速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

2016世界ジュニア選手権大会速報

●女子ダブルス2回戦
劉煒珊/孫芸禎(中国) ー10、7、9、9 平野/伊藤
早田/加藤 4、4、6 アルホダビー/ヨウスリー(エジプト)
●女子ダブルス3回戦(ベスト8決定戦)
早田/加藤 7、ー9、8、9 石洵瑶/袁媛(中国)

女子ダブルス2回戦、第1シードの平野/伊藤は、中国の劉煒珊/孫芸禎と対戦。ともに女子団体決勝の日本戦にも出場した中国の2選手。長身の左シェークドライブ型・孫芸禎が、深く切れたツッツキとループドライブでお膳立てをし、右シェークドライブ型の劉煒珊が高い運動能力を生かしてよく動き、キレのあるカウンタードライブを連発した。敗れた平野/伊藤は、お互いの技術が多彩になった分、得点パターンが絞りきれない印象だった。この初戦を乗り越えれば、優勝のチャンスも十分にあっただけに残念。

その一方で、早田/加藤は3回戦で中国の石洵瑶/袁媛を破り、笑顔の抱擁。加藤のバックハンドの守りが堅く、強打を一本つないだ後、早田がサイドを切るコースへ回転量の多いフォアドライブで攻める。懐が深く、独特のリズムがあるペアで、見ていて面白い。「中国ペアはやってくることはシンプルだけど、特に台上のツッツキとかストップのレベルが高い。でも、相手の台上からのプレーは一番練習してきている部分ですから、決してあわてずに、冷静に対応するようにまずアドバイスしました」(石田大輔コーチ)。

目を引いたのは左腕の早田のレシーブで、サイドスピン(右横回転)を入れながら相手のフォアサイド、バックサイドへとバックツッツキを打ち分ける。ツッツキといっても、本人曰く「自分でも下回転が入っているか、上回転が入っているかよくわからないんです(笑)」という変化のあるレシーブで、これが相当効く。特に相手のネットミスが目立っていた。

早田/加藤は、明日の準々決勝でモスタファヴィ/ザリフ(フランス)と対戦する。この女子ダブルス3回戦で、伊藤/平野を破った中国の劉煒珊/孫芸禎が、劉麒/黄芊柔(香港)にゲームオールで敗れ、中国ペアは2組とも姿を消した。2003年の第1回大会で李暁霞/李茜が優勝してから、中国勢が13大会連続で優勝してきた女子ダブルス。その連勝記録がついに途切れた。これで、第1回大会からの連勝が続く最後の種目は女子シングルス。こちらも今大会、13連勝でストップさせたいところだ。
  • 早田のこのバックでのレシーブが効いた

  • 平野/伊藤はシード下の刺客、中国ペアに敗れる

  • 勝利に笑顔の加藤。まだまだ上を狙えるぞ!

●男子ダブルス2回戦
張本/龍崎 11、ー7、2、ー7、3 ダルシス/ドヴォス(ベルギー)
木造/松山 4、4、6 アブデル−アジズ/エルハケム(エジプト)
●男子ダブルス3回戦
張本/龍崎 7、ー7、ー9、7、7 徐英彬/楊碩(中国)
黄建都/林昀儒(チャイニーズタイペイ) 6、3、10 木造/松山

男子ダブルスは3回戦(ベスト8決定戦)まで終了。木造/松山は、強打者の黄建都とセンスあふれるサウスポー・林昀儒のタイペイペアに敗れたが、張本/龍崎が中国ペアを撃破した。張本が台上からのチキータ、堅いブロックで安定したプレーを見せる中、ベンチの田㔟監督から何度も「龍ちゃん、全部攻めろ!」「自分から打て!」と檄を飛ばされた龍崎が、最後の最後でフォアフリック強打、さらに強烈なチキータで試合を攻めた。

勝利を決め、満面の笑顔で抱き合ったふたり。「混合ダブルスで中国ペアに勝って、男子ダブルスでも絶対に勝ちたいと思っていたので、勝ててうれしいです」と張本が言えば、龍崎は「勝ってすごく自信になりました。自分でも中国に通用するんだなと思いました」とコメント。「自分たちは挑戦者だったので、自分たちからガツガツ攻めにいけたのが勝った……、勝ったアレだと思います」と高3の龍崎先輩が言葉に詰まったところで、中1の後輩・張本が「…勝因!」と助け船。初戦のベルギーペアともゲームオールでヒヤリとさせたが、覚悟を決めれば強いこのコンビ。これで一気に波に乗れそうだ。
  • フルスイング! 龍崎のパワードライブ!

  • 徐英彬(奥)/楊碩ペアは「ロングサービスがないので、チキータで狙えた」(張本)

  • 田㔟監督にぶたれているのではなく、頭を撫でられているんです

  • 木造/松山、エジプトペアには完勝したが、タイペイペアに及ばず

●女子シングルス1回戦
平野 3、11、8、8 ハヨク(ドイツ)
加藤 4、3、4、4 アイビー・リャオ(カナダ)
早田 5、10、5、7 クラクスケン(トルコ)
伊藤 8、8、ー10、6、4 ロイエン(ベルギー)

女子シングルス1回戦が終了。日本の4選手は、伊藤がロイエン相手に1ゲームを落としたのみと、順当な勝ち上がりを見せた。

女子団体決勝トップで敗れた平野は、ハヨクにストレートで勝利したものの、相手を防戦一方に追い込むような、本来の両ハンド連打はまだ出ていない。対戦相手のイチかバチかというブロック、カウンターの前に連打のミスが目立つ。「世界ジュニアはきれいなボールの選手が少ない。中国スーパーリーグにいって帰ってきて、今大会では全然ボールが違うので、そこが大変でした。中国では強いボールしかこないし、ずっと格上とたくさん試合をやってきたけど、今回は違う。そこも良い経験になると思うし、思い切ってできたらいいなと思います」(平野)。

カナダのアイビー・リャオを下した加藤は、持ち味であるバックハンドの安定した攻守で、リャオの攻撃を封じた。「昨日はサービスからの3球目、ストップからの4球目などの練習がたくさんできて、しっかり調整してきたので良いプレーができました」(加藤)。「世界ジュニアでの金メダルは光栄に思います」と団体戦を振り返りながら、「団体戦であまり試合ができなかったぶん、個人戦の3種目で頑張りたいです」と上位進出を誓った。

フォアハンドの打球点の幅が広く、攻撃力が高い早田は、今までの大会を通じても安定したパフォーマンスを見せている。伊藤は自分のミスに顔をしかめる場面もあるが、勝負所ではアップ系を交えた変化の大きいサービスで、一気に得点。それを温存しながら、様々な技術のボールタッチ、台の弾みなどを測っている感もある。「ベスト4決定までは中国選手とは当たらないけど、明日は韓国のカットマン(金裕珍)が相手で、3回試合をして1回は競ったこともあるので、まずそこを勝って一戦ずつ頑張っていきたいです」(伊藤)。
  • 平野、スーパーリーグからの転戦は難しさもあるが、実力差を見せる

  • 実に多彩な、伊藤のバック表ソフトの攻守

  • 平野と対戦したハヨクは、珍しいフォア表ソフトの選手

●男子シングルス1回戦
張本 5、ー9、3、4、ー7、5 ピエラルト(ベルギー)
木造 8、4、4、ー4、7 クロス(チェコ)
于何一(中国) ー8、6、6、4、ー7、5 松山
龍崎 ー6、6、8、8、6 イヴォニン(ロシア)

男子シングルス1回戦、日本勢は張本、木造、龍崎が初戦を突破したが、昨日の予選リーグ2位通過のために于何一(中国)との対戦になった松山は2ー4で敗れた。

「世界ジュニアに来たからには中国選手に勝てないと話にならない。先に当たるか、後で当たるかの問題で、ドローが決まった時にはこれに勝てばいけるぞとポジティブに考えていた」という松山。「相手はブロックから入るタイプなので、ミドルを攻めて大きい展開に持って行く」という作戦で第1ゲームを先取したが、第2ゲーム以降はうまくコースを散らされ、台から下げられた。
「中国選手相手に下がってしまうとチャンスがないですね。ただ、負けたけれど、もうちょっと技術的に差があると思っていた部分が、実際に試合をするとそうではなかった。『ここを変えればもっと勝てる、もっと自信が持てる』という、勝つ要素が見えてきた。今までにないくらいの経験ができたと思います。まだダブルス種目があるので、必死で頑張ってきます」(松山)

木造は団体戦で敗れたクロスにきっちりリベンジ。「ドローを見た時は正直ビックリしましたけど、こんなチャンスないなと思った。負けた相手にこの大会でリベンジするチャンスがある。最初から勝ちにいきました」とたくましい所を見せてくれた。シングルス2試合目の龍崎は、世界ジュニアでの初勝利に、開口一番「いやあ、噛みしめましたね……」とコメント。まだミスが多く、試合勘も戻っていないというが、団体戦の決勝トーナメントで出場機会がなかった悔しさをここから晴らしていく。

そして張本は、ベルギーのピエラルトに苦戦。第5ゲームを落として2ー3とされ、「次を取られたら負けそうだと思って、全力でやりました」と第1シードらしからぬ(?)コメント。相手が下がって粘ってきた時になかなか打ち抜けず、相手がフォアサイドに逆襲してきたボールをバックハンドで処理しようとしてミスをする場面が目立つ。フォアサイドの処理は今後の課題だろう。「明日は1回勝ったら次に中国選手と当たる。団体では中国とやっていないので、中国選手に当たったら勝てるようにしっかり準備したい」(張本)
  • 松山、于何一に善戦するも敗れる

  • 龍崎は歓喜の1勝

  • 于何一に観客席から声援を送るチームメイトたち

今大会の会場であるグランドウエストは、荒野……というほどではありませんが、ホームセンターや自動車メーカーの展示場が並ぶ郊外に忽然と現れる白亜の建物。大人はカジノ、子どもはアイススケート場にゲームセンターにボーリング場と、至れりつくせりのアミューズメントパーク。会場となっているイベントホールは、ヨーロッパなどによくありそうな黒と赤が基調の配色で、とてもカッコイイ。

ただ、コンクリートのフロアに木でかさ上げしているので、場所によってベコベコへこむし、卓球台もどう見てもフラットではない台がある。特にメインの試合が行われる第1コートは、多くの選手が「ボールが沈む」と言っている。日本女子の呉光憲監督は、女子団体決勝の中国戦を前に「ボールが沈むので、スピードのあるボールよりも、回転量のあるボールで攻めていくこと」を選手にアドバイスしたという。環境に合わせた戦い方というのも、ジュニア選手にとっては貴重な経験だ。
  • グランドウエストの会場の様子

  • 子ども用のアイススケートのリンク。奥には大きな大人用のリンクもある

  • 奥のレストラン街はなかなか凝った雰囲気

  • 関係者用の食堂のおばさまたち。お世話になってます

■大会第5日目・12月5日の日本選手のタイムテーブル ※すべて日本時間

18:00〜(現地時間11:00〜)
●男子シングルス1回戦
張本 vs. ピエラルト(ベルギー)
木造 vs. クロス(チェコ)
松山 vs. 于何一(中国)
龍崎 vs. イヴォニン(ロシア)

21:15〜(現地時間13:15〜)
●女子シングルス1回戦
平野 vs. ハヨク(ドイツ)
加藤 vs. アイビー・リャオ(カナダ)
早田 vs. クラクスケン(トルコ)
伊藤 vs. ロイエン(ベルギー)

23:00〜(現地時間16:00〜)
●男子ダブルス1回戦
23:30〜(現地時間16:30〜)
●女子ダブルス1回戦
24:30〜(現地時間17:30〜)
●男子ダブルス2回戦
25:00〜(現地時間18:00〜)
●女子ダブルス2回戦

26:00〜(日本時間12月6日2:00〜/現地時間19:00〜)
●混合ダブルス3回戦(ベスト8決定戦)
張本/平野 vs. 關文皓/蘇慧音(香港)
龍崎/加藤 vs. 徐海東/袁媛(中国)
松山/早田 vs. ピント/ウォルフ(イタリア/ドイツ)

団体でのアベック優勝を経て、昨日は試合に出場する松山以外は午前中はオフ。午後から練習やトレーニングを行った。すでに現地入りして1週間というところ。「そろそろ筋力的に落ちてくる」ということで、男子選手は夕方に筋トレも行った。

そして今日、大会第5日目から個人戦が本格的にスタートする。男子シングルス1回戦、昨日2位で予選通過となった松山は、初戦から中国の于何一との対戦。厳しい相手だが、予選でキム・ソンイルに敗れたことで、思い切って試合ができるのではないか。
そして木造はなんという因縁、団体戦のチェコ戦で2ー0から逆転負けしたクロスとの対戦。今度はストレートで完勝したい。

女子シングルス1回戦は、4人とも確実に勝利したい相手。ただ、女子ダブルスでは伊藤/平野が2回戦で中国の劉煒珊/孫芸禎と当たる。みうみまダブルス、優勝への最初の関門となる。
●男子シングルス予選リーグ
松山 ー11、3、4、3、7 ブベン(チェコ)
キム・ソンイル(北朝鮮) 11、7、6、ー9、ー6、ー6、5 松山

男女団体決勝の興奮から一夜明け、男女シングルスの予選リーグが行われる大会第5日目。日本勢では唯一、団体戦のヒーローである松山祐季が登場。初戦でチェコのブベンを4ー1で下したが、第2戦でキム・ソンイル(北朝鮮)にゲームカウント0ー3から3ー3に追いつきながらも惜敗。第3試合で、キム・ソンイルがブベンに敗れると松山にも1位通過のチャンスがあったが、キム・ソンイルがブベンを4ー2で下した。松山は2位通過でトーナメントへ進む。

男子団体準々決勝の日本戦では3番で木造にストレートで敗れたキム・ソンイル。松山は第1ゲーム10ー8から逆転を許し、いきなり3ゲームを連取される。バックブロックが非常に堅いキムに対し、バッククロスのラリーが多くなったが、もうひとつフォアで狙っていけなかった。4ゲーム目に9ー5から9ー9と追いつかれながらも、緩急をつけた攻めで1ゲームを返し、最終ゲームまで持ち込んだが、最後は緊張もあったのか出足で大きく離された。最後はキム・ソンイルが10ー5のマッチポイントで、ここまでほとんど見せていないフォアへのフォアフリックで打ち抜いた。

試合後、ベンチに入った田㔟監督から厳しい口調でアドバイスを受けた松山。今回の世界ジュニアに出てくる中国や北朝鮮の選手は世界ランキングを持っていない選手が多く、予選リーグからの出場。同じリーグに入った選手は厳しい戦いを強いられることになる。松山も十分に勝機はあったとはいえ、ハードな組み合わせだった。
昨日の男子団体決勝で韓国に快勝し、実に10年ぶりとなる優勝を果たした日本。愛工大名電高3年の松山祐季、同2年の木造勇人、JOCエリートアカデミー/帝京3年の龍崎東寅、同じくJOCエリートアカデミーで中学1年の張本智和という「名電+エリートアカデミー」で構成されている。

日本からはるばる南アフリカを訪れ、決勝で2点を奪った教え子ふたりのプレーを見守った愛工大名電高卓球部監督の今枝一郎さんは、男子団体決勝を振り返って「本当に感動しました。選手たちを本当にほめてやりたい。応援も、観覧席からあんなに声を出したの何年ぶりだろうというくらいです」と語った。

今枝さん曰く、日本チームは混合ダブルス2回戦を終えてから男子団体決勝に入るまでの過ごし方が良かったという。「田中礼人さんのウォーミングアップでみんな笑顔になって、雰囲気を盛り上げるような準備をしていただいて、練習は対戦相手の韓国が割とルーズにやっていたのに対して、こちらは今この練習で緊張感を持ってやって、試合になったらリラックスして戦おうと。そういう流れが非常に良かったですね。逆に韓国はトップの趙勝敏なんか、緊張でいつもとは違って見えた。前日の中国戦では本当に強かったですから」。

チェコ戦で2敗し、苦しい出足になった木造に対しては、「木造はいつもそうなんですよ、一度失敗して入らないと踏ん切りがつかないというか、そういうタイプなんです」とコメント。しかし、そこからの木造の切り替え、そして決勝トップでの会心のプレーには大いにしびれたという。
「木造には『男になれ』と言いました。負けてどうのこうの言う試合じゃない。やるかやられるかという、代表同士の試合だろうと。そして決勝トップでは先手、先手と攻めて、ブロックは1球だけで次は必ず狙いにいっていた。3番松山は、いかに決められるかというところだったけど、よく決めてくれました」(今枝さん)。

8月のインターハイで男子学校対抗・男子単・男子複の3冠を制した愛工大名電。松山も木造も、男子学校対抗決勝のしびれる場面で勝ち星を挙げ、特に松山は4番での勝利でチームの優勝を決めている。団体戦の出場機会が少ないJOCエリートアカデミーと、プレッシャーのかかる団体戦での試合経験が豊富な強豪校の融合。過去の世界ジュニアでも、これがひとつの「勝利の方程式」だ。
  • 練習場での今枝さん(左)と松山

日本男子チームの中で、決勝トーナメントでは出場機会がなかった龍崎東寅。「ルーマニア戦3番でのプレーがあまり良い内容ではなかったので、団体のメンバーは絞らせてもらった」(田㔟監督)。短期決戦の世界ジュニアでは現実的な判断だった。そして田㔟監督は決勝後、龍崎にも感謝の言葉を述べた。「今回龍崎はチームのキャプテンにしたんです。一番年上でも年下の選手のことも考えながらサポートしてくれたし、ベンチで一生懸命応援してくれた。シングルスではアイツが活躍してくれることを期待したいと思います」。

龍崎も「試合に出られないなりに、応援とか選手のサポートはしっかりできたと思います」と語りながらも、「うれしいですけど、正直悔しい面もある」と本音をのぞかせる。
「個人戦でその悔しさを晴らしたいし、メダルを獲りにいきたい。ルーマニア戦はあまり自分の思うようなプレーができず、気持ちも入らないまま終わってしまった。反省する点が多かったです。調子はだいぶ戻ってきたので、団体戦の反省を踏まえて、シングルスに向けてしっかり仕上げていきたいです」(龍崎)。

フォアハンドの一発ドライブの威力は抜群。昨日の混合ダブルスでは加藤美優とのペアリングで、2試合とも完勝で勝ち上がった。シングルスでの巻き返しに期待だ。
  • 写真左から2番目が龍崎キャプテン

  • 加藤美優と組んだ混合ダブルスでのプレー

表彰式後、ミックスゾーンで取材に応じた日本男子の田㔟邦史監督。主力として期待された木造の不調という緊急事態に際し、思い切って調子の良い松山を起用。松山が団体戦のラッキーボーイとなってチームを波に乗せ、木造も次第に復調。ルーマニア戦で準備不足から敗戦を喫した張本も、決勝トーナメントでは試合前から入念に準備をして、確実に勝利を重ねた。すべてが最高にかみ合った状態で決勝を迎え、難敵・韓国を撃破。わずか3日間の出来事だが、そのチームマネジメントは見事だった。以下は田㔟監督のコメント。

「選手たちは本当によく頑張ってくれました。木造の出足が大きかったですね。今までにない完璧な試合でした。試合の雰囲気も作ってくれたので、それが決勝のすべてでしたね。
木造と趙勝敏は、これまでに良い勝負をしていたので当てにいこうと。智和はこれまで安宰賢に一度も勝ったことがなくて、3回か4回やって全部負けていたんですけど、今大会これまで智和は一度も左とやっていなかった。ここで突然左とやらせるのはちょっと難しいと思って、安宰賢に当てにいった。木造は1ゲーム目はサービスがすごく効いて、2ゲーム目からチキータされはじめたけど、チキータの処理がすごく良かったし、引き合いでも勝てていた。彼自身もすごく自信を持ってプレーできていた。

(張本)智和は安宰賢とチェコオープンでやっていて、しっかり対策を立てていた。前回は台上が中途半端になると先に打たれていたので、確実にストップするか、ストップができなければチキータで長くいって、智和の得意なバックで先手を取る。バックサイドに詰めれば、必ず回り込んでくるので、チャンスがあればフォアに回す。この作戦を練習していて、そのとおりになりました。選手たちはこういう場で、いろいろなことを体で覚えて、頭で覚えていくのかなと思う。この経験は本当に大きいですよ。

3番松山はここで決めてほしかったけど、これまで3ー2をくぐり抜けているので(笑)。ひとり1点ずつという戦い方でした。決勝はその通りの戦い方ができたし、松山は全勝ですからね。ビックリです。彼には驚いてます。彼の頑張りがなかったら予選リーグで負けている可能性もありましたし、みんな褒めてあげたいと思います。

勝った瞬間はうれしかったですけど、本当に世界チャンピオンになっちゃったなという半分信じられない気持ち。母体の監督さんが頑張ってくれたのもあるし、ぼくが監督になる前に日本卓球協会が作ってきた育成システムの成果が出てきたのだと思います。女子があの場所で良い雰囲気を作ってくれた影響も、間違いなくありますね」(田㔟監督)

世界ジュニア前から合宿などが続き、家には1カ月帰れないという田㔟監督。「家族も喜んでくれると思います」と最後に付け加えた。日本の家族の皆さん、パパは南アフリカで相当頑張ってますよ。日本に帰ったら優しくしてあげてください。
  • 戦況を見守る田㔟監督。そりゃ肩に力も入ります

  • 決勝トップで勝利した木造と握手