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中国リポート

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 少し前のニュースで恐縮ですが、11月1〜8日、遼寧省・鞍山オリンピックセンターで『2020全国少年卓球選手権』が開催された。出場資格があるのは、2005年1月1日〜2009年12月31日の間に生まれた選手たちで、いわば「U-15(15歳以下)」の全中国選手権。行われたのは男女団体、男女シングルス、混合ダブルスの5種目だ。中国全土から監督・コーチ・選手合わせて455名が参加し、7日以内にPCR検査を受けて陰性であることが大会参加の条件とされた。

 今大会のユニークな点は、男女シングルスのベスト32が決定した時点で「30m走」「3000m走」「縄跳び(45秒間での二重跳びの回数)」「立ち幅跳び」という4種目の体力測定を行い、体力測定の成績とシングルスの成績を合わせて総合成績を決定すること。男女シングルスのチャンピオンは国家2軍チームのメンバーとなり、ベスト8の選手には全国青年選手権(U-18)の出場権が与えられるが、次のステージに進む前に身体能力の測定によって、選手たちの将来性をひとつの「振るい」にかけた形だ。

 8日間の日程を終え、男子団体は北京市第六十六中の選手で構成された中国中学生体育協会チームが優勝。女子は北京燕京啤酒チームが優勝した。北京燕京啤酒は北京っ子が愛する地元のビール会社だが、北京市チームのスポンサーとはいえ、15歳以下の大会のチーム名としては少々微妙なところ。

 男子シングルスを制したのは、江蘇省チーム時代に陳チィ(王+己/04年アテネ五輪男子複金メダリスト)の指導を受けた右シェークドライブ型・陳垣宇(チェン・ユエンユ/江蘇ZGL)。徐奕(シュ・イー/山東魯能)と組んだ混合ダブルスでも優勝し、2冠を達成した。

 女子シングルス優勝の覃予萱(タン・ユゥシュアン/北京燕京啤酒)も14歳の右シェークドライブ型で、広西チワン族自治区の南寧市出身だが、現在は北京市チームに所属している。陳垣宇は2019年12月にすでに国家2軍チーム入りを果たしており、覃予萱は大会後に国家2軍チームへの招集が発表されている。センスと身体能力を兼ね備えたジュニアの有望株が、これからどのような活躍を見せるか。少々覚えにくいが、名前だけは覚えておいても良さそうだ。
  • 大会が開催された鞍山オリンピックセンター

●河北省出身の主な男子選手
石家荘市 劉イ(火×4)・王臻(ユージーン・ワン/カナダ)
唐山市 郗恩庭・李景光・梁靖崑
保定市 王志良・王浩・崔慶磊・范勝鵬
秦皇島市 程靖チィ
辛集市 宋海偉(吉田海偉/日本)・高寧(ガオ・ニン/シンガポール)

 大変長らくのご無沙汰をしてしまいました、中国卓球人国記。今回は河北省の男子編。首都・北京市と天津市、ふたつの直轄市を取り囲むように位置している。中国の卓球の歴史を語るうえでは、決して外せない省のひとつだ。

 1960年代から70年代にかけて、河北省出身の男子選手は北京市や上海市の選手とともに、中国チームの主力を担った。最初に世界に飛び出したのは右シェークカット型の王志良。1963年の世界選手権プラハ大会で、右ペンカット型の張燮林とのカットペアで優勝。男子ダブルスで中国初のチャンピオンとなった名選手だ。今年の9月15日に80歳で逝去している。

 続いて、中国が3大会ぶりに世界選手権に出場した1971年名古屋大会では、郗恩庭と李景光が代表入りを果たす。郗恩庭はこの名古屋大会で男子シングルス3位に入った後、73年サラエボ大会の前に徐寅生のアドバイスによって裏ソフトに転向。強烈な変化サービスとプッシュ、3球目フォアドライブを武器に世界チャンピオンとなった。サラエボ大会・男子シングルス決勝のヨハンソン(スウェーデン)戦では、最終ゲームの15ー15からネットイン1本とエッジ3本をねじ込んだという逸話も残る。昨年(2019年)の10月27日、胸部大動脈瘤の破裂により、惜しまれながら73歳で逝去した。

 一方、李景光は団体戦で活躍。特に日本チームの前に鬼神のごとく立ちはだかった、堂々たる体躯の左ペン表ソフト攻守型。71年名古屋大会の男子団体決勝では、河野満、長谷川信彦、伊藤繁雄の3人を連破し、チームは5ー2で勝利。3大会ぶりの男子団体優勝の立役者となった。73年サラエボ大会の男子団体決勝リーグでも日本と対戦し、4ー4ラストで高島規郎と対戦。最終ゲーム20ー14から20ー19まで挽回されながらも、高島が倒れ込みながら打った勝負を懸けたスマッシュをブロックで返球し、観客を熱狂させた。
 
 文化大革命での2大会の欠場の後、世代交代を迎えた中国男子の「守護神」として活躍した李景光。しかし、現役引退後は20年以上も統合失調症に苦しみ、生涯独身だった彼の面倒を見たのは姉ひとりだけ。2000年6月に北京市内で投身自殺によって亡くなるという、悲劇的な最期を迎えている。

 王志良・郗恩庭・李景光らによる「第一次黄金期」を迎えた後、低迷期に入った河北省男子。次に世界選手権の代表メンバーに入ったのはカットの王浩(ワン・ハオ)だ。1991年4月の世界選手権千葉大会で史上最低の男子団体7位に沈んだ中国が、新たな指揮官・蔡振華を迎えて臨んだ91年11月のチームワールドカップ。蔡振華が呼び寄せた秘密兵器は、故障の連続で国家チームを離れ、ドイツ・ブンデスリーガでプレーしていた王浩だった。そして決勝のスウェーデン戦では、馬文革・王涛・王浩の3人が出場して3ー0で完勝。中国復活への布石となった。2年後の93年世界選手権イエテボリ大会では、決勝のスウェーデン戦で2点を献上してリベンジを喫してしまうのだが……。ちなみに王皓と発音が同じなので、年齢が上にも関わらず中国では「王皓じゃないほうの王浩」と呼ばれたりもする。

 そして今、河北省出身の選手として初のシングルスの世界チャンピオンを狙うのは、世界ランキング8位の梁靖崑だ。19年世界選手権個人戦では、準々決勝で丹羽孝希との熱戦を4ー3で制し、初のメダル獲得。逆三角形の体躯から放つ両ハンドドライブはパワフルで、ジュニア時代のような精神面の不安定さもなくなってきた。馬龍・許シンの引退後、樊振東や林高遠、王楚欽とともに国家チームの主力を担うことになる。

 最後に、河北省出身の男子選手は、選手やコーチとして海を渡った人物も少なくない。2004・05年度全日本選手権2連覇の吉田海偉(中国名:宋海偉)は辛集市の出身。ペン表で卓球を始めたが、89年世界選手権・男子団体決勝で中国がスウェーデンに完敗したのを契機にペン裏ソフトドライブ型に変身。金擇洙(韓国)に憧れ、フットワークを生かしたドライブ連打のスタイルを築いた。そして卓球王国本誌で『脱・自滅のフットワーク』を監修している、「体の使い方のスペシャリスト」中澤鋭さん(中国名:王鋭)も河北省出身。省チーム時代の練習はまだフォアハンド重視、フットワーク重視。「400mのトラックを午前10キロ、午後10キロ走ることもあった。疲れ果てて、晩ごはんを食べる前に寝てしまったこともあります」というほど、ハードに鍛えられたそうだ。

●河北省男子明星隊 MEN’S HEBEI ALL STARS
先鋒 王浩
次鋒 王志良
中堅 梁靖崑
副将 李景光 
大将 郗恩庭

・先鋒と次鋒に鉄壁のカットを揃え、中堅はシェークドライブ型の梁靖崑。副将と大将には、左ペン表の李景光と右ペン裏の郗恩庭という「ツインタワー」を揃えた大型チーム。戦型もバリエーションに富んでおり、他の省と比べても決して見劣りしない戦力を備えている。オールスターズには入らなかったが、個人的にはセンス抜群のぽっちゃりシェークドライブ、カナダの王臻も好きな選手だ。
  • 張燮林とのカットペアで優勝した王志良

  • 73年世界チャンピオンの郗恩庭。写真は2018年4月の日中交流大会で来日した際のもの

  • 長身のカット型・王浩はドイツのブンデスリーガでプレー

  • 豪腕・梁靖崑は郗恩庭に続き、河北省が生んだふたり目の世界王者になれるか

  • 39歳になった今も現役バリバリでプレーする吉田海偉

 10月20日、中国共産党中央軍事委員会・訓練管理部に属する軍事体育訓練センターは、「調整改革動員部署大会」を北京市で挙行。人民解放軍に属するプロスポーツチーム「八一体育工作大隊」を全面的に改革し、軍事色の強い幾つかのスポーツを除く、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、体操、そして卓球などの競技スポーツチームを解散させることを宣言した。

 人民解放軍の建軍記念日である「八一(8月1日)」を冠した「八一体育工作大隊」は1951年9月に創設され、数多くの競技スポーツで世界チャンピオンを輩出。「金メダリストの揺籃」とも言われてきた。

 現在、卓球の人民解放軍チーム(正式名称は「解放軍八一体育工作大隊・ピンパン球中隊」)には、男子の樊振東・周雨・周愷・徐晨皓・薛飛、女子の陳可・劉㬢らが所属。王皓(09年世界チャンピオン)や王涛(96年五輪銀メダリスト)らが指導陣に名を連ね、中国卓球協会の劉国梁会長も解放軍チームの出身だ。さらに歴史をたどれば、男子の李振恃・范長茂・施之皓、女子の童玲・戴麗麗・沈剣萍・孫晋など、数多くの名選手を輩出している。

 CBA(中国プロバスケットボールリーグ男子)の創設から6シーズン連続優勝を果たした名門・八一ロケッツをはじめ、解放軍チームは中国国内のプロリーグから相次いで脱退。卓球のスーパーリーグでも、2018-2019シーズン男子3位・女子4位の八一南昌(名称は参戦当時)がリーグを脱退することは決定的だ。そもそもスーパーリーグが、2シーズン続けて休止状態に陥っているのだが……。

 中国のスポーツ界にとって、ひとつの転換点になるであろう解放軍チームの改革。10月上旬に行われた全中国選手権で、解放軍所属の選手たちがすべて個人登録で出場していたのも、今回の一件が背景にあったようだ。樊振東をはじめとする所属選手たちの、今後の所属先はどうなるのか。続報があれば、またお伝えします。
  • 09年全中国運動会・男子団体優勝の解放軍チーム。中央に王皓、左端に山東省から一時移籍の張継科がいる

  • 14年ユース五輪表彰、男子シングルス優勝の樊振東の初々しい敬礼

 10月1〜10日、山東省威海市の南海オリンピックセンターで行われた『2020 宝能杯 全中国選手権』。男女団体、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスの7種目が行われた。(主な記録はページ下部を参照)

 まず男女団体は、広東省と河北省が優勝。広東省は決勝の北京戦、1・2番で馬龍・王楚欽に敗れて0ー2と追い詰められたが、3番張超の勝利で流れを引き戻して奇跡的な逆転勝ち。すでに35歳の張超だが、熱い闘志と団体戦で見せる強さは未だ健在。まさに団体戦のムードメーカーだ。男子団体での広東省チームの優勝は2010年大会以来で、決勝の解放軍戦に出場したのは馬琳・張超・林高遠というメンバーだった。

 女子団体では河北省が、白楊・牛剣鋒らを擁した2000年大会以来、実に20年ぶりの優勝。小さな大エース・孫穎莎が確実に2点を取り、右シェークバック表ソフト攻守型の何卓佳がポイントゲッターとなった。何卓佳は決勝2番で、安定したバックドライブを軸に異質型にはめっぽう強い陳夢から金星。何卓佳の徹底した粘りとバック表ソフトの変化、要所でのネットインに陳夢が根負けしたような試合展開だった。かなり目方が増えた印象のある(失礼)何卓佳だが、持ち味の粘り強さは2014年に上海で行われた世界ジュニアで、初めて見た時から変わらない。「日本人好みなプレーヤーだな」と感じたのを覚えている。

 団体に続いて行われたダブルス3種目では、まず混合ダブルスで王楚欽/王曼昱の「王・王」ペアが優勝。決勝では優勝候補筆頭の許シン/孫穎莎を4ー1で下した。男子ダブルスは馬龍/許シン、女子ダブルスは陳夢/王曼昱が実力通りの優勝を飾っている。男子ダブルスでは、前回の男子シングルスチャンピオン、侯英超が14歳年下の馬特とカットペアを組み、3位に入賞している。

 そして男女シングルス。先に決勝が行われた女子シングルスは、決勝で陳夢が孫穎莎にストレート勝ちして初優勝。団体決勝では何卓佳に屈した陳夢だが、女子シングルス決勝でのバックドライブの威力と安定性は抜群だった。バック対バックで確実に優位に立ち、巧みな緩急とコース変更で孫穎莎をねじ伏せた。
 3ゲーム目、孫穎莎が9ー8とリードした場面で、攻撃型同士の対戦では異例の促進ルールに入るひと幕もあったが、孫穎莎が10ー8でゲームポイントを握ったこのゲームを陳夢が逆転すると、4ゲーム目は出足から大きくリード。丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲が欠場する中、先輩の意地で孫穎莎の快進撃を止めてみせた。

 大会最終日に行われた男子シングルスは、決勝で馬龍と樊振東が激突。ゲームオールの大激戦の末、樊振東が勝利して4年ぶり3回目の優勝を飾った。両者一歩も引かない、両ハンドの激しい打撃戦の中、樊振東は最終ゲーム7ー4から7ー7と追いつかれたところで、馬龍のフォアを2本続けてバックハンドで抜く。サイドを切る厳しいフォア攻めを見せておいて、9ー7からきっちりバック対バックのラリーを制した。
 「リードされた時も決してあきらめなかった。自分が技術だけでなく、戦術面でも常にクリアな状態で戦うことができてうれしい」(樊振東)。

★「2020 宝能杯 全中国選手権」 主な上位の結果

〈男子団体〉●準々決勝

北京燕京啤酒 3ー1 遼寧省   山東省 3ー0 天津市
広東省 3ー1 黒龍江省     湖北省 3ー0 湖南省
●準決勝
〈北京燕京啤酒 3ー0 山東省〉

○馬龍 7、7、8 于子洋
○王楚欽 4、8、ー9、ー7、8 方博
○劉夜泊 ー8、9、ー5、4、10 劉丁碩
〈広東省 3ー1 湖北省〉
○林高遠 11、7、6 薛飛
○周啓豪 5、8、ー9、7 馬特
 張超 ー7、ー7、ー8 習勝○
○林高遠 5、9、4 馬特
●決勝
〈広東省 3ー2 北京燕京啤酒〉

 周啓豪 7、ー8、ー6、ー3 馬龍○
 林高遠 ー10、13、ー7、ー12 王楚欽○
○張超 8、8、ー8、7 劉夜泊
○林高遠 ー6、6、9、ー12、8 馬龍
○周啓豪 7、10、ー9、9 王楚欽

〈女子団体〉●準々決勝
山東省 3ー1 湖北省    江蘇ZGL 3ー2 天津市
四川省 3ー2 黒龍江省   河北省 3ー1 北京燕京啤酒
●準決勝
〈山東省 3ー1 江蘇ZGL〉

○顧玉ティン ー8、6、ー3、8、5 劉斐
○陳夢 9、4、5 石洵瑶
 王暁彤 ー7、ー7、ー5 銭天一○
○陳夢 8、6、7 劉斐
〈河北省 3ー2 四川省〉
 何卓佳 ー8、ー5、ー9 朱雨玲○
○孫穎莎 11、6、11 楊惠菁
 臧小桐 ー3、ー10、ー5 范思琦○
○孫穎莎 7、ー12、1、8 朱雨玲
○何卓佳 6、7、10 楊惠菁
●決勝
〈河北省 3ー0 山東省〉

○孫穎莎 3、ー10、5、6 顧玉ティン
○何卓佳 6、4、ー10、15 陳夢
○臧小桐 11、4、5 王暁彤

〈男子シングルス〉●3回戦
梁靖崑(河北省) 6、7、ー4、8、5 方博(山東省)
林高遠(広東省) 1、8、14、6 侯英超(陝西省) 
張煜東(江蘇ZGL) 4、ー5、ー7、8、9、11 徐晨皓(個人)
●準々決勝
樊振東(個人) 8、9、7、4 趙子豪(上海地産集団)
梁靖崑 ー12、7、10、8、ー6、9 林高遠
馬龍(北京燕京啤酒) 3、5、10、9 張煜東
王楚欽(北京燕京啤酒) 6、8、4、ー8、6 許シン(上海地産集団)
●準決勝
樊振東 ー5、11、8、12、4 梁靖崑
馬龍 6、ー7、7、10、ー6、6 王楚欽
●決勝 樊振東 5、ー12、ー3、5、ー6、9、7 馬龍

〈女子シングルス〉●3回戦
顧玉ティン(山東省) 10、4、7、9 張瑞(湖北省)
陳幸同(遼寧省) ー10、ー8、6、10、10、8 陳可(個人)
●準々決勝
陳夢(山東省) 10、ー9、9、6、5 銭天一(江蘇ZGL)
王曼昱(黒龍江省) 5、9、0、4 何卓佳(河北省)
顧玉ティン ー7、ー6、ー11、12、6、9、9 王芸迪(遼寧省)
孫穎莎(河北省) 9、3、7、ー10、ー6、9 陳幸同
●準決勝
陳夢 8、6、3、10 王曼昱
孫穎莎 6、2、6、3 顧玉ティン
●決勝 陳夢 2、7、10、9 孫穎莎

〈男子ダブルス〉●準決勝
馬龍/許シン(北京燕京啤酒/上海地産集団) ー8、5、8、6、7 馬特/侯英超(湖北省/陝西省)
林高遠/梁靖崑(広東省/個人) ー8、6、6、ー10、8、10 樊振東/王楚欽(個人/北京燕京啤酒)
●決勝 馬龍/許シン ー8、13、12、3、3 林高遠/梁靖崑

〈女子ダブルス〉●準決勝
陳夢/王曼昱(山東省/黒龍江省) 9、9、3、ー8、9 陳熠/蒯曼(上海地産集団/江蘇ZGL)
孫穎莎/王芸迪(河北省/遼寧省) 4、4、ー9、7、5 張薔/斉菲(江蘇ZGL/天津市)
●決勝 陳夢/王曼昱 ー11、10、5、ー5、ー5、9、6 孫穎莎/王芸迪

〈混合ダブルス〉●準決勝
許シン/孫穎莎(上海地産集団/河北省) 8、11、12、ー9、9 林高遠/孫銘陽(広東省/個人)
王楚欽/王曼昱(北京燕京啤酒/黒龍江省) 8、11、10、ー9、10 劉丁碩/銭天一(山東省/江蘇ZGL)
●決勝 王楚欽/王曼昱 11、9、ー6、1、5 許シン/孫穎莎
  • 樊振東は男子単3回目のV(写真は8月の「備戦東京」・提供『ピンパン世界』)

 10月1日、山東省威海市の南海新区オリンピックセンターで、2020全中国選手権が開幕した。

 現在、南海新区オリンピックセンターでは中国チームが集合訓練の真っ最中。国際大会の停止で試合経験を積むことができない国家チームの選手に実戦の場を提供するため、さらに11月に同会場で開催される男女ワールドカップのリハーサルとして、「いっそのこと全中国選手権をやってしまおう」という感じだ。9月15日に山東省体育局が開催に合意し、組織委員会を結成して2週間余りで開催にこぎつけるこのスピード感。日本ではちょっと考えられない。

 来年1月の全日本選手権は、新型コロナウイルス感染症の対策のためにダブルス3種目が中止となったが、全中国選手権は男女団体、男女シングルス/ダブルス、混合ダブルスの7種目をすべて開催する。
 男女団体は各24チームが出場。4チームごとの予選リーグを戦った後、決勝トーナメントで優勝を争う。男女とも解放軍チームは出場しておらず、樊振東をはじめとする解放軍の選手たちは、個人種目には個人名義で出場している。

 男子シングルスには馬龍、樊振東、許シン、林高遠、王楚欽など国家チームの主力メンバーが顔を揃え、147名が出場。一方、139名が出場する女子シングルスの出場選手リストには、集合訓練に参加していない丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲の名前はなく、陳夢・孫穎莎・王曼昱・陳幸同らが出場する。

 男子ダブルスのペアリングは所属チームの枠を超え、馬龍/許シン、樊振東/王楚欽、林高遠/梁靖崑という組み合わせ。女子ダブルスでは、陳夢は王曼昱とペアを組み、孫穎莎は王芸迪とのペア。孫穎莎のシングルス2点起用に陳夢/王曼昱の単複という、東京五輪団体戦のオーダーが見え隠れする。さらに混合ダブルスでは、孫穎莎は8月の『備戦東京』に続いて許シンとペアを組む。

 オリンピックの卓球競技では常に経験を重視し、ベテランを重用してきた中国。しかし、今大会のエントリーを見ていると、孫穎莎の五輪代表入りの可能性は高いと言わざるを得ない。中国女子代表の3名全員が五輪初出場というのも考えにくいが……。4年に1度のオリンピックが、思わぬ形で1年延期されたことで、選手たちの運命は大きく変わろうとしている。
  • 昨年10月のチームワールドカップでの丁寧/劉詩ウェン。この時は五輪代表も既定路線だったが…

  • 自らの手で五輪代表を手繰り寄せようとしている、小さな豪腕・孫穎莎

 9月17日、中国卓球協会の訓練基地(トレーニングセンター)および青少年培訓基地(青少年育成トレーニングセンター)が、山東省威海市の南海新区オリンピックセンター内に誕生した。オープニングセレモニーには中国卓球協会の劉国梁会長をはじめ、国家チームのコーチ陣や選手が揃って出席した。

 オリンピックも開催できる規格のメインホールにトレーニングセンター、ジュニア選手用のトレーニングセンターとホテルが一体となったこの訓練基地。このような卓球専門の訓練基地は中国全土にあり、第1号である湖北省黄石市の訓練基地(1987年完成)をはじめ、河北省石家荘市正定県、黒龍江省大慶市、広東省仙頭市、福建省厦門市、浙江省寧波市、江蘇省通州市、四川省成都市など枚挙にいとまがない。国際大会は沿岸部の海洋性気候の都市で行われることが多いため、中国でも海沿いの都市に建設されることが多い。

 オープニングセレモニーに出席した国家チームの選手たちは、そのまま訓練基地での集合訓練に入る。以前の中国リポートでは、10月まで海南省で集合訓練を続けるとお伝えしていたが、この威海の訓練基地に移動し、現地で行われる11月8〜10日の女子ワールドカップ、11月13〜15日の男子ワールドカップに備えるという。都市の中心部ではなく、沿岸部の新興開発区にある訓練基地なら、出場選手や関係者が外部の人間と接触しない「バブル」での大会開催もよりスムーズになる。残念ながらメディアの取材はNGだ。

 海外選手は中国への入国後に1週間の隔離期間が設けられるなど、出場に際して様々な障害を乗り越えなければならない。一方、中国選手は集合訓練を行いながら悠々と大会を迎えることができる。公平とはいえない状況だが、中国でなければワールドカップクラスの国際大会を実施するのは難しいというのも、また事実だろう。
  • 新たな訓練基地を「世界的に見ても最高水準のトレーニングセンター」と評した劉国梁会長

 9月15日、1963年世界選手権プラハ大会の男子ダブルスチャンピオンで、中国女子チームの監督も務めた王志良が80歳で逝去した。

 王志良は河北省保定市の出身で、1958年に天津市チームの一員となり、同年に国家チーム入り。当時としては珍しいシェークカット型の選手で、63年世界選手権ではペンカット型の張燮林とダブルスを組んで優勝。中国男子で世界選手権・個人戦のタイトルを獲得したシェークカット型を探してみると、この王志良と77年バーミンガム大会男子複優勝の梁戈亮(李振恃とのペア)がいるが、梁戈亮は一時攻撃型にも転向したオールラウンダー。純粋なシェークカット型は王志良だけだと言えるかもしれない。

 ちなみに70年代以降の中国選手が用いた、両面に同色(黒)のラバーを貼って反転させて出す「同色反転サービス」は、王志良が考案したと言われている。現役引退後は指導者の道に進み、1971年世界選手権名古屋大会では中国女子チームの監督として来日。女子団体では地元・日本にタイトルを譲ったが、女子シングルス・ダブルス・混合ダブルスの3種目で中国がタイトルを獲得。女子シングルス優勝は林慧卿、女子ダブルス優勝は林慧卿/鄭敏之といずれもシェークカット型の選手で、混合ダブルスを制したのは元ダブルスパートナーの張燮林と林慧卿のペアだった。

 中国女子チームの監督を退任した後は、文化大革命による混乱を避けて香港に移住し、多くの選手を指導した王志良。中国リポートの『中国卓球人国記』で、ちょうど河北省男子編を書いていたところで思わぬ訃報に触れた。謹んで哀悼の意を表します。
  • 63年世界男子複王者の王志良。写真は61年大会のコンソレーションマッチで優勝した時のもの

 14日間に及ぶ『備戦東京』エキシビションマッチが閉幕し、再び海南省陵水での集合訓練へと戻った国家チーム。大会前に発表された規定により、『備戦東京』男女シングルスでベスト16以上に入った国家男女2軍チームのメンバーは、1軍チームへと昇格した。ベスト16に入ったのは以下の男女4選手。

●男子
全開源 19歳 遼寧省チーム所属 右シェークドライブ型
○女子
斉菲  19歳 天津市チーム所属 右ペンホルダードライブ型
石洵瑶 19歳 江蘇省チーム所属 右シェークドライブ型
陳熠  16歳 浙江省チーム所属 右シェークドライブ型

 男子で1軍チーム入りを果たしたのは全開源。予選グループで劉丁碩(15年世界ジュニア優勝)、決勝トーナメント1回戦で向鵬(19年世界ジュニア優勝)に勝利。2回戦でも許シンから1ゲームを先取した。2016年12月の国家2軍チーム入りからなかなか1軍に上がれなかったが、ようやくつかんだチャンス。スタイルはオーソドックスな右シェークドライブ型なので、もう少し特徴がほしいところ。

 一方、女子では16歳の陳イが1軍チーム入り。決勝トーナメント1回戦で張薔(右ペンドライブ型)をゲームオールで破った。昨年の世界ジュニアで初めてプレーを見たが、非常に脚が長く、アスリートタイプの体型。小さい頃は病気がちで、卓球好きの父親の影響で卓球を始めたという。出身は浙江省杭州市だが、上海にある中国卓球学院で腕を磨いた選手だ。これからパワーがついてくると怖い存在。

 19歳の斉菲は、天津市チーム所属の右ペンドライブ型。16年全中国選手権で陳夢から3−1とリードを奪い、あと一歩まで追い詰めた。中国女子の若手のペンドライブ型では、1歳年下の呉洋晨(19年世界ジュニア代表)がいるが、相手に打たせてカウンターを狙うスタイルの呉洋晨に対し、斉菲は大きく曲がる順横回転サービスから両ハンドをグイグイ振る攻撃的なスタイル。貴重なペンホルダーとして楽しみな存在だ。もうひとりの19歳、石洵瑶(16年世界ジュニア女王)はT2でもプレーした、日本でもお馴染みの選手だが、上位に食い込むにはより速い攻めが必要か。

 また、8月25日には中国卓球協会の劉国梁会長の決定として、郭雨涵(18歳)・蒯曼(16歳)・李雅可(18歳)・王暁彤(19歳)という女子2軍チームの選手たちを、引き続き1軍チームの集合訓練に帯同させることが報道された。郭雨涵と李雅可は北京市チーム、蒯曼は江蘇省チーム、王暁彤は山東省チームの所属。蒯曼は陳熠と同じ16歳で、昨年の世界ジュニアではともに代表入りを果たした有望株だ。実力的にはまだ1軍チームの上位クラスとは開きがあるが、若手選手を多く入れて1軍チームを活性化させるのが狙いか。

 『備戦東京』を欠場した丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲のうち、丁寧は8月26日から甘粛省敦煌市での李寧(Li-Ning)の創立30周年記念イベントに参加。海南での国家チームの集合訓練は10月まで行われる予定だが、中国では女子1軍チームの集合訓練の名簿が流出し、「丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲の名前がない!」と波紋を呼んでいる。1年延期された東京五輪を前に、中国女子は本格的に世代交代へ舵(かじ)を切ったのか。近年の五輪代表選考では経験を重視してきただけに、今しばらく事態を見守る必要があるだろう。
  • 八頭身プレーヤーの陳熠。上半身だけですが……

  • 「丁寧2世」とも言われる蒯曼(クアイ・マン)

 8月21日、海南省陵水で行われていた『備戦東京』2020中国卓球チーム・オリンピックエキシビションマッチが閉幕。少々遅くなってしまいましたが、21日に決勝が行われた男子団体の詳報をお伝えします。

 男子団体優勝は、東京五輪への出場が確定的だった中国男子のトップ3、馬龍・樊振東・許シンで構成された男子一団。改めて健在をアピールしたのは馬龍だ。首を傷めて男子シングルスを欠場し、男子団体1回戦からの出場となったが、初戦から貫禄のプレー。決勝の男子二団戦では、3番で北京市チームの後輩・王楚欽のチキータからの両ハンド強打を見事にさばいた。攻撃力なら中国男子でもトップクラスの王楚欽。少しでも浮いたボールは一発で持っていかれてしまうが、その強打のプレッシャーを微塵も感じさせない安定したレシーブはさすが。回り込んで放つパワードライブの威力と精度も失われていない。

 2018年の後半から左ひざの故障が悪化し、19年世界選手権個人戦で3連覇を達成した後、夏には手術を受けた馬龍。その左ひざには手術の痕がくっきりと残っている。すでに31歳という年齢で、五輪の1年延期はモチベーションに与える影響も相当大きいはずだが、「体はここ2年くらいで最も良い状態。年齢についてはあまり考えすぎないようにしている。競技スポーツで注目されるのは、年齢よりも能力と結果だからね」とコメント。競技人生のフィナーレを迎えるまでは、まだ後進に道を譲るつもりはないようだ。

 男子一団の残るふたり、許シンと樊振東については「実力どおり」というプレーか。許シンは混合ダブルスから3種目を戦うと、さすがに疲労の色が隠せなかった。中国としては対外的な強さで言えば、五輪の男子シングルスには馬龍と許シンを選びたいところだが、全身に故障を抱える許シンの3種目起用はかなりリスクがある。一方、樊振東は昨年12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルで優勝した時は、バックサイドは得意のバックドライブを生かすことに徹し、フォアを突かれても前陣での飛びつきで対応。「競技人生のピークが近い」と感じるほど強かったが、『備戦東京』ではフォアハンドの迫力不足を感じた。

 その他のチームで活躍が目立ったのは、準々決勝で方博・于子洋・薛飛の男子五団を破った男子九団の活躍。世界ジュニア代表の経験がある右シェークドライブ型の于何一に、同じく右シェークドライブ型の賽林威と左シェークドライブ型の曹巍という顔ぶれ。男子五団戦のラストで、方博にゲームオール8−10から逆転勝ちした賽林威は、国家チームでは珍しい陝西(せんせい)省出身のプレーヤー。両ハンドの柔軟なボールさばきが身上で、今回の活躍は大きな自信になるだろう。一方、最終ゲーム10−8のマッチポイントを決められなかった方博は元気がない。28歳という年齢で東京五輪への道も閉ざされ、ベストなプレーをしろと言うのは酷だろうが……。男子団体1回戦の結果は下記のとおり。

●男子団体1回戦
〈男子一団 3−0 男子十四団〉
○許シン/樊振東 6、3、7 陳垣宇/林詩棟
○馬龍 5、9、−13、7 曽ベイ勲
○樊振東 5、4、8 林詩棟

〈男子六団 3−1 男子十団〉
○孫聞/張煜東 −9、−8、6、9、7 劉夜泊/全開源
○周愷 5、4、6 梁国棟
 張煜東 12、5、−7、−8、−9 全開源○
○周愷 8、−9、5、−5、9 劉夜泊

〈男子十一団 3−2 男子七団〉
○厳昇/袁励岑 3、8、−6、−10、6 向鵬/徐海東
 楊碩 −5、−10、7、−7 鄭培峰○
○袁励岑 7、10、−6、5 徐海東
 厳昇 −12、−4、−9 鄭培峰○
○楊碩 6、10、−6、−9、8 向鵬

〈男子四団 3−0 男子十五団〉
○周雨/趙子豪 9、10、11 熊夢陽/陶育暢
○馬特 9、−10、9、5 孫佳逸
○趙子豪 7、−14、9、6 陶育暢

〈男子五団 3−1 男子十二団〉
○方博/于子洋 8、6、−4、3 曹彦涛/高楊
 薛飛 −10、−10、−5 牛冠凱○
○于子洋 11、−11、7、7 高楊
○方博 6、6、−4、9 牛冠凱

〈男子九団 3−1 男子八団〉
○于何一/曹巍 4、9、−9、10 趙釗彦/徐瑛彬
○賽林威 −7、−9、5、9、6 任浩
 曹巍 10、−8、−12、−7 徐瑛彬○
○于何一 6、−5、7、1 任浩

〈男子三団 3−0 男子十三団〉
○閻安/周啓豪 4、4、−8、8 宋卓衡/謝聡凡
○劉丁碩 7、6、5 梁儼苧
○周啓豪 6、5、12 謝聡凡

〈男子二団 3−0 男子十六団〉
○梁靖崑/王楚欽 1、12、15 張超/崔慶磊
○林高遠 2、8、3 侯英超
○梁靖崑 3、10、7 張超

●男子団体準々決勝
〈男子一団 3−0 男子六団〉

○馬龍/許シン 7、4、4 孫聞/張煜東
○樊振東 −8、12、5、12 周愷
○馬龍 4、4、−12、9 孫聞

〈男子四団 3−0 男子十一団〉
○周雨/趙子豪 −6、7、−6、4、5 厳昇/袁励岑
○馬特 −6、5、8、5 楊碩
○趙子豪 4、1、−7、8 袁励岑

〈男子九団 3−2 男子五団〉
○于何一/曹巍 9、10、5 方博/于子洋
○賽林威 −13、−7、9、3、3 薛飛
 曹巍 −8、7、−5、−5 于子洋○
 于何一 −8、−7、−13 薛飛○
○賽林威 6、−8、−9、5、11 方博

〈男子二団 3−0 男子三団〉
○梁靖崑/林高遠 6、−5、9、5 閻安/周啓豪
○王楚欽 −8、5、6、9 劉丁碩
○林高遠 −8、6、−5、9、3 周啓豪

●準決勝
〈男子一団 3−0 男子四団〉

○馬龍/許シン −8、5、4、7 周雨/趙子豪
○樊振東 5、−10、5、10 徐晨皓
○馬龍 4、5、2 趙子豪

〈男子二団 3−1 男子九団〉
 梁靖崑/林高遠 −5、5、−5、−5 曹巍/于何一○
○王楚欽 9、−14、6、6 賽林威
○梁靖崑 7、6、7 于何一
○王楚欽 4、−6、6、2 曹巍

●3位決定戦
〈男子四団 3−1 男子九団〉

 徐晨皓/趙子豪 −10、−4、−9 曹巍/于何一○
○馬特 10、−10、9、5 賽林威
○趙子豪 8、5、−2、−10、11 曹巍
○徐晨皓 5、11、−9、8 賽林威

●決勝
〈男子一団 3−0 男子二団〉

○馬龍/許シン 7、5、9 梁靖崑/王楚欽
○樊振東 −8、3、8、6 林高遠
○馬龍 12、6、−12、7 王楚欽

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 馬龍はまだまだ強い。総合力ではやはり中国男子No.1

  • 樊振東は決勝で林高遠に勝利

  • 梁靖崑(右)/王楚欽は馬龍/許シンに完敗

  • 実戦さながら、男子一団のベンチに秦志戩監督が入った。少々お疲れの許シン

  • 優勝後、インタビューを受ける男子一団の3人。「やっと終わった…」という感じ?

 東京五輪・卓球競技を想定した『備戦東京』エキシビションマッチは、本大会の日程と同様、女子団体が1日早く8月20日に終了。陳夢・孫穎莎・王曼昱がチームを組んだ「女子一団」が4試合で1点も落とさず、オールストレートで優勝を達成した。孫穎莎はついに女子団体・シングルス・混合ダブルスの3冠を獲得した(記録はページ下部に掲載)。

 前々回の中国リポート(2020/08/19)でもお伝えしたが、団体戦は女子二団が仮想・日本、女子三団が仮想・韓国というように、五輪代表候補の「一団」以外は主要なライバルチームと同じプレースタイルの選手で構成されている。その中で、女子一団は準々決勝で仮想・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の女子四団、準決勝で仮想・韓国の女子三団、そして決勝で仮想・日本の女子二団に完勝。初戦だけ孫穎莎/王曼昱のダブルスを起用し、準々決勝からの3試合は、陳夢/王曼昱のダブルスに孫穎莎のシングルス2点起用。プレッシャーのかかる2番シングルスで、孫穎莎に最後の試練を与えた感のあるオーダーだった。

 決勝で仮想・伊藤美誠の孫銘陽に対し、1ゲーム目を落としながらも逆転した孫穎莎は、試合後に「試合前から本当にこの試合はオリンピックの決勝なんだと思って準備をしてきたし、相手のことも本当に日本チームだと思って戦いました」とコメント。「これからの1年、試合で得た教訓をしっかり総括して、困難への準備をしっかり進めていきたい」(孫穎莎)。ハイレベルな部内対抗のエキシビションマッチでの3冠は、国家チームの首脳陣に対しても「満点回答」。シングルスでは対カットの圧倒的な強さを見せ、決勝の王曼昱戦の最終ゲームでは精神的な強さも見せ、団体ではシングルスで確実に得点を叩き出した。

 来年の東京五輪の中国女子代表3名は、今回の『備戦東京』を終えてどう変化したのか。2020年に東京五輪が予定どおり行われていたら、中国女子代表3名は丁寧・劉詩ウェン・陳夢の3人になっていた可能性が高く、一方で2024年にパリ五輪が無事開催できるとしたら、代表3名は『備戦東京』と同じ陳夢・孫穎莎・王曼昱で問題ないだろう(朱雨玲の復活も期待してます)。その狭間、世代交代の真っ直中にある2021年の代表選考は難しい。

 現時点では劉詩ウェンが混合ダブルスと団体、陳夢と孫穎莎がシングルスと団体に出場するのが、中国女子の戦力値としては最も高いようにも思える。すでに2016年リオ五輪を経験し、百戦錬磨の劉詩ウェンに混合ダブルスを託して確実なスタートを切り、シングルスは「対伊藤美誠」で最も分が良い陳夢と、最も勢いのある孫穎莎が出場。団体は19年ジャパンオープン優勝の劉詩ウェン/陳夢のダブルスに、孫穎莎のシングルス2点起用で一気に押し切る。また、孫穎莎を今回の『備戦東京』と同じように3種目にエントリーすれば、五輪史上初の3冠達成の偉業も夢ではない。

 このシナリオは劉詩ウェンの右ひじの回復状況にも左右されるだろう。そして卓球史に名を残す女王・丁寧に、最後の五輪の舞台で有終の美を飾ってほしいという思いもある。世界の卓球界が停滞し、沈黙する中で、時だけが無情に流れてゆく。

●女子団体1回戦
〈女子一団 3−0 女子十団〉

○孫穎莎/王曼昱 7、−7、3、5 斉菲/臧小桐
○陳夢 4、7、3 陳イ
○王曼昱 5、9、−10、7 斉菲

〈女子四団 3−0 女子十一団〉
○張瑞/陳可 −9、4、7、−9、8 呉洋晨/李雅可
○何卓佳 7、9、5 張繽月
○陳可 8、4、8 李雅可

〈女子五団 3−0 女子十二団〉
○李佳イ/劉㬢 7、11、5 冷雨桐/李雨チィ
○胡麗梅 8、−10、6、10 黄頴チィ
○劉㬢 −6、5、7、8 李雨チィ

〈女子七団 3−0 女子十四団〉
○張薔/范思チィ 9、10、−3、−10、8 穆静毓/孫芸禎
○武楊 7、5、2 王添芸
○范思チィ 7、5、11 孫芸禎

〈女子八団 3−0 女子十三団〉
○馮亜蘭/石洵瑶 6、8、−9、7 袁媛/徐奕
○劉ウェイ珊 −4、5、9、−9、6 楊屹韻
○石洵瑶 7、8、5 徐奕

〈女子二団 3−1 女子九団〉
○顧玉ティン/陳幸同 8、6、9 郭雨涵/王暁トン
 孫銘陽 10、−11、−13、−8 クァイ曼○
○陳幸同 5、7、3 王暁トン
○顧玉ティン 9、−5、9、−9、9 クァイ曼

●準々決勝
〈女子一団 3−0 女子四団〉

○陳夢/王曼昱 9、−7、11、8 陳可/張瑞
○孫穎莎 9、6、−6、2 何卓佳
○陳夢 6、10、6 陳可

〈女子三団 3−0 女子五団〉
○銭天一/王芸迪 9、−9、8、−5、11 李佳イ/胡麗梅
 劉斐 7、−7、−4、9、−13 劉㬢○
○王芸迪 4、8、9 胡麗梅
○銭天一 6、8、8 劉㬢

〈女子七団 3−2 女子六団〉
 張薔/武楊 10、−6、−2、−1 木子/楊惠菁○
○范思チィ 11、7、−10、−9、9 車暁㬢
 武楊 −12、−9、−8 楊惠菁○
○范思チィ 9、−5、−6、4、10 木子
○張薔 11、−6、10、11 車暁㬢

〈女子二団 3−1 女子八団〉
○顧玉ティン/陳幸同 6、3、3 馮亜蘭/石洵瑶
 孫銘陽 −14、9、−5、−10 劉ウェイ珊○
○陳幸同 10、6、−4、5 石洵瑶
○孫銘陽 7、9、4 馮亜蘭

●準決勝
〈女子一団 3−0 女子三団〉

○陳夢/王曼昱 −7、5、4、9 王芸迪/銭天一
○孫穎莎 6、3、4 劉斐
○陳夢 5、7、7 銭天一

〈女子二団 3−0 女子七団〉
○陳幸同/顧玉ティン 6、7、5 徐奕/張薔
○孫銘陽 9、−10、−9、6、10 范思チィ
○陳幸同 5、5、2 張薔

●3位決定戦
〈女子三団 3−0 女子七団〉

○王芸迪/銭天一 7、6、4 范思チィ/張薔
○劉斐 5、5、7 徐奕
○王芸迪 6、−5、9、7 范思チィ

●決勝
〈女子一団 3−0 女子二団〉

○陳夢/王曼昱 9、7、4 顧玉ティン/陳幸同
○孫穎莎 −11、4、9、9 孫銘陽
○王曼昱 7、5、9 陳幸同

※写真提供:『ピンパン世界』
  • 孫穎莎、一団のエースとして役割を果たした

  • 「チームがひとつにまとまった」と陳夢。メンバー3人、自撮りでこの笑顔

  • 仮想・石川佳純/平野美宇である女子二団の顧玉ティン(左)/陳幸同。決勝は0−3で敗れる

  • 女子2団のベンチには07年世界2位の郭炎が入った

  • 陳夢(左)/王曼昱は3戦3勝で女子団体を戦い終えた