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平成28年度全日本選手権速報

 ストレートで敗れたものの、1・2ゲーム目の石川との攻防は非常に見応えがあった佐藤瞳。試合前に繰り返し練習していた、バックカットから前に出てフォアストレートに放つ攻撃は、以前には見られなかったもの。安定性の高いカットはさらに切れ味を増し、全日本3位にふさわしい実力を見せた。以下は佐藤の試合後のコメント。

「1ゲーム目のタイムアウトでは、大嶋監督からは『勇気を持って攻めていかないといけない』と言われました。石川選手も様子見をしていた部分があるので、序盤は攻撃も決まっていたんですけど、途中から相手に見切られてしまって、攻撃のチャンスが少なくなった。台から出るか出ないかのサービスがすごくレシーブしづらくて、3球目で狙われているのはわかっていたので『厳しく入れなきゃ』というプレッシャーもあった。ナックル系なのでなおさらレシーブしにくかったです。
 社会人になって、今までは指導者が私の変化に気づいて言ってくれたけど、今は自分から発信していくようにしている。カットの基礎力を上げる練習をしっかりやっています」(佐藤)
 石川佳純(全農)対佐藤瞳(ミキハウス)の準決勝が10時に始まった。
 1ゲーム目、5-0、7-2と佐藤がリードを奪う。石川はまだ佐藤のカットの球質に慣れていない状態だ。そこから石川は7-8と逆転。3回ゲームポイントを佐藤が奪うも、石川が先取。ゲーム終盤での佐藤の攻撃ミスが響いた。

 2ゲーム目は4-7から石川が6点連取して10-7と逆転して11-8で石川が連取した。佐藤の攻撃は徐々に確率を高めているが、その分、石川のカット打ちのミスも減り、リードされても慌てない石川のメンタル。

 3ゲーム目はお互いの凡ミスはほとんどなくなり、佐藤がじりじり追い詰められる。7-4と石川リード。8-5から一気に11-5と突き放し石川が3ゲーム連取して勝利に近づいた。

 4ゲーム目、石川は佐藤の球筋を完全に見切り、ミスはなく、ボールも低く飛ばしていく。それによって佐藤は攻撃もできなくなり、手詰まりの状態となり、5-1、8-2と石川リード。8-3で石川がタイムアウト。9-3から9-4、ここでミドルを強攻して10-4、最後は連打を決め、11-5で石川がストレートで下し、決勝進出を決めた。

 石川は試合後に佐藤戦を振り返った。「1ゲーム目、0-5まで行ったけど、そこから挽回そして1ゲーム目を取ったのが勝因でした。最初は相手のボールに慣れていなかったし、強く攻めすぎてしまってミスが出た。途中から落ち着いて攻めていくことができたのは良かった」

●女子シングルス準決勝
石川佳純(全農) 14、8、6、5 佐藤瞳(ミキハウス)  
★大会第7日目・1月22日のタイムテーブル

10:00〜/11:00〜 ●女子シングルス準決勝
石川佳純(全農) vs. 佐藤瞳(ミキハウス)
平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園) vs. 橋本帆乃香(四天王寺高)

12:00〜/13:00〜 ●男子シングルス準決勝
水谷隼(beacon.LAB) vs. 平野友樹(協和発酵キリン)
吉村和弘(愛知工業大) vs. 吉田海偉(Global Athlete Project)

15:00〜 ●女子シングルス決勝
16:00〜 ●男子シングルス決勝

昨日は当日券が完売し、「満員御礼」となった東京体育館。今日も会場をぐるりと取り巻くようなすごい行列ができている。
大会最終日のタイムテーブルおよび対戦カードは上記のとおり。女子シングルス準決勝はともに攻撃対カットの対戦カード。石川対佐藤は、対戦成績では石川が圧倒しているが、佐藤はどんな策を打ってくるか。試合前の練習ではバックカットから前陣に出て、フォアストレートへの攻撃、というパターンを繰り返している。平野対橋本は、昨年のジュニア準決勝で橋本が3ー2で競り勝った。平野としては決勝に備えて体力はなるべく温存したいが、そうも言っていられないだろう。平野自身も「準決勝がヤマ場です」と語る。

男子の準決勝は、水谷は明治大時代の3学年下である平野との対戦。手の内はお互いよく知っている相手だけに、水谷有利は動かないが、ガッツマン平野の奮闘に期待。吉村対吉田は、吉田のバックでの執拗な粘り、よく切れたフォアストップを吉村が打ち抜けるか。吉田独特の間合いにのまれずに戦いたい。
●男子ダブルス 決勝
丹羽/酒井(明治大) 6、9、-8、-5、8 藤村/吉村(愛知工業大)

 男子ダブルスは、丹羽考希/酒井明日翔の大学生ペアが制した。こちらも女子と同様、初優勝!

 準決勝で水谷/吉田を破った勢いそのままに、丹羽/酒井が2ゲームを先取、さらに第3ゲーム5ー2とリードしたこの試合。第2ゲーム10ー8の場面では、酒井がレシーブからバックハンドで回り込み、フォアストレートにチキータで打ち抜く。会場をどよめかせるスーパープレーだった。

 しかし、藤村/吉村もあきらめない。第3ゲーム2ー5から6ー6、8ー6と逆転すると、10ー8からこんどは吉村がレシーブからチキータエースでお返し。第4ゲームも、藤村の中陣での安定したフォアドライブと吉村の強烈な両ハンドドライブがかみ合い、11ー5で奪取。ゲームオールへと持ち込む。

 最終ゲームは丹羽/酒井が4ー1のリードから5ー5。丹羽/酒井は相手のカウンターの待ちを外すループを混ぜ、さらに酒井が難しいボールをフォアドライブで2本ねじ込んで、10ー6。酒井がチキータを2本ミスしてヒヤリとしたが、最後も酒井がフォアクロスへのドライブを決めた。2年先輩の丹羽が酒井をうまくリードし、伸び伸びとプレーさせていた。

 優勝インタビューでは、「2-0でリードしていたけど、簡単には勝てないと思っていたので、(そのあと2ゲーム落としても)気を緩めず戦いました。組み始めて間もないペアですが、全日学と全日本で勝ててすごく自信になりました」と丹羽が語り、「向こうは、こちらの攻め方がわかっているのでやりにくかったです。3、4ゲーム目緊張してしまって(僕が)ミスばかりしてしまいました。丹羽さんにリードしてもらって優勝できました」と酒井は、先輩を立てた。

 そして、最後に丹羽は「シングルスで早く負けてしまって、とても悔しかったけど、この優勝で悔しさが少し消えました。5月の世界選手権の代表に選んでいただいているので、それに向けて頑張りたいです」と締めくくった。
●女子ダブルス 決勝
平田/永尾(アスモ) -6、7、9、7 土田美佳/宋(中国電力) 

 どちらが勝っても「初優勝」という対戦となった女子ダブルス。3-1で制したのはアスモの平田有貴/永尾尭子組。
 優勝インタビューで、「本当にうれしいです。永尾さんのおかげです」と開口一番語った平田。「徹底して思い切ってやることが作戦でした。ふたりで、相手がやってきていることを冷静に考えて、それに対してしっかり対応してやろうと話し、それがうまくいったんだと思います」と永尾。
 決勝の相手は、実業団の中国電力ペア。
 「優勝したとはいえ、まだまだです。これから日本リーグでも対戦することがあると思うので、安定したペアになってしっかり勝っていきたいと思います」と結んだ。
●男子ダブルス準決勝
丹羽/酒井(明治大) 8、7、-5、5 水谷/吉田(beacon.LAB/愛知工業大)
藤村/吉村(愛知工業大) 6、13、6 木造/松山(愛工大名電高)

 丹羽/酒井と水谷/吉田の対戦は、台上でのスピード卓球が得意な丹羽/酒井が主導権を握る。酒井の高速チキータ&カウンターはコースが読みにくく、鋭く深く突き刺さる。これにはラリーに強い水谷/吉田もさすがに追いつけない。
 後半になっても、酒井はミスを恐れずチキータで攻め、レシーブからノータッチを連発。ボールのスピード、そして打球点の早さでは丹羽/酒井が一歩上だった。最後は酒井のスマッシュでゲームセット。水谷/吉田の2連覇を阻止し、丹羽/酒井が決勝進出を決めた。
 「2連覇を目標にしてきたが、負けて残念です。敗因は酒井のチキータが強烈で、彼一人にかき回された。酒井のチキータは試合前からすごいというのは想像していたが、想像以上によくて、点数が取れなかった」(水谷)

 準決勝第2試合は同じ学園同士の愛知工業大と愛工大名電高の戦い。ミスの少ない木造/松山の堅陣を大砲・吉村がこじ開ける。ラリー能力の高い藤村が的確にコースを突き、吉村の一発につなげるパターンは非常に強力。
 2ゲーム目はジュースになったが、チャンスで名電ペアがサービスミス。チャンスを逃さなかった3ゲーム目も止まらず、藤村/吉村が一気に勝負を決めた。
 吉村の中陣から放つバックドライブは威力・安定感抜群。不利なラリーになっても一発で盛り返す力を持っている。決勝でも炸裂すれば、派手な打撃戦が期待できる。
●女子ダブルス準決勝
土田美佳/宋(中国電力) 5、5、7 山本/明神(中央大)   
平田/永尾(アスモ) 8、-5、7、8 若宮/森(日本生命)

 土田/宋ペアがサービス、レシーブ、そして回転力のあるループドライブを要所で決めて、ラリーにさせず。ストレートで山本/明神を下した。
 山本は「相手が強くて、何もできませんでした。先手を全く取れずにそのまま……」と言葉少なめだった。

 もうひとつの準決勝は平田/永尾が果敢な攻撃卓球で若宮/森に勝利。コートを大きく使い、若宮/森を左右に振っていく。前陣を得意とする日本生命ペアを少しでも下がらせて、優位な展開を作り、永尾の重いドライブが仕留める。見事なコンビネーションだった。
 「私が大会前に体調を崩してしまって、あまり練習できなくて・・・でも戦術とか勝つためにいっぱい頭で考えた結果、ベスト4に入れたことは良かったかな」と若宮は涙を流した。
 
これで決勝は土田/宋vs平田/永尾。どちらが勝っても初優勝だ。
  • 若宮/森を下して決勝進出を決めた平田/永尾

 男子シングルス準決勝、最後のカードは初ランク入りの吉村和弘と3年前にベスト4に入った上田。リオ五輪に出場した真晴の弟・吉村和弘が4-2でこの勝負を制した。

●男子準々決勝
吉村和弘(愛知工業大) -8、8、-9、9、6、7 上田仁(協和発酵キリン)

以下は、敗戦の上田のコメント
「(吉村和弘選手との)対戦成績は1勝3敗くらいだったんですけど、直近の対決では勝っていたので、そのイメージのままやれればと思っていました。序盤は思い通りのプレーができたけど、終盤は相手のほうが大事なところで思い切ってやってきた。自分のプレーは、緻密さはあるけど思い切りの良さが足りないので、もうひとつ上にいくには、そういう部分を磨いていかないといけないと思っています」

 吉村和弘は、このあと男子ダブルス準決勝に出場する。
  • 上田を攻略し準決勝進出を決めた吉村和弘

  • 吉村に敗れ8で終わった上田

 まさに吉田劇場。試合の出足から自分の空気の中に引きずり込むようなオーラを放つ吉田海偉(Global Athlete Project)。対するは高校3年の龍崎東寅(JOCエリートアカデミー)。ふだん、ポーランドリーグから帰ってくるとトレセンで練習する吉田だが、龍崎ともよく練習をする仲だ。お互いが知り尽くしている。
「今日、一番良かったのはメンタルかな。自分に勝てないと試合でも負ける。お互いよく知っているのでやりにくさはない。作戦は特に考えていない。昔の23歳で全日本チャンピオンなった時のように思い切って、全力でやるだけでした」(吉田)。
 終始、吉田ペースで余裕がある試合ぶり。

「ここまで来たらみんな強いですから、考えすぎないでやるだけ。ベンチの奥さんには『落ち着いて、試合だけ集中して』と言われた。勝ったら奥さんにチューしようと思ったけど、ここはヨーロッパじゃないからやめました(笑)。ぼくがいつもヨーロッパに行くから、奥さんは卓球場のこと、子どものこと、ぼくが帰ってきたらぼくのこともやるから、彼女がいるから卓球ができるのだから、そのためにも頑張りたい」(吉田)。

「今日は娘も見に来ていたし、将来卓球をやるので、良いイメージを彼女に与えたかった(笑)。去年は急にヨーロッパの大事な試合があって大会に出られなくて申し訳なかったから、今回は応援している人のためにも頑張りたかった。この場で試合をするのは楽しい。
 進化ですか? 今までヨーロッパでの勝った試合、負けた試合を反省して、技術も工夫している。ただあとは頭です。戦術とかを考えることしかできない。それに自己管理して、体を気をつける。
 もう日本代表じゃないからいいやと思ったら、だめですね。好きだから関係ない。昔は日本のためにやっていたけど、今は自分のため、家族のために卓球を頑張ります」(吉田)。

 3年ぶりの準決勝進出。元チャンピオンとしての存在感を十分に見せた吉田は次に吉村和弘と対戦する。

●男子シングルス準々決勝  
吉田海偉(Global Athlete Project)6、4、-7、8、6 龍崎東寅(JOCエリートアカデミー/帝京) 

●男子シングルス準々決勝
平野友樹(協和発酵キリン)-10、-6、3、9、-3 、5、4 神巧也(シチズン時計)

明治大の同期対決は予想どおりの好ゲーム、両者の雄叫びが交錯した第2コート。試合の途中でボールが割れるほどの打撃戦は、ゲームカウント2ー3から逆転した平野が勝利を手にした。ドライブの球威では神がまさっていたが、相手の力を封じるコース取りでは平野がわずかに上だったか。

「神とは大学で4年間一緒にやってきて、ふたりで明治を強くしてきたと思っている。だからこそこの大一番で当たったからには勝ちたかった。勝つ時にはいつも競っているので、勝つためにはまず競るところまで頑張ろうと思いました。ここまでは全試合我慢の戦いだけど、準決勝の水谷戦は自分の力を120%出し切りたい」(平野)。
  • 同期対決の接戦を制した平野

  • ベスト8でコートを去った神