スマホ版に
戻る

速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

全日本選手権大会

 本誌連載「卓球アナウンサー福澤朗のジャストミート・ピンポン!!」でおなじみの福澤朗アナウンサー。全日本には大会初日から足を運び、選手たちの一挙手一投足を見逃すまいと熱い視線を送っている。大会第3日目の今日、卓球をこよなく愛する男の、心の琴線に触れたものは何だったのか。題して「福澤朗の眼」。

 「今日最も印象に残ったのは、伊藤美誠選手がジュニア準々決勝で敗れた試合での、『涙のスピード』でした。敗戦が決まった直後、伊藤選手の眼にはたちまち涙があふれた。凄まじいとさえ思えるその『涙のスピード』は、伊藤選手が負けず嫌いであることの何よりの証明なんです。今の若い人たちの中で、負けたくないという気持ちをあれほど強く持っている人がいるでしょうか。
 彼女の涙を見た瞬間、絶対にこの子は伸びる、強くなるとぼくは確信しました。まさに天性のアスリートですよ」
(福澤)
 全日本の初戦となるシングルス4回戦で、三宅(就実高)に1ゲームを先取されながら、ラリー戦で相手を上回り、逆転勝ちした福原。三宅の強打を何本でもブロックし、反撃を決めるそのプレーからは、ファイナル4の後に行ったという中国合宿での充実した練習が伺える。
 試合後の会見の内容は以下のとおり。ピリピリした緊張感はないが、その眼差しには力がこもっていた。

 「三宅さんとは去年のトップ12でやっていて、初戦なので思ったより緊張したけど、まあまあ良いプレーができたと思う。相手はもう何試合か戦ってきているから、1ゲーム目を落としたのは予想どおりです。
 全日本でのプレッシャーはだんだん小さくなってますね。毎年『今年こそは』で負けているから、もう皆さんもあまり期待してないんじゃないかと(笑)。今年の全日本は五輪前のテストゲームだと思って、伸び伸びやりたいです」。
●女子シングルス4回戦
石川(全農) 7、2、10、6 小室(新星クラブ)
加藤(TKOクラブ) 8、-3、2、10、8 伊積(東京富士大)
藤井優(日本生命) 10、6、-3、6、-10、-8、6 山本(青森山田高)
岡本(サンリツ) 9、9、-12、7、-2、7 小西(OVER LIGHT)
福原(ANA) -9、5、5、4、11 三宅(就実高)
大庭(淑徳大) 5、5、8、7 谷岡(エリートアカデミー/帝京)
平野(ミキハウス) 6、5、-8、4、7 重本(野田学園クラブ)
丹羽(青森山田高) -9、5、-8、2、7、7 阿部(サンリツ)
藤井(日本生命) 4、4、4、4 森(えひめTTC)

スーパーシードの32名の選手のうち、小西、谷岡、阿部らが初戦で姿を消した。世界団体選手権ドルトムント大会代表の石川、福原、平野、藤井は順当に明日の5回戦(ランク決定戦)へと勝ち上がっている。
下写真はこのラウンドで敗退した小西(左)と阿部。小西はスペインリーグで好成績を残し、阿部は12月の世界代表選考会で4位と健闘していたが、スーパーシードにはシングルス初戦となる4回戦の難しさか。最後までペースをつかめないまま敗れた。
 女子シングルス4回戦、加藤は伊積(東京富士大)をストレートで破り、福原愛がもつ5回戦進出最年少記録に並んだ。加藤は2010、2011年の全日本選手権ホープスの部を連覇するなど、素晴らしい活躍をしている。

 今大会はジュニアは2回戦で成本(四天王寺高)に敗れてしまったが、一般の部では見事新記録を樹立。明日は5回戦で石川佳純(全農)と対戦する。相手は優勝候補の筆頭だが、加藤らしい元気なプレーを見せてほしい。平野美宇、伊藤美誠にこの加藤美優を加えた同世代のライバル3人は、お互いを刺激しあうように誰かが新記録を出していく。日本女子の黄金世代になれるだろうか?

下写真:加藤(左)と伊積(右)
●混合ダブルス準々決勝
吉村・石川(野田学園高・全農) 4、-11、7、7 久住・鈴木(専修大・札幌大谷高)
松平・若宮(青森大・日本生命) 4、7、6 尾留川・土田(明徳義塾高)
大矢・森薗(東京アート・日立化成) 7、9、9 藤本・平野(近畿大・ミキハウス)
上田・鈴木(青森大・青森山田高) 6、-8、-7、9、7 吉田・小西(OVERLIGHT)

 混合ダブルスは準々決勝が終了し、ベスト4が決定した。昨年ベスト8の吉田・小西ペアは、上田・鈴木ペアにリードしていたものの、勝ち切れず。藤本・平野ペアは、最後まで大矢・森薗ペアの気迫に押される展開となってしまい、準決勝進出はならなかった。また吉村・石川ペアに敗れた久住・鈴木ペアは「相手ペアについていくのがやっとでした」とコメントした。混合ダブルスは明日準決勝、決勝をむかえる。

※写真:左から吉村・石川、久住・鈴木、松平・若宮
●男子ジュニア準々決勝
丹羽(青森山田高) 4、10、6 東(エリートアカデミー/帝京)
村松(エリートアカデミー) 8、7、4 森薗(青森山田高)
町(青森山田高) 5、10、6 酒井(エリートアカデミー)
吉田(青森山田高) 9、-9、4、-9、5 田添(希望が丘高)

 男子ジュニア準々決勝。丹羽は東とのサウスポー対決にストレート勝ち。フォアドライブの威力が増してきている東に対し、巧みにコースを突いて後陣に下げ、軽打をうまく使ってミスを誘った。村松はぶつ切りカットに威力あるパワードライブとやりたい放題のプレーで森薗を完封。町は酒井との「アスカ」対決を威力ある両ハンドドライブで制した。

●女子ジュニア準々決勝
谷岡(エリートアカデミー/帝京) 7、3、-4、7 伊藤(豊田町スポ少) 
松平(四天王寺高) 6、8、-6、7 高橋(岩国商業高) 
平野(ミキハウスJSC山梨) 9、8、7 成本(四天王寺高)
前田(ミキハウスJSC) 7、3、4 佐藤(尾札部中) 

インハイチャンピオンの鈴木を破るなど、快進撃を続けてきた伊藤も、谷岡のカットには通じず。それでもジュニアでのベスト8入りは大健闘。平野美宇は高校生の成本に完勝し、明日の準決勝で前田美優と対戦する。

※写真左から吉田 vs. 田添(左)、敗れた伊藤、試合後東と握手する丹羽
●女子シングルス2回戦
伊藤(豊田町卓球スポーツ少年団) 7、8、5 桑村(桜丘高)
平野(ミキハウスJSC山梨) 7、-7、5、-12、5 森(青森山田中)

もう「小学生選手」とか、「天才少女」のような冠(かんむり)は外してもいいかもしれない。彼女たちのプレーは完全に小学生の枠を超えている。競った場面でも相手の体勢を見切り、ループドライブでミスを誘う冷静さ。そうかと思えば、両ハンドの打ち合いから思い切ったフォア強打を決める積極性。卓球年齢では間違いなく一般クラスだ。

伊藤は昨年度大会ではまだ強打に頼り、自分からプレーを崩してしまう場面も見られたが、今大会は精神面が大きく成長し、プレーにムラがなくなった。
平野は台上プレーもうまく、深いツッツキに対して安定してバックドライブが打てる穴のないプレースタイル。子どもらしさがのぞく瞬間といえば、相手にボールを渡す時、下からではなく上からボールを放るところぐらいか。現在ジュニア準々決勝でも対戦相手をリードしている。実に末恐ろしいふたりだ。
 平成23年度全国国公立大学選手権・男子シングルスチャンピオンの荒木亮祐(広島大)が、男子シングルス1回戦を突破した。エリートアカデミーの硴塚に対し、バックハンドドライブを軸に安定したラリー展開を見せた。
 また兄の基亮も男子シングルス1回戦に出場し、上野(帝京安積高)にゲームカウント3ー1で勝利した。兄弟揃って2回戦突破を目指す。

※写真は上野に勝利した兄の基亮
 ジュニア男子シングルスはベスト8が決定した。記録は以下の通り

●ジュニア男子シングルス5回戦
丹羽(青森山田高) 5、-11、6、5 後藤(尚志学園高)
東(エリートアカデミー/帝京) -10、-10、5、7、9 及川(青森山田中)
森薗(青森山田高) -5、3、-6、6、5 藤村(愛工大名電高)
村松(エリートアカデミー) -9、5、10、-8、4 有延(野田学園高)
町(青森山田高) -2、7、4、4 堀(明徳義塾高)
酒井(エリートアカデミー) 8、7、7 阿部(湘南工大附属高)
田添(希望が丘高) -8、-10、11、4、9 大塚(エリートアカデミー/帝京)
吉田(青森山田高) 8、-8、8、6 吉村(野田学園中)

下写真:ベスト8入りの丹羽(左)と村松に敗れた有延
●女子ダブルス2回戦
谷岡/佐藤(エリートアカデミー/帝京) 9、-5、5、-8、9 齋藤/鈴木(札幌Unity/札幌大谷高)

 ゲームオール9点という大接戦だった。エリートアカデミーの谷岡/佐藤を相手に、今大会の女子最年長・齋藤(旧姓:新保)富美子のペアが挑み、あと一歩まで追い詰めた。

 83年世界選手権・女子団体2位のメンバーである齋藤。今大会はシングルスでは指導する札幌大谷高の教え子に敗れ、出場はかなわなかったが、ダブルスでは同じく教え子のカット主戦型・鈴木とのペアで1回戦を突破。谷岡/佐藤ペアに対しても、振れば入ると思えるほど安定したカットで大いに苦しめた。「攻撃を混ぜて戦うべきか、このまま守りきって戦うべきか、最後で迷ってしまった。普段の練習では私がもっと攻めていくパターンなんですが。ダブルスの練習をやり込むことはできなかったけど、私としては頑張って、やれるところまではやったかな」(齋藤)。昨年の大会と比べても、動きはほとんど落ちていない。来年もまた東京体育館に戻ってきてくれるだろう。下写真右は観客席で声援を送った札幌大谷高の選手たち。