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2013世界ジュニア選手権速報

 前回大会に続き、日本から2点を奪った香港の杜凱栞。前回大会では時折、一発で抜ける男勝りのパワードライブを放っていたが、今大会はラリー重視のスタイルにモデルチェンジ。前陣で回転をかけるバックのカウンターブロックと、フォアも小さい振りのカウンタードライブで正確に返球した。いら立って強く打てば打つほど術中にはまるという、まさに「底なし沼」。

 茫洋とした(失礼)風貌で、試合態度もやる気があるのかないのか、わからない感じなのだが、それがまた対戦相手にやりにくさを感じさせるのだろう。今後も日本にとっては危険な相手になりそうだ。
●女子団体準決勝
〈日本 3-2 香港〉
○伊藤 7、-7、4、-6、12 蘇慧音
 平野 -8、-8、-3 杜凱栞○
○森 10、3、3 林依諾
 伊藤 -8、-3、-10 杜凱栞○
○平野 14、-9、8、-10、7 蘇慧音

 日本女子、香港との総力戦を制して、今大会も決勝へ駒を進めた!

 エースの杜凱栞に2点取られ、迎えた5番。平野が蘇慧音との火の出るような打撃戦を展開。第2ゲーム5-6で平野のボールがエッジをかすめたように見えたが、審判の判定はアウト。このゲームを平野は惜しくも落とした。
 その後も一進一退のシーソーゲームだったが、第4ゲーム中盤で平野がバック対バックから先にフォアで回り込み、フォアドライブで得点。10-8でマッチポイントを握る。次の10-9の場面で、平野はレシーブ時に手を挙げ、「(蘇のサービスが)服に当たった」とアピール。これも審判は認めず、平野の返球がネットにかかっていたため、10-10になった。呉監督の審判長への抗議も実らない。平野はこのゲームを10-12で落とした。

 最終ゲームも4-6の劣勢だったが、平野は今までにないほど声を出し、拳を固め、一歩も退かない両ハンドの攻守で逆転。11-7で熱戦に終止符を打った。試合後、感極まる選手たちに呉監督が「まだ明日があるよ!」とひと言。しかし、それほど苦しい戦いだった。
  • 平野、殊勲のラスト締め!

  • 伊藤はベンチで込み上げるものが…

  • 第1ゲーム6-10から逆転、勝利した森

  • 日本を苦しめた蘇慧音

  • 日本ベンチも燃えた!

●女子団体準々決勝
〈中国 3-0 チャイニーズタイペイ〉
○顧玉ティン 12、10、4 方思涵
○劉高陽 6、9、4 黄禹喬
○劉㬢 3、6、7 崔宝文

〈ルーマニア 3-2 アメリカ〉
 チオバヌ -6、-9、11、-5 アリエル・シン○
○スッチ 4、6、-8、-9、5 エリカ・ウー
 バリント -12、-7、-3 リン・ティナ○
○スッチ 12、-6、14、6 アリエル・シン
○チオバヌ 8、11、-8、6 エリカ・ウー

〈香港 3-1 韓国〉
 蘇慧音 5、-8、-5、6、-6 ジュン・ユミ○
○杜凱栞 9、8、12 イ・ダソム
○林依諾 -13、9、8、3 イ・ジオン
○杜凱栞 -9、8、5、5 ジュン・ユミ

●男子団体準々決勝
〈中国 3-0 ブラジル〉
○周凱 7、1、8 カルデラノ
○梁靖崑 5、4、8 ザウリ
○孔令軒 4、8、9 イシイ

〈ポーランド 3-1 韓国〉
 ヴィエチェク -8、-7、-8 ジャン・ウジン○
○ディアス 7、5、10 カン・ミンホ
○ザトウカ 7、6、8 イム・ジョンフン
○ディアス 7、9、6 ジャン・ウジン

〈フランス 3-0 ドイツ〉
○フロール 10、8、11 チウ・リァン
○アングレ -9、10、8、9 オルト
○A.ロビノ 11、6、10 チウ・ダン

男女団体準々決勝が終了。女子団体でルーマニアがアメリカを下し、ベスト4進出。エースのスッチらがコートに駆け込み、喜びを分かちあった。もうひとチーム、歓喜を爆発させたのが男子のポーランド。第2ステージでは日本に敗れたが、この試合ではエースのディアスが大爆発。カットのカン・ミンホ、シェークオールラウンドのジャン・ウジンに完勝して準決勝進出の立役者となった。
  • か、勝った〜〜〜!

  • メ、メダルよ〜〜!

  • 韓国から大金星のポーランド。お見事!

●男子団体準々決勝
〈日本 3-1 チャイニーズタイペイ〉
○森薗 4、3、8 王泰威
○酒井 8、5、6 黄建都
 三部 -10、-10、10、-10 温洧傑○
○森薗 5、-9、6、3 黄建都

日本男子、三部が三番で敗れるも、タイペイを下した。こちらもメダル確定!

敗れた三部も第1ゲーム10-8でゲームポイントを奪い、第2ゲームは3-9から10-9と大逆転でゲームポイントを握ったが、ここで決め切れず。1ゲームを返したが、最後は自分のツッツキ打ちの打ちミスにいら立ってしまった感もあった。今大会が初出場、すべては経験だ。

4番森薗も、前陣で叩きつけるような両ハンドのパワードライブを放つ黄建都に対し、第2ゲーム9-6から逆転され、第3ゲーム出足でリードされた。イヤな雰囲気が漂ったが、さすがエース。バックに厳しく振られたボールにも前陣でショートスイングのバックドライブを合わせ、フォアストレートへのパワードライブを有効に使って黄の待ちを崩した。続く準決勝の相手はフランスだ。
  • 黄建都を完封した酒井

  • 三部はフォアの打点の遅さを突かれた

  • 頼れる森薗、4番で勝利を決める

  • タイペイの黄建都は2失点を喫す

●女子団体準々決勝
〈日本 3-0 ドイツ〉
○平野 6、7、6 ワン・ユアン
○伊藤 8、11、8 クラフト
○森 8、4、4 マンツ

3番森が勝利を決めた瞬間、ベンチの呉光憲監督が「ヨーシ!」と大きな声を出した。手応え、あり。日本がドイツを圧倒してメダルを確定させた。

日本の勝利の要因は、何といってもトップ平野の会心のプレーだろう。ワン・ユアンの高く投げ上げるバックサービスに対してもレシーブが乱れず、低く切るツッツキレシーブで3球目攻撃を封じた。前後の緩急をつけた攻めは絶妙で、特にうなったのが第3ゲーム10-6のマッチポイントでのプレー。4球目で平野のフォア前にやや浮いたボールが来た。ワンが強打を警戒して下がりかけたところを短くフォアフリックでチャンスメイクし、次球をフォアスマッシュで決めた。この落ち着き、とても初出場の13歳とは思えない。

2番伊藤はまだ本来のプレーに比べると動きが硬いが、最後はフォアクロスへの3球目強打を2本連続で決めるなど、要所は締めた。3番森はここまでで会心のプレー。正確なバックブロックで、相手の強打を何本も止め、中陣に下がった相手のボールが甘くなるところを回り込み強打で打ち抜いた。

日本、次の相手は香港か、それとも韓国か。フットワークはあるが、単調な攻めが多い韓国に比べ、変化に動じない杜凱栞がいる香港のほうがやはり不気味な存在。
  • 実に安定したプレーを見せている平野

  • 団体戦を盛り上げる森のガッツ

  • 森の回り込み強打!!!

 下写真左は「邱兄弟」の弟クン、チウ・ダン。一昨年の世界ジュニア代表で、裏面ブロックと一発のパワードライブを武器とする右中国式ペンドライブ型。飄々(ひょうひょう)とした卓球だが、「センスは右シェークドライブ型の兄(チウ・リァン)よりある」と言われている。

 下写真右はブラジルのルアン・オリベイラ。ぬるっとした裏面でのフリック、そして時折フォアドライブを放つが、あまり豪快な感じはしない。ブラジルのペンホルダーといえば、オヤマやマツモトのような日系人選手で、日本式ペンドライブ型が多かったが、いよいよ中国式ペンが出てきたか。
  • ペンドラなら泣くでしょう、このフォアフリック

  • オリベイラの裏面フリック

●男子準々決勝のドロー
中国 vs. ブラジル
ポーランド vs. 韓国
フランス vs. ドイツ
チャイニーズタイペイ vs. 日本

●女子準々決勝のドロー
中国 vs. チャイニーズタイペイ
アメリカ vs. ルーマニア
香港 vs. 韓国
日本 vs. ドイツ

日本は男女とも、大会前のシーディングで第2シードを守り、中国とは決勝まで当たらない。
男子は準々決勝でチャイニーズタイペイと対戦。どの選手も相当パワーがあるが、出場資格のある李佳陞(13年世界選手権代表)がいないのは大きい。日本は森薗の2点起用は動かないが、カットの村松を2点起用するのか、そうなれば3番手は酒井と三部のどちらを使うのか。酒井の打球点の早い攻めはタイペイに有効かもしれない。

昨日の試合後、渡邊隆司監督が「警戒しているチーム」と言っていた韓国が逆のブロックに行ったのは日本にとっては幸運だ。カット型がチームにいるためどの選手もカットには強く、多彩なオールラウンドプレーを見せるジャン・ウジンは厄介な相手。準決勝で当たるフランスとドイツの勝者のほうが、どちらが来るにしてもずっと戦いやすい。

女子の準々決勝はドイツ戦。エースのミッテルハムが故障と病気が重なり、大会直前に出場を回避。油断はできない相手だが、攻めの速さ・強さはない。ここに勝てば準決勝は香港と韓国の勝者。香港のエース杜凱栞は前回も2失点を喫した怖い存在だが、集中力にムラがあるので、当たることになれば序盤でペースをつかみたい。

下写真はドイツ女子のワン・ユアン。お父さんはドイツ女子チームのコーチであるワン・グオホイ(王国輝)さん。長身の右シェークドライブ型。
●男子第2ステージ・結果
E:1位・中国(2勝0敗)/2位・ドイツ(1勝1敗)/3位・イタリア(0勝2敗)
F:1位・日本(2勝0敗)/2位・ポーランド(1勝1敗)/3位・香港(0勝2敗)
G:1位・フランス(2勝0敗)/2位・ブラジル(1勝1敗)/3位・アルゼンチン(0勝2敗)
H:1位・韓国(2勝0敗)/2位・チャイニーズタイペイ(1勝1敗)/3位・スウェーデン(0勝2敗)

●女子第2ステージ・結果
E:1位・中国(2勝0敗)/2位・ドイツ(1勝1敗)/3位・クロアチア(0勝2敗)
F:1位:日本(2勝0敗)/2位・チャイニーズタイペイ(1勝1敗)/3位・ロシア(0勝2敗)
G:1位・香港(2勝0敗)/2位・アメリカ(1勝1敗)/3位・プエルトリコ(0勝2敗)
H:1位・ルーマニア(2勝0敗)/2位・韓国(1勝1敗)/3位・インド(0勝2敗)

男子ではヨーロッパジュニア団体優勝のイタリアがドイツに競り負け、この第2ステージで優勝争いから脱落。さすがに厳しいグループだったか。
女子でルーマニアが韓国を破り、グループHを1位通過。エースであるスッチのプレーは相変わらず気合い十分だ。
 ただいま現地時間は12月3日の午前6時35分。日本では午後の3時35分ですね。この9時間の時差は結構大きなものがあります。昼夜が逆転しているような感覚で、速報らしさがなくなってしまいますが、なるべく速くニュースをアップできるように頑張ります。

 それにしても、昨日の会場は体の芯まで冷えた。日本男子の渡邊隆司監督も「会場が寒いから、ボールが飛ばないんですよ。少し調整する必要がありますね」と言っていた。昨日、中国選手たちのプレーにもうひとつ冴えがなかったのも、寒さがひとつの原因かもしれない。

 そして国際大会での経験から言えば、中国よりも日本のほうが何倍も経験を積んでいる。「中国選手のプレーは明らかに硬かった。国際大会での経験不足は、日本にとってつけいるスキになる」(渡邊監督)。特に中国男子のプレーはナーバス。トップで1点落とすようなことがあれば、大きく崩れる可能性がある。
 また、女子も昨年まで長くジュニアの監督を務め、父親のような雰囲気で選手たちを見守っていた韓華監督から、往年の左ペンドラ・閻森へ監督の座が移った。監督と選手の一体感という点では、昨年のほうが上のように感じる。

 日本は05年世界ジュニアの男子団体決勝で中国を破り、優勝している。水谷隼、岸川聖也、高木和卓、大矢英俊という黄金世代の選手たちがその担い手だった。一方で、この時の中国代表はいわゆる国家2軍チームのメンバーではなく、北京市チームの男子選手たちで、ベストメンバーとは言えなかった。
 今回の中国のメンバーは、「怪物」樊振東がいないものの、ジュニア世代ではトップクラスの選手たち。日本チームにはぜひこの中国を破って、女子は3大会ぶり、男子は8大会ぶりのタイトルを獲得してほしい。
  • 中国青年選手権のチャンピオン、周凱

  • まだ選手との距離感がある?閻森

  • 練習会場で汗を流す孔令軒

 今回の世界ジュニアから、日本女子ジュニアチームを監督として率いる呉光憲監督。ハードな練習で選手たちを鍛え上げ、淑徳大学を名門チームへと育て上げた名将。今回の日本女子チームは団体戦での経験不足が不安材料だったが、呉監督は若い選手たちに「チームスピリットを持つこと」を求めている。以下はタイペイ戦後のコメント。 

「予想以上に選手たちが頑張ってくれた。第2ステージで良いスタートが切れたと思います。初戦のロシア戦は、トップの伊藤のプレーが硬かったけど、まだ中学1年生だからそれは仕方ない。その緊張を乗り越えて勝ってくれたのをうれしく思います。
チームは森が高校2年なので、チームをまとめる役割を任せている。そして試合になったら全員がエースだと思ってくれと選手たちには伝えています。
タイペイ戦ではオーダーが予想とは外れたけど、森が最近うまくなってきたカット打ちの成果を見せてくれた。最後はロングサービスからフォアサイドを連続で攻めるようにアドバイスして、その展開が有効だったと思います。2番の平野はそれほど簡単には勝てないだろうと思っていたけど、切れた粒高のボールもループでしっかり攻略して、3球目攻撃のコースも良かった。監督が(オーダーを)ミスしても選手が頑張ってくれましたね(笑)。

自信、責任、そして使命感を持って頑張ってほしいと選手たちには話している。明日からはトーナメント戦。負けたら後がないので、選手とスタッフが団結して強いニッポンを見せていきたい」