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世界ジュニア選手権大会

 オーストラリア代表のアンジェラ・チャンは12月に誕生日を迎えるが、この大会では10歳の最年少出場選手。女子団体でも頑張ったが、頑張りすぎたか左足を負傷。足を引きずる姿が痛々しかった。ユニフォームがまるでワンピース状態になっているのも何とも愛くるしい。
 男子団体で注目を集めたインド。メダル常連チームの韓国を準々決勝で堂々と破った。ゴーシュ、デサイ、グナナセカランの3人のレベルは高い。ミスのない安定したプレー、かつ思い切りが良く、韓国のパワー卓球をたじろがせた。準決勝の中国戦では、ストレートで敗れたが競り合った。今後、この3人のジュニア選手がシニアでも活躍するとインドは面白い存在になる。世界の卓球界にとっても、固定された強豪チームだけでなく、今まで第2カテゴリー、第3カテゴリーにいた協会の選手が活躍する、もしくはメダル争いに絡むのは非常に良いことだ。それは卓球が地球スポーツであることの証明になるのだから。

*写真は韓国戦で2点取り、準決勝進出を決めたゴーシュと韓国戦で1点取ったデサイ、そしてメダルを決めたインドベンチ
 まだ日本のカットは若い人に継承され、進化していた。
 男子の15歳の村松雄斗と女子の谷岡あゆかが団体戦で活躍、大会関係者の注目を浴びている。中国には女子ではいるが男子では純粋なカットマンはいなくなっている。世界的に見ても、本格的なカットマンは数えるほどだ。
 谷岡は回転量のある切れたカットが特徴。このカットを持ち上げるのは相当に難しい。相手はネットミスと、ストップのオーバーミス(強い回転のあるカットのため)を繰り返す。攻撃力も徐々についていて、相手が攻めあぐねた時に一発で反撃に転じる。さらに攻撃力をつければシニアでも活躍するだろう。
 一方、村松は少年時代に大阪まで通って「Mr.カットマン」の元世界3位の高島規郎氏に師事していた。以前、その素質を高島氏に聞いたら、「教えることは何もない。今のまま強くなっていけばいいし、たくさん食べて、体を大きくしろと言っている」と語っていた。その素質は折り紙付き。ただ、おとなしく、積極性に欠けるきらいがあったが、大会前にオーストリアのシュラガーアカデミーに酒井とともに短期留学。精神面も成長した河野監督は評価している。
 そのプレーは長い手足を生かしたカット、切れ味も鋭い。そして巧みなサービスからのドライブと、カットからの反撃力もレベルは高い。韓国の朱世赫とも相通じる部分がある。
 これから経験を積んでいけば、この2人のカットマンは世界の舞台で十分に活躍できる素材であることを、この世界ジュニアで証明した。
 昨年の女子が優勝、男子準優勝という結果と比べれば、一歩後退と言えるかもしれないが、現場にいれば「よくやった」と感じる。去年はある意味、勢いもあり、中国の崩れもあり、奇跡だったのかもしれない。今年は奇跡がなかったということだ。しかし、中国と日本が世界ジュニアの中で力が抜きんでているのは事実だろう。国家体制による強化する中国。かたや日本はエリートアカデミーという協会お墨付きの強化組織と、それに負けじと頑張る地方のエリート卓球集団がからみ合っている体制だ。エリートアカデミーには今でも賛否両論があるが、現実として、谷岡や村松という選手が育っていることも冷静に受け止めるべきだ。ただ言えることは、ジュニアまでが勝負でない。これからシニアに送り出し、強化していくことがもっと重要なことなのだ。
「相手のほうが気迫も感じられ、こちらは不安という状況で試合が進んでいたので、完敗だった。去年は無我夢中だったが、今年は冷静に見られて谷岡もこれくらい通用するんだという部分が実感できたので、もう一回中国にチャレンジする気持ちが強くなった。このオーダーをすごく悩んだ。石川は朱雨玲と前半でやりたいということで彼女をBにした。前半で2-0でリードしたかったし、オーダーはうまくいったけど、紙一重の部分もあるし、谷岡も(4ゲーム目の)9-9が悔いが残る。全体としてそこを切り抜けられなかったのは中国のほうが良い準備をしてきたことを感じる。昨年と比べると中国以外のレベルはダウンしているので、中国のみを考えて、戦っていきたい」(岸女子監督)
「吉村と丹羽がもう少し頑張ってくれていたらチャンスがあったかもしれないが、村松が3番でビックリするようなプレーをしてくれたのが大きな収穫。去年より今年のほうが手応えはあった。丹羽も世界ランクは20位台だけど、中国の2軍と良い勝負をさせないといけない。宋と林はシニアレベルでしょ。村松は楽しみでワクワクする選手になった。今までの日本のカットマンとは違う。世界で勝ってくれるスタイルのカットマンですね。去年は中国には全然勝てないと思ったけど、今年は何とか行ける感じがする。個人戦でひとつでも多くメダルを獲りたいですね」(河野男子監督)
 石川は遠征、試合の連戦で疲れているのは事実だ。しかし、今が踏ん張り所。世界ジュニアに出ることが世界ランキング7位の彼女にとってポイントを失うことはわかっていたこと。リスキーな選択だった。しかし、あえて選んだ。2年、3年というスパーンで見れば、同年代の選手と戦い、獲るべきタイトルを獲るという経験をすること、試合を積むことは計り知れないプラスになる。ポイント失うマイナス面ではなく、もっと先のプラス面を考えて、負けることを恐れずに戦ってほしい。
 丹羽は宋と林との力の差を肌で感じただろう。先制攻撃してもカウンターで返され、相手の第一打はあまりに力強い。自分が勝つためにどのような卓球をするべきかを決勝という舞台で突きつけられた。そこを避けて通るのか。いや、それは無理だ。彼が世界の舞台を目指すなら、目の前の強敵を崩す手だてをこの3日間で考えるべきだ。
男子団体決勝
  日本  1-3  中国
 吉村 -5、10、-5、-8、  林高遠○
 丹羽 -9,-6、-9     宋鴻遠○
○村松 8、7,-11、6    鄭培峰
 丹羽 -8、-7,3,-5    林高遠○
 
 トップの吉村は 林高遠に対し、1ゲーム目は完全に主導権を奪われたが、2ゲーム目は真っ向の力勝負で、要所でサービスも効いて、12-10で取り返した。3ゲーム目は再び林が試合を進め、11-5で林が奪い返す。4ゲーム目、3-3、3-4、3-6、4-6、4-8、中盤まで吉村のサービスが効かずに苦しい展開だが、2本連続サービスエースで6-8、相手のサービスからの3球目攻撃で6-9、最後は8-11で林が勝利の雄叫びを上げた。しかし、前大会シングルス準優勝の林に対し、吉村は互角の勝負を見せた。
 2番は丹羽対宋鴻遠。宋は前回のシングルスチャンピオンだ。1,2ゲーム目、宋のサービスをうまく返せず、浮いたレシーブは一発でもっていかれ、流れをつかめない丹羽。3ゲーム目、5-5、7-5、7-7で日本タイムアウト、9-9から連取され、丹羽がストレートで敗れた。
 3番は村松対ペンドラの 鄭培峰。鄭のドライブをうまく返せば、村松のペース。要所でサービスも効いて11-8で1ゲーム目先取した。2ゲーム目はバックへのドライブを見事なカットで返し、反撃も決まった村松がゲーム連取。物静かな村松から自然と声も出ている。3ゲーム目、4-4,5-4で中国がタイムアウト。このゲームを11-13で村松が落とすも、4ゲーム目、カットが冴え、鄭はミスを繰り返し、11-6で村松が中国から1点を取った。日本のカットスタイルを継承しつつも、カットの切れ味は抜群で、カットからの攻撃や変化サービスからの速攻ドライブは今ままでの日本スタイルではない。中学3年ながらモダンなプレースタイルはある意味で、渋谷、松下を超えているのではないかと思わせるほど、そのポテンシャルは高い。
 4番は丹羽と林の対決。ボールの威力に勝る林がスタートからリードを奪い、11-8で林が先取。1本目から強いボールが来るため、丹羽はカウンターの打ち所を見いだせない。2ゲーム目も丹羽の攻撃ボールは打ち抜けず、相手のミスを待つ展開で、林のボールは力強く抑えきれない展開となった。無理に強いボールを打とうとしてミスになる丹羽は流れをつかめず、7本で落とす。3ゲーム目、4-1、 5-1、7-1、8-1、9-1とリード、11-3で1ゲーム取り返した。しかし、4ゲーム目、パワーに勝る林は止まらない。最後は11-5で林が押し切り、中国が優勝を決めた。
 日本はエースの丹羽が2失点ということで完全に中国に力負けの格好だが、吉村も善戦し、何より村松の勝利は価値がある。次につなげる決勝だったとも言える。

*写真は日本の希望の星となった村松。そのスタイルに世界も注目した。表彰式での中国と日本
   日本 0-3 中国
 谷岡  -3、6、6,-9、-4  陳夢○
 石川  -8、-11、-6    朱雨玲○
 丹羽  -3、-8、-8    顧玉ティン○

 トップはカットの谷岡対陳夢。陳夢はこの大会09年のシングルス3位の選手。1ゲーム目からしっかりと谷岡のカットを攻めてミスがない。2ゲーム目になって、谷岡のプレーに落ち着きが出て、陳夢にミスが出始めた。1-1とした3ゲーム目、6-2,8-4と谷岡リード。谷岡のフォア攻撃が決まり11-6とゲーム連取し、2-1とリードを奪った。ゲームの主導権は完全に谷岡だ。しかし、4ゲーム目、5-9とリードされたが、8-9,9-9と追いつくも、9-10、9-11、最終ゲームへ。3-5でチェンジエンド。3-6,3-8,4-8,4-9、4-10、4-11、最後は陳夢が谷岡のカットを攻めきった。谷岡のプレーは良かったが、それ以上に陳のプレーが良かった。惜しかったのは4ゲーム目の9-9の局面だった。しかし、相手をほめるべきだろう。
 2番は石川と朱雨玲の対戦。前大会では団体で勝った石川はシングルス決勝で敗れている。1ゲーム目のスタートから朱雨玲が主導権を奪い、2-6と離される石川。8-10まで追いつくが、8-11で落とした。2ゲーム目は五分五分の出足から7-5とリード、石川の速攻が冴え、9-5,10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、6本連取された。11-11、11-12,最後は速いラリーの応酬を朱雨玲が奪い、11-13で2ゲーム目を落とした。3ゲーム目、2-6と離される。4-9,5-9,6-9,6-11で石川は痛恨のストレート負け。昨年は速攻と相手の攻撃を緩くかわすなどの、緩急の攻守があったが、今回はやや単調になったか。2ゲーム目の10-5からの逆転負けがなければ、試合の流れは変わったはずだ。
 3番は丹羽対顧。力の差は否めない。1ゲーム目、3-11で落とす。2ゲーム目は中盤まで五分だったが、顧の回転あるボールに対応ができなかった。3ゲーム目、丹羽のカウンターが決まるがリードを守りきれずに8本で落とし、中国の勝利が決まった。事実上、初めての大きな国際大会の丹羽。ポテンシャルはあるがいかんせん経験が不足していた。
 中国が昨年のリベンジを果たしたが、1番、2番は日本にチャンスがあった。ストレートで負けたが1本が試合の流れを決めた決勝だった。

*写真は悔しい負けを喫した石川、表彰式の中国と日本

 フランスを準決勝で下したが、まだ日本には勢いを感じない。ベンチの応援もフランスのほうがはるかに上回り、ムードも良かった。おとなしい選手たちばかりだが、決勝ではせめて中国に立ち向かう気概がほしい。
 準決勝後の河野監督のコメント。「とにかく村松が頑張った。前回負けていたので心配していたけど、よく勝ってくれた。先月シュラガーアカデミーで1ケ月武者修行した成果が出た。村松が負けていたら丹羽もプレッシャーがかかったでしょう。トップの吉村の良いところはサービスなのに、得点が1本もなかった。丹羽はまだ6割、7割くらい。プロツアーで上の者と戦うのと同年代と戦うのも違うだろう。こういう場面は彼が成長する場所です。やっと中国への挑戦権をつかんだので頑張ります」
 デフェンディングチャンピオンの日本女子。しかし、受けて立つほど力の差はない。岸監督がコメントした通りに挑戦しなければ、中国の厚い壁を破れない。中国も2回連続王座を明け渡すのは最大の屈辱になるだろう。相当必死な戦いをしてくるのは明白だ。日本は石川がどこまで思い切って戦えるか。この日の石川は午前中練習し、午後にはスポーツジムに現れ、田中トレーナーとみっちりトレーニングをして夕方からの決勝に臨む。
 準決勝のタイペイ戦をストレートで下したあとの岸監督のコメント。「体の切れもあまり良くないので、このあと練習をしたいという希望もある。本人たちも納得していない。ちょっとしたズレで主導権を取れていない。石川は良いときと比べたら対応できていない、全部3-0で来てますが、もう一度修正して決勝に臨みたい。ドイツのゾルヤ戦での石川は慎重に行き過ぎていた。谷岡も良いほうに向かっているが、ちょっとした部分での動きが遅かったりするので、いまいち試合が締まらない面がある。まだやれる部分がある。
 中国との決勝では、去年のような成績を出したいが、かなりハードな試合になるだろう。6対4、7対3くらいに攻撃を多くして、超攻撃卓球で攻め勝っていきたい」
 日本は男女とも準決勝で勝利し、決勝へ進んだ。前回同様に男女とも中国と決勝で対決する。試合は現地時間夕方の4時から女子、男子は6時。時差は6時間だ。

女子団体●準決勝
  日本  3-0  チャイニーズタイペイ
○石川 -8、9、7、9 陳思羽
○谷岡  5、14、12     鄭先知
○前田  7、5、-5、10 陳虹ティン

  中国 3-0 香港
○朱雨玲 6、11、7 杜凱栞
○陳夢 4、1、2 李清韻
○顧玉ティン 6、2、4 蘇慧音

 中国女子は2回戦からの3試合を、1ゲームも落とさずに決勝まで勝ち上がった。3試合ともトップで出場した朱雨玲が、前回大会に続き決勝トップで石川と激突か。双方にオーダーの駆け引きがあるのか?

男子団体●準決勝
  日本  3-1  フランス
 吉村  -9、-5、-6   ゴーズィ○
○丹羽  11、2、8    フロール
○村松  5、6、8     ロビノ
○丹羽  7、19、-10、-5、11 ゴーズィ

  中国 3-0 インド
○林高遠 2、-6、8、-9、6 ゴッシュ
○宋鴻遠 5、-9、-6、5、6 デサイ
○呉家驥 -11、6、-8、3、8 グナナセカラン

 準々決勝で韓国を破ったインドは、準決勝でも中国に善戦。ストレートで敗れたものの、3試合ともゲームオールに持ち込んだ。

*写真は日本から1点奪ったゴーズィ、4番で丹羽がゴーズィに勝ち、決勝進出を決めた。そして団体2連覇を狙う日本のエース、石川
 男子団体で番狂わせというか、波乱が起きた。準々決勝でインドが韓国を3-2で破ったのだ。2-0とリードしていたインドが完全に主導権を奪っていた。韓国は常に受け身。デサイとゴッシュが気合い十分のプレーを見せ、ラストはゴッシュが朴燦赫を3-1で破り、劇的な勝利をあげた。
 インドにとっては初の団体メダル。しかも韓国と堂々と破ってのメダルは価値がある。

*写真は韓国から2点奪ったゴッシュ