スマホ版に
戻る

速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

フォルクスワーゲンオープン

 本日、朝イチから会場を訪れ、男女シングルス1回戦をつぶさにその眼に収めたアルバイトの奈良くん。
 ヨーロッパ卓球とクレアンガをこよなく愛する彼が注目したのは、オーストリア男子の3番手ガルドスだった。さすがに目の付け所が、違う。そんな奈良リポートを特別にお届けしましょう。

~~~~~~~~~~~~~

 男子シングルス1回戦、ガルドス(オーストリア)vs唐鵬(中国香港)。世界ランキングから見ても唐鵬が圧倒するかと思われたこの一戦だが、試合はもつれにもつれ、ゲームオールの決着となった。
 試合がもつれた最大の原因は、ガルドスの特異なバック系技術。ヨーロッパ選手はアジア選手に比べるとバックハンドが強い傾向にあるが、その中でもガルドスはバック主戦型と言っても過言ではないスタイル。レシーブは、フォアサイドに来たボールまでもチキータ(横回転系フリック)。このバックサイドに来た横下回転系のチキータに対し、唐鵬はカウンターで合わせようとしてネットミスを連発。また、バックサイドを警戒するとフォアサイドを抜かれ、このチキータを辛うじて返しても、ガルドスのバックハンドが火を吹く。このバックハンドも曲(くせ)球で、チキータと同じような横回転系のドライブと、フラット系強打の二段構え。たまらずフォアへボールを送ると、決してスピードがあるわけではないが、これまた横回転系のドライブで曲げて大きく振られる。

 このバックハンドに苦しめられた唐鵬は、まずはチキータを落ち着いて返球。早い展開で勝負するのをやめ、粘り強いラリー戦術に切り替え、総合力の高さで勝負。最終的にはフォアの威力で勝る唐鵬が辛くも勝利した。
 シュラガー、陳衛星と二枚看板がいるオーストリアだが、このガルドスの成長で、さらに層の厚いチームになってくるだろう。

~~~~~~~~~~~~~

下写真:「チキータマシーン」ことガルドスだ
 世界ランク239位の塩野真人(早稲田大)が、世界ランク2位の馬琳に挑んだ1回戦。塩野は序盤から馬琳のテクニックに翻弄される。特に前に小さく落とす馬琳のドライブはネットに届かないほど。しかし、塩野は必死のプレー。第2ゲームはバックカットでよく拾い、10-9のゲームポイントでは馬琳のパワードライブを切れたバックカットで返球、馬琳のストップがネットに刺さり、塩野がゲームカウント1-1。もともとカット打ちを苦手としていた馬琳だけに、「これはいけるか?」という希望を抱かせる。
 しかし、さすがは世界ランク2位。馬琳は打球点が非常に早い強烈なドライブスマッシュを容赦なく打ち込む。第5ゲームは1-11。日本勢で今日最後に登場した塩野、ラストを締めくくることはできなかった。しかし、今大会の活躍はお見事。観客も彼の試合を楽しみにしていたのではないか。まだまだ伸びてほしい逸材だ。

●男子シングルス第2ステージ1回戦
馬琳(中国) 3、-9、7、3、1 塩野(早稲田大)
 対戦相手の譚瑞午(クロアチア)が棄権し、1回戦は不戦勝となった韓国の鉄人カットマン・朱世赫。試合時間中はチームメイトのスパーリングパートナーとして汗を流し、それが終わればこうしてトレーニング。腕立ての前にはスクワットも延々とやっていた。
 この一角だけ軍隊のトレーニングキャンプのようだ。
●男子シングルス第2ステージ1回戦
張ユク(中国香港) 11、9、6、9 柳承敏(韓国)

 この1回戦で最大のサプライズが起こった! 中国香港の張ユクがなんと柳承敏(韓国)をストレートで撃破した。
 昨日の団体戦でも不調だった柳承敏。今日のシングルスでもそのモチベーションは上がらないままだったのか、中国香港の張ユクにストレート負けを喫した。張ユクに先手をとられてバックショートが多くなり、得意とするクロスの引き合いでも優位に立てなかった。
 昨日は同じサウスポーの譚瑞午(クロアチア)に敗れている柳承敏。まさかサウスポーが苦手だとは思いたくないが…。
 スウェーデン男子チームの「もうひとりの」パーソンこと、Jon.パーソン(下写真左)。91年世界チャンピオンのパーソンはJorgen.パーソンなので、このふたりを区別するためには「Jon」と「Jor」を頭につけねばならない。
 切れ味鋭い元祖パーソンのドライブ+スマッシュプレーに対し、Jon.パーソンはマサカリを振るうようなパワーヒッター。03年世界チャンピオンのシュラガー(オーストリア)をあと一歩まで追い詰めたが、あと一歩のところでかわされた。近年、有望な若手がなかなか現れないスウェーデン、このJon.パーソンやイェレルにかかる期待は大きいと思うのだが…。

●男子シングルス第2ステージ1回戦
シュラガー(オーストリア) 8、-8、5、-9、-7、7、6 Jon.パーソン(スウェーデン)
 世界団体戦・広州大会で日本男子チームのポイントゲッターとして活躍した韓陽。一昨日に行われた男子団体準々決勝では、ガチーナ(クロアチア)に苦杯をなめたが、このシングルス第2ステージ1回戦、そのテクニックを存分に披露してくれた。
 
 対戦相手の李廷佑(韓国)は、広州大会の団体準決勝2番で水谷隼が敗れている相手。韓陽自身も、2年前の本大会のシングルス1回戦で敗れている。しかし、今日はほぼ完璧。裏面ドライブとフォアドライブのコンビネーションが良く、足も良く動いてミスが出ない。試合前の練習台での打ち合いでもかなり動きが良く、期待していたのだが、期待を上回るほどの内容だった。「かつての国家チームのチームメイトに囲まれて、気合いが入ったのでは?」と思わせた。
 試合後の会見では「今すこし風邪を引いているが、他の日本選手が負けているので、自分が勝たなければいけないと思って頑張った」と頼もしいコメント。明日2回戦の陳杞戦にも期待がかかる。

 李廷佑は韓陽のテクニックに翻弄されて、豪快なフォアドライブが不発。韓陽のフォアストレートへのドライブでたびたびノータッチを取られた。

●男子シングルス第2ステージ1回戦
韓陽(東京アート) 8、5、3、8 李廷佑(韓国)
 16時スタートの男子シングルス第2ステージ1回戦。その口開けに登場した吉田海偉(グランプリ)。対戦相手は現世界ランキング1位の王皓(中国)。

 吉田のパワードライブと王皓の裏面ドライブが激突する、好勝負が期待されたこの試合。しかし幕を開けてみると吉田はまったく精細を欠いた。王皓がパワードライブを連発するわけではないのだが、王皓の台上処理に対して回り込むことができず、バックショートが多くなる吉田。観客も首をひねる中、淡々と試合が進行。ゲームカウント0-3で迎えた第4ゲームも0-5でリードを許し、ここで吉田がタイムアウトを取ったが時すでに遅し。7-10とマッチポイントを奪われた場面では、すでに集中力が切れたようなフォアドライブの引き合いで吉田のラケットが空を切った。あまりにあっけない幕切れだった。

 また、李静(中国香港)に挑んだ高木和卓もストレートで敗戦。前陣での切れ味鋭いドライブも李静にシャットアウトされ、中陣から反撃のパワードライブを浴びた。

●男子シングルス第2ステージ1回戦
王皓(中国) 6、7、3、7 吉田(グランプリ)
李静(中国香港) 5、9、5、6 高木和(東京アート)

★吉田海偉、試合後の記者会見
「(王皓には)勝てばランキングは上がるし、とにかく自分らしい卓球をしようと思った。それができずに残念です。以前に対戦した時は向こうが緊張していて、結構競ることができたし、チャンスはあったけど、今日は相手もリラックスしていてノーチャンスだった」
 女子シングルス第2ステージ1回戦。北京五輪アジア大陸予選に続いて実現した王楠vs.唐イェ序の一戦。ゲームオールデュースで唐イェ序が勝利したアジア大陸予選に続いて、この試合もゲームオールにもつれる。
 しかし、試合のペースを終始握っていたのは唐。王楠は唐の積極的な前陣攻撃の前に、受け身に回った印象だ。ゲームカウント1-3から3-3まで追いついたのはさすがに女王の貫禄だったが、最終ゲームは王楠2-4唐イェ序から、唐に7本連取を食らって終戦。かさにかかって攻める時の唐の両ハンド強打、破壊力は相当なものだ。

★唐イェ序・試合後のインタビュー
「五輪前の大切な試合なので、一試合一試合一生懸命やっている。王楠とやるのは2回目です。(今回の試合には)満足している部分はありません。これは五輪ではないから。
 ただ、王楠に対していろいろ準備をしてきたし、王楠の良いところも悪いところも研究してきているので、それが今回の勝因だと思います。試合中や試合の前は、勝ち負けのことは全く考えないで、ただ自分の技術を出し切ることだけを考えました」

「これは五輪ではないから」という唐の言葉に、北京五輪にかける並々ならぬ思いが感じられる。中国・吉林省出身の唐だが、中国選手に対しても一切手抜き、なしだ。

●女子シングルス第2ステージ1回戦
唐イェ序(韓国) 5、7、-10、8、-8、-7、2 王楠(中国)
 柳絮飛との勝負が最終ゲームにもつれた平野早矢香。残念ながら最終ゲームは0-5から2-6、2-10と離されて3-11で失い、この試合に敗れた。
 裏面打法も操る柳絮飛だが、バックの主戦技術は多彩なバックショート。特にサイドスピンショートと、やや中陣に下がった平野に対する伸びるバックショートが有効だった。平野はこの伸びるバックショートに対してバックハンドのオーバーミスが多く、入れにいったボールは柳絮飛の強烈なカウンタードライブを食らった。

 フォアドライブは以前よりも威力を増している平野だが、中陣からのバックハンドは回転、スピードともやや物足りない。そのため、トップ選手にはカウンターで狙われる場面が多く見受けられる。五輪に向けて、そこが課題になりそうだ。

 また、平野に続いて登場した藤井寛子も、06年の本大会で勝利している同タイプの帖雅娜(中国)にストレート負け。帖雅娜のフォアハンドは以前よりも積極性を増しているように見える。日本女子では、福原愛がただひとりベスト16に残った。

●女子シングルス第2ステージ1回戦
柳絮飛(中国香港) 9、-8、9、-10、-7、6、3 平野(ミキハウス)
帖雅娜(中国香港) 2、7、7、8 藤井(日本生命) 
 柳絮飛(中国香港)と対戦している平野早矢香(ミキハウス)。ゲームカウント3-2とリードしたが、微妙にタイミングや球種を変えてくる柳のショート、そして打球点の早いカウンタードライブに押されて最終ゲームも2-6と劣勢。バックハンドがミス、2-7。いけるぞ、まだまだここからだ。その眼差しに当然あきらめの色はない。