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用具のこだわり by ゆう

 女子はまだまだ多いが、シェーク裏裏全盛の中で男子のバック表は珍しい。大坂亮輔は前陣ではバックの表ソフトを活かした攻守、中陣ではオールフォアの足を使った卓球で両ハンドの堅陣に対抗する。中央大学を卒業後の4月からは群馬県の樹徳高の女子卓球部監督に就任する予定。まだまだ表ソフトの多い女子にとっては適任と言えるかもしれない。

 ラケットはカルテットAFC、フォアがV>15エキストラ、バックはVO>101だ。

 「ラケットは悩んでいて、前まではスティガのエメラルドVPSを使っていましたが、やっぱり木材なので弾みが足りなくて、自分の力で飛ばすのは限界がありました。カルテットAFCのほうが弾みと球持ちがあったので、良かったです。
 グリップはSTです。水谷さんが昔メイスのSTを使っていて、憧れてSTにしました。STのほうが面を開いて打てますね。開いてドライブできるので、とらえやすいと思います。

 フォアのラバーは弾みを考えてV>15エキストラ。オメガも使っていて、弧線が出ましたが、V>15のほうが飛ばしている感があります。前に飛んでくれるから、スピードがすごく出ます。G40+だとなおさらスピードが出るので、叩きやすいです
 バックはめちゃくちゃ悩んで101。台上のやりやすさ、フリックのやりやすさです。ラリーでも当てただけのボールが思った以上にナックルになってくれます。表は安定系がいいかなと思っていたこともありますが、自分のスタイルはフォアで頑張るので、バックとの落差を出したい」(大坂)
  • 春からは先生になる大坂

  • ズドンと音がしそうなフォア

  • グリップはSTにこだわる

  • プラになって悩んだバック。最後はVO>101

 2015年の滋賀インターハイでチャンピオンとなった田口瑛美子(筑波大)。巻き込みサービスから鋭いバック連打で相手を追い込む高速卓球を得意としている。
正智深谷らしい粘りのプレーは接戦になるほど有利。インターハイの決勝でもカットの橋本(四天王寺)との我慢比べに勝利した。

 ラケットはクリッパーCC、フォアはオメガⅤツアーDF、バックはブースターEVだ。

 「全日本の10日くらい前にラケットを変えました。それまでクリッパーウッドを使っていたんですが、硬いボールが打ちにくかったんです。G40+は表ソフトのボールに変化がなくて、相手も落としてくれない。武器であるミートが通用しなくなってしまいました。平(亮太)先生に相談したら、クリッパーCCを勧めてくれました。ラケットが少し固くなって、弾いていけます。変えて良かったです。
 フォアのラバーもオメガⅤアジアを使っていたけど、平先生にアドバイスをもらい、ツアーに変更しました。アジアは硬すぎて食い込んでくれませんでした。ツアーは少し軟らかいので、食い込みも良いし、山なりに飛んでくれます。
 バックのブースターEVは長く使っています。あまり使っている人がいないので、相手も取りにくそうにしてくれます。普通の表よりも少しナックルも出やすいラバーです」
  • 3回戦を突破した田口

  • 両ハンドは速く鋭い

  • 人気が出てきているオメガⅤツアーDF

  • バックのEVはナックルがよく出る

 昨年の国体予選で並みいる日本リーガーを連破し、東京代表の座を射止めた村井桂(法政大)。巨漢を活かした力強い両ハンドを見せたと思えば、カットやしゃがみ込みサービスなどトリッキーなプレーで相手のリズムを崩していく。卓球部に入ったのは中学2年からという遅咲きであり、高校もスポーツ推薦ではなく一般入試で日大豊山に入学した。
 3歳から7年間、両親の仕事の関係で海外で暮らし、英語とフランス語を話すトリリンガルだ。
 
 ラケットはティモボルALC、フォアバックともにテナジー05を貼っている。組み合わせは王道だが、こだわりは強い。

 「自分自身がパワーがあるほうだと思うので、特殊素材でもあまり弾みすぎないのが好きです。『水谷隼ZLC』みたいに硬いと球離れが早くて、勝手に飛んでしまう。フルスイングで打つとオーバーしてしまうので、回転がかかってコントロールが良いティモボルALCが一番しっくりきました。
 ラケットのこだわりはグリップです。アナトミックを使っています。STだとすっぽ抜ける感覚があるし、フレアだとグリップが固定されすぎてしまいます。ぼくはフォアとバックでグリップがかなり変わります。フォアがすごく深くて、バックは浅い。握り替えやすくて、なおかつすっぽ抜けないもの。そのバランスがANが良かったんです。

 ラバーは回転で攻めていきたいからテナジー05です。バックは64を使っていましたが、05にしたほうが弧線が出て安定しました。また、ボールがG40+なのですごく硬くて、球離れが早い。引っかかりの良いラバーで補うようにしています」
  • 春からは日野自動車に就職予定

  • ラケットを持ち替えたしゃがみ込みサービスも駆使する

  • フォアグリップはかなり深い

  • バックは浅く持ち替え、サムアップ気味

 体をめいっぱい使ったフォアドライブは、独特なガチンという打球音をたてる。粘着ラバーを武器にする岩崎栄光(日野自動車)は、パワーヒッターという言葉がよく似合う。

 2回戦では早稲田大の先輩である時吉佑一(ZEOS)と対戦。同タイプのふたりの打ち合いは、最後の最後に時吉に軍配。「粘着ラバーの使い方や打ち方などを時吉さんから教わった」(岩崎)という師弟対決は見応え十分だった。

 岩崎のラケットはフォルティウスFT、フォアはキョウヒョウネオ3(紅双喜)、バックはオメガⅤプロ(XIOM)

 「粘着ラバーは昔から使っています。使って1週間くらいたったものが良いですね。開封したばかりだと粘着が強くて、弾みも悪い。使い込んでいって、良い感じにシートが軟らかくなったほうが、回転もかかるし弾みも良いんです。今使っているのも全日本に合わせて、年始に貼ったラバーです。

 バックは逆に新品のほうがいいですね。ぼくはバックがあまり硬くて回転重視だと使えない。ブロックができる範囲で、バックバックで押していけるラバーが良いんです。オメガはヨーロだとブロックは良いけど攻撃は難しい。ツアーだとブロックが難しくなります。だからプロが良いですね。

 ラケットはずっとルデアック(ニッタク)でしたが、早稲田大に練習しに行ったときに大島(ファースト)に『これ、いいですよ!』とフォルティウスFTを使わせてもらったんです。ルデアックは良いラケットですが、もう少し弾みが欲しかったんです。ルデアックフリートやルデアックパワーも使いましたが、なんか違くて、グリップも合わなかった。フォルティウスFTはルデアックの感覚のまま弾みが向上したようなラケットでした。グリップも合うし、良いですね」
  • パワーを生かした重いドライブがトレードマーク

  • キョウヒョウは使い込んで味を出していく

 秋田商業高の3年生、齋藤元は裏面なしの正当派ペンホルダー。卓球を始めたころはシェークだったが、スポーツ少年団の監督がペンホルダーだったため、興味本位で使ってみたら、ショートのほうがやりやすいと変更したという。

 ラケットは桧単板10㎜厚のサイプレスMAX(バタフライ)、ラバーはテナジー05FX(バタフライ)だ。

 「ラケットは高校のOBの方からいただいたものです。それまではロリン(ニッタク)を使っていましたが、このラケットに変えたら打球のスピードや飛距離が上がりました。裏面は貼ったこともありますが、難しいですね。ぼくにはショートのほうが合っています。
 ラバーは8月のインターハイまでテナジー05の特厚を貼っていました。インターハイが終わってからほとんど練習をしていなく、公務員試験の勉強をしていました。そしたら筋力が落ちてしまい、ラケットが重く感じたんです。前に使っていたテナジー05FXの厚を貼ったら、ちょうど良かったので、それで県予選に出たら準優勝できて、全日本に出場できました。
 ラケットはコルク部分を長いものに付け替えて、ハイフィットにしています。OBの方がぼくに合うようにいろいろと削ってくれたりカスタマイズしてくれました」
  • 秋田市役所に就職予定で卓球も続けるという齋藤選手

  • ショートで粘り、フォア強打につなげる正当派

  • コルクはハイフィット仕様に改造

  • 裏面は滑り止め部分が削れてなくなってしまっている

 東京都内にある卓球場「T.O.M&卓球三昧」の人気プロコーチである大塚裕貴(流山アストロズ)。千葉経済大附属高から明治大学に進学し、メキメキと力をつけて、大学4年の時には全日学でベスト8に入賞した。卒業後、プロコーチになりながらもプレーは続けて、全日本社会人やクラブ選手権で活躍している。

 ラケットはティモボルALC、フォアがテナジー05、バックがテナジー64と超王道の組み合わせだ。

 「ラケットは昔から使っています。慣れているので、他に変えられないですね。
 ラバーは一度ラクザ系を使ったんですが、プラボールになって学生時代に使っていたテナジーに戻しました。テナジーは重量が軽いんです。社会人になって、練習量が少なくなったので、振れなくなったんです。スイングスピードが遅くなり、ボールが走らなくなった。テナジーは特に64を貼ると、重量が軽くなりますね。
 テナジーの良さはイメージ通りのボールが行くことです。他のラバーはたまに落ちてしまい、打つのが怖いときがあります」(大塚)
  • 強くて人気の大塚コーチ

  • テナジーは今や軽いラバー

  • 前中陣から強烈な両ハンドを打つ

  • 見事、1回戦を突破

 滋賀県にある卓球スクール「アドバンス」でプロコーチとして活躍する松井淳悟(ever free)。1回戦で卯木(愛知工業大)に敗れたが、生徒の指導をしながらも、自らも戦う姿勢を崩さないコーチはカッコイイ!

 ラケットはリベルタシナジー(ダーカー)、フォアはGFプロ(ミズノ)、バックはテナジー64だ。

 「大会の直前まで水谷隼ZLCを使っていたんですが、1週間前に変えました。大学へ練習しに行った時に大学生のボールが重くて弾かれてしまう。特にG40+は硬いのでラケットをもう少し軟らかくしたかったんです。水谷隼ZLCより弾みを抑えてボールを持つようなラケットと思い、リベルタシナジーにしました。
 私はあまりフォアが得意じゃなくて、バックで回転や変化を作ります。フォアにテナジーを貼ったこともありましたが、私のパワーでは飛ばない。もう少し力がなくても飛んでくれるラバーが良いと思って、GFプロにしています。
 GF48よりもあと少しスピード、もう少しスピンと不満だったところが補強されてすごく良いラバーです。バックは薄くドライブをかけたり、ミートしたり、テナジー64が良いですね。
 用具はいつも卓球王国WEBのピックアップ動画を参考にしてます。あそこに出てきた用具はほとんど買ってますよ(笑)」(松井)
  • 滋賀チャンピオンに習いたい人はアドバンスへ!

  • 実力のある大学生を相手に善戦

  • このラケット、正直全日本で見るとは思いませんでした

  • ドライブとミートの両方を武器にできるテナジー64

 ネットの上をスッと直線的に飛び、オーバーするかと思えば、相手のコートにストンと落ちる。久松亜由実(愛媛銀行)の美しきカットの弾道は芸術の域と言える。女子シングルス1回戦では促進ルールに持ち込まれながらも、最後は鮮やかなバックスマッシュで勝利した。

 ラケットは高島SH3(コクタク)、フォアがヴェガアジア(XIOM)、バックがVO>102(VICTAS)。ラケットのグリップはアグレックス44だが、高島規郎氏からもらったという特注品。ブレードは中芯に杉材を使っている高島SH3のプロトタイプだ。

 「大学2年の時に高島さんにいただいたラケットです。私は手に響く感覚が苦手で、あまり響かないほうが良いです。そのほうが薄く当ててカットができると思います。また手に響くと相手の打球を受けて、体が重くなってしまう感覚になるのです。今のラケットにしてから体が軽いですね。
 ラバーはヴェガアジアのMAXです。いろいろ試しましたが、スポンジが硬くてシートが軟らかいものが好きです。ヴェガプロはシートも硬いので、手に響いてしまうんです。
 バックは表ソフトのVO>102の1.8㎜です。昨年の国体までミリタル2(TSP)を使っていて、あまり変化がなかったから、周りになんで使っているの?と言われて、変えました。今のラバーはミリタル2と感覚があまり変わらないのに切れますね。回転の変化が大きくなりました」(久松)
  • 今年の愛媛国体での活躍も期待される久松

  • ラケットは高島氏から受け継いだ特注品

  • 安定したカットは相手の強打に押されない

  • 直線的で浮き上がらないカット

 実は私(卓球王国編集部ゆう)が用具相談を受けていた選手なのです。
プラボールになってから用具に悩んでいた市川梓(日立化成)。
 「後期日本リーグでボロボロに負けて、用具が合わない、変えなきゃと思って、連絡したんです」(市川)。

 市川はそれまでインナーフォースZLC、フォアに翔龍(ヤサカ)、バックにテナジー05FX(バタフライ)を使っていた。「とにかくフォアが入らない。スピードも出ないし、球持ちも悪くて、威力が出なかった」。
 その後、中国ラバーには木材が良いと聞き、インフィニティVPSⅤ(スティガ)やアコースティック(ニッタク)に変更。しかし、何かしっくりこない。ちょうどその時に連絡をもらった。

 私が最初に聞いた要望は「インナーフォースZLCより弾み、球持ちがもっとほしい。カーボンだと中国ラバーが合わないから難しいので、木材で軟らかくて弾む。そして重心が先端に寄っていないラケットが良い」というもの。スティガのラケットは良かったらしいが、重心が先にありすぎて、連打ができない。そして切り替えも遅くなるという。

 一般的に威力を求める選手は遠心力を使いたいので、重心が先端寄りにあるラケットを好むが、市川は切り替えや振り遅れが怖いので、重心は手前、それでいて威力が出る用具が良いという。木材ラケットでやや重さがあり、重心が手前にあるラケット。どちらかといえば、中級者が好む用具になってしまうが、ダーカーのアルバがちょうど合いそうだと思い、1本送ってみた。一応、保険でインナー系のラケットも送った。

 「送ってもらったアルバが自分にすごく合いました。ビックリしました。ラケットでこんなにかわるなんて・・・。
 プラボールになってからフォアの威力が半減してしまって、悩んでいました。アルバは威力が出るし、ボールの弧線が強いので、強く当てても相手のコートでグッと沈んで入ってくれます。アコースティックやインフィニティよりも威力が出るし、いろいろな技術がやりやすい。とにかく球持ちが良い。
 翔龍ともすごく合うラケットだと思います。そしてドライブだけじゃなくて、スマッシュも打てます。他のラケットだとドライブは打てるけど、スマッシュは打てなかった。
 12月頭に送ってもらって、全日本に間に合いました」(市川)
  • 用具に不安がなくなれば、メンタルも安定!

  • このアルバ、ゆうの私物です

 小学6年生とは思えないほどの、スカッとした勝ちっぷりとメンタルの余裕にはすでに大物の風格が漂っている木原美悠(ALL STAR)。2020年の東京五輪を目指す大器には連日メディアが貼りつき、コートの周りには多くのカメラが取り囲んでいる。そんな注目の木原に向けて記者から質問が飛び交うため、その日の試合が終わったら会見が開かれる。果たして用具の質問などしていいのだろうか・・・と思ったが、兄・翔貴選手の計らいもあり、用具の話を聞くことができた。

 ラケットはガシアンビジョンソフトカーボン(コニヨール)、フォアはターゲットプロGTーH47(コニヨール)、バックはパチスマ2(JUIC)

 「こだわりかぁーあるかなー(笑)。用具は全部お父さんが選んでいるんですよね。でもラケットは打った瞬間の打球感が良いと思います。
 私は変化よりもスピードを重視しています。ラバーもスピードが速いものが好きです。バックのパチスマ2は小学1年の時から使っていて、いろいろ変えたこともありますが、戻ってきました。お父さんが一番合っている判断したんだと思います。パチスマ2はスピードが出て、打ち抜いていけます。ブロックもやりにくくないし、自分から打っていける表ソフトだと思います」
  • 表ソフトへのこだわりは強い木原選手

  • バックを攻められても、押し返す力がある