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全国高校選手権(インターハイ2017)

 女子学校対抗決勝で、四天王寺に0−3で敗れた遊学館。出雲美空と相馬夢乃というツインエースを擁し、戦力的には四天王寺と同等か、それ以上とも思われた。しかし、結果は0−3。トップ津隈が2ゲーム目の10−5から7点連取を許し、2番出雲は最終ゲームの9−6から逆転を喫した。3月の高校選抜で決勝進出を果たし、決勝の舞台も経験したうえで狙った頂点。しかし、四天王寺の壁は厚かった。

 「悔しいですし、本当に監督の責任だと思います。そのひと言です。優勝を狙うということで、今回は事前合宿も計画的にやりましたし、いろいろ対策も立ててきた」と語った、遊学館の安達健佑監督。監督自身も、2002年の茨城インターハイで遊学館がベスト4入りを果たした時のメンバー。母校の女子卓球部監督として、インターハイで初めて学校対抗決勝のベンチに入った。

 「出雲、相馬、そして出雲・相馬のダブルスか千葉で勝つというイメージを持っていたので、2番で出雲が落としたのは痛かった。出雲は昔ミキハウスにもいましたし、出雲に対しては徹底的にフォア前を突いたり、フォアに揺さぶる展開を使ってきた。それはわかっていたけど、対応できなかった。
 昨年はうちも初めてのインターハイでの入賞(3位)だったので、経験値が不足していた。四天王寺と当たるというだけで選手もビビってしまった。選抜はオーダーも当たったので狙えると思ったけど、決勝の舞台で緊張してうまくできなかった。今回は決勝も経験しているから、本当に狙っていこうと。でも戦術転換の能力、引き出しの能力が向こうのほうが上でした。今後は戦術に関しては徹底してやらないといけない」(安達監督)

 2番出雲が敗れ、ベンチに重苦しいムードが漂った時、「これだけ観客席で応援してくれる人たちがいて、たくさんの方の協力があったここまで来た。こんな感じで負けたらダメだぞ」とハッパをかけたという安達監督。「次は日本一を獲ります。まず国体があるので大阪にリベンジしたいし、来年のインターハイでは優勝します」と言い切った。それは自らに言い聞かせた、決意表明だったのかもしれない。戦型のバラエティに富んだ好チーム・遊学館。来年はひと回り大きくなって、インターハイの舞台に戻ってきてほしい。
  • 決勝1番に出場した津隈にアドバイスする安達監督

  • 出雲はベンチで笑顔。「リラックスさせて伸び伸びプレーしたほうがよい」と安達監督

  • 観客席では男子チームも大きな声援を送った

インターハイ最終結果

●男子学校対抗
優勝:愛工大名電(愛知)
準優勝:遊学館(石川)
3位:希望が丘(福岡)、野田学園(山口)

●女子学校対抗
優勝:四天王寺(大阪)
準優勝:明徳義塾(高知)
3位:愛み大瑞穂(愛知)、遊学館(石川)

●男子シングルス
優勝:木造勇人(愛工大名電・愛知)
準優勝:戸上隼輔(野田学園・山口)
3位:金光宏暢(大原学園・東京)、田中佑汰(愛工大名電・愛知)

●女子シングルス
優勝:梅村優香(四天王寺・大阪)
準優勝:岩越帆香(希望が丘・福岡)
3位:岡崎日和(川口総合・埼玉)、秋山星(愛み大瑞穂・愛知)

●男子ダブルス
優勝:木造勇人/高見真己(愛工大名電・愛知)
準優勝:田中佑汰/加山裕(愛工大名電・愛知)
3位:出雲卓斗/五十嵐史弥(遊学館・石川)、西村星哉/深沢大陽(浜松修学舎・静岡)

●女子ダブルス
優勝:井絢乃/三村優果(明徳義塾・高知)
準優勝:笹尾明日香/杉本恵(横浜隼人・神奈川)
3位:梅村優香/塩見真希(四天王寺・大阪)、森本枝里/白神ひかる(白子・三重)

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  • 3冠王に輝いた木造

  • 学校対抗、シングルスで優勝した梅村

●女子シングルス決勝
梅村(四天王寺)6、6、7岩越(希望が丘)

女子シングルス決勝は、好調の岩越を梅村が変化プレーでシャットアウト。梅村は昨日の学校対抗の優勝に続いて、2冠を達成した。

梅村は、回転のわかりづらいアップダウンサービスでサービスエースを連発。ラリーになってもバック面の変化系表ソフトでゆるいボールとナックル性の重くて速いボールを巧みに操り、岩越の強打を封じた。
「決勝は自分のプレーをすることができました。シングルスでマークしていたのは5回戦で当たった出雲さん。これまで0勝3敗と一度も勝ったことがない相手だったので事前に対策を練りました。この試合に勝つことができて、優勝を意識しました。最後のシングルスで優勝できたことはうれしいですが、3冠を目指して臨んでいたので(ダブルスで負けて)満足はしていないです。

決勝まで快進撃を見せた岩越だったが、梅村のバックハンドに最後まで打開策を見つけることができなかった。
「梅村さんにはこれまで何度も対戦していますが1度も勝ったことなかった。決勝は思い切ってプレーしようと心掛けましたが、バックのボールを攻撃できませんでした。決勝まで来られたことは自信になったので、今後に生かしていきたいです」と決勝後の岩越。

木村、笹尾、塩見といった優勝候補が次々に敗れていく中、梅村は向かってくる相手に対して弱気にならず、自分のプレーを貫いた。小さな身体をカバーするためにサービスを磨き、バックハンドの変化と巧みな戦術でインターハイチャンピオンの称号を手にした。

  • チームメイトが敗れていく中、梅村が初優勝を手にした

  • 岩越は3ゲーム目に梅村のプレーに慣れつつあったが間に合わなかった

  • 梅村、勝利の瞬間。観客席の応援団にガッツポーズ

  • 決勝のベンチに入った宮崎と抱き合って喜ぶ

●男子シングルス決勝
木造(愛工大名電)9、-7、7、4 戸上(野田学園)

2017年インターハイ王者は木造勇人。
昨年に続き、男子シングルスを制し、今年は学校対抗・ダブルスも優勝し、三冠王となった。

決勝の相手は愛工大名電勢を4人破ってきた戸上。
両者は5月のアジアジュニアでも対戦しており、その時は木造が3−2の辛勝。今回も熱戦が期待された。

試合展開は台上での先手の取り合い。
お互いにフォア前へサービスを出し、チキータとストップで自分の有利な展開を作っていく。
準決勝までスピードのあるチキータで攻めていた戸上だが、木造のサービスに対してはやや消極的だった。木造はナックル、下回転と出し、時折ストレートへロングサービスも散らしてくる。そのため、戸上が思い切って台の中に入れない。

お互いにゲームを取り合い、1−1になった第3ゲーム。
中盤まで点数は競っていたが、後半になって木造がスパートをかけた。戸上のチキータを前陣カウンターで跳ね返し、中陣からのバックドライブも上からフォアで叩き込む。
7−7から4点連取でこのゲームを奪うと、第4ゲームは完全に木造が主導権を握り、サービスエース、3球目攻撃など、一気にたたみ込んだ。
7−0、9−1まで点数が離れ、最後は長いラリーを制して、木造は力強くガッツポーズ。

坪井勇磨(青森山田)以来、4年ぶりの三冠王の誕生だ。

「三冠王は狙っていたけど、一番は団体戦。シングルスは負ける覚悟をして臨みました。大会序盤、思うようなプレーができなくて、2日目に足を負傷したし、調子がもってくれるか不安でした。その中でも自分の勝負強さが出て、最後の1・2本が取れた。決勝も相手のサービスに苦戦して、それに対応するかがカギだった。そこをなんとか乗り越えられました。

 戸上はチキータをしてくると思ったので、それをどうするかが重要。最後の最後で対応できて、自分の思うようなプレーができました。

 2年前のインターハイ、ぼくが1年生の時。準々決勝、準決勝、決勝と青森山田の選手と対戦して、最後に三部さんに負けた。あの時とは逆の立場です。戸上は名電の選手を3人倒してきてますから。プレッシャーもあったけど、そこで勝つのがチャンピオンだと思って、絶対に勝ちたかった。

 2年前、ぼくは青のウェアを着て負けているんです。だから今回、決勝は青を選んだ。これで勝って、リベンジしてやる。勝てて良かったです」(木造)

普通ならば一度負けたウェアはジンクスとして避けるが、木造はあえてトラウマを払拭しにいった。かつての青森山田のように追われる立場となり、プレッシャーの中でチャンピオンの座を守った木造。

「高校のタイトルは全部獲ったので、悔いはありません。シニア、世界で勝てる選手になりたい」(木造)

木造の卓球人生において、インターハイチャンピオンは未来へのステップのひとつにすぎない。
  • 貫禄の優勝。木造2連覇を達成

  • 今枝監督と歓喜の抱擁

  • 宣言通りの三冠王となった

  • 敗れはしたが強烈な印象を残した戸上

●女子シングルス準決勝
岩越(希望が丘)6、6、2岡崎(川口総合)
梅村(四天王寺)−9、6、6、9秋山(愛み大瑞穂)

岩越対岡崎の試合は一方的な内容になった。
岩越はサービスから3球目強打、レシーブでも台から出たサービスを一発で打ち抜くなど、手が付けられない状態だった。「レシーブがうまくできませんでした。相手の方が格上で歯が立たなかった」と岡崎。

梅村と秋山の一戦は、序盤で秋山の回転量のあるドライブに苦しんだ梅村だったが、ツッツキに変化をつけて秋山のドライブの回転量を減らし、ブロックで秋山を攻め立てた。
敗れた秋山は「4ゲーム目の9−9でミドルに来たボールを迷ってしまった。強い相手には一瞬でも迷うと見逃してくれない。団体で日本一を目指してきましたが3位で終わったので、シングルスで日本一と思ってコートに入りました。シングルスでも応援してくれるチームメイトに向かってガッツポーズをして、団体戦のように戦うことができました。みんなのおかげです」

女子シングルス決勝は、岩越、梅村のサウスポー対決。どちらが勝っても初優勝になる。
  • 岩越が岡崎を寄せつけず決勝へ

  • 岡崎は2年生ながらベスト4入りは立派

  • 苦しみながらも勝機を見出して逆転勝ちした梅村

  • 学校対抗に続いてシングルスでも3位入賞の秋山

●男子シングルス準決勝
木造(愛工大名電) -8、5、8、-9、9 金光(大原学園)
戸上(野田学園)-9、7、11、3 田中(愛工大名電)

決勝のカードは、木造対戸上に決定。

木造は全日本ジュニアでも苦戦した金光と大激戦。
金光の力強いバックハンドは強力で、木造のフォアサイドを何本も打ち抜く。
最終ゲームの9−6。ここでも金光は思い切ったバックドライブで3連発。
9−9に追いつき、木造敗れるか?と思わせた。

その場面で木造はタイムアウト。
切れた下回転サービスを金光のフォア前に出し、浮いたストップをフォアで振り切り、10−9。
マッチポイントで、金光に再びバックドライブをフォアサイドに打たれたが、最後の最後で木造が対応し、フォアドライブでかけ返す。木造は体勢を崩しながらも中陣からバックドライブを打ち込み、執念の1本をねじ込んだ。

「最後はチキータができなかった。ストップが浮いてしまった」と金光。
木造の対応力にあと1点が取れなかった。

もうひとつの準決勝は戸上が勝利。
お互いにバック対バックが強く、前中陣での打ち合いで激しいラリーを展開。
勝負となった3ゲーム目、戸上にゲームポイントを握られながらも追いつき、プレッシャーをかけたが、決めきれず。
4ゲーム目に入ると、戸上に余裕を持たれてしまい、田中の鉄壁のブロックが崩れた。

「相手もバックが強いので、それ以上に自信をもってバック対バックで勝負をかけました。3ゲーム目の後半、相手のサービスがすごく低くなって、チキータのコースが偏ってしまった。あれをフォアに勝負できなかった。流れがいってしまった。
 昨年も3位で自分が成長している証明ができていない。素直に悔しい。(木造)勇人さんを決勝で絶対に倒そうと思っていたので、悔しいですね」(田中)
  • 木造は連覇まであと1つ

  • 惜しい試合だったが、十分に強さを見せた金光

  • 1年生戸上が決勝へ

  • 田中、悔しい3位

  • 木造は最後に対応した

  • 戸上は決勝でも爆発するか

●女子シングルス準々決勝
岡崎(川口総合)10、-8、13、5 松岡(慶誠) 
岩越(希望が丘)8、10、-4、8 千葉(遊学館)
秋山(愛み大瑞穂)9、-8、-7、7、7 塩見(四天王寺) 
梅村(四天王寺)3、8、9 野村(愛み大瑞穂)

波乱が起きたのは秋山と優勝候補のひとり塩見の一戦。
秋山は日本の女子選手にはめずらしい中陣から重いフォアドライブで攻めるタイプ。塩見は秋山の唸るようなフォアドライブを押さえ切れず、準々決勝で姿を消した。

「初戦からこの準々決勝まで(負けられないという)緊張していて自分のプレーができなかった。メンタル面が課題です」と敗戦後の塩見。

女子シングルスはベスト4が出揃ったが、4人の選手全員に優勝のチャンスがある。
果たして、準決勝、決勝を勝利するのはどの選手か。
  • 安定感のあるプレーで松岡を下した岡崎

  • 岩越はキレのいい両ハンド攻撃が武器

  • 威力のあるドライブで会場を沸かせた秋山

  • 最後のインターハイで優勝を狙う梅村

●男子シングルス準々決勝
木造(愛工大名電)8、13、10 柏(関西)
金光(大原学園)7、8、8 蛭田(希望が丘) 
田中(愛工大名電)5、12、6 沼村(野田学園)
戸上(野田学園)13、-9、7、9 高見(愛工大名電)

戸上と高見の試合以外はストレートで決着。
3選手が貫禄を見せる形になった。

会場の注目を集めたのは戸上vs高見。
大きなフォアの打ち合い、台上での先手の取り合いなど、見応えのある試合展開。
バック対バックへ持ち込みたい高見を避けるように、戸上はフォアのラリーへ誘導。
戸上の上から打ち込む鋭いボールは高見といえども簡単には返球できず。カウンターミスを誘われた。

「前回の対戦の時はバック対バックで得点ができていたけど、今回は緩急をつけられて点が取れなかった。フォアも速くて、守りになってしまった。台上で勝負したかった」(高見)

木造とともに三冠王を目指していた高見だが、新進気鋭の1年生の勢いを止めることができず、悔しい結果となった。

それにしても戸上は速い。足の速さ、そして腕のスイングスピードは超高校級。
次の準決勝の田中戦は注目だろう。
  • 競りながらも柏をストレートで下した木造

  • 田中はコースとうまくつき、沼村に勝利

  • 戸上、この強さは本物だ!

  • 高見は戸上の速さに敗れる

いよいよインターハイも最終日。
男女のシングルスのチャンピオンが決定する。
準々決勝のカードは以下のとおり

●男子シングルス準々決勝
木造(愛工大名電)vs. 柏(関西)
蛭田(希望が丘)vs. 金光(大原学園)
田中(愛工大名電)vs. 沼村(野田学園)
戸上(野田学園)vs. 高見(愛工大名電)

●女子シングルス準々決勝
松岡(慶誠)vs. 岡崎(川口総合)
岩越(希望が丘)vs. 千葉(遊学館)
塩見(四天王寺)vs. 秋山(愛み大瑞穂)
野村(愛み大瑞穂)vs. 梅村(四天王寺)
 5連覇を達成した四天王寺。負けられないというプレッシャーの中、きっちりと優勝を決めることは簡単なことではない。表彰式後に村田監督に話を聞いた。

 「私の海外遠征が多かったため、インターハイに向けてチームをしっかりと見ることができなかったんですが、選手たちがよくやってくれました。3年生の木村と梅村がチームと後輩の面倒をよく見てくれました。

 優勝に向けて一番警戒したのは準々決勝で対戦した横浜隼人。笹尾というエースがいて、そういった強い選手がいるチームは簡単に勝てないと思っていました。横浜隼人戦では笹尾に取られましたが、それはある程度想定していたので、私も選手も動揺せずにその後をうまく戦えました。

 決勝は、トップの塩見が負けたのは想定外でしたが、木村ががんばってくれました。ダブルスは前日に3位という結果で悔しい思いをしたので、決勝では必ず勝ってくれると思っていました。最後は大川がよく踏ん張って勝ってくれました。決勝も簡単ではなく、厳しかったです」(四天王寺・村田監督)
  • 2番で木村にアドバイスをおくる村田監督