父と母が100日間のピースボートに乗って世界を一周しているのですが、この前ペルーにもやってきました。
船内には卓球台が2、3台ほど置いてあるらしく、二人はマイラケットでたまに船内で卓球をしているそうです。
ちなみに父は中学校で卓球部の顧問をしていましたが、自身が選手だったことはなく、今でも週に3回通っているリトルキングスでは初心者の子供たちのレベルを測る「丁度良い目安」となっております。
母に至ってはずっと初心者。声出しとか、ボール拾いレベル。卓球の神様から中級者の敷居を跨ぐことを禁止されています。
ペルーにいる時、隆子ちゃんが5歳の孫に「ねぇ、おばあちゃんと卓球しようよ~」と誘ってもずっと無視され続けていたので、私が仕方がなく、暇を持て余した神のごとく振り向きざまに「私が相手してやろう」と隆子ちゃんの卓球の相手に名乗り出たのですが。
なんかさ、もう一度、声出しとか、ボール拾いからやり直してきてほしい。体育館の隅の方で素振りとかしてきて? え? 卓球のコーチがそんなこと言っちゃダメ?
まぁいいや。彼女は真剣に、至って真面目にボールを打っているのでしょうが、
なにそのラケットの振り方。特にフォロースルー。ブレッブレなんですけど、どした? それ、ブラす意味あるの? え? 敵を動揺させるため? それだったら効果抜群だね。つーかそのフォーム、誰に教えてもらったの? え、お父さん? まぁ、お父さんもお父さんで相当癖のある振りをしているけども。なんかナナフシみたいな動きするよね。
夫婦揃って癖の強い卓球してる。
船内で卓球のダブルスの大会があったらしく、もちろん参加したらしいんですけど。参加者があまりにも多く、1セットのみの7本勝負。
「7本」って……せめて11本にしてほしかった。
一応父は卓球部の顧問だし、母も「卓球をしたことのない73歳」よりは卓球をしている方だと思うので、「で、もしかして優勝しちゃった?」 って聞いたんですよ。
そしたら! なんと!
一回戦負けだそうです。
ズコー!
卓球部の顧問の威厳(近寄りがたいほど堂々としておごそかなこと)とかさー、人生の酸いも甘いも大体経験したのにも関わらず、まだまだ現役、いつでも貪欲に「まだまだ若いもんには負けん! わしゃ、クルーズ船で世界一周してるんだ73歳にもなって! 100日間かけて!」みたいな貫禄を、ちゃんと出した? ほのめかした?
あぁ、そういえばお母さんはそういうタイプじゃなかった。競争中に「お先にどうぞ」とか言っちゃうタイプだったわ。今回の船内のダブルス大会だって、積極的にミスしたんでしょ? え? それはさすがに無い?
で、隆子ちゃんの卓球のレベルに戻りますが、最初は20球くらい続いたんですよ。でも、速攻に集中力が切れたのか、今度は5、6本でミスし始めた。で、ミスする度に
「あれ~?」って言うんですけど、まじで、それ言わないで。
「となりのトトロ」でメイがさつきとお父さんにトトロの巣に繋がる道を教えてあげようとするけど、道が違う所から出てきて「あれ~?」って言ってたように言うんです。
私は我慢が出来なくなり、ついに笑ってしまい「ウケた!」と確信した隆子は以前にも増してミスを連発し「あれ~?」の輪唱が始まった。
「あれ~?」を言いたいがために、絶対にわざとミスしてる。
私も私で「ミスさせまい!」と卓球歴35年(内コーチ歴13年)の知見と名誉にかけて、持っている技術と集中力を全て出しきって配球に専念したんですけど。
それでも母があまりにもすぐミスをするので、もしかしたらラバーが悪いのかもと思いチェックしたら、
ラバーが両面ともツルッツル。アンチラバーも顔負け。
多分ですけど、25年前に卓球始めてから一度もラバーを替えてない。
暇を持て余した神が「……ラバー替えれば?」って言ったんですけど、
ラバーたちが「私たちはここから離れません! ずっと隆子ちゃんについて行きます!」ってしがみついてるわけ。ご主人を慕うペットみたいになってんの。
で、お母さんもお母さんで「やれやれ、アンタたちには手塩にかけて今までお世話して(されて)きたけど、これからもお世話する(される)ことになりそうだね、しょうがない子たちだね」って言ってんの。でも私は知っている。このラバーたちがいつの間にか誰かに張り替えられたとしても、絶対にこのおばあさんはそれに気が付かない。