良かったけど、そこまでの練習ができていなかったと思います。

 団体戦ではヨーロッパのトップであるポーランド、ルーマニアはたいしたことないなと思っていたけど、シングルスになったら自分の特徴を生かしたプレーをしているので、意外とヨーロッパもやるのかなと思った。タイペイも鄭怡静という柱がいるし、香港も強くなっているし、韓国もみんながそこそこやるから、日本も今までのままでは取り残される。
 シニアもそうだけど、日本にはエースがいて、2番手、3番手でもインターハイでトップの方の選手を連れてくるとそこそこ戦えたけど、今は2番手、3番手で戦うのはレベル的に難しくなってきた。インターハイでベスト8、(全日本)ジュニアのベスト8くらいの選手であれば、世界ジュニアでベスト8に必ず入るくらいだったが、今はそうではない。日本は相対的に力が落ちているんじゃないかと、去年くらいから感じている。日本の全中のレベルも落ちているんじゃないか。ホープス、カデットくらいからの強化を考えていかないと、世界ジュニアで勝ち上がるのは難しいというレベルになってきている。

 もちろん出ている選手は頑張った。岡崎、松澤も今までは世界を目指していなかったけど、今回出たわけだから、これから経験を生かして世界を目指してやってくれればいい。ただ森薗と谷岡はちょっと物足りない成績であり、それは技術面でも言えることだ。
 協会のエリートアカデミーはジュニアサーキットなどに優先的に出すのはよいと思うけど、こういう選手権にはその時に強い子を出すべきだろうと思う。アカデミーの子はジュニアサーキットには出ているわけで、そこでしっかり力をつけてくれればチャンスはある。ジュニアサーキットでも上の方にいく子でないとこういう大会では勝てない。
 連係をして(強化を)やってきても、その連係の方法を変えなきゃいけないこともある。新たにエリートアカデミーができたんだから、あの子たちと他の中学生、高校生が交流する場所を増やしていかないと、エリートアカデミーの子たちも競争意識が出ない。今はアカデミーの子は他との交流がない。そういうことをふまえて、みんなで一緒になって強化していく方法もあると思います。

 忙しいと思うけど、協会の人たちもNTの監督もこの大会を見てほしい。私と河野さんと他のスタッフだけ見て報告しても、実感がないと思うし、世界のジュニアがどういう卓球になっていて、どれだけ強いのかもわからない。この子たちがナショナルチームに行った時に驚かないように、ナショナルチームの人たちにも見てほしいと思う」
 男子ダブルスでメダルを期待された上田/丹羽のダブルスは準決勝で中国の閻安/林高遠に1-4で敗れ、日本は最終日を待たずに姿を消した。日本は今大会、混合ダブルスはエントリーせずにダブルスとシングルスに集中したが、個人戦でのメダルは男子ダブルスの銅メダルのみ。団体戦での2個のメダルとあわせても、史上最低の成績となった。

[男子ダブルス]
■ 準決勝
方博/宋鴻遠(中国)-9、7、-5、6、-8、6、7 金ミン鉐/鄭栄植(韓国) 
閻安/林高遠(中国)11、7、-11、4、8 上田/丹羽(日本)

[女子ダブルス]
■ 準決勝
金敏姫/梁夏銀(韓国) 6、-9、8、8、7 曹麗思/武楊(中国) 
陳夢/顧玉ティン(中国)2、-9、4、5、4 李皓晴/呉穎嵐(香港) 

photo 左から準決勝で中国ペアに敗れた上田と丹羽のダブルス、ベンチでの日本ペア
 リードを奪いながら最後は林高遠(中国)に押し切られた丹羽孝希選手のコメント。
「チャンスはあったけど、バック対バックで勝てなかった。左対左ではバック対バックで勝てないときつい。フォアで自分が打つとか、相手のフォアに回す展開になった。ぼくのサービスもあまり効かなかったし、ぼくも相手のサービスをあまり嫌じゃなかったので結構ラリーになった。そこのラリーで相手のほうがパワーがあった。(3-2とゲームをリードした)6セット目が勝負でした。7-7までいって自分のペースだったけど、そこで凡ミスをしてしまった。
 自分としてはメダルを取りたかったのでちょっと悔しいです」

[男子シングルス]
■ 準々決勝
方博(中国) 13、-9、2、8、8 金ミン鉐(韓国)
林高遠(中国) -14、3、9,-7、-11、7、7 丹羽(日本)
宋鴻遠(中国) 7、5、9、8 陳建安(チャイニーズタイペイ)
閻安(中国) 5、-9、6、8、6  上田(日本)

 上田は優勝候補の中国の閻安に1-4で敗れた。試合後の上田仁選手のコメント。
「競った場面でサービスが台から出てしまって、思うようにいかなくて、そこでどうしても点数が取れなかった。内容的にも、やっていることは間違っていなかった。サービス、レシーブのちょっとした判断ミスが試合の最後のほうで出てしまった。小さいようでその差が大きかった。閻安とは2年前にフルセットで負けているけど、その時よりも彼は経験を積んでいる。やった感じはそんなにやりづらい相手ではなかった。サービスもメチャクチャうまいわけではない。嫌ではなかったけど、ぼくのミスが多かったし、相手は少なかった。
 結構きれいに止められるんで、アップサービスから入りたかったけど、少しでも台から出ると中国選手には攻められる。途中で台から出ない下回転気味のサービスに切り替えたけど、サービスがしっかりできていれば違った展開になった。
 今年がこの大会は最後だし、去年もタイペイの選手(陳建安)が優勝して、大会前に河野監督からも誰が優勝するかわからないと言われていた。自分の調子も悪くなかったので、チャンスはあると思っていたし、優勝を意識してドイツで練習していた。ラリー以前にサービスや自分のミスをなくさないと戦えないなと感じました」

[女子シングルス]
■ 準々決勝
武楊(中国) 6、4、6、2  スッチ(ルーマニア)
陳夢(中国) 3、7、2、10 シチェルコフスカ(ポーランド)
顧玉ティン(中国) 9、6、-8、3、-10、9 鄭怡静(チャイニーズタイペイ) 
曹麗思(中国) 5、-9、8、9、13 金敏姫(韓国)