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2014世界ジュニア選手権大会速報

 世界ジュニアのフロアの内外で、速報担当が拾ったオフショットをご紹介しましょう。 まず上写真左のかわいいクマのぬいぐるみは、中国男子チームの于子洋くんのスポーツバッグにつけられていたもの。胸の記号のようなマークは「于子洋」の「于(ユー)」。

 上写真右はスポーツバッグからもう一枚。韓国男子チームのバッグの中に、なんと『よっちゃん』のスルメスティックが。これは日本の誰かからの差し入れなのか、それとも…。そういえば、昨年パリの空港で、酒井くんからスルメを貰いましたが。

 下写真左はマレーシアからやってきた女性審判員、リン・イーリェンさん。ユース五輪でも審判を務めていましたが、平均年齢が少々お高め(失礼)なので、とっても目立ちます。2013年ジャパンオープンの審判員として、来日されたこともあるそうですよ。

 下写真右は、今大会のオフィシャルホテルの中でも、最も高級な上海富建酒店(フージェン・ホテル)のブッフェに飾られていた。卓球台とラケットを模したケーキ。卓球台のボールはどうしたのかと思ったら…実物でした。うーん、惜しい!
 日本男子チームの田㔟邦史監督は、男子団体準決勝の試合後、1番で競り勝った酒井を讃えた。「酒井が1番で良い雰囲気を作ってくれた。よく踏ん張ってくれました。1番が勝った時点で、こちらが優位に立つのは間違いなかったので、酒井がチームを引っ張ってくれたかなと思います」(田㔟監督)

 選手をコートに送り出す時、田㔟監督はひと言「コース!」と言うことがよくある。世界ジュニア前の合宿から、サービス・レシーブ、そしてラリーで常にコースを意識しようと選手たちに言ってきた。「コース」とひと言かけるだけで、意識がコース取りに向かうよう、徹底した意識付けをおこなってきたという。「ボールはセルロイドからプラスチックになったり、38ミリから40ミリになったりしているけど、卓球台の大きさは変わっていない。それならばコースを厳しくしない限りは、世界で勝つことはできない」(田㔟監督)。

 明日はいよいよ男子団体決勝。日本は2010年のブラチスラバ大会から、5大会続けて決勝で中国と対戦する。前回・前々回大会の3番で中国から1勝をもぎ取った酒井が、準決勝のチャイニーズタイペイ戦トップで勝利をあげたことで、初の2点起用となるのか。2点起用が確実視される村松の変化カットが、中国勢の地元開催のプレッシャーを増幅させれば、勝負はおもしろくなる。
 「ようやく世界一を取れる舞台に立てる。明日は足が動かなくなるまで動かして、声がかれるまで声を出して、後は世界一に向かって思い切ってチャレンジしようと選手たちには言っています。選手たちのプレーもどんどん攻撃的に、ポジティブになっている。地元開催の中国に決勝で勝って、優勝したいですね」
 すべて3ー0のストレートで決勝進出を決めた日本女子。女子団体準決勝の試合後、呉光憲監督は「アメリカ戦の前、選手には『相手は接戦を制して勝ち上がってきた。日本はまだ接戦を経験していないから、絶対に油断するな。最後まで集中してプレーすれば、きっと勝てる』と話をしました」と語った。「今日の午前中は、準決勝は韓国と当たることを考えていましたが、韓国がアメリカに負けたということは、アメリカが強かったということ。アメリカ戦に向けて、選手のビデオを分析して、作戦を立てたことがすべて3ー0での勝利につながった」(呉監督)

 準決勝でのトップ平野の起用については、「最近プレーのバランスが非常に良く、プレーの幅が広くなっている。相手が中陣でプレーしてきた時、以前は攻めを急いであせってしまう時もあったけど、今はそれも克服している」と彼女の成長を高く評価。「これから2020年の東京五輪に向けて、彼女は中心になっていく選手のひとり。日本のエースとして1番に起用しました」と大きな期待を寄せている。

 明日の決勝への抱負を聞くと、「明日の中国戦では、強い日本を皆さんにお見せします! 必勝です!」と力強いコメント。明日は4大会ぶりの頂点に挑む!
  • トップで勝利した平野を迎える呉監督

●男子団体準決勝
〈日本 3ー0 チャイニーズタイペイ〉
○酒井 ー9、5、10、ー8、7 楊恒韋
○村松 4、8、5 王泰威
○坪井 10、ー6、10、7 彭王維

〈中国 3ー0 韓国〉
○于子洋 5、5、5 趙勝敏
○梁靖崑 ー5、6、10、10 金民爀
○呂翔 6、9、10 朴康賢

 タイペイを3ー0で退け、日本男子も決勝進出!
 なんといっても大きかったのは、トップでユース五輪4位の楊恒韋に競り勝った酒井の1勝。やや台から距離を取り、タッチの柔らかいバックハンドで前に落としてからカウンターを狙ってくる楊恒韋に対し、酒井は第1ゲームを落とし、第3ゲームも9ー10でゲームポイントを握られながら、12ー10と逆転。最終ゲームまでもつれたものの、強引なフォアのカウンターに頼らず、バック対バックで冷静に勝負して勝利をつかんだ。
 「1番で酒井が競っても勝ってくれて、1ー0で回ってきて気持ち的には楽だったので、思い切り戦えました」(村松)。その村松はまだカット打ちが粗い王泰威に完勝。スコアが競っても、バック表ソフトのツッツキとカットで変化をつけ、王を翻弄した。

 3番坪井は得意のチキータを3球目で狙われ、2ゲーム目には1ー9まで離される場面もあったが、サービスの組み立てのうまさと、正確なフォア連打で勝利。ただ、プラスチックボールになったことでチキータや台上バックドライブの威力は落ち、またどのチームも対チキータの攻撃をかなりやり込んできている印象だ。

 「世界ジュニアは4回目の出場で、去年は悔しい思いをしているので、今年は2点取って優勝したいです」と試合後の村松。中国は韓国を3ー0で下したが、地元での開催ということもあり、かなりプレッシャーを受けているようだ。日本、05年大会以来の優勝へ、ここまできたらやるしかない!
  • トップ酒井、見事に大役を果たす

  • 酒井と接戦を演じた楊恒韋

  • 日本男子ベンチも燃えた!

  • 坪井、勝利を決めてこの笑顔

●女子団体準決勝
〈日本 3ー0 アメリカ〉
○平野 15、7、5 ジャー
○佐藤 5、2、3 リリー・チャン
○前田 9、5、6 クリスタル・ワン

〈中国 3ー0 中国香港〉
○劉高陽 7、1、8 劉麒
○陳幸同 5、2、ー9、7 蘇慧音
○王曼昱 7、2、7 林依諾

 日本、アメリカを下し、7大会連続の決勝進出!!
 アメリカ戦の幕開けは、トップ平野が決めた8回目のゲームポイントだった。韓国戦のトップで勝利したインド系プレーヤー、ジャーを迎えた平野は、第1ゲーム10ー7から実に7回のゲームポイントを握るも、ジャーも一歩も譲らず、12ー13でゲームポイントを奪い返す場面も。ジャーはバック対バックに非常に強く、フォアのドライブも回転量が多かった。しかし、平野は16ー15で8回目のゲームポイントをものにして、第1ゲームを先取。ここから日本はイッキに突っ走った。

 2番佐藤は、ループドライブとツッツキでのリリー・チャンの粘りを、さらに上回るほどの正確無比なカットプレー。第1ゲームを終えたリリー・チャンがベンチに戻ってきてひと言、「so tired(クタクタよ)」。強烈なスマッシュもしっかりバックカットで返球し、最後はリリー・チャンの集中力が切れた。調子の波が少ない佐藤だが、この試合は今大会一番の出来だった。

 3番前田もこの流れを断ち切ることなく、第1ゲームの出足からガッツポーズ連発でグイグイ飛ばす。ワンのバックハンドは正確でミスが少なかったが、前田はフォアのボールでもバック表ソフトの変化をうまくいかしながら、ミドル攻めを効果的に使っていた。終わってみればオール3ー0、強い強いニッポンだった。決勝の相手は、香港を完封した中国だ!
  • トップ平野、戦術面・技術面とも成長著しい

  • 会場の視線を集めた佐藤

  • 前田、3番できっちり締めた

●男子団体準々決勝
〈中国 3ー0 スウェーデン〉
○于子洋 7、8、ー3、ー4 6 ケルベリ
○梁靖崑 10、ー7、9、6 ラネフル
○呂翔 6、8、3 アーランダー

〈韓国 3ー2 香港〉
○趙勝敏 9、10、ー9、8 何鈞傑 
○金民爀 6、9、10 李漢銘
 朴康賢 ー7、6、ー9、ー10 孔嘉德○
 金民爀 ー13、5、ー6、3、ー6 何鈞傑○
○趙勝敏 7、ー6、11、5 李漢銘

〈チャイニーズタイペイ 3ー0 ハンガリー〉
○楊恒韋 3、7、6 エチェキ
○王泰威 8、10、5 スーディ
○林学佑 ー6、11、ー6、11、7 マジョロス

男子団体準々決勝が終了し、日本、中国、韓国、チャイニーズタイペイというアジア勢がベスト4を占めた。
ストレートで決着したものの、好ゲームとなったのが中国対スウェーデン。スウェーデンはトップで、昨日坪井を破ったケルベリが于子洋とゲームオールの接戦。試合の序盤で于子洋が、台上ドライブを打つ際に中指を台にぶつけ、負傷するアクシデントがあったものの、それを差し引いても内容のあるゲームだった。2番ラネフルも、得意のバックサービスで「台から出ても構わない」とガンガン切りまくり、梁靖崑から1ゲームを奪取。サービス力でもぎとったゲームだった。

 ちなみに、トップの于子洋対ケルベリ戦で、こんなひと幕があった。後陣からケルベリがフォアで思い切って反撃したボールが、卓球台のエッジに当たって上に跳ねた。審判は「サイド」と判定し、ケルベリはあわてて抗議。于子洋はこの時、ケルベリと一緒に「上に跳ねたよ」と説明して、エッジを認めていた。ジャパンオープン決勝でのひと幕があるだけに、「オッ」と思いました。スコアは大きくリードしていましたが。
  • ベンチでの于子洋。試合中も表情豊か

  • ケルベリ、大魚はつかまえ切れず

●男子団体準々決勝
〈日本 3ー0 フランス〉
○村松 11、6、3 アキュズ
○酒井 5、9、7 カシン
○吉村 ー2、3、ー8、13、4 ルイズ

日本男子もフランスにストレート勝ち。メダル獲得を決めた!
トップ村松は、ユース五輪でも対戦したアキュズに対し、終始冷静にプレー。プラスチックボールになり、アキュズも前回よりはカットに対応できていたが、バックのナックルカットに対するミスがまだ出ていた。村松はバックドライブを決める場面もあり、卓球台にも慣れてきているようだ。2番酒井は両ハンドの速攻に、弧線の低いループドライブを織り交ぜ、カシンを翻弄した。

 苦戦したのは3番吉村。ルイズの変化の激しい投げ上げサービスに対して、レシーブが安定せず、ゲームを先行される展開。強打者同士の対戦に、1試合で2回もボールが割れ、交換した。第4ゲーム8ー10でマッチポイントをとられた吉村、しかし、9ー10で3球目バックドライブをバックストレートへ決め、12ー13ではバッククロスへロングサービスでエースを奪うなど、相手の計5回のマッチポイントをしのぎ、大逆転勝ち。試合後、「心臓が飛び出るかと思いました」と安堵の笑顔。しかし、その心臓は劣勢でも強さを見せていた。

 試合後、「もう次のことしか考えてないです。選手たちもすごい前向きですから」と田㔟監督。準決勝の相手は、やはりチャイニーズタイペイ。「タイペイに対しては、合宿でも『この選手ならこう戦おう』というのを準備してきたので、それを思い切ってやるだけですね。3番の吉村は、サービス・レシーブのコースを間違えると展開がガラッと変わるということ。試合後のミーティングでも、もう一度サービス・レシーブの大切さを話しました。でもプレー自体は決して悪くないですよ」(田㔟監督)。
  • 5回のマッチポイントをしのいだ吉村

  • トップで村松に敗れたアキュズ

  • 「ヤバかったな…」な表情の吉村くん

  • 試合後にITTFの撮影に乗じてパチリ。選手たちはまだまだ上を見ている

●女子団体準々決勝
〈中国 3ー0 フランス〉
○王曼昱 9、8、6 シャスラン
○劉高陽 5、4、5 ミゴ
○陳幸同 2、6、4 ザリフ

〈香港 3ー2 ドイツ〉
○蘇慧音 9、11、ー9、ー8、7 ミッテルハム
 杜凱琹 ー9、ー9、ー4 マンツ○
○林依諾 10、9、ー9、5 ワン・ユエン
 杜凱琹 ー9、0、ー3、ー7 ミッテルハム○
○蘇慧音 5、7、12 マンツ

〈アメリカ 3ー0 韓国〉
○ジャー 7、6、11 李ユジン
○リリー・チャン 9、6、ー4、ー8、8 李シオン
○クリスタル・ワン 10、ー10、7、12 金智淏

女子団体準々決勝は、予想外(速報担当の読み違い?)の展開が続いた。

まず香港対ドイツ。香港のエース杜凱琹がまさかの2失点。もともとフォアの手数は少なく、バックの鉄壁の攻守を主体に戦うタイプだったが、今大会は相手にいいように打たれ、防戦一方になっている。香港のピンチを救ったのは、昨年よりもパワーを増した蘇慧音。ラストのマンツ戦では、13ー12のマッチポイントで、レシーブから台上バックドライブでマンツのフォアに打ち抜き、決着をつけた。

そして驚いたのは、韓国がアメリカにストレートで敗れたこと。明らかにプレーが硬い韓国に対し、アメリカはトップのジャーが抜群の攻撃力を披露。2番のリリー・チャンも途中からやや守りに入ったものの、集中力の高いプレーで李シオンを振り切った。韓国、3番金智淏は昨日の香港戦の殊勲者だったが、アメリカに傾いた流れを食い止められず。

 試合後、アメリカ女子のリリー・イップ監督は「とにかくハッピー。韓国はプロフェッショナルな練習をしているし、私たちよりレベルは上。でも、ちょっと韓国の選手たちは硬くなっていたように見えた」とコメント。韓国戦の前の作戦は、と聞くと「ボールに集中して、ボールをしっかりコントロールするだけ。プレシャーはなかったから。作戦については…、日本戦が終わってからあなたに話すわ、アッハッハッッハ」と破顔一笑。「日本のテーブルテニスマガジン」などと自己紹介したのがいけなかったか…。プレッシャーがなく、流れに乗っているアメリカ。韓国よりくみしやすい相手に思えるが、決して油断はできない。
  • 韓国戦トップでチームを勢いに乗せたジャー

  • 3番で金星、クリスタル・ワン

  • 写真中央がリリー・イップ監督。選手としても活躍した

〈日本 3ー0 タイ〉
○平野 ー4、1、6、3 タモルワン
○佐藤 13、6、ー9、7 オラワン 
○伊藤 6、4、4 ジャリンヤ

 女子団体準々決勝、日本はタイをストレートで下して、ベスト4進出!

 タイはトップのタモルワンが、懐の深いバックの攻守で平野から1ゲームを先取。その実力を見せたが、平野はフォア前へのサービスと、ミドルからバックへのバックハンドのコースの揺さぶりで、中盤から一気にペースを握った。
 2番佐藤の相手、オラワンは小柄なサウスポーだが、佐藤のカットに対して決して深追いせず、ツッツキとループドライブ、堅いバックブロックで冷静にプレーしていた。佐藤は第3ゲーム9ー10からスマッシュミスでゲームを落としたが、動じずに勝利をおさめた。3番伊藤は、実力差のある相手に対し、攻守ともに圧倒して勝利。

 「準決勝では韓国との対戦を想定して準備してきた」という日本女子だが、準々決勝の韓国対アメリカは、なんとアメリカがストレート勝ち。果たして、この番くるわせがどう影響するか…?
  • 見事な戦術転換を見せた平野

  • 3番で快勝した伊藤

  • 佐藤を苦しめた左腕・オラワン

 大会第3日目の朝、韓国女子チームの練習を見守るひとりの女性。83・87年世界選手権準優勝、88年ソウル五輪女子複金メダリストの梁英子(ヤン・ヨンジャ)さん。現在、ジュニアの強化を担当している。昨日、韓国女子は同じグループの香港を3ー0で破り、1位通過で準々決勝に勝ち上がった。日本とも準決勝で対戦する可能性が濃厚で、ふたたび上昇気流に乗りつつある。

 選手たちとはかなり年齢差があるが、時に若いコーチを介しながら、うまくコミュニケーションを取っている印象。試合をするアメリカの選手が隣のベンチに入ってくると、笑顔でひとつイスを譲ってあげる気配り。シビレますね。コートの後ろに立っていても、オーラがすごいです。