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リオ五輪

 日本の女子は2大会連続でメダル獲得を果たした。
 その印象的なシーンをベンチのすぐ後ろのカメラマン席で見ていた。
 1−1となった3番のダブルス。1ゲーム目を取られて2ゲーム目10−9でエッジボールがついた。「神様はいるんだな」とその瞬間に福原は思った。
 ダブルスで勝利をあげて、笑顔の二人。しかし、コートから出た瞬間に笑顔だった福原の表情が変わった。厳しい表情で、笑顔だった伊藤に対してアドバイスを送る。勝利に浸るのは一瞬でいい。4番の伊藤に厳しく言葉を掛けた。
 そして、そこにウォーミングアップから駆けつけた石川は勝利のタッチもそこそこにやはり伊藤にアドバイスを送る。3人での戦術的、精神的な確認作業なのだろう。
 
 そこにはメダルへかける3人の並々ならぬ思いが伝わってきた。
 そして伊藤の快勝につながっていく。
 普段3人は別々に練習をする。それぞれが「チーム」を持ち、専任コーチと練習相手を抱える。ナショナルチームや海外リーグが中心の男子とは違う。女子3人はスポンサーがつき、マネージメント会社もつき、国際的にも国内的にもライバル関係なのだ。
 しかし、世界選手権やオリンピックでは、ともに日の丸を背負い、「メダル獲得」という共有の目標を持って戦う。

 今大会、初出場でメダルを獲得した15歳の伊藤は、中国の郭躍の16歳を抜いて史上最年少のメダリストとなった。
 中国は別格にしても、今大会の日本の活躍に世界中の卓球関係者は熱い視線を送っている。
  • 大勢の日本のカメラマンに取り囲まれる日本チーム

  • 国旗をバックに並ぶメダリストたち

●女子団体決勝
〈中国 3ー0 ドイツ〉
○李暁霞 9、3、7 ハン・イン
○劉詩ウェン 3、5、4 ゾルヤ
○丁寧/劉詩ウェン 6、5、ー9、7 シャン・シャオナ/ゾルヤ

女子団体は決勝が行われ、中国がドイツに3ー0で快勝。シングルス女王の丁寧を後半に下げる余裕を見せながら、それでも中国は負けなかった。驚くべきことに、団体戦が導入された08年北京五輪から、中国女子は団体戦では無敗。1試合も敗れることなく、女子団体3連覇を成し遂げた。

トップ李暁霞は第1ゲームの出足、ハン・インのブツ切りフォアカットにミスが出て5ー8、7ー9とリードを許したが、ここから圧巻のパワーを見せて4点連取。ループドライブ一発でチャンスボールを作り、それをサイドを切る厳しいコースへ、確実に強打できる恐るべきパワー。特にバッククロスとフォアストレートへ放つ李暁霞必殺の一打、シュートドライブが冴えた。

2番劉詩ウェンは、第1ゲーム3ー3から8点連取で一気に先取。第2ゲームも5ー5までは競ったが、そこから6点連取。ヨーロッパ選手の中では最も前陣寄りでプレーするスタイルのゾルヤだが、劉詩ウェンの両ハンドの圧倒的な速さ、サービス・レシーブの厳しさについていけない。何とか劉詩ウェンのフォアを突き、大きく動かしたいゾルヤだが、コース変更の余裕がないほど劉詩ウェンの攻撃は厳しかった。劉詩ウェンが要所で混ぜる、深く切れたツッツキも非常に有効だった。

3番ダブルスも中国ペアが第1ゲーム、第2ゲームとも6ー1とリード。普段はあまりペアを組まない丁寧と劉詩ウェンだが、丁寧が前陣寄りでプレーすることで、なかなかのコンビネーションを見せた。第3ゲーム、9ー9からドイツペアが2点連取で奪い、歓声を集めたが、反撃はここまで。第4ゲーム、10ー7。最後はラリー戦から丁寧がフォアドライブをねじ込み、中国の優勝が決まった。
  • 優勝を決めた瞬間、劉詩ウェンと丁寧

  • 表彰式での中国チーム

  • 日本を破って銀メダルのドイツチーム

  • 表彰式での全チーム

●女子団体・銅メダル決定戦
〈日本 3ー1 シンガポール〉
 福原 4、ー5、ー3、4、ー5 ユ・モンユ○
○石川 10、6、7 馮天薇
○伊藤/福原 ー9、9、1、12 周一涵/ユ・モンユ
○伊藤 9、4、6 馮天薇

日本女子、シンガポールに勝って2大会連続のメダル、銅メダル!!!

会場は日本への声援が圧倒的に多く、雰囲気はまるでホームゲーム。トップ福原、バックハンドをよく決めながらも、ユ・モンユのキレのある両ハンドドライブにフォアサイドを厳しく攻められる。ゲームカウント2ー2の最終ゲームは2ー5でチェンジエンド、3ー6から4点連取されて3ー10。最後は5ー10からバックハンドがミスとなり、ユ・モンユが大きくガッツポーズ。

福原のゲームオールでの敗戦に、日本に暗雲が漂ったが、2番石川が会心のプレーでそれを振り払う。3ー7、6ー9と劣勢だった第1ゲーム、7ー10から両ハンドの火の出るようなラリー戦の連続を制し、最後は3球目バックドライブで打ち抜いて12ー10と逆転。ここから一気に走った。第3ゲーム、10ー7からバックフリックがエッジをかすめ、11ー7でストレート勝ち。
馮天薇、両ハンドのバランスの良いクレバーなプレースタイルが、プラボールになってからは決定力不足が目立った。これで1ー1で3番ダブルスへ。

ダブルスはまだフォアハンドにミスが多く、サービスミスもあった伊藤を、福原が必死のアドバイスでもり立てる。第1ゲームを落とし、第2ゲーム10ー9から伊藤が大きく体勢を崩しながら、バックブロックをエッジでねじ込む。ここを落としていたら危ない試合だった。第4ゲームもマッチポイントをなかなか決めきれなかったが、13ー12の3回目のマッチポイントで決めた。大きな勝利だった。

4番伊藤、まだプレーはベストのものではない。それでも馮天薇のロングサービスはしっかり回り込んでレシーブから攻め、パワードライブに対しては相手のフォアへ流すような表ソフトのブロックでミスを誘う。第1ゲーム、10ー9から必死のブロックで1点をもぎ取り、11ー9。第2ゲームはようやく伊藤らしい緩急が少しずつ出始め、2ー2から6ー2、10ー4と離して、最後は合わせ打ちのカウンターで馮天薇のバックサイドを抜く。

日本、銅メダルまであと1ゲーム。伊藤、5ー5からサービスエース2本で7ー5とし、レシーブから両ハンドで厳しく攻めて9ー5。自分に言い聞かせるようにうなずく伊藤。10ー6でマッチポイントを握り、最後は伊藤のバック表ソフトのレシーブに、馮天薇のバックドライブが大きくオーバー。伊藤、笑顔! 石川、笑顔! そして福原は涙、涙……。

ラスト石川まで回っても、勝利はほぼ確実だっただろう。しかし、伊藤が決めたことに意味がある。準決勝は本当に悔しい敗戦だったが、最後は石川、福原、伊藤と3人が単複で勝利を挙げ、メダルを決めた。今はただ、おめでとう日本女子!
  • トップで福原を破ったユ・モンユ

  • 単複で奮闘する福原

  • 強い。エースの石川は2番で馮天薇に勝利した

  • この試合の勝敗を分けたダブルスでの勝利。日本は勢いに乗った

  • 4番で相手エース馮天薇を破った伊藤。史上最年少のメダリスト

  • 喜びに沸く日本女子

 卓球競技11日目(現地:8/16)の大会スケジュールは以下のとおり
 女子団体の銅メダル決定戦と決勝戦の2試合が開催され、日本女子は銅メダルをかけて、シンガポールと対戦する。(※試合開始時間は日本時間で表記)
 
8/16 23:00~ 女子銅メダル決定戦(日本 vs. シンガポール)
8/17  7 :30~ 女子決勝戦(中国 vs. ドイツ)

【テレビ放送予定】
8/16 22:00~22:45   NHK総合 録画 卓球女子団体ほか
8/16 22:45~(25:55) NHK総合 LIVE 女子団体3位決定戦(日本 vs. シンガポール)
8/17  8 :15~(10:00) NHK総合 録画 女子団体3位決定戦(日本 vs. シンガポール)

※放送予定は予告なく変更となる場合があります
●男子団体準決勝

〈中国 3ー0 韓国〉

○張継科 ー13、11、ー9、8、4 鄭栄植

○馬龍 1、4、4 朱世赫

○張継科/許シン 8、10、6 鄭栄植/李尚洙
  • 張継科に善戦した鄭

  • 鄭を下した張継科の勝利のポーズ

  • 朱のカットを打ち抜いた馬龍

  • ベンチで熱く応援する劉国梁監督

 何という強さだ。
 水谷の恐るべき強さが世界を驚愕させた。2番でボルを破り、4番でシュテガーをストレートで下した。つけいる隙を与えない強さだった。
 明日は休んで明後日に中国との決勝を迎える。行け、ニッポン、もっとすごい歴史を作ってみろ。

 それにしても何というチームだろう。エースの水谷は強い。吉村と丹羽のダブルスも強かった。今まで壁のように立ちはだかっていたドイツを完璧に下したのだ。
  • 貴重な勝利をあげた吉村と丹羽のダブルス

  • 今や、ミスター卓球だ、卓球の革命プレーヤー水谷

  • 日本の応援団からもみくちゃにされる水谷と倉嶋監督

  • かっこよすぎる日本男子チーム。これを待っていたぜ

●男子団体準決勝
〈日本 3ー1 ドイツ〉
 吉村 ー8、ー3、ー3 オフチャロフ○
○水谷 9、5、10 ボル
○丹羽/吉村 5、ー13、4、5 シュテガー/ボル
○水谷 5、4、4 シュテガー


やったぜニッポン、ドイツを破って五輪男子団体で初の決勝進出!
銀メダル以上が確定!

トップでオフチャロフがものすごい気迫、両ハンドの豪打で吉村を完封すれば、2番水谷も負けじとボルに完勝。前陣での両ハンドドライブに以前ほどの回転量と精度がなくなったボル。過去の国際大会で1勝15敗と大きく負け越している「天敵」を、水谷ストレートで下して1ー1で3番ダブルスへ。

そして勝利のカギは3番ダブルスだった。丹羽が抜群の集中力。吉村のサービスで崩し、クロスへストレートへと鮮やかに3球目攻撃を決めていく。第4ゲームでの怒涛の連続ポイントは圧巻だった。最後も丹羽の3球目攻撃に対し、ボルのブロックがオーバーして2ー1でエース水谷へ。

4番水谷は、出足から完全にシュテガーを「呑んでいた」。台上が弱点のシュテガーに対し、ミドルへの正確なストップで3球目攻撃を完璧にシャットアウトし、逆にサービスからは確実に3球目攻撃を仕掛ける。ラリー戦になっても、すぐ中陣に下がるシュテガーの攻めは遅く、水谷に対して怖さはまったくなかった。第1ゲーム、第2ゲームとも5ー1、7ー3と完璧なスタートダッシュを決めて連取。

第3ゲーム、ドイツベンチにもすでにあきらめのムードが漂う中、2ー1からシュテガーのロビングをシュートするスマッシュで打ち抜き、3ー1となってドイツがタイムアウト。しかし、水谷はさらに9ー1と一気にリードを広げた。「どうだ!」とばかりに両手を広げてガッツポーズを決める水谷。10ー1のマッチポイントから10ー4となったが、最後はシュテガーの中陣での粘りをフォアドライブで打ち抜き、その場に倒れ込んだ。

満面の笑顔で抱き合い、観客の声援に応える日本男子チーム。ロンドンでの悔しさを払拭する勝利だ!
  • 勝利を決めた瞬間の水谷

  • 歓喜の日本チーム。初の決勝進出

●女子団体準決勝
〈中国 3ー0 シンガポール〉
○李暁霞 10、8、9 馮天薇
○丁寧 7、ー9、6、2 周一涵
○劉詩ウェン/丁寧 4、1、9 ユ・モンユ/周一涵

女子団体準決勝のもうひと試合は、中国がシンガポールに快勝。シンガポールは若手の周一涵が丁寧から1ゲームを奪うに留まった。女子団体決勝は中国対ドイツ、そして女子団体銅メダル決定戦は日本対シンガポールという対戦カードとなった。

シンガポールと銅メダルを懸けて戦う日本。シンガポールにとって卓球は、数少ないメダルが獲れる競技のひとつ。国からのバックアップも手厚く、国民の期待も高い。シンガポールとて負けるわけにはいかない。全力でメダルを獲りにくるだろう。

日本は前回のロンドン五輪の準決勝と同様、前半で馮天薇から勝利を挙げることができれば、一気に銅メダルに近づく。あとは前半に福原と伊藤、どちらを出すのか。伊藤がドイツ戦での敗戦から、どこまで切り替えることができるか。
2番手のユ・モンユ、3番手の周一涵に対しては、日本の3選手はいずれも分が良いが、今大会は特に周一涵が好調。スイングスピードが速く、キレのあるフォアドライブを連発している。銅メダル決定戦では、村上監督のオーダーが注目される。
 これから午前10時の女子準決勝、中国対シンガポール。
 なのに、観客はまばら。みなさん興味がない。中国が強すぎるのか、アジア同士だからか。決勝に中国が行くだろうが、決勝の中国対ドイツ。ドイツには中国の帰化選手が2人いるから、6人中5人が中国系で、二人は30歳過ぎのハン・インとシャン・シャオナ。

 初日のシングルス予選ラウンドのほうが人は多かった。観客の興味は別のところにあるのか。金銀総取りの中国。特に女子団体の決勝の興味は失われている。
  • 準決勝とは思えない観客の少なさ

 昨日の準決勝、日本対ドイツ。現地のベンチそばからの情報。
 オーダーを見た時に日本が3−0で勝つのかと思えた。それまでの試合を見てもハン・インがドイツのキープレーヤーだった。トップでゾルヤ対伊藤。相手のゾルヤはクアラルンプールの世界選手権よりも明らかに太っていて、動きが鈍そう。しかし、もともとボールタッチの柔らかい選手。動けなくてもタッチは変わらない。

 スタートから競り合いだったが、ラリーの主導権は伊藤が奪っていたように見えた。ベンチに戻っていても伊藤の表情は明るい。「試合で緊張したことがない」という強心臓の伊藤は楽しんでいる様子だ。
 そして最終ゲーム、9−3とリードした時には勝利が見えたはずだ。そこからの2,3本やや雑に見えた。そしてじりじり挽回されると明らかに力が入ってくる。そして大逆転負けになった。五輪だからこそ、あのスコアでもゾルヤはあきらめることはなかった。魔物がいたのか。

 石川はさすがエースという試合。ハン・インのフォアカットはぶち切りで、バックは表ソフトの変化。粘りきると言うよりは中陣で変化をつけ、攻撃のチャンスを狙うタイプ。観客席の最前列では卓球選手の夫が応援。チラチラといつも見ている。
 それにしても、石川は絶対負けられないという気迫がすごかった。伊藤の逆転負けで流れはドイツだった。それを必死に食い止め、勝った瞬間。いつもの「カスミピョンピョン」で3度4度飛び跳ねた。

 3番のダブルスもリードを奪いながら逆転され、1−2と後がない。4番で石川はペン表ソフトのシャン・シャオナを各ゲーム競り合いながら完封。ラストの福原につなげた。

 福原はハン・インに対してフォアドライブで粘るやり方と、ツッツキ多用して相手が前にいる時に強打する戦術を敢行。最終ゲームは3−7とリードされて万事休すかと思ったら、そこから強打を連発し、6点連取、驚異の追い上げで9−7で逆転し、会場は騒然。ところが、相手が再逆転。9−10の長いラリーでハン・インの深い位置からのバックカットは福原のフォアサイドに飛んできて、痛恨のエッジボール。
 日本チームは今のは「サイド」だ。ビデオを見てと主張するが、ITTFのメディア席であとでビデオを確認するとボールは上にはねているように見えた。
 要は、あの追い込まれた局面に持って行く前に、勝つチャンスはあったと言うことだ。前回のような決勝進出はならなかったが、日本選手はベストを尽くした。ただ、紙一重の差。髪の毛1本の差。それがオリンピック。8月14日、それは「日本の日」ではなかった。
 明日の銅メダル決定戦は気持ちを切り替え「日本の日」にしてほしい。メダルなしで帰るわけにはいかない。



  • 銀メダル以上を確保した喜びのドイツ

  • 審判がゲームセットを宣言してから抗議するも認められなかった