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ジャパンオープン・荻村杯2017速報

●男子シングルス
優勝:馬龍(中国)
準優勝:樊振東(中国)
3位:水谷隼(木下グループ)、許シン(中国)

●女子シングルス
優勝:孫穎莎(中国)
準優勝:陳夢(中国)
3位:王曼昱(中国)、ハン・イン(ドイツ)

●男子ダブルス
優勝:馬龍/許シン(中国)
準優勝:丹羽孝希/吉村真晴(スヴェンソン/名古屋ダイハツ)
3位:森薗政崇/大島祐哉(明治大/木下グループ)、樊振東/林高遠(中国)

●女子ダブルス
優勝:陳幸同/孫穎莎(中国)
準優勝:田志希/梁夏銀(韓国)
3位:橋本帆乃香/佐藤瞳(ミキハウス)、陳思羽/鄭怡静(チャイニーズタイペイ)

●U−21男子シングルス
優勝:林鐘勲(韓国)
準優勝:龍崎東寅(明治大)
3位:高見真己(愛工大名電高)、チウ・ダン(ドイツ)

●Uー21女子シングルス
優勝:梅村優香(四天王寺高)
準優勝:木原美悠(JOCエリートアカデミー)
3位:蘇慧音(香港)、麦子詠(香港)

  • 男子シングルス優勝の馬龍

  • 女子シングルス優勝の孫穎莎

男女シングルスの表彰式後に行われた男子の優勝会見。馬龍は優勝の感想について、「初めてジャパンオープンで優勝できてとてもうれしいし、プレーには満足しています。世界選手権が1週間前に終わったばかりで、選手たちは皆疲れている中でタイトルを勝ち取ることができたのはうれしい」と語った。一方、樊振東は「今大会では自分の力は発揮できたと思う。馬龍におめでとうと言いたい」と語った。

互いの印象について尋ねられた際、馬龍は樊振東について、次のように語っている。「ここ数年来、樊振東の成長は皆さんが見ているとおりです。彼の実力は世界選手権やオリンピックで優勝できるものです。今回の対戦でも、私が勝っていてもほんの1点くらいの差だったりする。最近は私が勝っているけれど、まだ若い樊振東はきっと私たちを超える存在になるでしょう」。

09・11・13年と世界選手権では3大会連続で王皓に敗れ、世界の頂点に立てなかった馬龍。その他の選手にはほとんど負けなかったが、王皓だけには分が悪かった。そして今、樊振東も許シンや張継科には分が良くなっているが、馬龍だけには勝てない。
かつては王皓という壁の前に立ち尽くした馬龍が、今は樊振東の前に立ちはだかっている。その心境はどんなものなのか、これからも若手選手の前に立ちはだかる壁になりたいのか。馬龍に尋ねてみたところ、彼は少し笑みを浮かべた後、こんな答えを返した。

「実は私自身、若い選手の前に立ちはだかる壁だと思ったことは一度もありません。私の前にもたくさん憧れの先輩、五輪や世界チャンピオンがいましたが、試合の時はいつもゼロから、同じスタートラインに立つと感じています。私はいつも平常心を保って、トレーニングをする時も若い選手と一緒になってやっている。これが今のレベルを維持できる理由だと考えています」(馬龍)

少しくらいは「先輩キャラ」を出すかと思ったが、実に模範的な回答。表情にはさすがに疲労の色もにじんでいたが、馬龍はどこまでもさわやかなチャンピオンだった。
世界戦決勝の再現、今回も優勝は馬龍!

●男子シングルス決勝
馬龍(中国) 7、ー5、7、8、5 樊振東(中国)

男子シングルス優勝は馬龍、意外にもジャパンオープン初優勝!

世界選手権男子シングルス決勝の再現となったこの一戦、序盤から両選手の高速両ハンドがぶつかり合う。その中でも、馬龍は3ゲーム目の10ー7のゲームポイントで、ラリーから目にも留まらぬフォアクロスのカウンタードライブ。4ゲーム目も10ー8でバックストレートへ、電光石火の回り込みフォアドライブで打ち抜いた。一方、樊振東はスーパープレーを随所に見せながらも、まだ勝負所での台上プレーやフォアドライブにミスが多かった。

馬龍が3ー1と勝利に王手をかけた5ゲーム目は、1ー1から馬龍が怒涛の7点連取。一気に突き放した。意気消沈し、イージーミスを連発する樊振東。最後も10ー5のチャンピオンシップで、馬龍がバックストレートにパワードライブで打ち抜き、世界選手権に続くタイトル獲得。改めて世界最強であることをアピールした。

首を振りながら足早にコートを後にした樊振東。またも馬龍の壁の前に立ち尽くした。しかし、馬龍もまたかつては、王皓ら先輩の前に敗れ去る試合をいくつも経験してきたのだ。この敗戦もまた、彼の成長の糧となるだろう。

★馬龍の優勝インタビュー
「今日は優勝できてすごくうれしいです。10年前の2007年、この大会では2位でした。10年ぶりのこの大会で、また優勝できて大変うれしく思います。ここ数年来、毎年日本でプレーしていますが、日本でこのような卓球ブームが起こっているのはとてもうれしく思いますし、また日本でプレーしたいと思います。
ファンの皆さんには、感謝のひと言です。初日から最終日までずっと応援してくれた。すべての選手を応援してくれた。私たち選手にとっては誇りですし、これからもずっとずっと応援してください。よろしくお願いします」
  • 馬龍、ジャパンオープンで初優勝!

  • 勝負所では躊躇(ちゅうちょ)せずにフォアハンドで攻めた

  • 樊振東、馬龍のプレッシャーの前にミスが多く出た

●女子シングルス決勝
孫穎莎(中国) ー9、9、ー8、ー8、7、9、8 陳夢(中国)

女子シングルス決勝、優勝はワールドツアー初出場の孫穎莎!
ゲームカウント1ー3から、切れ味鋭い両ハンドドライブを連発して逆転勝ち!

安定したバックドライブの連打で、ラリー戦で確実に得点する陳夢が、ゲームカウント3ー1とリードした女子シングルス決勝。5ゲーム目も6ー4とリードして優勝目前だった。しかし、ここで陳夢は少し余裕を見せてしまった印象がある。レシーブの精度が下がり、孫穎莎に逆転を許し、6ゲーム目以降はプレーに焦りが現れていた。

世界選手権前は平野美宇の仮想選手として、代表選手たちの練習相手も務めた孫穎莎だが、その実力は本物だ。クロスにもストレートにも、早い打球点で自在に打ち分けられるフォアドライブが最大の武器だが、バックドライブも完成度が高く、中陣から威力のあるボールを打ち込んだ。年上の陳夢が相手で、思い切ってぶつかっていける強みがあったとはいえ、年齢に似合わぬ完成度の高いプレーだった。

★孫穎莎の優勝インタビュー
「今はとてもうれしいです。昨日の女子ダブルスで優勝して自信がつきました。今日は勝てるかどうかわからなかったけど、勝てて本当にうれしい。ファンの皆さん、いつも応援していただいてありがとうございます。これからも努力していきます」
  • フルゲームで先輩の陳夢を破った孫穎莎、初優勝!

  • 陳夢、序盤は優位に試合を進めたが……

  • 2大会ぶりの優勝を逃し、陳夢は呆然の表情

  • 優勝インタビューではまだまだ初々しい表情

★樊振東戦後の水谷のコメント

「最初にポンポンとゲームを落としてしまい、悪い流れになったけど、観客の皆さんの後押しもあって、3ゲーム目以降は良いプレーができた。どんな局面でもあきらめてはいけないと思っていたので、3ゲーム目の8ー10、4ゲーム目の0ー5からでも追いつくことができた。
 序盤は相手も様子を見てきていたので、そこでもっと良いプレーがしたかった。決勝に残れなかったのが残念ですが、改めてたくさんの方に支えられているなと感じました。

 4・5ゲーム目はほとんど互角だったので、ああいうプレーができればチャンスがある。そこは開き直って、リラックスしてプレーできたので、これからもリラックスしてやれるようにしたい。樊振東はチキータがうまいけど、逆にそれを狙って得点できたのは評価できると思う。相手がチキータしてきた時にはほとんど得点になっていた。対中国選手では、ミスを怖れずにどんどん攻めていって、それが一本でも多く入るようにしたい。今日の自分のプレーは50〜60点だけど、4・5ゲーム目は80〜90点。あの感触を忘れないようにしたい。

 今日は1台でプレーする快感を味わうことができて、このために卓球をやっているんだなと思いました。世界選手権で張本に負けて、気持ちはすごく落ち込んだし、不完全燃焼のモヤモヤがあったので、今大会でそれを振り切りたかった。今日のプレーを振り返って、修正できるポイントがたくさん見つかったので、そこを重点的に強化できればまだまだ伸びていけると思う。まだまだ強くなりたい気持ちもあるし、手応えもある。もっと強くなりたい」(水谷)
●男子シングルス準決勝
樊振東(中国) 7、6、10、ー9、8 水谷隼

水谷、随所に好プレーを見せるも、樊振東に1ー4で敗れた。

1ゲーム目を取りたかった水谷、中盤までスコアは競り合いながらも2本のサービスミスが響き、このゲームを落とす。2ゲーム目は樊振東がフォアクロスの鋭いカウンター、パワードライブの連打などで0ー1から7ー1と7点連取。水谷はボールの違いもあってか、まだサービスのコントロールが完璧ではなく、少しでも台から出ると樊振東にすかさずフォアで攻められる。

3ゲーム目に水谷も反撃。2ー4、6ー7とリードされながら、レシーブから回り込んでバッククロスに打ち抜く好プレーで7ー7に追いつく。さらに8ー10とされながら、3球目フォアストレートのフォアドライブ、相手のチキータを狙い打っての3球目バックハンドで10ー10。しかし、最後はチキータからのバックドライブでフォアサイドを抜かれ、ゲームカウント0ー3と追い詰められる。

4ゲーム目、樊振東が5ー0のリード。水谷、万事休すか。ここからドラマが待っていた。3ー6で樊振東が早いタイムアウトを取ったあと、樊の速攻に触発されたかのように水谷の両ハンドがピッチを上げる。5ー8から逆転して10ー9でゲームポイントを握り、ガツンと切るストップから樊振東を両ハンドで攻め、1ゲームを返す。

5ゲーム目も出足は水谷がリードしたが、5ー3の場面で樊振東がサービスをYGサービスに切り替え、5点連取で逆転。水谷も3球目バックハンドを次々に決めて8ー8に追いつくが、最後は8ー10から長くなったサービスを樊振東にレシーブドライブされ、ブロックミス。3ゲーム目以降は全く互角のプレーを見せながら、1ー4で敗れた。
  • 水谷、出足でスタートダッシュをかけたかった

  • 樊振東、長くなったサービスは見逃さず

  • 3回目の対戦、水谷の初勝利はならず

  • 会場からは水谷へ、熱い声援が送られた

●男子シングルス準決勝
馬龍(中国) ー5、11、6、ー5、5、5 許シン(中国)

試合中にボールが3回も割れた、馬龍と許シンの華々しい打撃戦は、馬龍に軍配!

許シンが飛び込みざまに叩くフォアフリック、低くうなるような3球目パワードライブを決め、1ゲームを先取したこの試合。打球後に軽快なステップを踏む許シン、調子の良さを感じさせたが、馬龍の壁は破れなかった。裏面ドライブで馬龍のバックハンドと打ち合っても、どうやってもかなわない許シン。フォアで回り込んで勝負しても、打球点が落ちてしまうと馬龍にフォアストレートのカウンターを浴びる。この試合、何度も許シンのフォアを抜いた馬龍のフォアストレートのカウンターは、素晴らしい決定率を誇った。

ゲームカウント3ー2と馬龍が勝利に王手をかけた6ゲーム目、許シンも必死の抵抗を見せるが、4ー4で許シンの飛び込んでのフォアフリックを、馬龍がフォアでスーパーブロック。ボールを見送って、あ然とする許シン。ここから4ー7となって許シンがタイムアウトを取ったが、心が折れたか、これまでの好プレーがウソのようなミスを連発。世界王者・馬龍が決勝へと勝ち上がった。

「ペンホルダーである自分にとっては、幾度かのルール改正が大きな打撃だった。最も大きな打撃だったのはプラボールへの変更だ」。大会初日の14日にインタビューした際、許シンはそう語っていた。打球点を落としたドライブの変化は、チームメイトの馬龍にはほとんど通じず。試合中もゲーム間も、たびたび天を仰ぎ、苦しそうな表情を見せていた許シン。2ゲームを奪いながらも、現時点での実力差を痛感させられる内容だった。
  • 馬龍、これが世界王者のパワー

  • 許シン、善戦するも3位に終わる

  • 最後は馬龍が貫禄を見せつける

  • アリーナ席の中国応援団が熱い視線を送った

●女子シングルス準決勝
陳夢(中国) 7、8、8、ー7、5 ハン・イン(ドイツ)

女子シングルス準決勝のもうひと試合は、陳夢が勝ち上がった。決勝は孫穎莎と陳夢、中国勢同士の対戦となった。

昨日の鄭怡静戦では鉄壁の守備、自在なカットの変化を見せたハン・イン。しかし、陳夢の回転量が高く、弧線の低いループドライブに対してはなかなかカットの変化がつけられず、攻撃のチャンスも作れない。陳夢は要所でハン・インのミドルにボールを集め、返すだけになったハン・インのバックカットを、高い打球点でバッククロスに打ち抜く。

ハン・インは4ゲーム目に下回転の強いカットとツッツキを増やし、ミスを誘って1ゲームを奪取。5ゲーム目の中盤も陳夢がやや打ち急ぎ、ミスが増えたが、最後まで打ち切った。世界選手権でも表彰台に上がることができず、2位だった同世代の朱雨玲に差をつけられた陳夢だが、技術の基礎レベルの高さはさすがだった。
  • 陳夢、重いドライブでハン・インを下す

  • ハン・イン、ミドル攻めに変化をつけられず

●女子シングルス準決勝
孫穎莎(中国) 14、9、12、7 王曼昱(中国)

中国の若手対決、王曼昱と孫穎莎の一戦は、孫穎莎がストレート勝ち!

1999年2月生まれの王曼昱と、2000年11月生まれの孫穎莎。2000年生まれの日本の平野・伊藤・早田らと同世代の両選手だが、これまでの実績では14・15年世界ジュニア2連覇の王曼昱が圧倒していた。

しかし、試合が始まってみれば、スコアでは競りつつも孫穎莎の両ハンドの攻撃力が断然光っていた。身体能力が高く、バック対バックから回り込んでフォアドライブで仕掛けられるのがいい。そのフォアドライブも、早い打球点で上から振り抜く、非常にスピードにあふれた一撃だ。クロスとストレートの打ち分けも巧みで、4ゲーム目の9ー7の場面では、回り込んでバックストレート、そしてバッククロスと完璧なコースの打ち分けを見せ、長身の王曼昱をノータッチで打ち抜いた。3ゲーム目の終盤の競り合いの中で、フォアフリックでのレシーブエースを連発した勝負度胸もなかなかのもの。

孫穎莎の用具はフォアは粘着性裏ソフト、バックはスピン系テンション裏ソフトという中国選手の定番の組み合わせだが、ラケットはスティガ製のカーボンラケット。回転よりもスピード志向の用具と打法で、硬質なプラボールに適した中国女子卓球の最前線がここにある。今年1月に国家1軍チームに入ったばかりの孫穎莎、ワールドツアーへの参戦は今大会が初めてだが、衝撃的な活躍だ。

日本の「黄金世代」の選手たちは、2020年東京五輪を目指してしのぎを削っているが、中国はこの孫穎莎や王曼昱を2024年の五輪を見据え、じっくり育成していくだろう。
  • 強力なフォアハンドを披露した孫穎莎(スン・インシャ)

  • フォアハンドの仕掛けがまだ少ない王曼昱(ワン・マンユ)

★大会最終日・6月18日のタイムテーブル

●女子シングルス準決勝
10:00 王曼昱(中国) vs. 孫穎莎(中国) 
10:45 陳夢(中国) vs. ハン・イン(ドイツ)

●男子シングルス準決勝
11:30 馬龍(中国) vs. 許シン(中国)
12:15 水谷隼 vs. 樊振東(中国)

14:00 ●女子シングルス決勝

14:45 ●男子シングルス決勝

『LION卓球ジャパンオープン荻村杯』もいよいよ大会最終日。男女シングルスの準決勝・決勝が進行。12時15分試合開始予定の男子シングルス準決勝では、水谷と樊振東が激突する!