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ジャパンオープン・荻村杯2017速報

●男子ダブルス決勝
馬龍/許シン(中国) 9、3、7 丹羽孝希/吉村真晴

丹羽/吉村ペアは準優勝、男子ダブルス優勝は馬龍/許シン!

「許シン、加油! 馬龍、加油!」の大声援がアリーナ席から響き渡れば、負けじと「マハル!ファイト!コウキ!ファイト!」の声がかかった男子ダブルス決勝。試合開始の予定時刻は19時30分、それから1時間半近く遅れてスタートしたが、熱心なファンが会場に残り、声援を送った。

丹羽/吉村は3ー6から4点連取で7ー6と逆転し、9ー7までリードした1ゲーム目を取りたかった。試合全体を通じて吉村にバックハンドのミスが多く、なかなかペースをつかめず。厳しく攻めようとして、逆にミスが出た感があった。馬龍/許シンは許シンがダブルスでの強さを遺憾なく発揮。飛び込みざまのフォアフリックに、後陣からの低く這い上がるような弾道のフォアドライブと、貫禄のプレーを見せた。

3ゲーム目は吉村も硬さが取れ、キレのある両ハンドドライブを随所に見せたが、ラリーになった時の中国ペアの攻撃力はやはり脅威。最後まで打ち切られた。

「男子ダブルス決勝は待ち時間が長すぎて、審判に来るように言われてからずっと座って待っていたので、1ゲーム目の入りとしてはあまり良くなかった。ただ、相手も『寝ていて』くれて取れそうだったので、そこはしっかり取っていかないとなかなかチャンスがない。丹羽/吉村は、以前この馬龍/許シンに勝ったこともありますけど。
 準決勝の森薗/大島戦は、いつもは森薗/大島が勝っているけど、丹羽/吉村が台上で先手を取って攻めていて、ちょっと驚きました。ラリーの質が高く、ダブルスとしてレベルの高い試合だったと思います」(倉嶋監督)。
  • 丹羽/吉村、1ゲーム目を取りたかった

  • さすがのテクニックとパワーを見せた馬龍/許シン

●女子ダブルス決勝
陳幸同/孫穎莎(中国) ー9、ー8、3、7、6 田志希/梁夏銀(韓国)

女子ダブルス優勝は中国の陳幸同(チェン・シントン)/孫穎莎(スン・インシャ)!

経験豊富な韓国ペアに2ゲームを先取されたが、中盤からは中国ペアがパワフルなフォアドライブを連発。特に孫穎莎が放つフォアドライブは切れ味鋭く、高い身体能力を感じさせた。最終ゲームは韓国ペアが4ー2でリードしたが、ここから中国ペアが6点連取で逆転。当たりがついた時の爆発力を見せつけ、頂点に立った。

★陳幸同/孫穎莎の優勝インタビュー
「大変うれしく思います。逆転優勝できたので本当にうれしいです。ファンの皆さん、応援ありがとうございます。これからも努力していきますので、よろしくお願いします」(孫穎莎)
「この決勝は私たちのメンタルにとっても大きな試練でしたが、優勝できてうれしいです。多くの方に応援していただいて本当にうれしいし、頑張りがいがあります。今後もよろしくお願いします」(陳幸同)
  • 孫穎莎の豪球がうなった中国ペア

  • コース取りのうまさを見せた韓国ペアだが、逆転負け

●男子シングルス準々決勝
樊振東(中国) ー10、ー7、10、4、8、6 梁靖崑(中国)

男子シングルス、ベスト4の最後のひとりは樊振東!
明日の準決勝で水谷と対戦する。

中国で「大胖(大デブ)」と呼ばれる梁靖崑と、「小胖(小デブ)」の愛称を持つ樊振東の対戦。序盤は梁靖崑が2ゲームを先取したが、樊振東にエンジンがかかってきてからの両ハンドドライブの打ち合いはド迫力。横殴りに打つバックドライブと、フォアサイドを切る鋭いフォアドライブの応酬となり、中国から来た応援団を大いに沸かせた。
金属音が響き合う、まさにヘビー級の攻防。その中でも、トレーニングを積み、体を絞り込んできた樊振東の回り込み、フットワークの良さが光っていた。世界最高峰のバックハンドに、フォアハンドの積極性が加われば、まさに鬼に金棒だ。
  • 樊振東、回り込んでのパワードライブは一撃必殺

  • 梁靖崑のパワーもすごかった。この逆三角形の体格、恐るべし

●女子シングルス準々決勝
陳夢(中国) 7、8、5、7 平野

平野、4月のアジア選手権決勝では3ー0で勝利していた陳夢に、0ー4でストレート負け。ベスト8で大会を終えた。

世界選手権の準決勝で対戦した丁寧と同じく、陳夢も自分から無理にフォアで仕掛けず、平野のフォアを中心に深く切れたツッツキを集め、平野に打たせてからラリーを展開。相手のボールを利用するだけでなく、自分から得点できるアグレッシブなスタイルを目指してきた平野だが、打たされた時の攻撃力、その後の展開にはまだ課題を残した。コースについても、散らして打つと平野の両ハンドの調子を上げてしまうので、緩急をつけながらうまくコースを縛った。

サービスについても、エースを奪う場面も随所に見られたが、以前ほどは効かなくなっている。そして何より、対戦した陳夢の気迫がすごかった。「世界選手権よりも気合いが入っているのでは?」と思えるほど、1本取るごとに声を出し、平野へのリベンジに燃えていた。
中国に打たされても、さらにそれを上回る攻撃力と対応力を身につけていけるか。本当の中国との戦いは、研究されたここからが勝負だ。頑張れ、ミウ!

★試合後の平野のコメント
「前はサービスが効いて、ラリーでも勝っていたのに、今回は勝てるところがどんどん少なくなった感じがします。サービス・レシーブも相手は全然ミスしないし、ラリー戦でも速さについてこられているので、自分がもっと成長しないといけない。
 試合の中で自分のペースになることはほとんどなかった。バックハンドを振る前に終わってしまった。相手が自分のプレーを封じてきた時に、自分がそこで崩れてしまうので、どこを狙われても強い選手になりたいです。中国に勝つために、もっと対下回転のドライブをしっかり打てるよう、反省して頑張りたい。中国に追いついたかなと思ったけど、やっぱり中国は強い。中国オープンとオーストラリアオープンでは、中国選手に勝てるように頑張りたい」(平野)。
  • 陳夢、闘志むき出しで戦った

  • 平野、アジア選手権の再現はならず

 2ゲームを先取しながら、李尚洙に苦戦を強いられた水谷隼。最終ゲームに10ー6から10ー10に追いつかれ、次の一本で李尚洙が3球目攻撃をミスしていなかったら、どうなっていたか……。しかし、その後にこの試合初めてのYGサービスを出し、勝負にいったプレーからは、久々に水谷らしい勝負勘の冴えがのぞいた。以下は試合後のコメント。

 「2ゲームは簡単に取れたけど、3〜5ゲーム目はなかなか良いプレーができず、イージーミスが多かった。相手も調子を上げてきて、それに対応できなかった。6ゲーム目の後半に(6ー7で)タイムアウトを取ってから、吹っ切って勝負できた。7ゲーム目は良いプレーができました。何本か、自分で積極的に打っていったボールがあって、いけるボールは全部勝負できた。

 最後の(7ゲーム目11ー10での)YGサービスは、今日初めて出すサービスだった。自分もどうなるかわからなかったけど、相手もわからないだろうから、勝負だと思った。10ー10で相手にイージーミスが出て、もしこちらがミスしても11ー11だから思い切っていこうと思った。

 最後は自分らしさが出たと思います。やっと自分らしい普通のプレーができた。世界選手権の張本戦では、最後まで思い切ってやれなかったので、その繰り返しにならないように思い切ってやった。今日のプレーは自分としては50点、60点くらいですけど、その中で勝てた。調子が悪い中でも結果を残すことができた。最後にYGサービスを出せた自分はほめてもいいと思います。勝負をかけることができました」(水谷)
●男子シングルス準々決勝
水谷 6、9、ー4、ー6、ー8、7、10 李尚洙(韓国)

水谷、李尚洙をゲームオールジュースで下してベスト4進出!

過去の国際大会では3戦全勝の水谷。直近の対決である16年アジアカップでも4ー1で勝利し、2ゲーム以上取られたことはないが、この試合は苦戦を強いられた。

2ゲーム目の10ー9で、李尚洙得意のロングサービスをバックドライブできっちり狙い打ち、11ー9とした水谷が2ゲームを先取。しかし、3ゲーム目から李尚洙はロングサービスを封印し、レシーブではストップをきっちり止めて先手を奪う。水谷は2ゲーム目まで優位だった台上で、思うような展開に持ち込めず、ゲームカウント2ー2に追いつかれる。少しでも浮いたストップに対して、一発で打ち抜く李尚洙のパワードライブは強烈。一本取るごとに声を出してくる。観客席のあちこちから「水谷頑張れ−!」「水谷ファイト!」の声が響く。

5ゲーム目はシーソーゲーム。水谷が4ー6から8ー7と逆転するが、次に李尚洙のレシーブがネットイン。さらに李尚洙のサービスを低く短くストップできず、バックハンドでの3球目攻撃を浴びて8ー11とされ、後がなくなる。6ゲーム目は6ー7で水谷がタイムアウトを取り、ここからやや李尚洙が勝利を意識したか、水谷が5点連取で最終ゲームに持ち込む。

最終ゲームは水谷5ー3のリードでチェンジエンド。7ー5のリードで水谷がフォアの4球目カウンターを決め、8ー5となって李尚洙がタイムアウト。水谷が10ー6と突き放してマッチポイント。しかし、李尚洙がそれまで手を焼いていたフォア前のサービスに対し、思い切ったチキータを見せて10ー10に追いつく。息をのむ観客席。

この緊迫の場面で、李尚洙が10ー10から3球目攻撃をミス。それまでほとんどミスのない台上フォアドライブのイージーミス。最後は水谷がYGサービスからバックドライブで得点し、熱戦に決着をつけた!
  • 水谷、苦しい苦しい一戦を制す

  • 強烈な台上フォアドライブを見せた李尚洙だが、最後にミス

●女子シングルス準々決勝
ハン・イン(ドイツ) 7、ー10、4、ー10、8、7 鄭怡静(チャイニーズタイペイ)

ハン・インと鄭怡静の女子シングルス準々決勝は、鄭怡静が「強引な決定打はミスになる」と粘り強いカット打ちを見せた。ナックルが多いハン・インのバックカットに対しては、回転量を落とした軽打と合わせるだけのストップで粘り、チャンスボールだけを狙いすまして両サイドに連続攻撃。それを何本でも拾うハン・インが、後陣からドライブで打ち返せば、鄭怡静はブロックで前に落としてラリーをリセットする……。

日本選手の試合の谷間とはいえ、テクニックを尽くした一戦。ハン・インが6ゲーム目の2ー4で足を傷め、メディカルタイムアウトで試合が中断。その後もプレーを続行し、それほど重傷ではなかったようだが……。これで逆に鄭怡静がリズムを崩し、逆転したハン・インがリードを広げて勝ち切った。
  • ハン・イン、バック表ソフトから繰り出すカットの変化は驚異

  • 粘り強くカットを打った鄭怡静だが、及ばず

  • 6ゲーム目に治療を受けるハン・イン

 序盤のゲームを落としたのが痛かった丹羽。しかし、随所に彼らしいカウンタープレーを見せた。試合後の丹羽孝希のコメントは以下の通り。

「もっとカウンターの数を増やさないと勝てない。前は試合前から向こうのオーラが凄くて、萎縮していたけど、今日は最初から勝つ気で戦いました。サーブは効いていたけど、ラリーになったら点が取れなかった。
 最初の3ゲームは互角に戦えていたけど、最後の2ゲームは相手も足が動いてきて急に強くなった印象でした。でも馬龍と戦えたことは自分にとってプラスになる。
 ワールドツアーでは中国選手が100%でやることはないけど、今日は少しは本気でやってくれたかなと思います。台から下がらずに戦いたかったけど、彼のバックハンドの回転量も多くて……バック面にも中国ラバーを貼っているのは彼くらいなので、そのバックハンドのボールをオーバーミスしてしまった」
●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) 8、10、ー9、5、3 丹羽孝希
許シン(中国) キケン 方博(中国)

男子シングルス準々決勝、世界王者の馬龍(中国)に挑んだ丹羽は、3ゲーム目を奪ったが1ー4で敗れた。10ー8でゲームポイントを握りながら、4点を連取されて逆転された2ゲーム目を取りたかった。

丹羽のバックハンドカウンターをさらに馬龍がカウンター、丹羽が再び勝負を懸けて回り込んだフォアカウンターを、馬龍がフォアストレートにカウンターで打ち抜くなど、恐るべき速攻戦。そしてラリーが速くなればなるほど、最後まで体勢を崩さない馬龍の体幹の強さがものを言った。

しかし、敗れたとはいえ、丹羽は世界選手権に続いて今大会のプレーも光っていた。バックハンドで強い右横下回転をかけ、ゆっくり飛ばす独特のレシーブは、馬龍がネットミスをするほど。5ゲーム目に大きくリードされても、プレーの質は落ちなかった。

男子シングルス準々決勝のもうひと試合、中国勢同士の対戦は、1ゲーム目に許シンが2ー0としたところで方博が棄権。あっけなく許シンの準決勝進出が決まった。
  • 速攻が冴えた丹羽、敗れるも好プレーを見せる

  • 馬龍から最後の一本を取るのは至難の業

  • バックハンドで打球点を落として引きつけ……

  • 横にスライドさせてズバッと切る。今野編集長は「二ワット」と命名

●女子シングルス準々決勝
王曼昱(中国) ー4、ー8、11、10、9、8 伊藤美誠
孫穎莎(中国) 7、ー4、3、ー9、11、8 シャン・シャオナ(ドイツ)

伊藤美誠、王曼昱から2ゲームを先取し、3ゲーム目も先にゲームポイントを奪うところまで追い詰めたが、2ー4で敗れた。
世界戦ではプレッシャーからややプレーが堅かった伊藤だが、この試合はミスが出てもレシーブから厳しく攻め、相手のプレーを縛る伊藤本来のプレーを見せた。長身の王曼昱のミドルに連続で叩き込むバックハンド、ミスを誘うバック表ソフトのチキータ、そしてチャンスボールには強烈なフォアスマッシュを見せた。

勝負の分かれ目は3ゲーム目。伊藤は3ー9と大きくリードしながら9ー9まで追いつき、10ー9でゲームポイント。さらに11ー10で迎えた2回目のゲームポイントで、王曼昱のストップが台上に浮いたが、これを狙った伊藤のフォア強打がオーバーミスになった。試合後、ベンチに入った松﨑コーチは、「本人はロングサービスを狙っていたけど、ベンチからフォア前に下回転サービスを出せと声を掛けて、そこを待っていなかった。チャンスボールを作っても失点していた。そこをパッとやって得点できる訓練が必要」と語った。

4ゲーム目はジュースまでもつれ、5ゲーム目も8ー5とリードを奪うなど、その後のゲームもスコアは競り合ったが、あと一本が取れない。5ゲーム目の8ー10の場面では、アップ系のロングサービスでエースを奪った2本目に、同じサービスを完璧に狙われ、バックドライブで打ち抜かれた。「中国選手は2本のサービスに対して、2本目で1本目と同じサービスが来ると読む選手と、違うサービスが来ると読む選手がいる。王曼昱は同じサービスを待つタイプだとわかったので、次はそれに注意したい」(伊藤)。

試合後、涙を見せた伊藤。「王曼昱は将来化け物みたいになりそうな選手。勝っておかないといけなかった。でも今回試合ができてすごくよかったです」とコメントした。勝利した王曼昱は「今回の伊藤は、今まで対戦した中で一番調子が良かった。伊藤や平野はこれからもずっと世界で戦っていく選手だし、良い試合をしていきたい」と語った。
  • 両ハンドの強打が冴えた伊藤。…惜しかった!

  • 勝負所ではフォア前をチキータで狙ってきた王曼昱

  • パワードライブでシャン・シャオナの堅陣を破った孫穎莎