スマホ版に
戻る

速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)

What’s my name?

2011/05/15

開幕3週間前に発表されたロッテルダム大会のマスコット。大会の公式サイトで名前を募集していたが、結局決まったのかどうか、よくわからない。何ともラフなデザイン。サムソノフ対陳杞戦が終わった後、熱戦の余韻でざわつくアリーナに迷い出てきて踊っていた。どこかの倉庫の片隅に積まれ、窓から差し込む月明かりにこの笑顔が照らされる様子が、今からありあり目に浮かびます(失礼)。

大会最終日にマスコットの記事を載せるというのも、いかがなものか…(スミマセン)。
★5月15日のタイムテーブル

●男子シングルス準決勝
10:30 王皓(中国) vs 馬龍(中国)
11:15 ボル(ドイツ) vs 張継科(中国)

●女子ダブルス決勝
14:00 郭躍/李暁霞(中国) vs 丁寧/郭炎(中国)

●男子シングルス決勝
15:00

いよいよ、残す試合もあと4試合。
男子シングルス準決勝は、やはりボルの活躍に期待したい。ドイツ男子初の世界チャンピオンまであとふたつだ。

昨日のメインアリーナの盛り上がりはすごかった。タイムアウト時やゲーム間には観客席にウェーブが起こり、ボルが勝利した瞬間は大歓声に包まれた。音楽の使い方もうまく、「これぞヨーロッパの大会」という感じがした。

メーカーのブースが集まっているフロアは何百人という人があふれ、熱気ムンムン。ティバーの大型ブースが入場制限を設けていたのには驚いた。誰でも卓球が楽しめるフロアに行けば、無心でラケットを振り回す女の子がいる。フライパンでカンカン打ち合っているおじさんがいる。フロアの片隅にはたこ焼きにソックリなオランダの焼き菓子ポッフェルチェの屋台が出ていて、甘い香りにつられてたくさんの人が並んでいた。

…速報担当はその中を歩きながら、無性に嬉しかったのです。ラケットがあれば、世界のどこへ行っても寂しくありませんネ。さて、最終日の速報も頑張ります。準決勝第1試合の王皓vs馬龍は、日本時間の17時30分スタート。このふたりが対戦した09年全中国運動会決勝は、速報担当が見た試合の中で最もハイレベルなものでした。今回はどうなるか?
●男子ダブルス決勝
馬龍/許シン(中国) 3、8、-4、4、7 馬琳/陳杞(中国)

前回の横浜大会の決勝で敗れた馬龍/許シンがタイトルを獲得。出足から集中力の高いプレーを見せ、ともにシングルス準々決勝で敗れた馬琳と陳杞のペアを圧倒した。ラリー戦になると、若い馬龍/許シンが強烈なフォアドライブを連発し、得点を重ねた。ダブルスのスペシャリスト・陳杞は全盛期に比べるとややプレーに迫力がなくなったか。

シングルス準決勝で、王皓とのビッグマッチが控える馬龍は今大会好調。フォアのパワードライブはもちろんだが、台上のストップやブロックにも凡ミスがなく、プレーにムラがなくなった。「今日は精神的にはタフな試合だったが、ゲーム数は多くなかったので身体的な疲れはそれほどない。明日の試合はさらに重要になる」と試合後に語った。王皓がロンドン五輪への推薦出場を確実にしている中国男子。2番目の代表権を賭けて、馬龍は準決勝に挑む。
●女子シングルス決勝
丁寧(中国) 10、11、9、-8、-8、7 李暁霞(中国)

ベスト8にエントリーした7名全員が残った中国女子。タイトルをつかんだのは、モスクワ大会決勝トップでの敗戦を糧に、この1年で急成長した丁寧だった。

今大会はしゃがみ込みサービスをほとんど使わず、フォアサービスから両ハンドのラリー戦で勝負した丁寧。これまでは大器の片鱗を感じさせながらも、ややトリッキーな印象のある選手だったが、立ち合いで余計な変化を使わず、がっちり受け止めて勝負する「横綱相撲」を見せた。バックハンドは対ツッツキの回転量の多いドライブ、前陣での堅固なブロック、台からやや距離を取って緩急をつけるドライブと多彩で安定感がある。バック対バックで主導権を握り、ラリー戦を自分のペースに持ち込んだ。

恐るべきは、この新女王がまだ成長過程にあるということ。第2ゲーム6-10から逆転してゲームカウント3-0とリードしながら、第5ゲーム8-4と優勝を目前にしてプレーが硬くなり、李暁霞に7点連取を許した。第6ゲームも出足でドライブのイージーミスが続き、1-6とリードされている。ここで逆に李暁霞もプレーが守りに入り、丁寧は4-7からの7点連取で逆転することができたが、相手に見せてはいけないスキを見せた。メンタルの部分には不安要素がまだある。

それでも、最後に強気な自分を取り戻し、一気に優勝を決めたことは大きな自信になるだろう。「モスクワでのつらい経験があって、そこから少しずつ立ち直り、強くなっていくことが必要だった。ものすごくハイレベルな戦いだったと思うし、激しい試合の流れについていくこともできた。このタイトルを、とても長い間待っていた。子どもの頃から世界選手権と五輪のチャンピオンになることが夢だったけど、今はその夢が叶った。まず両親に電話をしたい」と試合後の会見で語った。

敗れた李暁霞は、今大会抜群の安定感を見せていたが、最後にメンタルが崩れた。07年世界選手権決勝で、ゲームカウント3-1のリードから逃がしたタイトルは、またもその手をすり抜けた。しかし、決勝まで勝ち上がったことで、現世界ランキング1位の李暁霞のロンドン五輪推薦出場(シングルス)は確実だ。
 ボルが欧州の帝王の意地を見せた。世界ランキング12位の陳杞と同2位ボルの対決。結果はランキングどおりにボルが4-1で勝った。陳杞はボルの強烈な回転がかかったループドライブに対し、カウンターのミスを連発。ラリー戦でもボルが互角以上に戦い、完勝した。今大会、男子シングルスで初めて中国に勝ったのはやはりボルだった。

●男子シングルス準々決勝
ボル(ドイツ) 5、-5、6、7、3 陳杞(中国)

ボルのコメント「今日は集中力も高く、速いプレーができた。特にサービスからの攻めが良かったし、レシーブも完璧だったね。プレッシャーもあるよ、でも明日はまず次の試合に集中するよ。ただすべてが可能だし、金メダルも狙いたい。最近は2回簡単に彼(張継科)に負けているけど、世界選手権の準決勝は特別なものだと思う。少ないチャンスであっても迷わずにプレーしたい」
●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) 5、9、4、-4、7 馬琳(中国)
張継科(中国) 9、-7、-8、9、6、7 王励勤(中国)

シングルス代表は8大会目となるふたりのベテラン、馬琳と王励勤はベスト8で敗れた。
馬琳は得意の台上フリック強打も随所に見せたが、ラリー戦になると堅いブロックからカウンタードライブを連発する馬龍のペース。最近、調子の波が激しかった馬龍だが、今大会はいい。電光石火のロングサービスで馬琳のフォアサイドを抜くという珍しいシーンもあった。

王励勤は安定した前陣バックハンドを軸に戦い、チャンスには回り込んでカウンタードライブというパターンで得点。かつての爆発力はないが、バックストレートへの一撃には往年の貫禄があった。しかし、積極的な回り込み攻撃と中陣からのバックドライブの威力で、張継科が次第に優勢になる。バック対バックの攻撃力では張継科が上。王励勤に回り込んで狙うだけの足はもうなかった。全盛期の王励勤と、今の伸び盛りの張継科の試合が観たかったが、時の流れには逆らえない。馬琳と王励勤、世界選手権でそのプレーが見られるのは、今大会が最後だったかもしれない。

張継科は勝利した瞬間、おもむろにシューズのひもをほどき、シューズに感謝のキス。これにはビックリだ。「相棒、よく動いてくれたな」というところか。
●男子シングルス準々決勝
王皓(中国) 5、7、5、6 水谷

水谷は王皓にストレートで敗れ、準々決勝敗退となった。
最初から最後まで、サービス・レシーブが崩せなかった。王皓はレシーブで裏面フリックを多用。強い横回転が入っているだけでなく、上回転と下回転の変化があり、水谷がバックハンドをネットにかけるシーンが何回も見られた。この裏面フリックに小さく止めるストップを混ぜられ、3球目攻撃をほとんどフルスイングできず。鉄壁を誇ったバックブロックにもミスが出た。4ゲームとも出足で離され、常に我慢を強いられる試合展開だった。

地元の観客からも「Nippon! Nippon!」のコールが起こった一戦。調子を落としながらもベスト8まで勝ち上がった水谷だが、来年に迫ったロンドン五輪を前に、課題を突きつけられた。

★試合後の水谷隼のコメント
「かなり対策は立ててきたけど、それ以上に相手のボールの質が厳しかった。王皓の回転量がすごく多い。あれだけ回転の多いボールを打たれると、カウンターが難しい。
 4ゲームとも序盤でリードできなかったので相手が思いきって攻めてきた。あのチキータをバックにされたボールが嫌でした。今の環境ではああいうボールを返すのは厳しい。他の日本選手にやらせても同じボールは受けられないので、直に中国に行って、ああいうボールを受けるしかない。

 スコアを見ても完敗なので、戦術を変えても1ゲームは取っても勝つのは難しいので、もっと実力を上げなければいけない。やっぱりプレッシャーもあったし、緊張感の中で絶好調でプレーするのは難しい。でもそういう中で準々決勝まで来たことには意味がある。またいろいろな課題も見つかったので次につなげていきたい。
 日本に帰って、10日くらいしたら中国の超級リーグで馬龍と同じチーム(寧波海天塑機)に行きます。今回は精神的にも自分のプレーができなかった。自信がなければ試合では勝てない」
今日のアホイ・ロッテルダムは週末ということもあり、これまでで一番お客さんが入っている。メーカーのブースも大盛況で、入場制限をかけているブースがあるほど。これだけたくさんの卓球ファンにヨーロッパで会えるなんて、本当にうれしい。オランダの観客はとても盛り上げ上手だ。

さあ、いよいよ水谷vs王皓戦がはじまる!
●男子ダブルス準決勝
陳杞/馬琳 -8、8、4、6、-9、8 王皓/張継科(中国)

●女子ダブルス準決勝
李暁霞/郭躍(中国) 10、4、6、11 金キョン娥/朴美英(韓国)
丁寧/郭炎(中国) 3、3、11、10 姜華君/帖雅娜(香港)

男女ダブルスとも決勝は中国対決だ。
女子ダブルス準決勝の2試合は、スコアが競ったゲームはあっても、中国ペアの一方的な展開。李暁霞/郭躍は李暁霞が重いドライブとストップでチャンスを作り、郭躍の強打につなげた。郭躍にミスが多かったものの、両者のコンビネーションは完璧だ。
丁寧/郭炎も全く危なげのない戦いぶり。香港ペアは打っても打っても抜けず、ラリー戦に持ち込まれて中国ペアに得点を許した。

男子ダブルス準決勝の第2試合は、陳杞/馬琳が右利きと左利きのコンビネーションの良さ、陳杞の台上の巧みなレシーブで得点。中国ペアの対戦はあまり盛り上がらないが、時折続く激しいラリーが歓声を浴びた。
●男子ダブルス準決勝
馬龍/許シン(中国) 2、4、-6、10、-11、7 鄭栄植/金ミン鉐(韓国)

序盤は緊張からか、金ミン鉐にミスが連続し、一方的な展開になるかと思われたが、中盤から韓国ペアが盛り返した。水谷/岸川戦でも威力を発揮した、韓国ペアのチキータからの展開が中国ペアにも通用した。
中陣での打ち合いでは中国ペアに軍配が上がるが、韓国ペアは片方の選手が前陣につき、バックの前陣カウンターでコースを突く。鄭栄植の小振りの前陣バックドライブは、日本選手にも参考になりそうだ。かつてのペンホルダーがシェークを握ったようなスタイルではなく、新しいスタイルの韓国式シェークドライブ型が出現した。まだふたりとも線が細いが、これでパワーがついてフォアハンドに威力が増してくれば、中国や日本にとっても手強い相手になる。

敗れたとはいえ、韓国ペアの健闘が光る内容だった。下写真左のチキータをしている選手が鄭栄植、パートナーが金ミン鉐。来年のロンドン五輪が終わると、韓国男子の主力になる選手たちだ。