思い立ったが吉日。インターネットを駆使し「手作り納豆 作り方」で検索、レシピを調達。
レシピっていうのは「誰が調理しても失敗の無いように」という思いやりの塊なんです。
レシピ通りに事を進めれば、私にだってちゃんと出来る様になっているんです。
完全忠実をモットーに事を進めていきましたので、もちろん間違いや失敗などが起きるはずがないのに、どうして私はいつもこうなるのでしょうか?
先ずは蒸した大豆が硬い。レシピに書いてある時間通り蒸したはずなのに。
蒸す時間を長くしてみたら、ふっくら仕上がるはずの豆がことごとく割れた。
しかも、まだ硬いっていう(泣)。
あなた。まさかこれで「納豆」を名乗ろうなんて言わないでちょうだいね? 笑わせないで。ふざけないで、ちゃんとやって?
これから納豆菌を混ぜて、45度の環境で24時間発酵させなきゃいけないんですけど? クリア出来るかしらね、こんな硬くてひび割れた大豆の分際で!
3パック750円で調達した貴重な納豆半パックを使い、納豆菌を大豆に混ぜます。
ここで雑菌が入ると「ただの腐った大豆」になるそうなので、レシピ通り熱湯消毒したスプーンで慎重に混ぜ合わせました。
フー、ここまでの工程は割と簡単。
私が一番心配だったのは45度の環境で24時間発酵させること。
あの~……それって、どうやってやるの(泣)?
レシピには湯たんぽやお湯を入れたペットボトルで密封とか、夏の日向に置くとか、コタツに入れるとか、オーブンに入れるとか色々ありましたけど。どれも無理。
湯たんぽは1つしか持っていませんし、ペルーのペットボトルはお湯を入れた瞬間溶け出しそうで信用ならないし、現在のペルーは春になったばかりで日向はそこまで暑くならないし、コタツなんてないし、オーブンに入れたら器ごと焼けちゃうんじゃないの? オーブンって、そういうものじゃないの(泣)?
頭を捻りに捻って閃いたのが、大きいお鍋にお湯を張り、その中に大豆を入れた炊飯器の釜を浮かせる、というもの。その大きいお鍋の周りにバスタオルを巻き、温度が落ちないように工夫します。お鍋の温度が下がったら鍋ごと火にかけて温めれば簡単楽ちん。
う~ん、我ながら素晴らしいアイディア。
なんか、すみませんね。ドジだの、間抜けだのというキャラとはかけ離れた「出来る人」的な感じ。こういうギャップって大事だと思うんですよね。「こいつ、ダメそうだな」と思わせてからの「こいつ、意外とやるかも」っていうね。
起きている間は鍋の温度を気にして何度も火にかけました。しかし、睡眠時間を8時間だとしても、夜寝る前から朝起き上がるまでの前後の合計1時間くらいは面倒くさくてグダグダしていたので鍋は放ったらかし。
9時間程放置プレイしていたらお湯は完全に水となり、嫌な予感が全身を駆け廻りました。
「発酵中の納豆は温度を下げてしまうと雑菌が繁殖しやすくなる」
「雑菌」って……。
熱湯消毒したスプーンで触ってみたら、全然糸を引いていない。糸が引かない納豆は失敗の可能性があるらしい。
しかも、発酵が上手く行っている場合の豆の表面には薄っすらと白い膜が張り、それがまさしく納豆菌なのだそうですが、私の豆にはそれが無い。
糸を引かない。そして、白い膜が無い。つまり……、それは……。
理想の発酵時間は24時間ということですが、私はもうちょっと時間を伸ばしてみました。ほんのちょっとだけ、18時間程。
発酵時間、合計42時間。
それを冷蔵庫で1日寝かして出来上がり。
ダメだ。やっぱり白い膜なんてない。泣けてくる。私がやる事は大体いつもうまく行かないんだ。身体に害を与える雑菌が増えたものを「腐敗」、有利なものを「発酵」と言うそうです。
これはあれかな、「腐敗」かな?
それでも熱湯消毒したスプーンですくってみたらなんと糸を引いた!
オーマイゴット! オーマイゴット! 私の大豆が糸を引いているっ!
小粒のかわいらしい豆が納豆菌のために使った市販の納豆で、デカくてふてぶてしい不格好なのは私が蒸したやつです。同じ豆なのに、どうしてこんなに違いがあるの?
少し混ぜてみたのがコチラ!
あれ? これは……これはもしかしたら納豆? 是非とも食べてみよう! 糸が引いているという事は「発酵」の証拠なんでしょう? でも、お腹痛くならないかなぁ。心配だなぁ。イヤだなぁ。食べたくないなぁ。そもそも、食材が糸を引くって、どうなの? 腐ってるんじゃないの? 気持ち悪いなぁ。なんだか納豆の様な、そうでないような臭いもするし……。
ん~、やっぱり無理っ! 食べたくないっ! 怖いっ! お母さんっ! 助けてーっ!
身体に悪いと腐敗、身体に良いと発酵などと言っていますが、食べてもいないこの時点で害を与えられているんですけど。
私の納豆は恐怖の塊と化し、作った本人でさえ「まじで食べたくない」と思わせる悪のネバネバ野郎となって私の前に立ちはだかったのでした。
「捨てたら勿体無いお化けが出てくるよ!」という私の脅しと、「恐怖に打ち勝つのだ!」という私の励ましによって、ついに意を決して食べてみました。
普段納豆を食べる時は、納豆が「もう勘弁してください!」と悲鳴を上げるまで混ぜるのですが、今回もいつも通りに混ぜ混ぜ~。
美味しそうに見えますよね? でも、味なんて味わっている余裕などありませんでした。
「どうか、お腹が痛くなりませんように……」それだけを願って手作り納豆50グラムをなんとか完食。
ここで皆様に問題です。私は手作り納豆を食べて、お腹を壊したでしょうか? それとも大丈夫だったでしょうか?