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全日本選手権大会

 優勝を決めた平野早矢香の涙を見て涙があふれてきた。試合が終わった時、手のひらはジットリと汗に濡れていた。本当にしびれる女子決勝戦だった。

 会場のオーロラビジョンや、テレビでの生中継では、ループドライブとカットのひたすら単調なラリーに見えたかもしれない。しかし、コートサイドで見ていると、カットの一球一球に対する平野早矢香の微調整と、ループドライブの長短の変化、グッと力が入る右太ももの隆起などがよく見える。平野は王輝のバック面(表ソフト)へ軽打で粘り、チャンスボールを相手のフォアミドルへ強打、もしくはバッククロスへシュートドライブ。そして次球を決して深追いせず、またループでチャンスメイクという戦術を徹底していた。30往復、40往復以上続いたラリーが何回もあった。王輝のナックルカットに対して、スマッシュにいくとミスが多く出るが、それでも「チャンスボールだ、叩け!」見ていてそう言いたくなるボールが何本もあった。しかし、平野は強打を続けず、またじっくりとカットを打つ。

 平野がゲームカウント2-1とリードした第4ゲーム、平野が5-3とリードしたところで王がタイムアウト。ここからなんと王が8連続ポイントで2-2のタイに戻す。第5ゲーム平野6-3のリードから、王がポイントして6-4となったところで、今度は平野のベンチの大嶋監督がタイムアウト。ゲーム終盤、平野が王輝のスマッシュをブロック、カウンターで見事に返球し、11-5で平野。しかし、第6ゲームは平野にネット、オーバーとカット打ちのミスが目立ち、ついにゲームカウント3-3で最終ゲームにもつれ込む。観客も固唾(かたず)を飲んで試合を見守る。

 そして最終ゲーム、王3-1のリードから、王のカットが2本連続エッジ。2本目にエッジがついたボールはなんと45往復も続いた。王が6-1と大きくリード。このビハインドの中でのカット打ち、普通ならば心が折れても不思議ではない。
 しかし、平野はここから5点連取で6-6に追いつくと、逆モーションのフォアストレートへのシュートドライブなどで、9-7と逆転。9-8で試合はついに促進ルールに入り、9-9。ここで平野は初めて王のフォアサイドを攻め、10-9とすると、最後も平野のフォア攻めに王輝のボールがネットに刺さり、平野の3連覇が決まった!

 わずかの差で敗れた王輝も、カットの変化と安定性は「さすが」のひと言。決勝までオールストレートというぶっちぎりの強さを見せたが、平野の驚異の粘りと精神力の前に最後は根負けした感があった。「バックにボールを集められて、いろいろやりたかったけど動けなくなってしまった。カットが浅く浅く入って、相手に打ちやすいボールになった。ずっと4-0で楽に勝ち上がってきたので、平野さんみたいな粘るタイプは本当にやりづらかった」と試合後に振り返った。
●女子シングルス決勝
平野(ミキハウス) 5、-8、6、-5、5、-7、9 王(日立化成)
「やっぱり普段からやり慣れている分、他の選手なら決まるボールが、健太には返ってきた。本当に苦しい試合でした。この大会のために一生懸命やってきたので、ダブルス・シングルスでの3連覇は本当に嬉しい。
 彼(松平)は本当にブロックがうまい。ぼく自身ブロックから入るタイプですが、彼も技術が多彩なので、自分から仕掛けていってリズムを崩しにいった。苦手意識はなかったので、自分が有利かと思っていましたが、全日本の決勝という舞台でプレッシャーもあります。どちらが勝手もおかしくなかった」

--3年連続2冠ですが?
「この大会で優勝する難しさは、前回・前々回でよくわかっていた。優勝するために考えて練習してきた。来年は4連覇を目指したい。今は有望な若手がいっぱいでてきているけど、その選手たちに負けないようにがんばりたい」

--横浜大会への抱負をお聞かせください
「日本で開催される大会ということもあるし、シングルスは前回ベスト32でしたが、ベスト4目指して頑張りたい。ダブルスでは優勝しか狙っていません」
●男子シングルス決勝
水谷(明治大) 9、7、8、-8、15 松平健(青森山田高)

 これまでの全日本では見られないほど、ラリーの続く男子決勝戦となった。互いにブロックのうまい選手、さらに手の内も知り尽くしているとあって、水谷、松平とも容易に強打にはいかず、ゲーム全体を通じても、3球目攻撃による得点は数本あったかどうか。

 第1ゲームは双方が得点を連取していくパターンが続き、水谷10-9のゲームポイントから、水谷がナックル性のバックハンドを松平のバックに送り、松平がネットミス。こういう何気ないポイントの稼ぎ方が水谷のうまさだ。続く第2ゲーム、第3ゲームも、普段よりフォアの攻撃の手数を増やした水谷が連取。松平は前陣に張り付き、水谷とバック対バックの高速ラリーを展開するが、フォア強打による得点は少ない。逆に水谷は時折、思い切ったフォア攻撃でフォアストレートに打ち抜くプレーを見せる。
 第4ゲームは松平健が反撃、中盤で大きくリードし、最後は水谷の粘りをスマッシュで打ち抜いて1ゲームを返す。第5ゲームも松平ペースで4-1、7-3、9-5と松平がリードしたが、水谷はここから5点連取。松平のフォアサイドを切ってくるシュートスマッシュを何球も返し、フォアドライブで得点して会場をどよめかせ、最初のマッチポイントを握る。ここから水谷はマッチポイントを握ること、実に7回。決められそうで決めきれないラリーが続いたが、最後は17-15で終止符を打ち、見事3連覇の栄誉に輝いた!
「王輝さんとは初めて試合したので、回転が読みづらかったけど、次やったときはもっと対応していきたいと思います。
 今回の全日本はどの種目でも優勝はできませんでしたが、練習してきたことを出せたので内容には満足しています。石川さんとの試合では、石川さんが2年連続でベスト4に入っていたので、挑戦者の気持ちで最後まで向かっていけた。
 全日本はそれまでの練習が正しいかどうか確かめる大切な大会。自分がやってきたことは間違っていなかったと思ったので、このまま世界選手権まで頑張っていきたい(福原)」

 混合ダブルス3位、女子ダブルス準優勝、女子シングルス3位。いずれの種目でも優勝はならなかった福原だが、その眼はすでに世界選手権・横浜大会を見据えている。
●女子シングルス準決勝
王(日立化成) 6、8、9、9 福原(ANA)
平野(ミキハウス) 4、4、5、4 森薗(青森山田高)

 福原は王の変化カットに対し、バック強打での早い仕掛けとフォアスマッシュで善戦したが、やはりミスが多く出た。2ゲームを落として迎えた第3ゲーム、フォアドライブの連打に、王輝のスマッシュを後陣に下がって返すなど好プレーを連発、内容的には完全に押しているように見えたが、終わって見れば11-9で王輝。ツッツキやカット打ちのミスでポイントを稼がれてしまう。最終ゲームも2-9と大きくリードされてから8-9まで追いすがったが、やはり王輝の壁は厚かった。
 97・99年世界選手権ベスト16、00年世界団体優勝メンバーの実績を持つ王輝。なんと決勝まで1ゲームも落とさずに勝ち上がってきた。全日本に突然現れた異次元のカットマンだ。

 準決勝のもうひと試合、平野と森薗の一戦は、平野早矢香が完勝。バック対バックで完全に平野が優位に立ち、森薗が押されてボールが高くなったところを平野に攻め込まれた。高校1年生の森薗、ベスト4という勲章と同時に、代表クラスとのレベルの差を実感した大会になった。
 男子シングルス準決勝、松平健太と吉田海偉の一戦は、前陣で両ハンド強打を放つ松平に対し、吉田は後陣に下がって執拗(しつよう)にバックのフィッシュやロビングで粘り、回り込んでガバッとフォアドライブを放つ。松平は吉田の粘りを打ちあぐみ、攻め込みながらも最後にミスが出る。吉田が押し気味に試合を進めていたが、松平は第6ゲーム3-8から逆転して、最終ゲームに持ち込む。
 最終ゲームは松平が4-2、7-3とリードを広げ、8-7と迫られた場面でも、吉田の粘りを無理に打たずに軽打とブロックで粘り強く攻め、最後にフォアクロスへスマッシュで決める。しかし、ここから吉田が台上にレシーブを2回連続で浮かせながら、フォアのスーパーブロックを連発して9-9に追いつき、3球目パワードライブをバックストレートに打ち抜いてマッチポイント。健太、絶体絶命。ここで松平のバックと、回り込んだ吉田のフォアで長い長い打ち合いが続く。長い長いラリーに息をのむ観客。松平が粘り勝ち。10-10に追いつく。
 そしてデュースからは松平が吉田の4球目フォアドライブをクロスへカウンタ-、さらにレシーブからのバックドライブで勝負をつけた!

★吉田海偉・試合後のコメント
「6ゲーム目8-3でリードしていて、そこから挽回された。守りに入ってしまった。健太は逆に思い切ってやってきた。
 今大会は初戦は調子が良くなかったけど、(6回戦の)丹羽戦から調子が上がってきた。健太との試合は自分の力は出し切ったが、相手が強かった。この結果は仕方ない」

--初めて決勝に進めませんでしたが?
「決勝に行くだけでも大変なこと。今回はしょうがないですね」
●男子シングルス準決勝
松平健(青森山田高) 5、-9、-9、6、-4、10、10 吉田(グランプリ大阪)

 最終ゲーム9-10から3本連取した松平健太、初の決勝進出!
●男子シングルス準決勝
水谷(明治大) 11、6、8、12 上田(青森山田高)

 青森山田高の先輩・後輩対決は、第1ゲームは台上での小さな展開が多く、手の内の探り合いといった印象。しかし、水谷はレシーブでもフリックを増やしたり、タイミングを狂わせるなどして、上田の3球目攻撃を完璧に封じた。上田もフットワーク良く動き回り、ラリー内容ではほぼ互角だったが、サービス・レシーブの差がスコアに現れた試合だった。
 
 しかし、敗れたとはいえ上田も高校2年生で一般ベスト4は見事な成績。試合後、「大会全体を通じては、一般でのランク入りが目標だった。これまで一般では上位に来られなかったので、すごく自信になった」と語り、充実の全日本を終えた。センスは抜群だが、現在はオーソドックスなシェークドライブ型。無地で良質なキャンバスに、これからどのような色をつけていけるか。この準決勝では、もう少し挑戦者としてのガッツが欲しかったが…。
●女子シングルス準々決勝
平野(ミキハウス) 5、9、-9、-3、6、12 河村(日立化成)
森薗(青森山田高) 6、10、-2、7、7 渡辺(ミキハウス)
福原(ANA) 9、9、7、9 石川(ミキハウスJSC)
王(日立化成) 4、7、6、5 金沢(日本生命)

 準決勝は平野vs.森薗、王vs.福原という対戦カードになった。
 王は金沢に対しても、前・中陣でプレッシャーをかけながら、カットの変化で金沢のミスを誘う。金沢も安定したカット打ちを見せたのだが、決めにいったボールがことごとくオーバー。王のフォアカットの変化は驚異だ。福原は準決勝でこの変化カットをどう攻略するのか?