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世界ジュニア選手権大会

『卓球王国』2012年2月号(12/21発売)をお楽しみに!
-06年大会の松平健太選手以来の日本人チャンピオン、今の気持ちは?

丹羽:団体戦で全然ダメだったから、シングルスでその借りを返そうと思ってやりました

-準々決勝、準決勝と苦しい戦いで、マッチポイントを取られる場面もありました。決勝では精神面はどうでしたか?

丹羽:準々決勝と準決勝はゲームカウント0-2からのスタート。気持ちが切れそうになった部分も結構ありましたけど、たくさんの方が応援してくれたおかげで、あきらめずにできたと思います。決勝は相手もすごく強かった。今大会ぼくはフォアハンドの調子が良くなかったので、バックハンドで得点しようと思っていた。
●男子シングルス決勝
丹羽 -3、6、-7、8、11、9 林高遠(中国)

 男子シングルスを制したのは日本の丹羽孝希!
 06年大会の松平健太以来、5大会ぶり2人目の日本人王者が誕生だ!

 1ゲーム目、林の積極的な両ハンドドライブに押され、あっさり落とした丹羽だったが、巧みにナックルサービスを混ぜて林のレシーブを崩し、打球点の早い3球目攻撃でペースをつかむ。丹羽と同じサウスポーの林は、中国選手だが打球点は丹羽より遅い。時折後陣からバックドライブで一気に盛り返す好プレーも見せたが、試合中盤からは競り合いながら常に丹羽がペースを握った。

 丹羽がゲームカウント3-2とした第6ゲームは、両選手とも積極的なプレーで9-9のタイ。ここで丹羽の3球目ループドライブを林がカウンターのミス。丹羽のマッチポイント! 最後は打球点のすばらしく早い3球目フォアドライブでフォアストレートに打ち抜いた! 完璧な一打に林はただただ呆然。

 ベンチに戻った丹羽を、観客席の日本応援団に向けて高く高く抱き上げた河野監督。苦しい戦いが続いた日本勢に、最高のフィナーレが待っていた!

●女子シングルス決勝
陳夢(中国) 6、3、7、-4、-5、4 朱雨玲(中国)

 女子シングルス優勝は、08年大会3位の陳夢。特筆すべきはそのボディバランスの良さ。一見してゆったりした動きに見えるのだが、左右に振られてもまったく体の軸が傾くことはなく、ラリー戦には抜群に強い。李暁霞や丁寧に代表される、長身を活かした男性的な両ハンド攻撃のスタイルに、張怡寧のボールタッチの柔らかさが加わったと言ったら、少々ほめすぎだろうか。これで世界ジュニアは無事卒業、2013年の世界選手権パリ大会(個人戦)あたりでは、中国代表に名を連ねてくるはずだ。

*写真は丹羽と、優勝後に河野監督にかつがれる丹羽、女子シングルス優勝の陳夢
●女子シングルス準決勝
陳夢(中国) 7、-11、5、5、7 顧玉ティン(中国)  
朱雨玲(中国)-8、5、5、8、3 顧若辰(中国) 
●男子シングルス準決勝
丹羽(日本) -12、-13、7,10、-13、11、9ロビノ(フランス)
林高遠(中国) 6,2,8、-8,-4、-3、7 吉村(日本)  

 丹羽はロビノのフォア側のチキータを警戒しながら、ロングサービスや右回転のサービスをロビノのバックに出しながらサービスを組み立てていく。長いラリー戦になるとロビノ、接近戦では丹羽。0-2から2-2に追いつく。第5ゲーム、13-12でエッジボール、13-15で取られた。第6ゲームでマッチポイントを握られながらも何とかしのぎ、最終ゲームに持ち込んだ丹羽、5-3でチェンジエンドするも5-7とまくられる。しかしここから盛り返し、最後は11-9で劇的な勝利。7ゲーム中5ゲームがジュースという大激戦。すばらしい内容の試合だった。敗れたロビノもすばらしいプレーを見せた。これぞ世界ジュニアだ!

 吉村は出足で得意のサービス効かず、0-3とゲームをリードされるが、4,5ゲームからそのサービスも効きだし、2-3と取り返す。勝負の6ゲーム目を6-1とリード、7-2,台上強打も決まり、8-2,バックハンド強打で9-2、9-3,10-3、11-3。両ハンド強打。とりわけバックハンドで一発で決まるドライブがすばらしい。
 0-3から3-3の最終ゲームにもつれ込んだ。3-5から6-5と取り返したが、そこから一気に5本連取され、6-10で勝負あった感じだった。しかし、吉村のすばらしいプレーは会場を沸かせた。

 河野監督「今日の丹羽は調子はあまり良くなかったが、非常に我慢強く頑張った試合だった。昨日と同じような展開をよく戦い抜いた。ロビノの中陣からのボールに苦しみ、丹羽は台の近くでプレーするしかなかった。
 吉村の活躍には正直驚いています。団体戦でも簡単に負けた相手によく頑張った。4ゲーム目からサービスを少し変えたのが効いて、そこから3球目、5球目の速攻がよく決まっていた」

*写真は準決勝で勝った丹羽と敗れた吉村
 男子シングルスでフランスはエースのゴーズィとロビノがベスト8入り。ゴーズィは林高遠に惜敗したが、ロビノはイングランドのピッチフォードに快勝し、準決勝に進んだ。フランスにとって、シングルスのメダルは初めての快挙。ロビノは優れた身体能力を生かした攻撃卓球が身上。準決勝の相手は丹羽だ。 
 それにしてもフランスは4人全員がベスト16に入り、ベスト8に2人、そしてベスト1人入った。ヨーロッパユース選手権ではここ何年間か、タイトルを独占状態で、ジュニア育成がうまくいっている協会だ。あとはシニア代表が強くなることだけが望みだろう。

*写真はフランスのロビノと吉村が対戦する林高遠
 鄭培峰が丹羽に逆転負けをした途端、ベンチに入っていた中国のコーチは選手を怒鳴りまくった。まわりに人がいてもおかまいなしだ。ITTFの関係者がそばに陣取っていたのだが、みんな苦笑。試合で負けたとは言え、 鄭培峰も頑張ったし、丹羽が強かったという結果なのに、「なんであんな試合をするんだ、俺の言うことをやっていない」(推測)とでも言わんばかりの会場中に聞こえる怒声だった。中国チームの選手とコーチの関係をかいま見るようなシーン、しかし、国際舞台での醜態とあえて言いたい。
 準々決勝で丹羽の試合を気にしながら隣のコートで見ていた吉村。「丹羽が中国を倒した。自分も倒してやろうと刺激された。自分はアジアジュニアでも中国に勝ってきた。相手が中国でも、相手が前回優勝者でも勝てると信じていた。相手のフォアハンドは強かったけど、自分は台について、相手を下げようと。5ゲーム目の10-8とマッチポイントを取った時は正直、緊張もしました。でも、落としても3-2でリードしているのでとにかく自分のプレーをすることを心がけました」と試合後、興奮しながら語った若武者。絶対的な強さを誇ったディフェンディングチャンピオンの宋鴻遠を、正面から堂々とした攻撃で破った吉村に会場のすべての人が驚き、大きな拍手を送った。あっぱれ、丹羽&吉村!

*闘志満々の吉村、前回優勝者の宋鴻遠、勝利後の吉村
 「チキータから攻めようと思ったらロングサービスを使われて前半落としたが、とにかく積極的に攻めようと心がけた。中国を倒したかった」と試合後に丹羽。0-2とゲームをリードされたが、2-2に追いつき、前陣を死守しながらの攻撃に徹し、最終ゲームまでもつれ込んだ大接戦をものにした。ラリー戦でのコース取り、前陣でのカウンターなど「さすが丹羽!」というプレーで締めた。準決勝はフランスのロビノと対戦。

●男子シングルス準々決勝
丹羽(日本) -5、-6、9,9、-4,9,8 鄭培峰(中国)
ロビノ(フランス) 3,-6、9,8,7 ピッチフォード(イングランド)
吉村(日本) 9,5,10、-6、9  宋鴻遠(中国)  
林高遠(中国) -9、9,5,9,9 ゴーズィ(フランス)

*写真は勝利後の丹羽と河野監督、そして吉村対宋
 メダルを賭けた準々決勝で日本の谷岡あゆかが敗れ、日本の女子はすべての試合を終えた。
 谷岡の切れたカットに対して中国の戦術はあまりに見事だった。朱雨玲は強攻せずに、相手の回転を利用したツッツキと、浅いナックルボールをうまく混ぜ、浮いたボールだけを狙っていった。谷岡はこのようなナックルボールへの対策、浅いループドライブの処理に課題を残した。しかし、今大会、成長を見せた貴重なカットマンはITTFのインタビューでも、「まだカットのミスは多いし、そのミスを少なくして、攻撃的なカットマンになりたい」と答えている。谷岡はカットの精度を上げているし、バックハンド攻撃も向上している。石川のあとのジュニアの牽引車としての活躍、そして将来シニアでの台頭を願いたい。

●女子シングルス準々決勝
陳夢(中国) 6.9.6.9  ゾルヤ(ドイツ)
顧玉ティン(中国) 6,11,2,7 ノスコワ(ロシア)
朱雨玲(中国) 2,10,2,5 谷岡(日本)
顧若辰(中国) 3,2,-7、8、-9、12 ダス(インド)

*写真は谷岡と朱雨玲
 インド旋風は男子団体だけではなかった。女子シングルスでダスがスッチ(ルーマニア)を4-3で破り、 鄭先知(チャイニーズタイペイ)も4-2で破り、準々決勝へ進んだ。インド選手のベスト8入りは男女通じて初めて、準々決勝は中国の 顧若辰と対戦する。ダスが光っているのはラリーでの強さ。両ハンドからのカウンターもすばらしい。
 男子シングルスでは前大会シングルス3位の中国の 呉家驥を破ったピッチフォード(イングランド)の活躍が光っている。長身から繰り出すパワーボールも威力満点だが、動きも速く、小技もうまい。現在、ドイツのオクセンハオゼンを練習の拠点にしていて、十分な練習量をベースにこれからまだ伸びそうな18歳だ。

*写真はインドのダスとイングランドのピッチフォード