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中国リポート

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 少し前のニュースになってしまうが、9月6〜11日に安徽省蚌埠(ボンブー/ほうふ)市で、2016中国卓球クラブ甲Aリーグの第2ステージが開催された。5月に行われた第1ステージは団体戦のみだったが、この第2ステージはまずシングルス、次に団体戦を行うというシステムで行われた。
 中国卓球協会登録でない選手で構成されたチームも4チームまで参戦できるが、この第2ステージでは男女とも出場予定だったエジプトが棄権。他協会の選手はチャイニーズタイペイ、香港、北朝鮮、シンガポールといったアジアの国々がほとんどだった。まずシングルス上位の成績や注目選手の成績をピックアップしていこう。

★男子シングルス上位および注目選手
1  徐海東(遼寧)
2  楊碩(遼寧)
3  王麒凱(上海中学華東理工)
4  王博(安徽惠友)
5  劉亜楠(西安高陵五号公館)
…………………………………………
7  介健偉(西安高陵五号公館)
19 馮殿宇(瀋陽地鉄)
21 朱誠(江蘇神鷹)
27 牛冠凱(上海中学華東理工)
29 林昀儒(寧波大学臨海ピン校/チャイニーズタイペイ)

★女子シングルス上位および注目選手
1  劉ウェイ珊(天津)
2  孫穎莎(重慶康徳)
3  銭天一(陝西三八婦楽)
4  邱嗣樺(TPE国泰女卓/チャイニーズタイペイ)
5  リ・ミョンスン(大連大学ー海昌/北朝鮮)
…………………………………………
6  楊艶梅(深セン大学ー動感地帯)
8  蘇慧音(天津/香港)
13 陳思羽(瀋陽地鉄/チャイニーズタイペイ)
15 聶維(深セン大学ー動感地帯)
27 チャ・ヒョシム(中ピン校僕陽一隊/北朝鮮)

男子シングルス優勝は、先日のアジアジュニア選手権でジュニア男子シングルスを制した徐海東。王楠や劉詩ウェンの出身地である遼寧省撫順市生まれで、今年2月に国家2軍(ジュニア)チーム入りした右両面裏ソフトのペンドライブ型。『ピンパン世界』でのショートインタビューでは「世界チャンピオンは卓球選手なら誰もが夢見ること、僕も例外じゃないよ」とハッキリ語っている。2位の楊碩(右シェークドライブ型)も遼寧省鉄岭市の出身で、遼寧省の選手育成力はまだまだ健在だ。

トップ5以下を見てみると、7位にベテランの右ペン表・介健偉、19位には日本の高岡龍谷高・大阪経法大で活躍した馮殿宇の名前も。ちなみに馮さんは東アジアホープス・男子初代チャンピオンという実績の持ち主だ。
21位の朱誠は昨年の世界ジュニア代表、そして27位の牛冠凱は、アジアジュニア選手権のカデット男子決勝で日本の張本智和を破った選手。河南省済原市出身の14歳で、陸上選手だった母親譲りの身体能力の持ち主……だとか。スミマセン、プレーは見たことないです。29位の林昀儒(左シェークドライブ型)は、今年2月の世界団体選手権に、タイペイ史上最年少の14歳4カ月で出場した俊英だが、それでもこの位置とは。

一方、女子は今年のピョンヤンオープンに中国代表として出場した劉ウェイ珊(右シェークドライブ型)が優勝。劉と同じ国家2軍チームの孫穎莎が2位、アジアジュニア女王の銭天一が3位という結果だった。4位の邱嗣樺は、14年ユース五輪でも活躍したバック粒高の異質攻守型。この人の粒高ショートはなかなかエグいです。そしてリ・ミョンスンが5位というレベルの高さ。
10位以下では、昨年1シーズン十六銀行に所属した右ペン表の楊艶梅が6位、アジアジュニア3位の蘇慧音が8位、チャイニーズタイペイの強打者・陳思羽が13位という顔ぶれだ。
  • 13年全中国運動会での介健偉。バチバチ叩いてました

  • 14年ユース五輪のヒロイン・邱嗣樺

 9月20日から28日まで、「卓球の街」「鉄鋼の街」として知られる遼寧省鞍山市で、2016〝千山杯〟全国卓球選手権が行われている。会場は2013年全中国運動会・卓球競技の会場となった鞍山市オリンピックセンター体育館だ。23日に団体戦が終了し、男子団体は上海市、女子団体は四川省がチャンピオンに輝いた。上位の結果は下記のとおり。

〈男子団体〉●準々決勝
上海市 3ー0 遼寧省 江蘇省 3ー1 陝西省
解放軍 3ー1 北京市 山東省 3ー0 黒龍江省
●準決勝
〈上海市 3ー1 江蘇省〉
○尚坤 6、6、10 朱誠
○許シン 4、2、4 孫聞
 趙子豪 ー7、ー6、7、ー9 張煜東○
○尚坤 7、4、5 孫聞
〈山東省 3ー0 解放軍〉
○孔令軒 ー6、8、ー5、9、11 樊振東
○方博 9、ー6、8、ー5、1 周雨
○劉丁碩 9、13、5 周愷
●決勝
〈上海市 3ー2 山東省〉
○尚坤 ー9、ー9、5、6、8 孔令軒
 趙子豪 ー7、9、ー15、ー10 方博○
○許シン 7、4、5 劉丁碩
 尚坤 ー7、ー9、ー6 方博○
○趙子豪 11、13、10 孔令軒

〈女子団体〉●準々決勝
山西省 3ー0 河北省 四川省 3ー1 解放軍
遼寧省 3ー2 山東省 北京市 3ー2 黒龍江省
●準決勝
〈山西省 3ー1 遼寧省〉
○武楊 9、ー6、6、11 文佳
○李暁丹 12、8、ー10、9 陳幸同
 呂ティンティン ー12、ー9、ー5 李佳イ○
○李暁丹 9、12、4 文佳
〈四川省 3ー1 北京市〉
○郭艶 10、8、9 李佳原
○朱雨玲 8、3、7 郭雨涵
 范思琦 ー6、7、11、ー6、ー11 盛丹丹○
○朱雨玲 8、ー9、ー12、6、5 李佳原
●決勝
〈四川省 3ー1 山西省〉
 郭艶 ー7、ー3、ー8 武楊○
○朱雨玲 ー9、ー6、9、11、8 李暁丹
○范思琦 ー8、9、ー6、8、8 呂ティンティン
○朱雨玲 ー8、2、ー9、4、3 武楊

 男子団体優勝の上海市は、左ペンドライブの許シン、左シェークドライブの尚坤、右ペンドライブの趙子豪というメンバー。決勝では山東省に対し、許シンを3番に下げるオーダーで勝負して3ー2で競り勝った。山東省は準決勝・決勝とエース張継科を腰痛で欠きながら、準決勝で解放軍にストレート勝ちした一戦は見事。なお、張継科は10月に開幕する中国スーパーリーグの2016年シーズンも全て欠場することが発表されている。
 また、馬龍、閻安、そして若手のホープ・王楚欽を擁する北京市は、準々決勝で解放軍に1ー3で敗れた。馬龍は解放軍の3番手・周愷にストレート勝ちしたが、閻安が樊振東と周雨にともに2ー3で敗れ、王楚欽も樊振東に1ー3と力及ばず。

 女子は邱貽可監督(03年世界ベスト8)率いる四川省が、全国大会で初のタイトルを四川省にもたらした。もちろん、決勝で李暁丹と武楊に逆転勝ちした朱雨玲の力なくして、このタイトルはあり得ない。リオ五輪のPカード(団体の補欠選手)として現地に帯同し、実戦感覚を取り戻すのに苦労しながらも、さすがエースという活躍を見せた。試合後、『華西都市報』の取材に対し、「この初めての歴史的勝利に、奇跡という文字が眼に浮かんだし、本当にうれしい。相手に百回勝つよりも、自分に一回打ち勝つことのほうが難しい。未来はより歓喜に満ちたものだと信じています」とカッコいいコメントを残している。
  • 四川省を優勝へと導いた朱雨玲(写真は16年荻村杯)

  • 今大会の会場となっている鞍山市のオリンピックセンター体育館

 リオ五輪・卓球競技が終わり、日本や中国など各国の選手たちがすでに帰国の途に着いている。その帰国前、ホテルでのわずかなオフの時間を利用して、スマートフォンの動画アプリを使ってファンとのやり取りを楽しんだのが張継科。ホテルのベッドに寝転びながら、至ってラフにファンの質問に答えた。その中で張継科は、こう語っている(一部抜粋)。

 「中国に戻って引退するための準備をしているよ。まずみんなにひと言伝えたかった。どうか動揺しないで。もう疲れてしまって、プレーを続けることができないんだ。あらゆるタイトルはもう手にしてしまったしね。遅かれ早かれ、現役を退く日はやってくる。50歳までプレーを続けることなんてできないからね」(張継科)

 SNSを通じて引退を語るというのも、ひと昔前の中国選手では考えられない型破りな行動ではある。張継科は2017年に天津で行われる全中国運動会には「必ず参加する」と言っているが、それは選手ではなく、コーチとしてだと言う。「みんながもしプレーしてほしいと望むなら、ぼくはコートに立つけどね」。近年、多くの代表選手たちがそうするように、全中国運動会が現役最後の大会となるのか。もちろん、張継科といえども個人の意思だけでは決められない。去就についてはまだ真意が見えないが、2020年東京五輪への出場はまったく考えていないそうだ。

 ちなみに、「丁寧=彼女説」を信じるファンからは「丁寧は一緒じゃないの?」という質問も。これに対しては「ぼくに聞かないで、丁寧に聞いて。丁寧は彼女じゃなくて友だちだからね。今は彼女はいないから、みんなぼくに紹介してよ」と相変わらず食えないコメント。馬龍については「隣の部屋にいるよ。馬龍に彼女がいるかどうかはわからないな。そりゃいるだろうね」と語っている。

 明日20日に中国に帰国する張継科。苦しめられた腰痛は、2日間休養したおかげでかなり痛みが取れたようだ。しかし、9月14〜18日に中国・成都で行われる中国オープンに出場するかどうかは、体調次第だという。来年5月の世界選手権個人戦で、果たして彼のプレーは見られるのだろうか。
  • リオ五輪で最後の力を振り絞った張継科(写真提供:ITTF)

 中国が男子団体優勝を決めた直後、選手たちと抱き合う劉国梁監督の口には「結婚指輪」がくわえられていた。この男子団体決勝が行われた8月18日が、劉国梁監督と妻の王瑾さんの結婚記念日で、2006年の結婚からちょうど10周年。右手と左手で「1」と「0」を作っていましたね。

 「私に大きなプレゼントをくれた選手たちに感謝しているよ!」とミックスゾーンでの劉国梁監督。監督の結婚記念日に、勝利をプレゼントしたかった人は誰もいなかったはずだが、まあ結果オーライか。ちなみに08年北京五輪でも、やっぱり劉国梁監督は指輪を口に加えていた。今回、某編集部では「そのまま飲み込んじゃえ」という暴言を吐いた人がいたとか……。

 劉国梁監督と王瑾さんが、16歳の時に国家ジュニアチームの集合訓練で知り合い、14年の交際を経てゴールインしたのは有名な話。2010年に王瑾さんは双子の女の子、劉宇婕ちゃんと劉宇彤ちゃんを出産。大きな大会にはよく娘さんふたりを帯同し、子煩悩ぶりを発揮している。

 そして「愛情故事」、ラブストーリーをもうひとつ。男子団体表彰後のミックスゾーンで、許シンと熱い抱擁を交わした女性がいた。07・09年世界選手権の中国代表で、175cmの長身で「女・王励勤」と言われた元中国女子チームの姚彦(ヤオ・イェン)。上海チームの先輩である姚彦が3歳年上。ふたりの交際は公然の事実だったが、公(おおやけ)の場でのツーショットはこれが初めてかもしれない。

 姚彦は自らの微博(マイクロブログ)で、「4年後、必ず巻き返すその時まで、私はずっとあなたの側にいます」と許シンにメッセージを送っている。今回はシングルスの出場権を獲得できず、団体でも決勝で水谷に白星を献上した許シンだが、強力な援軍とともに4年後の東京での金メダルを目指す。
  • 08年北京五輪で指輪にキスをする劉国梁監督

  • 小さくてすみませんが、姚彦の微博に掲載されたふたりのツーショット

 今大会、何とも形容しがたいおかっぱ頭でコートに登場した李暁霞。福原愛選手との準決勝では、その髪型も一部の日本の視聴者から注目されたが、女性が髪をバッサリ切るには、それなりの理由があったのである。リオに来る直前、「男友」と「分手」、つまり彼氏と別れてきたのだという。

 「この大会のために別れたのよ」という李暁霞のあっけらかんとした告白に、その場に居合わせた孔令輝監督や丁寧はビックリ。「じゃなきゃ何でこんなに髪を切るのよ。もういい年だし、隠してもしかたないことでしょ」。……李暁霞姐さん、男前である。「全然知らなかったな」と言う独身貴族(?)の孔令輝監督は、自分に矛先が向く前にそそくさとその場を逃げ出した。いろいろありましたね、監督も。

 ちなみに李暁霞が結婚相手に求めるスペックは、結構細かい。「条件はね、背が高いイケメンで、そんなにお金持ちじゃなくていい。私にも私の両親にも優しくて、仕事熱心で責任感が強ければいいわね。あ、年齢はあんまり上なのはダメ、せいぜい5歳以内。でも年下はNG、だって誰が面倒見るのよ」。
 どうやら結婚相手は、174cmの李暁霞より身長が高くなければいけない様子。男性の平均身長がおよそ172cmの中国、半分以上はアウトです。そして年下を立てるよりは、ちょっと年上の男性に甘えたいとのこと。別れたばかりの彼は、この条件を全部満たしていたんでしょうか。

 ちなみにこのぶっちゃけた会話の模様は、中国・CCTVの李武軍アナウンサーの微博(マイクロブログ)にその一部始終が収められている。李さん、五輪が始まってから相当飛ばしてます。こんな国家チームの裏側、日本ではとても公開できませんが……。
  • 李暁霞と孔令輝、丁寧にしているのは恋の指南…ではありません(写真提供:ITTF)

 エース水谷隼が2番で許シンを破り、日本が一矢を報いるも、中国が3−1で勝利した男子団体決勝。

 3番ダブルスでは、ベンチの劉国梁監督が中国ペアが一本取るごとに立ち上がり、未だかつてないほどエキサイトしていた。それもそのはず、もしダブルスを落として5番に回れば水谷対張継科。張継科はゲームオールにもつれた準決勝トップの鄭栄植戦で、個人戦から悩まされていた腰痛をさらに悪化させていた。「腰の状態は決して外には漏らさなかったけど、実際は寝る時も移動する時も大変だった。勝利への渇望だけが、ぼくを勝利へと導いてくれた」と張継科が決勝後に語っている。勝負に「たられば」は禁物だが、5番まで回れば水谷が勝つ可能性は十分にあった。

 「ラストまで回せば」。その日本男子の希望を打ち砕いたのが、4番で出場した馬龍だ。あの決勝の緊迫した場面で、吉村の変化サービスをあそこまで完璧にストップできるのは、世界広しと言えども馬龍だけではないか。しかもただ短く入れるだけではない、ブッツリ切れたストップなのだ。

 馬龍は決勝後、「この団体決勝が始まる前は『勝ったら泣いてしまうかも』と思っていたけど、今はすごく冷静だ。これが成長したということかな」と語っている。そしてチームメイトの許シンをこう讃えた。「許シンは2番で負けてから、気持ちを立て直す時間は5分しかなかった。これは相当難しいことだ。でも継科も許シンを助けたし、許シンも自分で気持ちを切り替えた。ベンチで本当に感動したよ。ダブルスが勝ってくれたから、ぼくのプレッシャーは相当小さくなった」(馬龍)。

 故障がちな張継科や許シンに比べ、長期離脱するような重大な故障には見舞われていない馬龍。しかし、2020年の東京五輪時には31歳になっている。劉国梁総監督もジャパンオープンで来日した際、樊振東と許シンについては東京五輪への出場が濃厚と語りながら、馬龍については明言しなかった。張継科から世界王者と五輪王者の座を引き継いだ馬龍は、これからどのようなストーリーを描くのか。

 「ぼくにとっては、これが最後のオリンピックになるかもしれない。だから今大会を素晴らしい記憶として留めたかった。毎日、劉国梁監督からは『試合が終わったら頭を空っぽにしろ』と言われていた。ぼくは普段から考え過ぎたり、難しく考えて卓球の世界にはまり込んでしまうから。本当に20数年の競技生活の中で、最高にハードな12日間だった。だけど、一生記憶に残る価値はあるものだったね」(馬龍)。
※コメント出典:『新浪体育』。
  • チームメイトを讃えた馬龍(写真左端/写真提供:ITTF)

 17日7時30分(日本時間)から行われたリオ五輪・卓球競技の女子団体決勝で、ドイツを3ー0で破って3大会連続の「完全優勝」を果たした中国。トップに出場し、ハン・インのカットを打ち砕いてチームの勝利に貢献した李暁霞が、試合後に自身の微博(マイクロブログ)を更新。これまでもたびたびコメントしていたとおり、今大会限りでの現役引退を宣言した。「天下没有不散的宴席(この世に終わらない宴はないのです)」で始まるこの引退声明の全文を紹介しよう。

 「この世に終わらない宴はないのです。私を育ててくれた国家に感謝していますし、私もその恩に報いるために全力を尽くしてきました。国家チームのメンバーとして、晩節を汚すことなく任務を全うできた。いくつかの心残りはありますが、それは今後のより良い生活のためでしょう。人生はすべてが完璧というわけにはいきません。後悔もまた美しく、私は笑顔でそれと向き合うでしょう。

 私に多くのものをもたらしてくれた卓球に感謝します。(ロンドンからの)4年という時間はあっという間に過ぎました。この4年に経験した非常に多くのことが、私を絶えず成長させてくれた。ひねくれたり、うぬぼれたり、あきらめたり、失望したり……。そして私に多くの負担を強いたのはケガでした。毎日痛みを抱え、心が折れそうになったけど、涙を流しながらじっと耐えるしかなかった。それでも私は、それをくぐり抜けることができた。

 私を苦しめた人もいましたが、ともに成長することができたのだから感謝したいと思います。そして、皆さんからの絶え間ない応援とサポートに感謝したい。李暁霞という選手が、コートの中でも、コートの外でも、ポジティブなエネルギーを送っていたことを、どうか覚えていてください。そしてこの卓球というスポーツに引き続き声援を送り、中国チームのさらなる栄光を願ってください。

追伸:私はひとりの共産党員であり、祖国の栄誉は何よりも重いものです。もしチームが引き続き私を必要としてくれるなら、体が許す限り、そして家族が応援してくれる限り、私はこの栄光あるチームに(コーチとして)戻ることを、断るわけにはいかないでしょう」(李暁霞)


 今後については明言を避けながら、コーチとして国家チームに戻ることも視野に入れた李暁霞。同じ遼寧省鞍山市出身のライバルだった郭躍に比べると遅咲きだったが、トラブル続きで追われるように国家チームを引退した郭躍に比べ、五輪を花道に見事に競技人生を全うして見せた。今年3月の世界選手権団体戦での不安定なプレーから、リオ五輪では心身ともにベストに近い状態に戻してきたプロ根性はさすがだった。
  • 優勝を決め、後輩の丁寧・劉詩ウェンと笑顔を見せる李暁霞(写真中央/提供:ITTF)

 オランダ代表としてリオデジャネイロ五輪・卓球競技に出場したリー・ジャオ(中国名:李校)。リオ五輪後の去就については「未定」としていたが、今大会を最後に第一線を退くことを発表した。

 リー・ジャオが現役引退のコメントを発したのは、ちょっと意外なところ。中国・CCTVのリポーターとして中国チームに帯同している李武軍氏の微博(マイクロブログ)だ。スマートフォンで撮影された本人の映像で、リオ五輪後の現役引退、そして引退後はオランダ男子チームの監督を務めることを語っている。男子監督としての契約期間は東京五輪までとのこと。

 今年で43歳のリー・ジャオは、中国・山東省青島市の出身。中国でプレーしていた頃は省チーム止まりで国家チームから声がかからず、21歳で現役引退。出身チームである青島市二体で5年間コーチを務めていたが、プレーヤーとしての夢断ちがたく、1999年にオランダに渡った。

 04年からはオランダ代表として国際大会に出場し、05年世界選手権でベスト8に入って注目を集め、07・11年ヨーロッパ選手権優勝、12年ロンドン五輪ベスト8、15年ヨーロッパ競技大会優勝など数多くの実績を残した。昨年の女子ワールドカップで朱雨玲(中国)を沈めるなど、現役バリバリのシェークドライブ型にも対抗できる、多彩なショートとプッシュ。3球目のパワードライブもコースが厳しく、威力にあふれていた。

 今回のリオ五輪では、シングルスでリュウ・ジャ(オーストリア)に敗れてベスト32、団体もオーストリアに1回戦で敗れたリー・ジャオ。試合中もコートサイドでも表情豊かで、人間的にも魅力的な一面を持っていた。日本女子にとっては怖い選手がひとり減ることになるが、やはり寂しさはある。彼女ならきっと、プレーヤーの苦悩がわかる指導者になれるだろう。低迷するオランダ男子に活力を与えてほしい。
  • まさに名人芸だったバックショート、今年3月の世界選手権団体戦でのプレー

  • リオ五輪で観客からの「自撮り」に気軽に答えるリー・ジャオ(写真提供:ITTF)

 リオ五輪の男子シングルス決勝で馬龍に敗れ、男子初の五輪シングルス2連覇はならなかった張継科。決勝でのフォアハンドの手数の少なさが気になっていたが、決勝後に「腰の影響はかなり大きかった、準決勝のサムソノフ戦の時、硬い守りに苦しめられて、腰に痛みが出てきていた」と語った。確かにサムソノフ戦の終盤、ラリー間などに腰を気にするような仕草があった。

 CCTV(中国中央電視台)の蔡猛解説員も、男子決勝に際して「張継科は昨日のサムソノフ戦で腰を傷めている。少し影響が出るかもしれない」と語っている。サムソノフ戦の最終ゲームで、レシーブの時に以前から傷めている場所を少しひねってしまったのだという。万全の状態ならば、馬龍戦も少なくともストレートで敗れることはなかっただろう。男子団体初戦のナイジェリア戦では、張継科はシングルスは後半に下がり、許シンとのダブルスのみの出場に留まっている。

 男子シングルス決勝については「まったく悔いはない」とコメントした張継科。「第1ゲームを落としたことが、第2ゲーム以降に大きく響いた。第1ゲームを取れていれば、これほど一方的にやられることはなかったと思う。ぼくが第1ゲームを落とした後、馬龍は非常に良いプレーをしてきたし、ぼくはずっと追いかける展開。試合全体を通しても受け身になり、1点を取ることさえ困難だった」(張継科)。

 「今回が最後の五輪になりますか?」という質問に対しては、「可能吧(たぶんね)」とひと言。「今後についてはまだ全然考えていないんだ。だから今は、ハッキリと答えることはできないね」。張継科クラスの選手になると、引退も本人の意思だけでは決められないが、プレーヤーとして彼に残された時間はそう長くはなさそうだ。(コメント出典:『新浪体育』)
  • 張継科、万全の状態で馬龍との一戦が見たかった(写真提供:ITTF)

 8月11日(現地時間)に行われた男子シングルス決勝で、永遠のライバルである張継科をストレートで破り、初の五輪シングルスで初優勝を果たした馬龍。これで中国で言うところの「大満貫」、五輪・世界選手権・ワールドカップの3大タイトルを制した5人目の選手となった。これまでワルドナー、孔令輝、劉国梁、張継科の4人が大満貫を達成していた。

 試合後のミックスゾーンで、中国の報道陣に対して「五輪のシングルス決勝は初めて、最後に勝利を勝ち取るためには、とにかく打ちまくるしかないと思った」と語った馬龍。「第2ゲームを取った時、『優勝できるかも』という思いが頭をかすめたけど、ちゃんとメンタルをコントロールできていた。そのことは考え過ぎないようにした。五輪での優勝は、ぼくの長年の競技生活の中でも素晴らしい結果。ずっとこの金メダルを夢見てきたし、その夢を実現できてとてもハッピーだ」(馬龍)。

 前回のロンドン五輪優勝の張継科と李暁霞は、山東省チームの男女のエース。そのふたりを、リオ五輪では北京市チームの男女のエースである馬龍と丁寧が破り、王座に就いた。馬龍は決勝後、丁寧への感謝の言葉を述べている。「去年の蘇州大会の時も、丁寧が先にチャンピオンになって、ぼくに幸運をもたらしてくれたんだ。そして今回もね」。

 そして何より気になるのが、優勝を決めた直後に両手で作ったハートマーク。「彼女へのメッセージか?!」と思いたくなるが、馬龍は「みんなに聞かれるけど、たいして意味はないよ。自分に送ったメッセージだよ」とコメント。はぐらかしているのか、どうなのか。フェンスを跳び越えて表彰台にキスをした、ロンドン五輪の張継科よりは控え目なパフォーマンスだが、これが「馬龍スタイル」か。台乗りは、さすがに反省したのかもしれない。
(コメント出典:『新浪体育』)
  • ハートで締めた五輪シングルス。ラブロマンならぬ……ラブマロン?(写真提供:ITTF)